店舗経営をどのように進めるべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
店舗経営には、フランチャイズやチェーン展開などさまざまな種類があり、それぞれノウハウを理解しておかないと経営が難航します。「継続的な店舗経営を実現したい」「店舗の業績を上げたい」と悩んでいる店舗経営者は、店舗経営の課題とノウハウを理解したうえで、実施するべき対策を確認しましょう。
本記事では、店舗経営に必要なものと継続的な経営を行うノウハウを詳しく解説します。店舗経営の種類や課題、始めるまでの流れもあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
店舗経営とは
店舗経営とは、店舗の業績を上げて継続的な運営を実現するための経営を指します。具体的には、店舗を通じて消費者に商品やサービスを提供し、安定した収益を得るための仕組みづくりです。
消費者に身近な例としては、美容院や飲食店などの経営が当てはまり、店長が店舗経営者に該当します。店舗経営で重要となる仕事は、主に下記の3つです。
- 資金繰り
- 経営戦略立案
- スタッフ採用・育成
店舗経営では、商品やサービスを提供するために必要な資金を準備する資金繰りや、経営戦略の立案を行います。また、店舗運営に欠かせないスタッフ採用や育成も、店舗経営の一環です。
店舗経営と店舗運営(店舗マネジメント)の違い
店舗経営と店舗運営(店舗マネジメント)の違いは、次のとおりです。
|
店舗経営 |
店舗運営 |
目的 |
店舗の収益を最大化させる |
店舗の運営を効率化させる |
役職 |
経営者 |
店長 |
店舗経営は、収益化を重視するのに対して、店舗運営は効率化を重視します。店舗経営は、内装やブランドコンセプト、商品・サービスの質や提供方法を含む体制づくりまで行うのに対して、店舗運営はすでにある仕組みを効率化する点が大きな違いです。
具体的には、経営者が定めた店舗経営戦略に基づいて、店舗内で実際に業務を効率化し、収益性を高める店舗運営の担当者が店長です。店舗経営者が定めた方針を店長は遵守する必要があり、経営戦略に基づいて収益性を高めるための店舗運営を実施します。
下記の記事では、店舗マネジメントと店舗運営の違いを詳しく解説しているので、あわせて読んでおきましょう。
店舗経営を取り巻く現状・課題
近年の物価高や人材不足などの課題により、倒産する店舗が増加しています。帝国データバンクが実施した「飲食店の倒産動向調査(2024 年)」によると、2024年の飲食店倒産件数は過去最多を記録しました。
倒産した飲食店が増加した要因は、主に次のとおりです。
- 新型コロナ収束に伴い国や自治体からの資金繰り支援終了
- 人材獲得のため賃上げなどの人件費負担の増加
- 円安による物価高の高騰
近年は、店舗が出店しても競争率も高く、資金繰りに難航して閉店するケースが増加しています。中小企業庁が公表した「2024年版小規模企業白書」によると、小規模事業者が資金繰りに支障が出ている理由は、次のようなものが挙げられています。
▼資金繰りに支障が出ている理由
少子高齢化に伴う労働人口減少や円安や賃上げによるランニングコストの増加によって、資金繰りが難しい店舗も増えています。
しかし、業種や商材によっては出店数が増加しているケースもあり、厚生労働省の「令和4年度衛生行政報告例」によると、美容院は年々出店数が増加しています。
▼理容院と美容院の店舗数推移
一方で類似した業界であっても理容院は店舗数が減少しており、市場の需要やトレンドによって店舗経営が大きく左右されることがわかります。
店舗経営の種類とそれぞれの特徴
店舗経営は、主に下記の3種類に分類されます。
- フランチャイズ
- チェーン展開
- 独立店舗
それぞれの特徴を紹介するので、違いを確認しておきましょう。
フランチャイズ
フランチャイズは、本部(フランチャイザー)と加盟店(フランチャイジー)が契約を結び、加盟店が本部のブランドや経営ノウハウを使用して運営する形態です。店舗経営者が資金を出し、本部のブランド名やロゴ、商品・サービス、運営マニュアルを使用するため、サービスの質が統一されます。
加盟店は、高いブランド力を基に事業を始められますが、本部に加盟金やロイヤリティを支払わなければなりません。ただし、店舗経営が初めての方でも、本部からの研修やサポートを受けられるため、比較的始めやすいメリットがあります。すでに成功している事業をフランチャイズ契約して展開するため、ゼロから独立するより店舗経営のハードルが低いです。
人気ヘアサロン「ALICe by afloat」のフランチャイズを6店舗経営するムッシュ豊田さんによると、フランチャイズ経営のメリットは次のとおりです。
なかでも僕が一番メリットを感じているのは、いいスタッフが集まりやすいという点です。うちにいるスタッフはほぼ全員、AFLOATという名前がついているから応募してくれたと思います。なかなか新卒が集まりにくい今、美容学生にも名前が浸透しているというのは大きな強みだと感じます。
モアリジョブ|美容サロン「ALICe by afloat」代表 ムッシュ豊田さん
対してフランチャイズ経営で感じるデメリットを、次のように語っています。
AFLOATが持つブランドイメージが強いことで、まったく違うブランドを出しづらいというのはありました。AFLOATと言えば赤文字系のスタイルというイメージもありますし、価格帯を変えることでブランドイメージを損ねてしまう可能性もあります。
モアリジョブ|美容サロン「ALICe by afloat」代表 ムッシュ豊田さん
ゼロからブランドをつくる時間やコストを削減して、有名ブランドの名前を借りて店舗経営できるメリットがある反面、ブランドイメージを守るために経営の自由度が低いデメリットがあるのです。
チェーン展開
チェーン展開は、ひとつの企業が複数店舗展開する経営手法です。フランチャイズと異なり、全店舗を自社で運営・管理し、収益の拡大を狙います。
チェーン展開は、全店舗の経営管理、商品の企画開発、販売促進活動を本社が統一するため、ブランドの品質やサービスの均質性が高いです。
店舗数を増やせば、本店とは異なる場所で顧客を獲得し、ブランドの認知度拡大と収益向上が期待できます。ただし、チェーン展開を拡大しすぎると、すべての店舗を管理しきれずに、ブランドコンセプトやサービスの品質が低下するリスクもあるため注意が必要です。
独立店舗
独立店舗は、個人や企業が単一の店舗を立ち上げ、経営する方法です。経営者が独自に店舗を運営するケースも多く、自分が思い描いたコンセプトやブランドイメージを事業に反映させられます。
フランチャイズやチェーン展開より経営の自由度が高く、地域密着型の店舗になるケースも珍しくありません。ただし、ブランドや商品のオリジナリティを出しやすい反面、経営ノウハウや仕入れに関するサポートは基本的にないため、独学でも勉強が必須です。
経営が安定したら、店長を雇って店舗運営は任せ、経営に専念することも可能です。
店舗経営に必要なもの・要素
店舗経営を始める際は、下記が求められます。
- 財務基盤と資金管理能力
- 人材マネジメント力
- マーケティングと顧客管理能力
- オペレーション管理能力
- 法務・コンプライアンス知識
なお上記の5つに加えて、業種・業態によっては資格が必要になる場合があります。例えば、美容業の場合は業務を行うための「美容師免許」と従業員を雇う「管理美容師免許」が必要です。
小売業でリサイクルショップを経営する場合は「古物商許可」、飲食店を経営する場合は「食品衛生責任者資格」が必要です。
店舗経営に必要なものと要素・資格を確認して、スムーズに開店できるよう準備しましょう。
1.財務基盤と資金管理能力
店舗経営を始めるには、店舗運営に必要な資金を用意しなければなりません。まずは、開業資金を確保し、スムーズに店舗を運営するためのキャッシュフロー管理能力を養いましょう。
店舗を経営する上で、資金管理能力は必要不可欠であり、収益性を高めるための収支計画の策定と運用が求められます。店舗経営で収益性を高めるためには、支出を惜しむだけでなく、必要があれば適切な投資によりビジネスチャンスを獲得することも大切です。
日本政策金融公庫が実施した「2023年度新規開業実態調査」は、開業費用の分布は次のとおりです。
▼年代別の開業費用分布
▼2023年の開業費用の分布
開業費用 |
割合 |
250万円未満 |
20.2% |
250万~500万円未満 |
23.6% |
500万~1,000万円未満 |
28.4% |
1,000万~2,000万円未満 |
18.8% |
2,000万円以上 |
9.0% |
とりわけ2023年度のデータでは、開業資金が1,000万円以上かかった割合が約7割を超えています。店舗の規模や事業内容にもよりますが、店舗経営に必要な資金を確認しておきましょう。
2.人材マネジメント力
店舗経営に必要なスキルとして、人材マネジメント力は必須です。店舗経営には、従業員の確保と育成も含まれており、採用・育成システムを構築する必要があります。
人材マネジメントを構成する要素は、下記の6つです。
要素 |
概要 |
採用 |
・優秀な人材の募集、選考、採用を行う ・求めるスキルや適性を明確化し、採用基準を設定 |
育成 |
・従業員の能力開発、スキル向上、キャリア形成を支援する ・教育・研修制度やOJT(現場研修)、キャリア開発プログラムを整備する |
評価 |
・従業員の仕事の成果や能力、貢献度を評価し、フィードバックする ・公正で透明性のある評価システムが必要 |
報酬・処遇 |
・給与や賞与、福利厚生など従業員の成果を報酬として還元する ・従業員のモチベーション維持に必要不可欠 |
配置・異動 |
・適材適所を実現し、各従業員の能力を最大限に引き出す ・組織内での役割分担や人材の異動、昇格など |
休職・復職 |
・従業員が必要なときに休職や復職できる体制を整える ・出産や育児、介護などライフイベントにあわせた対応が必要 |
人材マネジメントでは、従業員のモチベーションを管理するための体制づくりが重要です。厚生労働省が公表した「企業における人材マネジメントの動向と課題」によると、従業員の就業意欲が高い企業は、次のようなマネジメント施策を実施しています。
経営者がリーダーシップを発揮するだけでなく、適切なコミュニケーションと人材育成、ライフワークバランスの充実が、従業員のモチベーションアップにつながります。店舗経営では、従業員の労働環境や福利厚生を整備する労務管理の知識も必要であり、「長く働きたい」と感じる職場づくりが大切です。
3.マーケティングと顧客管理能力
店舗の収益を最大化させるには、マーケティングによる顧客獲得・育成が必要不可欠です。近隣の競合を調査・分析し、自社にしかない強みをアピールして、新規顧客の獲得につなげましょう。
市場分析力と競合調査・分析により、顧客ニーズを把握し、集客・販促戦略を立てることが大切です。店舗経営者は、開店に向けたマーケティング活動を行い、安定した収益を得られる仕組みをつくりましょう。
また、顧客のリピート率を高めるために、ブランドコンセプトの浸透と顧客ニーズに沿った商品・サービスを提供し、収益の安定化を図る必要があります。
4.オペレーション管理能力
店舗経営を効率化させるために、業務フローや商品・サービスの品質を管理するオペレーション管理能力が必要です。
従業員を雇った際に、品質を均一化したサービスを提供できるよう、業務フロー設計が重要です。対応する従業員によって品質がバラつくと、顧客満足度の低下につながるリスクがあるため、業務フロー設計で品質を安定化させましょう。
また、在庫管理システムの導入や仕入管理を徹底することで、過剰在庫や在庫切れによる損失を防ぐことが大切です。適切な仕入れルートの確保も店舗経営において重要な役割であり、利益率を計算して商品・サービスの価格を設定しましょう。
また、万が一トラブルが発生した際の対応をマニュアル化し、リスク管理に努めることも大切です。災害時やクレーム発生時の対応を店舗内で周知して、リスクを最小限に抑えましょう。
5.法務・コンプライアンス知識
店舗経営におけるリスクを軽減するために、経営者は法務・コンプライアンス知識を身につけておく必要があります。
業界や扱う商材によって適応される法律が異なるため、事業を運営する前に業界関連法規の理解を深めましょう。また、業種や事業内容によっては資格や認定許可が必要なので、事業運営に向けて各種許認可の取得・管理を行ってください。
店舗経営では、物件の賃貸契約や各種ライフラインの契約、顧客や仕入先との契約など、契約管理を徹底する必要があります。特に顧客データは、個人情報に該当するため、情報漏えいを防止する対策が必要です。
従業員を雇う際は、労働関連法規を遵守し、最低賃金や適切な労働時間を確保してください。ハラスメント対策やジェンダー平等など、法令の有無を問わずコンプライアンス知識を収集し、従業員や顧客の満足度を高める店舗経営が重要です。
店舗経営を始めるまでの流れ
店舗経営を始める際は、次のステップに沿って準備を進めましょう。
- コンセプト・事業計画の策定
- 資金調達
- 出店地域・場所の検討
- 法的手続き
- 店舗設計・備品準備
- 仕入れ・在庫管理体制の構築
- 人材を採用・育成する
- 販促・宣伝活動
- プレオープン
- グランドオープン
なお、上記はあくまで一般的な流れのため、業種や業態によって不要なものもあります。自社に必要なステップを確認して、スムーズに店舗経営を始められるよう準備してください。
ステップ1.コンセプト・事業計画の策定
まずは店舗のコンセプトを決定し、事業計画を策定しましょう。具体的には、製品やサービスの特徴を表現し、どのように顧客や市場へ価値を提供するのか明確にしてください。
コンセプトが定まれば、具体的な事業計画を立てるために、業態・業種を決める必要があります。ターゲット顧客を明確化するために、年齢や性別・世帯状況・年収などを想定したペルソナを設定し、自社が提供するサービスや店舗のコンセプトに刺さる層を分析しましょう。
また、競合分析を実施して、周囲に強力な競合店舗がある立地では、店舗選びを検討する必要があります。周囲に競合が少ない独占市場では、収益性を高められるチャンスがありますが、そもそも需要がないリスクもあるため市場調査が欠かせません。
事業を運営するために必要な資格を確認し、取得するまでの計画を策定してください。経営者自身が資格の取得が難しい場合は、有資格者の雇用を検討しましょう。
さらに事業を赤字化させないために、損益分岐点(損益がゼロになるときの売上高)を計算し、利益の目標値を設定することが大切です。開店してから、何人顧客が来店すれば黒字化するか、最低でも1日に何円売上が必要かを計算して、価格設定と仕入先の選定を行いましょう。
ステップ2.資金調達
店舗経営には、仕入費用や店舗の維持費、従業員への給料など膨大な費用が発生します。店舗経営に必要な資金を調達するために、どの程度の費用が必要か資金目安を算出しましょう。
将来の収入と支出を予測した収支計画の策定により、店舗を開業するために必要な費用と当面のランニングコストを確保することが大切です。
必要資金を算出した後は、具体的にどのように資金を調達するか方法を検討する必要があります。店舗経営における主な資金調達方法は、次のとおりです。
- 自己資金を使う
- 銀行や金融機関から融資を受ける
- クラウドファンディングを実施する
- 投資家やベンチャーキャピタルなどに投資を受ける
- 国や自治体の補助金制度を活用する
日本政策金融公庫が実施した「2023年度新規開業実態調査」は、開業費用の分布は次のとおりです。
▼平均的な開業費用調達方法・金額
とりわけ2023年の平均資金調達額は1,180万円であるのに対して、調達方法は次のとおりです。
資金調達方法 |
金額 |
自己資金 |
280万円 |
血縁・親戚から |
50万円 |
友人・知人から |
37万円 |
金融機関などからの借り入れ |
768万円 |
その他 |
45万円 |
多くの場合は、金融機関などから融資を受けて資金調達します。しかし開業資金や当面の経営資金をすべて金融機関から借り入れると、利息が膨大になるリスクがあります。そのため、融資の申請前にできるだけ自己資金を確保し、不足している費用だけ借り入れましょう。
投資家から投資を受ける場合は交渉の上、無理のない条件で資金を調達してください。
ステップ3.出店地域・場所の検討
開業資金を調達したら、出店地域・場所を決めましょう。ターゲット層が多く訪れる・住んでいる地域に出店すれば、集客力を高められます。安定した収益性を確保するために、出店地域・場所の選定は非常に重要です。
商圏調査には、地図情報と行動データを掛け合わせた商圏データの活用が効果的です。国勢調査や住民基本台帳、家計調査年報などの公的統計データを参考に、収益性が高いエリアを見極めてください。
商圏分析ツールを活用すれば、競合情報や地域住民の属性、時間帯別の行動データを可視化し、事業に適した出店場所を見極められます。
物件探しの際は、予算や事業規模に適した店舗を探して、不動産と賃貸契約を締結しましょう。また、周辺に住宅街や競合店舗、小学校や病院など公的施設がある場合は、騒音や景観を損ねないために近隣対策の検討も必要です。
ステップ4.法的手続き
賃貸契約を締結し、店舗の確保が済んでも、法的手続きを終えなければ事業を始められません。事業を始める際は、下記のような手続きを済ませましょう。
- 開業届の提出(個人の場合)
- 会社設立手続き(法人の場合)
- 営業許可の取得
- 保健所等への届出
- 各種保険加入
例えば、飲食店を経営する場合、下記のような営業許可を取得する必要があります。
- 飲食店営業許可の提出
- 食品衛生管理者の選出
- 防火管理者選任届の提出
- 開業届出書の提出
- 労災保険、雇用保険の加入手続き(従業員を雇う場合)
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届出書(お酒を提供し深夜0時を超えて営業する場合)
営業形態や事業内容によって、必要な法的手続きは異なるため、事前に必要書類と資格を確認しておきましょう。
ステップ5.店舗設計・備品準備
店舗の営業許可を取得した後は、事業を始めるための店舗づくりを行いましょう。店舗設計を依頼する設計会社の選定では、複数社に相見積もりを取り、予算に合う業者を選ぶ必要があります。
また、過去の実績や口コミ、対応範囲を比較して、信頼できる業者を見極めることが大切です。同様に内外装業者を選定し、ブランドコンセプトや事業内容に適した店舗をつくるために、工事を実施します。
店舗設計と同時に、設備・機器を導入して、事業運営に向けた準備を進めてください。
ステップ6.仕入れ・在庫管理体制の構築
店舗の内装や設備を充実させただけでは、顧客にサービスを提供できません。商品・サービスを提供するために、必要な資材や原料を仕入れるルートの確保が必要です。
仕入先の選定・契約をするために、下記の方法を実践しましょう。
- 自社のニーズを明確にする
- 仕入れたい資材や原料をリストアップする
- 求める仕様や価格、納期などを決める
仕入先を選定し契約したら、開業に向けて初期在庫を確保します。過剰在庫や在庫不足に陥らないよう、来店者数を想定して必要な在庫数を仕入れましょう。
また、在庫管理システムを導入すれば、在庫管理業務を効率化し、過剰在庫や在庫不足のリスクを軽減できます。
ステップ7.人材を採用・育成する
経営者が一人で店舗を回せない場合は、従業員を雇い入れる必要があります。近年は労働人口が減少し、賃上げによって人件費が高騰しているため、人材採用を計画的に実施しましょう。
人件費は、売上の10%以内が理想的であり、できるだけ費用をかけずに優秀な人材を確保する施策が必要です。人材採用の手法として、以下の方法が効果的です。
- 求人情報誌やチラシによる求人募集
- 求人サイトやSNSを活用した求人募集
- 知人や友人の紹介
- 人材紹介サービスの利用
- 派遣サービスの利用
- 外国人労働者の雇用
求人活動では、求職者に働くメリットを提示するために、労働条件や福利厚生、店舗の魅力などをアピールしましょう。従業員が働きたくなる職場環境を構築すれば、求人への募集率が高まり、条件に合う人材を確保しやすいです。
面接を経て採用した後は、店舗で業務を任せるために研修プログラムを実施してください。厚生労働省が公表した「人材育成の現状と課題」によると、多くの企業で下記の人材育成が行われています。
▼人材育成の取組状況
定期的な面談やOJT、Off-JTを実施している企業が多く、店舗で働く上で必要な知識・スキルを教育することが大切です。また、従業員のモチベーション管理も店舗経営の重要な役割であり、充実した教育体制とキャリアプランを提示すれば、従業員にやりがいを与え、働く上での不安を解消できます。
誰が教育しても同質のスキル・知識を習熟できるよう、人材育成マニュアルを作成しておきましょう。
ステップ8.販促・宣伝活動
事業を展開するために必要な店舗・設備・資金・人材が揃っても、集客できなければ収益化できません。店舗経営において販促・宣伝活動は非常に重要であり、まずは消費者に店舗の存在を認知してもらう必要があります。
店舗経営における販促・宣伝活動として、以下の施策が効果的です。
- ホームページ制作
- SNSアカウント開設
- オープン告知の準備
- 販促物の制作
ホームページを制作すれば、インターネットから集客できるだけでなく、店舗の信用度を高められます。店舗の雰囲気や提供しているサービス内容、メニュー、価格相場を公開することで、来店のハードルを下げられます。
SEO(検索エンジン最適化)とMEO(マップエンジン最適化)対策を実施し、店舗の認知度を高めましょう。
また拡散力によって店舗やサービスの認知度を高めるには、SNSマーケティングが効果的です。SNSメディアは高い拡散力を持ち、集客効果の高いツールです。
ホームページとあわせてSNSメディアを開設し、不特定多数のユーザーに認知してもらえるよう、アルゴリズムに則った運用でエンゲージメントを高めましょう。
SNSや広告媒体を活用したオープン告知の準備を進め、開店とともに顧客獲得を目指しましょう。チラシや看板など販促物を制作し、店舗や商品のPRにつなげる方法も効果的です。
ステップ9.プレオープン
開店準備を整えた後は、数日間のプレオープン期間を設けてください。いきなりグランドオープンすると、研修とは異なる環境で不備やトラブルが発覚する可能性があります。
オペレーションが不確定で改善の余地があるケースも多く、プレオープンを通じて効率的な店舗運営方法を見つけられます。プレオープンを実施するメリットは、次のとおりです。
- 接客やオペレーションを改善できる
- 設備や配置の不備を確認できる
- 顧客のリアルな声を収集できる
- 店舗の認知度を高められる
- 価格設定を見直せる
プレオープンは、従業員の実地訓練と店舗の試運営を同時に行えるメリットがあり、開業に向けてお世話になった人々へ感謝を伝える機会でもあります。グランドオープンに向けた最終調整を行って、安定した事業経営を目指しましょう。
ステップ10.グランドオープン
プレオープンで問題点を改善し、従業員がオペレーションに慣れたら、いよいよグランドオープンです。グランドオープンで訪れた新規顧客の満足度を上げられると、再来店につながりリピート率が向上します。
グランドオープン後もPDCAサイクルを回し、評価と改善を繰り返すことが、質の高い店舗経営を行うコツです。PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のサイクルを繰り返し、品質や業務効率を向上させるフレームワークです。
引用:PDCAサイクルを実践して 生産性を高めよう|厚生労働省
グランドオープンした後も、継続的な経営を行うためにPDCAを回し続ける必要があるため、開店をゴールにしないよう注意しましょう。
継続的な店舗経営のためのノウハウ
継続的な店舗経営を実現するためのノウハウは、次のとおりです。
- データに基づいて経営管理を行う
- 人材の定着・育成施策に力を入れる
- リスクマネジメントを徹底する
- 財務管理を強化する
- 顧客満足度の維持・向上を重視する
それぞれのノウハウを確認して、継続的な店舗経営で事業を長期間継続させましょう。
データに基づいて経営管理を行う
感覚的な経営では、リスクやビジネスチャンスを可視化できないため、店舗経営ではデータに基づいた経営管理が必要です。
具体的には、下記のような施策を実施しましょう。
- KPI(中間目標)の定期的なモニタリングと分析
- 顧客データの活用による経営判断
- デジタルツールの効果的活用
- 客単価の最適化(周辺の相場や提供しているサービスグレードなど)
- 利益率向上のためのコスト把握および削減
データに基づいた経営管理を行うには、デジタルツールの導入がおすすめです。大阪府堺市では、事業者へデジタルツールの導入を推奨しており、「デジタルツールガイドブック」を公表しています。
本ガイドブックでは、売上向上や業務効率化、人材定着につながる事例と課題に応じたおすすめツールを紹介しているので、店舗経営の参考にしてください。
人材の定着・育成施策に力を入れる
継続的な店舗経営には、従業員が長く働ける環境を構築する必要があります。従業員の定着率が低いと、採用コストが増加し業務負担も増えるため、店舗経営が難航するリスクがあります。
人材の定着・育成施策に注力するため、下記の施策を実施しましょう。
- 従業員満足度の向上
- キャリアパスの明確化
- 適切な評価制度の構築
- 業務の非属人化および効率化
下記の図はサービスプロフィットチェーンを表しており、従業員満足度・顧客満足度・業績がそれぞれ因果関係にあることを意味しています。
参考:PEAKS MEDIA produced by 松尾産業
従業員満足度が顧客満足度へつながり、業績向上にもつながるため、人材の定着・育成に注力することが大切です。人材育成計画を立案する際は、厚生労働省の「人材確保に効く事例集」などを参考に、自社の課題や目標に適した施策を実施してください。
リスクマネジメントを徹底する
店舗経営ではさまざまなリスクが潜んでいるため、リスクマネジメントを徹底しなければ長期的な存続が難しいです。リスクマネジメントとは、経営において発生するリスクを分析し対処する経営管理手法であり、店舗経営を継続する上で必要な施策です。
具体的には、下記の施策を実行して、リスクマネジメントを徹底しましょう。
- 事業継続計画(BCP)の策定
- コンプライアンス体制の構築
- 従業員教育の実施
なお事業継続計画(BCP)とは、自然災害やテロ攻撃などの緊急事態時に、事業を継続、早期復旧するための計画です。
2024年4月より、介護事業所ではBCPの策定が義務化されており、他の業種でも日本政府がBCP策定を推奨しています。
また、従業員による配慮に欠けたSNS投稿などで店の評判を貶められてしまうと、閉店や倒産にまで追い込まれるリスクがあるため、コンプライアンス体制の強化と従業員教育の実施が重要です。
財務管理を強化する
継続的な店舗経営を実現するには、不要なコストを削減し収益性の安定化につなげる財務管理の強化が不可欠です。開店前から、適切な資金繰り計画を立てて、定期的に収益性を分析することで、不要なコストを削減し収益性を確保できます。
財務管理を強化するには、次のような施策が効果的です。
- 財務分析に基づいて課題を把握する
- 財務体質の見直しと強化を図る
- 部署間の連携を強化する
- 財務管理システムを活用する
- 資金繰り表を活用する
- 決算書を毎月作成し、経営状況をタイムリーに把握する
- 財務的なリスク(為替変動、金利変動、取引先リスクなど)への対策をする
中小企業庁の「財務サポート」では、中小企業向けの税制支援や会計、会社法、税制などを支援する情報を公開しています。財務管理を強化したい方は、参考にしましょう。
顧客満足度の維持・向上を重視する
どれだけ商材やサービスが優れていても、顧客満足度の低い店舗は長くもちません。顧客満足度を維持・向上させることで、安定的な収益を確保し、事業発展につなげられます。
顧客満足度を向上させるには、定期的に顧客からフィードバックを収集・分析し、課題の改善に努めることが大切です。サービス品質を標準化するために、従業員教育の強化と業務フローをマニュアル化し、いつ来店しても均一のサービスを提供できる体制をつくりましょう。
クレームは避けるべきリスクですが、適切な対応によってクレーム客をファンにできるので、クレーム対応の体制を整備しておくことが大切です。ただし対応を誤ると、店舗の評判が下がり、収益減少へとつながるため、クレーム対策を徹底してください。
さらに、近年カスタマーハラスメントの被害が増加しており、従業員に心的苦痛を与えないために、クレームには初期段階での適切な対応が欠かせません。厚生労働省のガイドラインによると、カスタマーハラスメントを防ぐためのステップは、次のとおりです。
- 対象を明確にして謝罪する
- 状況を正確に把握する
- 現場監督者または相談窓口に情報共有する
また、顧客満足度を維持・向上させるために、消費者庁の「特定商取引法に関するガイドライン」を確認して、消費者が安心して商品・サービスを購入できるよう、対応やルールを見直しましょう。
まとめ
店舗経営で継続的に収益を確保するためのノウハウは、次のとおりです。
- 人材マネジメント力や資金調達力など店舗経営に必要なスキル・人材を取得する
- 市場調査や競合調査、商圏分析など開店前の事前準備を徹底する
- プレオープンで改善点や顧客のリアルな声を収集し、グランドオープンで新規顧客の満足度を上げる
- サービスプロフィットチェーンを理解し、従業員満足度と顧客満足度の向上に注力する
- BCP策定とコンプライアンス体制の強化によってリスクマネジメントを徹底する
- グランドオープン後もPDCAサイクルを回し、継続的なブラッシュアップを行う
本記事で紹介した店舗経営の流れとノウハウを参考に、持続的に顧客から愛される店舗づくりを行いましょう。

- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部