令和4年の雇用動向調査を確認すると、「医療、福祉」分野に所属する鍼灸師の離職率は他業種に比べ平均的といえます。しかし鍼灸師一人当たりにかかる採用コストは20万円以上と他業種に比べ高いため、小数であってもスタッフ鍼灸師が離職すると想定外の支出になる恐れがあります。
とくに小規模な鍼灸院や整骨院の場合、採用コストがかさむと経営を圧迫するため、なるべく離職を防ぎたいと考えるケースも多いのではないでしょうか。
本記事では、鍼灸師の離職率について雇用動向調査をもとに紹介します。さらに鍼灸師が離職する理由や離職を防ぐための方法についても詳しく解説するので、最後までご覧ください。
鍼灸師の離職率
雇用動向調査 によると、鍼灸師が属する産業区分「医療、福祉」の離職率は13.3%です。
上記のグラフを見ると、他の産業と比べ平均的な離職率といえるでしょう。「医療、福祉」には鍼灸師以外にもさまざまな職種が含まれるため、厳密には鍼灸師に限定した離職率とはいえません。そのため上記で紹介した離職率13.3%は、ひとつの目安として考えてください。
離職が鍼灸院に与える影響
スタッフ鍼灸師の離職が鍼灸院の経営に与える主な影響は、次のとおりです。
- 売上げの減少
- 採用コストの増加
- 人手不足による職場崩壊
- 顧客満足度の低下
各項目について解説します。
売上げの減少
鍼灸師が離職すると、その人が担当していた患者さんが別の鍼灸院に通うようになったり、施術で対応できる患者数が減少したりすることがあります。
さらに新しいスタッフが入るまでの期間、残ったスタッフに負担がかかり施術効率が下がるため、患者数が減少し、それが直接的な売上げ減少につながります。常連患者が離れるリスクも高まり、売上げの回復が長期的に困難になることもあるため注意が必要です。
採用コストの増加
新たなスタッフを採用するには、コストがかかります。たとえば 「リジョブ」の資料 で紹介した事例をもとに、美容・ヘルスケア関連職の採用単価の相場を示すと次のとおりです。
美容・ヘルスケア業界の採用単価(リジョブ調べ)
職種 |
1人当たりの採用単価 |
---|---|
鍼灸師 |
22万1500円 |
美容師 |
17万3910円 |
アイリスト |
14万8800円 |
ネイリスト |
7万7633円 |
エステティシャン |
7万6800円 |
リラクゼーション |
7万6544円 |
美容師やアイリスト、鍼灸師は国家資格が必要な職種なので全体的に採用単価が高い傾向にあります。なかでも鍼灸師は、他と比べてとくに採用単価が高い職種です。
以上は特定の店舗に限定した採用単価であって、必ずしもその通りになるとは限りませんので、ひとつの目安として参考にしてください。
また人材を採用するためには、求人広告の掲載費以外にも、面接の時間や労力、採用後の研修コストなども必要です。また採用がすぐに成功するとは限らず、適切な人材を見つけるために複数回の採用活動を行うことがあるため、さらにコストが増加する可能性もあります。
鍼灸院は小規模な事業所も多いので、なかには採用コストが大きな経済的負担となるケースもあるでしょう。
リジョブでは採用の費用対効果を高める方法について解説した資料を準備しました。興味がある方は、ぜひ無料でダウンロードしてご覧ください。
人手不足による職場崩壊
スタッフの離職が続くと、鍼灸院は深刻な人手不足に直面します。人手不足に陥ると、残ったスタッフへの業務負担が増加し、モチベーションの低下やストレスの増加を招くことも多いです。
このような現象は「連鎖退職」とも呼ばれており、職場崩壊につながる要因のひとつとなっています。職場崩壊の状態が続くと、いずれは倒産につながるケースもあるため注意が必要です。
帝国データバンクの調査 によると、人手不足が原因で倒産する企業の数は増加傾向にあり、2023年には過去最多の206件を記録しました。
労働力不足にある日本の現状を加味すると、離職者数が増えた場合に、すぐに新しい従業員を雇用できるとは限らないため、今後も人手不足による企業の倒産が増えることが予想されます。
人手不足による職場崩壊と、その対策については次の記事で詳しく解説しています。
顧客満足度の低下
鍼灸師の離職は、顧客満足度にも直接的な影響を与えます。離職したスタッフの担当患者との信頼関係が断たれることに加え、新しいスタッフが育つまでの期間、患者への対応が十分に行き届かなくなることがあります。
さらに予約が取りづらくなったり、施術の質が一時的に低下したりすることで、患者が他の鍼灸院や整骨院に流れることもあるでしょう。このような顧客満足度の低下が続くと、口コミや評判にも影響を与え、長期的な経営リスクが高まります。
鍼灸師が離職する理由
鍼灸師が離職する主な理由を挙げると次のとおりです。
- 給与に不満があるから
- 他業種に転職するから
- 開業するケースが多いから
- 人間関係が負担になるから
- プライベートな理由で辞める必要があるから
離職対策をするためには、まずは理由を把握することが大切です。自院に当てはまる項目がないかどうかを確認してみてください。
給与に不満があるから
鍼灸師が離職する理由として、まずは給与に対する不満が挙げられます。整骨院で働く鍼灸師のなかには、給与が上がらないと不満を抱き、退職を検討するケースがみられます。
整骨院にパートで勤める鍼灸師です。
昨年の7月から株式会社形態の整骨院に勤務しています。結構ブラックな?職場です。
1年経っても職場に馴染めないし時給も上がらないので、今年の6月末から退職を考え始めました。
引用: Yahoo!知恵袋
実際に鍼灸師の給与が低いことを示すデータもあります。 東洋療法学校協会が行ったアンケート調査 によると、約半数のはり師が月の給与が20万円未満という結果でした。
▼はり師の月収
以上ははり師に関するデータですが、はり師の多くは同時にきゅう師も取得して鍼灸師になります。そのため、以上のはり師に関するデータは鍼灸師に当てはめても差し支えありません。
厚生労働省が運営するjobtagに掲載されている鍼灸師の平均月収は26.3万円(令和5年度時点)なので、半数以上が平均よりも5万円以上も下回っていることになります。
以上から、期待していた給与よりも少ないと感じる鍼灸師が多いと考えられます。給与が少ないことに対する不満が、離職につながっているようです。
他業種に転職するから
鍼灸師の特徴のひとつに、他業種で働く人が多い点が挙げられます。 東洋療法学校協会が行ったアンケート調査 でも、44%にあたる回答が実務に従事していない理由として、「他業種への勤務」を挙げています。
▼鍼灸師が実務に従事していない理由
たとえば鍼灸師を辞めて電気工事士として働いている事例があります。この事例の場合、鍼灸師として働いていた際に過重労働が原因でライフワークバランスが崩れて、他業種への転職を考えるようになったそうです。
以前は整骨院で鍼灸師をやっていました。昨年退職し、今は電気工事士として働いています。転職自体はずっと考えていましたが、やめるやめると言いながらズルズル働いていたんです
(中略)
鍼灸師時代は朝7時半に出勤して、帰宅は毎晩22時の生活をしていました。土曜日は午後まで働いて、完全休日は日祝のみ。土曜も半休とはいえ、仕事が終わると社長との飲みやサウナに付き合わされ……いつも終電帰宅でした。そんな生活を送っているうちに、仕事と生活のバランスが取れなくなってしまったんです
引用:基本給7万円の医療系からインフラ系へ転職。キツイ現場仕事でも「幸せ」なワケ| 日刊SPA!
鍼灸業界は従来、雇用者と従業員が師弟関係を築く徒弟制度のもとで働く文化が根付いていました。そのため、現在もその文化が残っている鍼灸院や整骨院の場合、過重労働につながりライフワークバランスを整えづらくなるケースもあるでしょう。
開業するケースが多いから
鍼灸院は比較的低コストで開業できる業種です。そのため開業が離職理由となるケースも多いでしょう。たとえば10カ月で鍼灸院を退職して、出張専門の鍼灸院を立ち上げた事例もあります。
私は最初に勤めていた鍼灸院を退職したあと、次の日には出張という形で開業をしました。3人のお客さまからのスタートと、決して大きな一歩ではありませんでしたが、店舗を構えない形であればほとんどリスクがないまま開業することができるんです。その後マンションの一室、テナントなど小規模治療院を2年ごとに開業する経験をしてきて、小規模治療院の可能性を感じていました。
引用: モアリジョブ |鍼灸師 鈴木むつよさん
通常事業を始める場合、金融機関から借り入れるケースが多いのですが、この鍼灸師の場合、借金をせずに事業をはじめられたようです。また、独立を考えたきっかけのひとつに職場がブラックだった点も挙げられていました。
他の理由としては、家族との時間を大切にしたいというプライベート志向が独立開業につながることもあります。
家族との時間をもっと大切にしたいと思ったのが、きっかけです。以前に勤めていた整骨院は、技術について学ばせてもらいましたし、感謝しかないのですが、家族との時間を取りづらいところがありました。忘れられないのは、1人目を妊娠した際に、自宅で流産してしまったときのことです。本来であれば、流産してしまった子どもと一緒に私も病院に行きたかったのですが、その日、私の予約が入っていてどうしても休むことができなくて。流産した妻を1人で病院に行かせるという酷なことをさせてしまいました。
そこから自分は何のために生きているんだろうということを考えてしまって。家族のために独立開業をしようと決意したんです。
引用: モアリジョブ |「BODY REMAKER鍼灸治療院」代表 鍼灸師 種市敢太さん
以上のように、鍼灸院は低コストで開業できるため、職場環境が悪かったり、出産や子育て、親の介護などのライフイベントが訪れたりすることで独立開業を検討するケースが多いと考えられます。
人間関係が負担になるから
人間関係が負担で職場を辞めるケースが多いのは、どの業種にも共通してみられる傾向です。 HR総研の調査 によると、上司との人間関係が原因で職場を辞める従業員が40%近くに上ることがわかりました。
▼職場を辞める理由
同僚・先輩・後輩などの上司以外との人間関係が離職の原因となることも4番目に多く、いかに人間関係が離職に影響を与えているのかがわかります。
鍼灸師の場合、部署異動や転属などがあまりなく、同じ店舗内で働くことが多いです。そのため同じ店舗内に合わないスタッフがいると、やめる以外に人間関係の負担を避けるすべがないといえるでしょう。
またカウンセリングを実施するため、患者さんとも密にコミュニケーションをとります。職場以外でも患者さんとやりとりすることがあり、人間関係に疲れて離職するケースも多いと考えられます。
プライベートな理由で辞める必要があるから
東洋療法学校協会が行ったアンケート調査 によると、プライベートな理由で鍼灸施術を辞める鍼灸師は、とくに30代前半に多いようです。
▼鍼灸施術に従事していない理由として、結婚・出産・家事手伝いと回答した人の割合(年齢別)
年齢別 |
回答の割合 |
---|---|
21~24歳 |
6.1% |
25~29歳 |
17.2% |
30~34歳 |
34.3% |
35~39歳 |
10.3% |
40~49歳 |
5.6% |
50歳以上 |
2.3% |
以上の結果を加味すると、結婚や出産などのライフイベント後でも鍼灸師を続けたり、復帰できたりするように職場環境を整えると、鍼灸師の離職を防げることになります。
鍼灸師の離職率を抑える方法
鍼灸院を維持するためには、優秀な鍼灸師が長く働き続けることは重要です。離職率が高いと、採用や研修に多くのコストと時間がかかり、さらに施術サービスの質が低下してしまう可能性もあります。
鍼灸師が安心して働ける環境を整えることが、離職率を抑える鍵です。本項では、離職率を抑えるための具体的な方法を4つの観点から解説します。
労働条件を整える
鍼灸師が長く働き続けるためには、まず労働条件を整えることが重要です。たとえば給与や労働時間、休暇制度などが不十分であれば、スタッフは疲弊し、やがて離職を考えるようになります。
とくに給与が低い場合や、残業が常態化している場合は、モチベーションの低下につながるため注意しましょう。
そのため鍼灸師の頑張りを正当に評価し、成果に応じた昇給や賞与を行うことが大切です。また、定期的な休暇の確保や働き方の柔軟性も重要です。労働環境の改善は、鍼灸師のモチベーション向上や職場定着に大きく寄与します。
実際に離職率0%を達成した鍼灸サロン「Warmy」は、離職率が低い理由について次のように答えています。
労働環境の整備や、高待遇を実現したからだと思っています。うちのサロンでは月に9日の休日、勤務時間内の研修、有給消化率100%推奨など、プライベートと仕事をきっちり分けた働き方ができます。給与面では30万円以上を目指すことも可能です。
引用: モアリジョブ |鍼灸サロン「Warmy」 代表 御領原圭佑さん
研修制度を整える
次に、鍼灸師のスキルアップをサポートする研修制度を整えることが離職率低減の大きなポイントです。
鍼灸師が経験や知識を積み重ねると、技術力が高まり、患者との信頼関係を築けます。しかし日々の業務のなかでスキルアップの機会が限られると、成長に限界を感じて、患者との信頼関係を築けずに離職を考えることがあります。
患者指導をする機会の多い鍼灸師の場合、患者と信頼関係が築けないと、計画通りに治療を進められないためストレスを抱えることもあるのです。
そこで定期的な技術研修や外部の講習会への参加を促進し、スキルを高める場を提供することで、鍼灸師自身がキャリアアップを実感できます。成長機会があると自身にもつながり、将来への希望が持てるため、離職を防ぐことにもつながります。
個別面談を行う
定期的な個別面談を実施すると、スタッフとして働く鍼灸師一人ひとりの悩みや希望を把握できるため、離職につながる要因に対して早めに対策できます。
とくに大規模な鍼灸院や整骨院では、院長とスタッフが直接コミュニケーションを取ることができる機会が少ないため、個別面談の機会を設けて各鍼灸師の状況を把握することが大切です。
面談を通じて、日々の業務に対する不満や人間関係に関する悩み、職場環境に対する意見を聞くことで、早期に問題を解決できることもあります。
また、スタッフが抱えるプライベートな事情や将来の希望についても理解を深めることで、個々のニーズに合わせた対応を取ることもできます。これによりスタッフとの信頼関係が深まり、働きやすい職場環境を整えることが可能です。
鍼灸師と職種は異なりますが、ヘアカラー専門店でもスタッフ面談は、離職を防ぐための重要な施策のひとつです。
スタッフ面談を定期的に行うようにしています。私は居心地が悪いと感じるほとんどの原因は人間関係にあると思っているんです。人間なので他のスタッフに不満を感じたり、仕事でのミスは当然起きると思っています。でも、その不満が顔に出ていたり、ミスに対して感じ悪く対応する人が職場にいると、他のスタッフにも影響して雰囲気が悪くなってしまいますよね。最初は小さな不満や悩みでも、時間が経てば大きく膨らんで最終的には退職にいたってしまうこともあります。
引用: モアリジョブ |「CASA COLOR」エリアマネージャー 松尾薫さん
上記と同じく鍼灸院も複数の人間が同じ店舗内で働くため、人間関係に関する悩みが生じやすい職種です。個別面談の機会を設けることで、人間関係が原因で鍼灸師が辞める事態を防げる可能性があります。
キャリア形成をサポートする
鍼灸師としてのキャリア形成をサポートすることが、離職防止につながることもあります。鍼灸師は技術職であり、将来的に自分のキャリアがどのように進むのかが見えにくい場合があります。
経営者はスタッフのキャリアビジョンを理解し、その実現に向けたサポートを行うことが大切です。たとえば院内でのキャリアパスを明確に提示し、リーダーシップ研修やマネジメントスキルの習得を促すことで、長期的に成長できる道筋を示せます。
また独立を目指すスタッフに対しても、経営の知識や開業支援を行うことで、円満な退職をサポートし、良好な関係を保ちながら離職を未然に防ぐことができます。独立したいスタッフを離職させずに残したい場合は、院長に抜擢して施術所運営を任せるのもひとつの手段です。
たとえば主要都市を中心に鍼灸整骨院を20店舗以上を展開する「あい・グループ」では、院長になりたいスタッフの希望をかなえることも視野に入れて、事業展開を考えるそうです。
人によって院長になりたい人もいれば、そうではない人もいます。だから、それぞれの希望に合わせて、店舗展開や事業拡大を行っていくというかたち。せっかく人材が増えても店舗が増やせなければ、院長になりたい人がなれないということになりますから、増やせる準備はしておく、という感じですね。
引用: モアリジョブ |「あい・グループ」マネージャー 中井良祐さん
スタッフのキャリアビジョンに寄り添う姿勢が、離職防止に対して一定の効果を上げています。
鍼灸師を採用する際にできる離職率を下げる取り組み
鍼灸師の離職を防ぎたい場合は、自院にマッチした人材を採用することも大切です。ここでは、鍼灸師を採用する際にできる離職率を下げる取り組みについて5つ紹介します。
採用ターゲットを明確化する
自院にマッチした人材を採用するためにも、まずは採用ターゲットを明確化しましょう。ターゲットを明確化する際には、能力や人柄などが思い当たりますが、その他にも鍼灸院や整骨院の方針を伝えて共感できるかどうか確認することも大切です。
リジョブが求職者に向けて行った調査 によると、求職者が面接後に求人への応募を辞退する理由として「目指す方向の不一致」を挙げる回答が最も多かったです。
目指す方向性の不一致が採用後に分かった場合は、離職につながるため注意しましょう。
とくに鍼灸師の場合、自身の施術や考え方に強いこだわりを持っていることも多いものです。そのため求人票や面接で、施術所の方針やコンセプトなどを明確に伝えて、採用ステップでの途中離脱や採用後の離職を防ぐことが大切です。
リジョブでは次のような早期離職の防止に役立つ資料も準備しているので、興味があれば無料でダウンロードしてご覧ください。
面接辞退・早期離職を防ぐ!相性の良い人材を惹きつける3STEP
母集団(応募数)を確保する
採用を急いで少ない応募数のなかから人材を選ぶと、どうしてもミスマッチが起こりやすいため注意しましょう。ある程度の母集団を確保してから、本当に必要な人材を選べる状態にすることが理想です。
鍼灸師の応募数を増やす施策としては、たとえば次の方法が効果的です。
- ブランクのある鍼灸師を採用する
- 業界で人気のある施術メニューに携われることをアピールする
- 女性鍼灸師を募集する
資格を取得しても業務に従事していない鍼灸師は多いため、ブランクのある鍼灸師が活躍できるようにカリキュラムを整え、求人票でそれをアピールすると応募数を増やせる可能性があります。
また美容鍼やスポーツ鍼灸などの業界でもトレンドとなっている分野で応募すると、それに興味のある鍼灸師を集められます。
さらに鍼灸師には女性が多いため、求人票に女性施術者を募集していることを記載するのもひとつの手段です。女性鍼灸師が増えると女性患者も来院しやすくなるため、鍼灸院や整骨院の経営にもポジティブな効果が期待できます。
鍼灸師の採用については、次の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
内部リンク: 鍼灸師 採用
仕事内容を詳しく伝える
求人票の仕事内容欄には、業務内容を詳しく記入することが大切です。求職者の多くが職場探しをするにあたり、仕事内容について詳しく知りたいと考えています。
山形労働局の調べによると、応募するにあたって求人票の仕事内容が最も重視されていることがわかりました。
▼応募するにあたり重要視する求人票の項目
求職者の多くが仕事内容に興味を持っているため、求人票に仕事内容について詳しく記載すると応募数の増加が期待できます。さらに仕事内容に関して認識の食い違いが生じにくくなるため、ミスマッチによる早期離職も防げます。
離職を防ぎたい場合は、仕事内容を詳しく書くように心がけましょう。
インターンを実施する
インターンを実施すると、採用した人材に「思っていたのと違う」「聞いていた条件とズレている」と思わせずに済むため、離職率を抑える効果が期待できます。
パーソル総合研究所の調査 によると、インターンに参加した企業に求職者が入社した場合は、インターンに参加しなかった企業に入社したケースと比べて離職率が17.6%も低いことがわかりました。
3年後の離職率を大幅に軽減できることから、インターンを実施すると離職防止に役立ちます。
インターンに参加する鍼灸師を集めたい場合、時給を設定して1日限りで実際に働いてもらう事例が挙げられます。福岡を中心に複数の鍼灸整骨院を展開する「むさしグループ」では、2024年にインターン生を時給2500円で10名募集しています(※1)。
また東京都にある一掌堂治療院では、学習支援金として1日当たり5000円を提供しながら、全6日間に渡ってインターンシップを開催しています(※2)。
鍼灸師に対して実施されたインターンシップの事例を参考にして、自院でも実施するのもおすすめです。
※1 株式会社ONE FOR ALL(むさし鍼灸整骨院グループ)
※2 一掌堂治療院
まとめ
鍼灸師が含まれる「医療、福祉」分野の離職率は15.3%で、他業種と比べて平均的な値です。鍼灸師の離職率を抑えるための取り組みを総括すると次のとおりです。
- 鍼灸師の離職を防ぐためには労働条件を整えたり、個別面談を開いたりすることが有効
- 離職防止を考える場合、自院にマッチした人材を採用することも大切
- 自院のマッチした人材を採用するためにも採用ターゲットを明確化したり、応募数を確保したりする
- 求人票に仕事内容を詳細に書いたり、インターンシップを実施したりするような取り組みも自院にマッチした人材の確保につながる
他にも研修制度を整えて、鍼灸師のキャリア形成をサポートするようにすると、鍼灸師が将来に希望を持って安心して働けるようになります。それが離職防止につながるので、スタッフの希望を取り入れつつ働きやすい職場を目指すとよいでしょう。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部