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店舗管理の業務内容は?課題や対策を解説

店舗管理の業務内容は?課題や対策を解説

店舗管理業務を担っている人の中には「業務量が多くて大変」「どうすれば改善できるのかわからない」と感じている人も多いのではないでしょうか。

店舗管理業務には業界問わず共通の課題があり、その中には自社の状況と合致しているものもあるでしょう。自社の課題を認識し、対策を講じれば、スムーズな店舗管理を実現できます。

そこで本記事では、店舗管理の業務内容や店舗管理者が抱えがちな課題と、その対策について解説します。

店舗管理とは?

店舗管理とは、小売店や飲食店などの店舗の経営状況を把握し、運営していくことです。店舗を経営していくうえで欠かせない役割であり、店舗の売上や利益の向上を目的としています。売上管理だけでなく、勤怠情報や予算管理、業績分析など、さまざまな業務が含まれています。

店舗管理者と店長の違い

店舗管理者は店長とは異なります。店長は店舗における責任者であり、シフト作成や業務指示、接客などの日常業務が主な役割です。一方、店舗管理者は売上管理や従業員の育成、在庫管理、接客サービスの品質管理などの経営業務が主な役割となっており、役割や責任が異なります。

ただし、店舗管理者と店長は明確に定義されているわけではありません。例えば、オーナー店長で店舗管理と店長の双方の役割が求められているケースもあります。

店舗管理の具体的な業務

店舗管理の具体的な業務として、以下の6つが挙げられます。

  • 売上の管理
  • 顧客の管理
  • 従業員の管理
  • 仕入れや在庫の管理
  • 店舗運営の管理
  • Web上の店舗情報の管理

ここでは、それぞれの業務について解説します。

売上の管理

店舗管理では、日々の売上を記録して管理するとともに、その結果を分析し、改善につなげることが求められます。例えば以下の観点から、「いつの時間帯に売上が高いか」「どの製品・サービスが人気なのか」などの傾向を分析します。

  • サービス
  • 時間帯
  • 曜日
  • イベントの有無
  • 季節

分析した結果をもとに、効果的なプロモーション戦略やサービス改善、価格設定、スタッフ配置などを決定します。

売上分析に用いる具体的な手法や注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。

顧客の管理

顧客情報を集めている店舗では、顧客の情報を収集し、分析することも重要です。以下の要素をもとに「どのような顧客が来店しているのか」「どのようなサービスが購入されているのか」「来店に対する購入率やリピート率はどれくらいか」など、さまざまな観点から顧客ニーズを分析し、アプローチする必要があります。

  • 年齢
  • 性別
  • サービス
  • 来店頻度
  • 購入頻度
  • リピート率

分析した結果をもとに、サービスや発注数の見直しを行い、利益向上につなげます。

従業員の管理

従業員のシフトや労働時間の管理はもちろん、人材育成も店舗管理の仕事です。厚生労働省の調査によると、主に美容室を利用している人がお店を決めている理由として、「行きやすさ」に次いで上位を占めているのが「スタッフの技術」や「スタッフやお店の雰囲気」でした。

1.普段、主に「美容室」を利用している方の利用するお店を決めている理由(上位7項目)

そのような要素を満たす店舗にするためには、スタッフの教育が欠かせません。また、適切な人員配置や労働環境の整備、スタッフのモチベーション管理、採用も店舗管理に求められる業務です。

スタッフのパフォーマンスに関する分析は以下の記事で詳しく解説しています。

仕入れや在庫の管理

商品の仕入れから販売までのプロセスの管理も店舗管理の仕事です。仕入れ先の選定や仕入れ値の見積りをして仕入れ値を抑えれば、ひとつの商品に対する利益が上がります。日々の店舗在庫数や販売数を把握し、仕入れる個数を抑えれば、在庫数が減るため、店舗全体の利益が上がります。

これらを怠った場合、たとえ売上があったとしても利益が出づらくなるため、良い経営とはいえません。店舗管理では、無駄な仕入れを減らし、効率的に販売することが基本です。

店舗運営の管理

前述した厚生労働省の調査によると、美容室を利用している人がお店を決めている理由として「店内が清潔・快適であるから」という回答がありました。清掃や備品の手入れなどの、顧客が自社のサービスを利用したいと思う環境を作ることも必要です。

また、安全・衛生管理や店舗の契約に関する業務も、店舗管理の仕事です。技術や特別なサービス、売上を管理するだけでなく、「働く場所」や「サービスを利用する場所」を管理する仕事も求められています。

Web上の店舗情報の管理

近年では、店舗情報をGoogle検索やSNSで入手するのが当たり前になってきました。そのため、店舗管理にはWeb上の店舗情報の管理も求められています。店舗の営業日時はもちろん、顧客が求める情報や提供したいサービスの情報を掲載することが重要です。

注意したいのが更新頻度で、例えば1か月情報を更新していない場合、顧客は「情報が古いかもしれない」と思い、違うお店を探す可能性があります。自社の評判や来客数を落とさないためにも、自社ホームページやSNSだけでなく、店舗情報が集まるポータルサイトや、顧客が投稿するレビューサイトなども確認する必要があります。

店舗管理者が抱えがちな課題

前章で紹介したように、店舗管理にはさまざまな業務があります。これらの業務をすべて1人で行うことは簡単ではありません。そのため、店舗管理者の多くは共通の課題を抱えています。ここでは、店舗管理者が抱えがちな課題について解説します。

分析や改善ができていない

売上管理は、店舗管理の業務の中でも優先順位が高い業務です。売上結果をもとに分析や改善を進めていきます。しかし、売上の入力に時間を取られ、分析や改善ができていないケースは珍しくありません。

分析や改善に手が回らないことにより、仕入れや在庫の管理もままならず、売上の機会損失や在庫管理コストの増加といった問題が発生するケースもあります。競争力の低下や顧客満足度の低下を引き起こし、経営難に陥る可能性もあるでしょう。

特に複数の店舗を経営している場合、影響がさらに膨れ上がるため、注意が必要です。

従業員教育や採用ができていない

従業員教育は、顧客満足度や店舗の将来に影響する重要な業務です。しかし、現時点で問題なく運営できていることを理由に、従業員の教育に十分な時間やリソースが割けないケースは少なくありません。

四日市商工会議所の産業活性化委員会が実施したアンケートによると、人手不足が「経営」に与えている影響として、以下のものが挙げられました。

2.人手不足が「経営」に与えている影響について、具体的な影響や影響の恐れ

機会損失や技術・ノウハウの伝承への影響が多いことがわかります。考えられる事例として、業務が属人化している場合、その業務をほかの従業員に作業移行できず、従業員が退職した際に業務に支障をきたす可能性があります。

また、採用もしなかった場合、以下のことが想定されます。

  • 一人ひとりの業務内容に変化が起きず従業員のモチベーションが低下する
  • 事業を拡大できず、売上が停滞する
  • 従業員の負担が増加する

モチベーション低下や負担増加は、人材流出につながる可能性もあります。教育や採用は、店舗の技術や雰囲気を活性化するためにも欠かせない業務といえます。

マニュアル化が進んでいない

店舗運営における業務効率化において、業務フローのマニュアル化は欠かせないものです。しかし、業務が属人化し、マニュアルが十分に整備されていないケースは珍しくありません。

株式会社プロジェクト・モードの調査によると、自社の業務マニュアルについて「充実していない」と回答した割合は半数以上でした。

3.自社の業務マニュアルの充実度について

また、フィンテックスの調査によると、業務マニュアルの更新頻度は以下のとおりでした。

4.普段使っている業務マニュアルの更新頻度

一方、わかりやすいマニュアルのために重要なものや、現在使用しているマニュアルで不足していると思う項目として最も多い回答は、「最新の状態がアップデートされていること」でした。

その上で、「今後もマニュアルを活用したいですか?」の質問では、73.2%が「活用したい」と回答しました。

このように、業務マニュアル自体は求められているものの内容の充実度や更新頻度が追いついていないことがわかります。マニュアルが整備されていない状態で新しい従業員が入った場合、育成がスムーズに進まず、業務に支障をきたす可能性も考えられます。そのため、マニュアル化だけを目的とせず、その内容の充実度や定期的な情報更新が重要です。

勤怠管理に時間を取られている

従業員数そのものが多い店舗や、従業員の勤務形態が多岐にわたる店舗の場合、勤怠管理に時間が取られてしまうケースがあります。特に、タイムカードや紙の出勤簿などで記録している場合、入力作業の負担が大きいだけでなく、入力ミスや不正が発生する恐れもあります。

株式会社モニタスの調査によると、勤怠管理ツールの導入により便利になった点として「管理をしやすい」の回答が39.2%と、最も多い結果でした。

勤怠管理が疎かになった場合、残業時間の超過や割増賃金の不足など、労働基準法違反につながるリスクも高まります。コア業務に専念する時間の確保や労働基準法違反のリスク削減のためにも、勤怠管理のデジタル化は欠かせないものといえるでしょう。

本部やスタッフとの連携が取れていない

店舗管理には、店舗管理者とスタッフや本部との連携が欠かせません。しかし、コミュニケーション不足により情報共有や意思共有ができておらず、業務効率化や問題解決に支障をきたすケースは珍しくありません。

本部への報告事項や本部からの情報が多く、店舗管理者にとって大きな負担になっているケースもあります。株式会社ネクスウェイの調査によると、店舗への連絡で特に本部に意識してもらいたいことへの回答の上位3つは、以下のとおりでした。

  • 今よりも分かりやすい連絡をしてほしい:35.5%
  • 自店に不要な情報を送らないでほしい:33.0%
  • 本部内の部署間の情報共有を密にしてほしい:33.0%

この回答結果からも、本部との連携で何らかの問題を抱えていることがわかります。本部やスタッフとの連携不足は、スタッフのモチベーション低下や運営効率の低下につながる恐れがあるため、効率化を進めたい業務のひとつといえるでしょう。

店舗管理業務の課題を解決するための対策

店舗管理業務の課題を解決するための対策として、以下が挙げられます。

  • 各業務をマニュアル化する
  • 人材の確保や育成に注力する
  • 管理システムを導入する
  • キャッシュレス化の導入
  • 本部と情報共有する仕組みを作る

ここでは、それぞれの対策について解説します。

各業務をマニュアル化する

各業務をできる限りマニュアル化すれば、業務の属人化を削減できます。教える時間を削減できるため作業移行もしやすく、緊急時や人材の入れ替わりにも対応できるでしょう。マニュアルは、文書だけでなく、動画や音声の活用も有効です。

ハーブピーリング専門店「EMILUCA(エミルカ)」では、マニュアルに対する方向性を示し、有効に活用しています。

マニュアルを作成するうえで共通させたのは「難しくない」こと。経験者だけではなく未経験者も学ぶことを考えていたので、いかに分かりやすく簡易的にできるか、試行錯誤の繰り返しでした。

もちろん直営店でも同じマニュアルを使っていますが「このマニュアルの●ページを見てください」と伝えるだけで社員やオーナーはその問題を解決することができる仕組みにしているので、何か問題ごとや不明点などが出てきた場合もこのマニュアルが役立ちます。技術以外でお客様の対応に迷ったときも、その場面ごとに必要なことや言い回しを掲載しているので、直営店舗でもFC店舗でも関係なく、一人ひとりに任せることができるんです。

引用:モアリジョブ|EMILUCA(エミルカ) 経営者 佐々木沙織 さん

人材の育成や採用に注力する

従業員教育や採用ができていない場合、経営に大きく悪影響を及ぼすのは前述したとおりです。従業員の教育ができれば作業移行がスムーズにでき、柔軟な人材配置もできます。

KANOW GROUPでは、スタッフが自分に合った働き方ができ、成長につながるような仕組み作りに取り組んでいます。

スタッフたちが自分なりの働き方を確立できるように、役割分担やポジションをたくさん用意していきたいという想いが会社としてあるんです。今、ちょっとずつ形にしている途中なんですけど、各スタッフがある程度裁量を持って働けるような仕組みにしたいなと。

引用:モアリジョブ|KANOW GROUP 代表 桐山弘一 さん

また、組織として成長するためには、自社に適した人材の獲得も欠かせません。そのためには、採用ターゲットを明確にしたうえで募集をかけることがポイントです。

リジョブでは、採用成功のためのノウハウを提供しています。手順を詳しく知りたい場合は、無料でダウンロードできる下記の資料をご覧ください。

管理システムを導入する

システムを導入すれば、事務的な作業の負担を軽減できます。

売上管理や予約管理など事務的な作業は時間が取られがちですが、店舗管理に求められるのは情報入力ではなくデータ分析と改善です。

そこで入力や分析の労力をシステム化すれば、作業時間が削減でき、改善策を考える時間を捻出できます。システム化できる業務として、以下のものが挙げられます。

  • 売上入力や分析
  • 顧客情報の入力や分析
  • 勤怠管理
  • 従業員情報の管理
  • 仕入れや在庫の入力や管理
  • 予約管理

ただし、ただシステムを導入すればよいわけではなく、自社に適したシステムを導入することが重要です。「港北マッサージ 楽鎮接骨院」では、予約管理をネットでの自動予約にし、業務改善につなげました。

元々当院は、電話予約の比率がかなり高かったです。土日の忙しい時間帯だと、1時間に20回ほど電話をいただくのですが、当院は受付スタッフを置いてないため、施術者が手分けして電話対応をしていました。

施術者も大変ですが、なによりお客様から手を離すことになってしまうので、お客様にもご迷惑をおかけしてしまっていました。リザービアを導入して、ネットでの自社予約を推進してからは、忙しい時間帯でも電話が1/4くらいに減っており、助かっています。

引用:リザービア|港北マッサージ 楽鎮接骨院 スタッフ 柴田 啓嗣 さん 戸津川 弦 さん

キャッシュレス化の導入

キャッシュレス決済を導入すれば、売上計上を自動化できるため、売上の入力作業が不要になります。システムによっては、売上管理のための機能が搭載されているものがあり、POSレジと連携すれば、複数店舗の売上管理も容易です。顧客情報も入手できるため、年齢や利用したサービス、リピート率などのニーズの分析にも活かせます。

株式会社オオクシでは、POSレジを導入し、来店客・対応者・提供したサービス内容、運動会やお祭りなど地域の行事等をデータ化しました。顧客のニーズを把握するとともに、サービス提供に関する課題を抽出したうえでスタッフのスキル向上に取り組み、リピート率85%超につなげています。

参考:効率性向上に資する取組事例|厚生労働省

本部と情報共有する仕組みを作る

本部から店舗への指示や連絡頻度が多い場合や連絡手段が統一されていない場合、コミュニケーションに取られる時間が長くなります。情報量が多ければ、情報漏れや認識間違いが発生する可能性もあるでしょう。

コミュニケーションツールを導入し、ルールを整備したうえで運用すれば、コミュニケーションにかかる時間を削減できます。スタッフとのミーティングを定期的に開催し、情報共有できる機会を設けるだけでも、情報漏れや認識間違いの防止につながるでしょう。

介護施設「グッドタイムホーム」では、会議を開いて話し合う習慣をつけることにより、意思疎通を図っています。

すぐに会議を開いて話し合える体制が整っています。最近ですと、新しく入ってきたご入居者さまの情報共有で少し気になった点があったので、そのことについてみんなで話し合いました。今はパソコンを介して意見のやり取りもできますが、直接顔を合わせて意見を出し合うほうが各々の気持ちが伝わり、モチベーションをアップする意味でも効果的だと思っています。

引用:モアリジョブ|グッドタイムホーム スタッフ 德田里沙 さん

まとめ

店舗管理とは店舗の経営状況を把握し、運営していくことです。具体的な業務として、売上や顧客、従業員、仕入れ・在庫の管理などが挙げられます。しかし、これらの業務をすべて1人で行うことは簡単ではなく、店舗管理者の多くは以下の課題を抱えています。

  • 分析や改善ができていない
  • 従業員教育や採用ができていない
  • マニュアル化が進んでいない
  • 勤怠管理に時間を取られている
  • 本部やスタッフとの連携が取れていない

本記事を参考に、これらの課題解決に取り組むことにより、スムーズな店舗経営が可能です。自社の状況を把握したうえで、必要な対策を講じましょう。

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執筆者情報
Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。