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店長として求められるスキルとは?安定した店舗経営のための役割や店舗責任者との違いについて解説

店長として求められるスキルとは?安定した店舗経営のための役割や店舗責任者との違いについて解説

店舗展開を進めるうえで悩みの種となるのが、店舗を安心して任せられる人材です。

本記事では経営者に代わって店舗運営を担う「店長」には、どのようなスキルが備わっていると良いのか、また店長の役割である店舗業務内容について解説します。

店長適任者を選ぶ際や、業務を割り振る際の参考にしてください。

店長に必要なスキル

店舗の売上は店長の手腕によって左右される可能性もあります。

そのため店長には店舗で取り扱う商品やサービスの知識、技術、接客力に加えて、以下3つのスキルが求められます。

  • コミュニケーション能力
  • マネジメント能力
  • 判断能力

上記3つのスキルが必要な理由をいくつかの調査データをもとに解説します。

コミュニケーション能力

円滑な店舗運営にはコミュニケーションが大切です。

多くのスタッフを抱える店舗運営では、スタッフ間で意見や考えの食い違いが生じることも少なくありません。

また経営者が現場に立たない場合、経営者と現場スタッフの間に乖離が生じる場合も多々あるでしょう。

スタッフ間や経営者とスタッフの間に立ち、双方の意見や考えの伝達を行うのも店長の役割です。

一般社団法人 日本能率協会の調査によると、第1位に「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」、第2位に「部下の意見・要望を傾聴する上司・先輩」があがっています。いずれもコミュニケーション能力が備わっていてこそ、実践可能な項目です。

▼理想だと思う上司・先輩(n=675/日本能率協会の新人社員向けセミナー参加者)

1.理想だと思う上司・先輩

画像出典:2023年度「新入社員意識調査」(一般社団法人日本能率協会)

また回答の第3位からもわかるように、部下からの信頼を集めるには傾聴するだけでなく、しっかりと行動に移すことも重要です。

そしてスタッフとのコミュニケーションだけでなく、顧客とのコミュニケーションも不可欠です。店長という立場上、スタッフに代わってクレーム対応しなくてはいけない場合もあります。

私が新人時代にお客様を怒らせてしまったことがありました。落ち込む私に対して、当時の店長はそのご意見を真摯に受け止め、丁寧に謝罪しながら、私へのフォローもスマートに行ってくれたんです。

引用:リジョブ|「メディロム」セラピスト採用企画チーム マネージャー 柴崎優衣さん

上記のような日常的な顧客トラブルのほか、昨今では理不尽な要求をする顧客「モンスターカスタマー」が問題視されています。

毅然とした態度で顧客対応できるコミュニケーション能力は、店長の必須スキルといえるでしょう。

マネジメント能力

マネジメントとは、人・モノ・お金・時間・情報など、企業や店舗がもつ資源を効率的に活用し、目標を達成するための活動全般を指します。

マネジメント能力を要する店長業務には以下のようなものがあり、いずれも店舗運営をするうえで欠かせないものです。

  • 目標を設定し、戦略を立てる
  • 人や業務の役割分担をする
  • 進捗を把握し、問題があれば軌道修正する

また店長には店舗の成長だけでなく、店舗運営を通してスタッフのキャリアアップにつながるサポートも求められます。

ALL DIFFERENT株式会社の調査によると、キャリアアップにつながる理想の上司の第1位は「具体的に手順を細かく教えてくれる」でした。

▼キャリアアップにつながる理想の上司(調査対象:社会人1年目)

2.キャリアアップにつながる理想の上司

とくに社会人1年目は右も左もわからず、判断に困ることも少なくありません。

個人の判断に任せるのは大切ですが、経験の浅いスタッフにおいては具体的に教えてあげる丁寧な指導が求められます。

判断能力

店長が店舗責任者も担っている場合、店長が判断を迫られる場面も多く発生します。

状況を正確に把握し最善の選択を下す判断能力は、店舗イメージや売上に直結する可能性が高く、店長が備えておくべき能力のひとつです。

店舗運営では以下のような場面で判断力が求められます。

  • スタッフの急な欠勤による欠員対応
  • 顧客対応の優先順位
  • 販促やサービス改善の最適化
  • スタッフの育成や評価

美容室やネイルサロンのように1対1での顧客対応が必要な業態では、スタッフが欠勤した場合、別のスタッフの配置や顧客への連絡など早急な判断と対応が必要です。

また顧客トラブル対応と予約の顧客来店が被った場合の優先対応への判断、販促にかける費用やタイミングの判断も店長にゆだねられます。

スタッフの成長に適した育成プログラムの立案や実行、評価も店長の判断力が必要とされます。

店長の店舗業務

店長にどこまでの店舗業務を任せるかは経営者次第で異なりますが、一般的に店長が担う店舗業務は以下の通りです。

  • 人材管理
  • 予算管理
  • 顧客管理
  • 仕入れ管理
  • コンプライアンス遵守に向けた取り組み

各業務の内容や取り組む際の注意点について解説します。

店長に業務をゆだねる際の参考にしてください。

人材管理

人材は企業がもつ資源のひとつで、組織に直接的に利益をもたらす重要な役割を担っています。スタッフの個々の能力を見極め、伸ばしていくことも人材管理の責務といえるでしょう。

人材管理は主に以下の内容に分かれます。

  • 人材採用
  • 育成プラン作成、実行
  • 配置(シフト管理)
  • 評価
  • モチベーション管理

店長が行う人材管理は採用、育成、そして個々の能力に応じた店舗や業務への配置が主なものとしてあげられます。また一定期間の就業後に、勤務態度や実績などを鑑みて、評価を行うのも店長の業務です。

またこまめにスタッフの悩みや考えを聞くようにするなど、モチベーション管理も大切です。苦手と思う業務もサポートによって本領発揮し、強みに変わることもあります。

とりあえず興味が湧いたことに挑戦していくと、失敗を繰り返すなかでとくに苦手だったり、悔しいと感じたりする技術分野や仕事が出てくるんです。それを改善することがやりがいや目標になると思います。実際に僕は、苦手だった縮毛矯正の上達を目標にして練習を繰り返してきた結果、強みとして打ち出すほどの得意分野になり、やりがいに変わっています。

引用:モアリジョブ|equal 船橋店 スタイリスト 秋山亮さん

予算管理

予算管理とは作成した予算を達成に向けて適切に管理することです。

店舗運営で利益を出すためには予算管理が必要不可欠であり、店舗の発展に直結します。

数字で管理することで進捗が一目でわかり、目標達成にむけた取り組みや修正がしやすくなるメリットがあります。

店長が管理する予算は「売上予算」「原価予算」「経費予算」「利益予算」の4つです。

  • 売上予算:年度始めに決定した売上目標の進捗の管理
  • 原価予算:商品の仕入れや原材料費などの予算の管理
  • 経費予算:人件費や家賃など事業に必要な経費の管理
  • 利益予算:事業から得られる利益の目標値を設定・管理

なお、予算管理はPDCAのサイクルで実行します。

3.【デザイナーズさんに作成依頼】参考PDCAサイクル

予算編成(P:Plan)

立てた予算に基づいて実行(D:Do)

年度末に実績を分析し、予算との差異の原因を特定(C:Check)

実績をもとに予算管理を改善(A:Action)

期首に予算を立て、期末には分析、次の期に向けた改善策の立案を繰り返すことによって、利益の最大化を図れます。

顧客管理

顧客管理も大切な店長業務のひとつです。

顧客管理とは顧客の情報を管理し、店舗の売上や顧客満足度の向上に役立てるためのものです。

顧客の個人情報や来店状況、購入品、利用サービス履歴を一元化し、分析することで顧客ニーズを汲み取り、より高い満足をしてもらえるよう商品やサービスの改善につなげます。

既存顧客の満足度が上がれば、紹介や口コミ、SNSを通じて新規顧客の獲得も期待できます。

アルティウスリンク株式会社の調査によると、約66%の人が「商品の購入時はSNSの評価を気にする」と回答しています。

▼商品購入時はSNSの評価を気にするか?(n=3,714/単一回答)

4.商品購入時はSNSの評価を気にするか?

年齢が低いほどSNSの評価の影響を大きく受けており、現代ではSNSの評価が新規顧客獲得に欠かせないことがわかります。

なお、顧客管理を行う際に気を付けるべきなのが個人情報の取り扱いです。

個人情報とは指紋や声紋、マイナンバー、運転免許証番号など、個人に割り振られる公的な番号を指します。

単体では個人を特定できない生年月日や電話番号も、氏名など別の情報との組み合わせで個人特定が可能になります。

個人情報を取り扱うことが多い店舗ビジネスでは、個人情報保護法に基づいた正しい顧客管理を徹底し、情報漏洩に細心の注意を払いましょう。

個人情報の取り扱いルールの詳細は以下サイトをご覧ください。

「個人情報保護法」を分かりやすく解説。個人情報の取扱いルールとは? | 政府広報オンライン 

仕入れ管理

在庫管理はスタッフ全員で行いますが、どこの業者から何を仕入れるかの権限は店長以上の役職者に任せるほうが良いでしょう。

仕入れる商品はスタッフの意見や顧客ニーズだけでなく、利益率も考慮して仕入れを決定しなくてはならないためです。

また温度管理など商品管理に気を使う必要のある製品については、劣化や期限切れなどで損失になる可能性も高いため、仕入れ決定は慎重に進めなくてはなりません。

商品は滞留し劣化するリスクがありますが、顧客満足度や売上アップのためにはある程度のリスクは許容の範囲と捉えることも大切です。

ただ、新商品や新たな取引先の選定は店長だけにゆだねるのではなく、経営者や上司も交えて決定するようにしましょう。

コンプライアンス遵守に向けた取り組み

コンプライアンスとは「法令遵守」を意味します。

企業などが法令や規則を守ることを指しますが、一般的には法令遵守だけでなく企業倫理や社会的規範に従い、公平公正の業務遂行も含まれます。

コンプライアンスが重視されるようになった背景には企業不祥事の増加やSNS、インターネットの普及があります。

不正請求や個人情報の漏洩、パワハラなど、社会や消費者に対する信用を失墜するコンプライアンス違反が頻発し、コンプライアンス違反の対策が強化されるようになりました。

コンプライアンス違反は本人の自覚なく発生する場合もあるため、コンプライアンス研修を実施し、全員がコンプライアンスを理解することが重要です。

コンプライアンス研修で取り扱う内容は多岐に渡りますが、主に以下のテーマで行われます。

  • 情報漏洩や情報セキュリティー
  • 社内ハラスメントに関する意識
  • 不正経理関連
  • 適切なSNSの扱い方
  • 著作権や景品表示法など、法令違反関連

ひとりのスタッフの少しの油断や軽率な行動が、企業や店舗に莫大な損失を与えます。

コンプライアンス研修を実施し、普段の業務を通してスタッフがコンプライアンスを遵守できているかの確認もあわせて行いましょう。

とはいえ、コンプライアンスを理解するには法令や罰則に対する知識も必要です。店長に負担になるようであれば、外部への依頼もおすすめします。

店長と店舗責任者の違い

個人経営や小規模の店舗運営では店長と店舗責任者の違いはなく、店長が店舗責任者を担う場合が多いです。

しかし大規模チェーン店のように組織が大きい場合、各店舗の店長とは別に店舗統括の責任者として「店舗責任者」がいる場合があります。

店舗責任者とは店舗運営全体の指揮や取りまとめを行う立場にあり、各店長の管理や指導も担う役割をもつ役職者です。

店長が担う人材管理や予算管理に加え、戦略的な店舗運営や運営方針の策定など、店舗経営に関する能力も必要とされます。

今の店長にスキル不足を感じるなら外部研修がおすすめ

スキル不足だと感じても人材不足などの理由で、今いるスタッフの中から店長を選ばなくてはならない場合があります。

今の店長にスキル不足を感じているなら、外部研修の検討をおすすめします。

外部の店長研修では売上管理やマネジメント能力、店舗運営に関する基礎知識などを学べます(※)。

店舗展開が進めば、指導や教育が得意な人材を採用し、研修を内製化することも可能ですが、規模が小さい場合、店長を育てるための研修を内部で行うのは難しいでしょう。

店長教育まで手が回らない経営者は外部の店長研修を活用し、店長のスキルアップを目指しましょう。

※研修を行う企業やプログラムによって異なる

新しく店長候補を採用するなら、経営者思考をもつ人材を!

将来的に店長として活躍してもらいたいなら、経営者思考をもつ人材の採用をおすすめします。

リジョブの調査によると美容業のような特定のスキルを必要とする場合、求人掲載から採用まで約1カ月以上かかっていることがわかりました。

さらに転職者は在職中に転職活動を行う人も多く、採用から実際に入社するまでは平均40日との調査結果が出ています。

5.採用から入社するまでの平均日数

入社した人材が業務に慣れ、店長へステップアップするためにはさらなる日数を必要とするため、すでに店長や副店長を経験した経営者思考をもつ人材の採用がおすすめです。

店長や副店長の経験を積んだ人材を採用するには、経験に相当する給与の提示やターゲットに響く条件など掲載内容が重要なポイントとなります。

採用を成功させるための必須ポイントは、以下のホワイトペーパーで詳しく解説しています。

まとめ

本記事を総括すると、次のとおりです。

  • 店長には「コミュニケーション能力」「マネジメント能力」「判断能力」の3つのスキルが必要
  • 店長の主な業務は人材・予算・顧客・仕入れなどの管理業務、コンプライアンス遵守に向けた取り組み
  • 今の店長にスキル不足を感じたら外部研修でスキルアップを!
  • 人材採用や店長育成には時間を要するため、経営者思考をもつ人材採用がおすすめ
田中 久美(Tanaka Kumi) プロフィール画像
執筆者情報
田中 久美(Tanaka Kumi)
温泉施設や大手スポーツクラブのエステティックサロン、大型リラクゼーションサロンにて、エステティシャンやアロマセラピストとして勤務。エステティックサロン勤務時代は人材採用や育成、店舗管理なども担当。 その後独立し、現在は完全貸切のアロマリラクゼーションサロンを運営。約20年の知識や技術を活かし、集客や経営、接客などを自身で行う。約7~8割がリピート顧客で、30代から50代の女性を中心に指示を得ている。