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エステサロンの平均利益率と上げるための方法を解説!

エステサロンの平均利益率と上げるための方法を解説!

エステサロンの運営には消耗品やエステ機器のレンタル代など、さまざまな費用がかかります。もし資金のやりくりを辛いと感じるようなら、利益率が低いのかもしれません。

本記事ではエステサロンの平均利益率と、利益率を上げるための方法を解説します。利益が低く運営に悩んでいるエステサロンの経営者や店舗担当者は、ぜひ参考にしてください。

利益率とは?

利益率とは売上に対する「利益の割合」を指します。

利益と呼ばれるものには以下の5つがあります。

  • 売上総利益(粗利とも呼ばれる)
  • 営業利益
  • 経常利益
  • 税引前当期純利益
  • 当期純利益

売上総利益は売上高から売上原価を引いたもので、粗利と呼ばれるものです。そこからさらに賃料や人件費、広告宣伝費などを差し引いた金額を「営業利益」と呼びます。

ただ売上原価は業種によって計上される項目が変わります。商品の売買を行わないサービス業であれば人件費が該当します。

本記事では「営業利益」をもとに算出した利益率で解説を進めます。

(補足)

経常利益:預金利息や雑収入、支払利息、雑損失など本業以外の収入や損失も加減算した利益

税引前当期純利益:株式の売却益や固定資産の売却損など、企業の通常の経営活動と関わりのない利益や損失を計上した利益

当期純利益:税引前当期純利益から法人税や住民税、事業税、法人税等還付金を加減算した利益(マイナスの場合は当期純損失と呼ぶ)

エステサロンの平均利益率

経済産業省のデータによると、2022年(実績)のエステサロン含む「生活関連サービス業,娯楽業」の平均利益率は6.5%でした。ただ2022年はコロナ禍であったため、通常より低い数値となっている可能性があります。

コロナ禍前のエステサロンの平均利益率は以下のとおりです。

年度(実績)

エステサロン(生活関連サービス業,娯楽業) 利益率

2019年

8.0%

2018年

9.0%

2017年

9.6%

経済産業省「e-Stat 政府統計の総合窓口」をもとに作表

なお、飲食業や小売業の平均利益率は5%を下回っているため、エステサロンが含まれる「生活関連サービス業,娯楽業」の利益率は高い傾向にあります。

エステサロンの利益率の計算方法

エステサロンの利益の計算方法は以下のとおりです。

【例】売上750万円、経費680万円(※)の場合

※商品原価費、賃料、人件費、広告宣伝費、消耗品費など含む

▼利益率の計算方法

利益(売上ー経費)70万円÷売上750万円×100=約9.3%(利益)

なお、上記の人件費には実際スタッフに支払った給与のほか、社会保険などの福利厚生費も含みます。

売上ではなく利益率を重視すべき理由

エステサロンを運営し、成長させていくには売上ではなく利益率を重視することが大切です。

売上が上がっても同じだけ経費がかかれば、手元に残る資金(利益)は変わりません。異なる利益率で利益の違いをシミュレーションしてみましょう。

▼利益率の変化による利益シミュレーション

利益率

利益

10%

売上750万円×10%=75万円

15%

売上750万円×15%=112.5万円

利益率が5%アップすると利益が37.5万円も増えました。とはいえ、利益率を上げるために何をすればよいかわからない人も多いでしょう。

次の項では利益率を上げる方法について、項目に分けて詳しく解説します。

エステサロンの利益率を上げる方法

エステサロンの利益を上げる方法は、大きく分類すると以下の2つです。

  • 経費の見直し
  • 売上の最大化

店舗やスタッフの人数の関係から売上を増やすのが難しい場合は、出ていくお金(経費)を見直しましょう。

もし稼働していない施術ベッドや店販を行っていないのであれば、売上の最大化で利益率アップが見込めます。

経費の見直し

経費は利益を生み出してこそ、意味があります。利益を生み出さない経費や過剰にかかっている経費は削減していきましょう。

もしこれから開業を考えている場合、売上に関係なくかかる固定費の決定はとくに慎重に行いましょう。

家賃・テナント賃貸費

固定費である家賃・テナント賃貸費は、一度決まると下げにくい経費です。利益率アップのために、家賃・テナント賃貸費を下げる方法は「移転」か「家賃交渉」です。

常に施術ベッドが余っており、採用や集客を増やすのが厳しい場合、思い切って小規模テナントや店舗へ引っ越しを検討するのもよいかもしれません。

また家賃は固定費とお伝えしましたが、毎月の家賃が変動する「歩合賃料」というものがあります。

歩合賃料とはショッピングモールや商業施設で導入されている賃料の計算方法で、月々の売上などに応じて、賃料が変動するものです。

店舗の経営者にとって閑散期の支出を抑えられるメリットがあります。固定の家賃支払いによる負担が大きいなら、物件のオーナーに歩合賃料のかたちを取れないか相談してみましょう。

さらに店舗を決める際には、通勤のためにかかる交通費も加味することをおすすめします。利便性の悪い場所への出店は集客だけでなく、通勤費もかかり経費を増やす原因となります。

―それにしてもなぜ葛西にお店を構えたのですか?

単純に自宅から近かったから。自営業の場合は交通費も自腹になるわけなので、遠いところにサロンを構えるとその分経費がかかってしまうためです。なので、自宅から徒歩あるいは電車で初乗りで行けるくらいの範囲で場所を探しました。

引用:モアリジョブ|MIROOM ミールーム オーナー 町田美香子さん

人件費

エステサロンの利益はエステティシャンが生み出します。そのため人件費を削るのは最終手段と考えておきましょう。ただしシフトにムラがないか、必要なときに必要な人材が割り当てられているかなどの見直しは大切です。

なお政府の統計データによると、エステが該当する「生活関連サービス業,娯楽業」の売上高人件費率は13.8%と、他業種に比べて秀でて高いわけではありません。

しかしエステの場合、顧客1人に対し1人のエステティシャンが対応しないといけないため、他の生活関連サービス業・娯楽業に比べるとさらに高くなると予想されます。

エステと同じく、労働力に対する依存度が高い産業である「情報通信業」や「宿泊業,飲食サービス業」の人件費率を参考に自社の人件費率を見直しましょう。

▼業種別の人件費率

業種

売上高人件比率

生活関連サービス業,娯楽業

13.8%

情報通信業

19.3%

宿泊業,飲食サービス業

25.5%

中小企業実態基本調査 / 令和5年確報(令和4年度決算実績) 確報をもとに作表

下記事例のように、セルフエステを上手に取り入れた人件費の調整も検討してみてもよいかもしれません。

せっかくならコロナ禍に合わせた事業を起こそうというのが、起案のきっかけで「完全無人型」のセルフ脱毛サロンをスタートしました。施術面に不安がある場合は「エステティシャン派遣オプション(30分¥ 3,300〜)」をご利用いただければ私が施術します。また新規のお客様の場合は、最初のカウンセリングや機械の使い方の説明などが必要になるため、必ず私が立ち会うことになっているんです。

引用:モアリジョブ|セルフ脱毛&フォトフェイシャルサロン CLEVY(クレビー)エステティシャン 千葉美優さん

光熱費

エステサロンは飲食店ほど多くの水やガス、電気を使用しないため、光熱費の割合は経費で多くを占めません。しかし小さな出費も積み重ねれば大きなものとなります。

電気代はワット数で決まります。エステ機器に多いワット数で電気代シミュレーションをしたので、電気代を見直す参考にしてください。

▼ワット数と電気代のシミュレーション

ワット数

電気代(1日4時間、1カ月30日使用の場合)

60W

約223円

100W

約372円

1500W

約5,580円

2000W

約7,440円

※1kWhあたり31円として試算(参考:全国家庭電気製品公正取引協議会「電力料金目安単価」

※1W1時間あたりの電気代0.031円

キャビテーションなど痩身系のエステ機器は60〜100Wとワット数が低めですが、脱毛機器は1,500〜2,000Wとワット数が高めのものが多い傾向です。

古いエステ機器を新しいモデルに変えることで、電気代が節約できる可能性もあります。必要以上にワット数が高いものは見直しを検討しましょう。

仕入費(エステ機器レンタル費含む)

エステサロンの運営には施術に必要な商材の仕入れや、エステ機器のレンタルが不可欠です。

経費でも大きな割合を占めるため、仕入れ先や内容の見直しが大切です。エステ機器をレンタル契約している場合、毎月かかる固定費として利益を下げる原因にもなっています。

1台あたり数万円のレンタル費がかかるため、使用頻度や利益率が低い機器は解約を検討しましょう。

また商材を無駄使いしていないかのチェックも行いましょう。1回あたりの使用量を明確に定め、施術前に計量スプーンなどで計り、シャーレなどに準備しておくことで無駄使いを防げます。

売上の最大化

利益アップのために取り組みたいのが売上の最大化です。

売上の最大化を目指す際には経費を意識し、進めていきましょう。せっかく売上を伸ばせても経費が同じくらいかさんでしまうと利益率は変わりません。

広告費や人件費など固定費をなるべく上げないように、売上の最大化を目指しましょう。

リピート率を上げる

エステサロンの平均リピート率は新規予約から3カ月以内、6カ月以内ともに約20%といわれています。

スタッフの稼働率が低い場合、売上を上げる余力が見込まれます。リピート率アップに取り組み、稼働率を上げていきましょう。

既存顧客維持にかかるコストは新規顧客獲得にかかる費用の5分の1といわれており、少ない経費で売上の最大化を目指せます。

1.1対5の法則

画像出典:エステサロンのリピート率を上げるには?平均値や顧客がリピートしない理由も解説 | Bizリジョブ 

ただすでにスタッフの稼働率が70〜80%を超えている場合、リピート率を上げる施策は顧客満足度や従業員満足度の低下につながる恐れがあります。スタッフを増員するか、売上の最大化以外の施策を検討しましょう。

新規顧客を増やす

顧客が少ない場合は新規顧客の獲得に努めましょう。新規顧客の獲得には顧客がサロンをどのように選んでいるかを知り、年代に合わせた対策が求められます。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、来店時にサロン選びで重視した年代別のポイントは以下のとおりです。

▼年代別サロン選びのポイント(2024年上期/フェイシャル利用者/女性/複数回答)

 

20代(n=162)

30代(n=109)

40代(n=95)

50代(n=58)

60代(n=51)

友人・知人の口コミが良い

18.8%

20.2%

22.5%

10.2%

30.9%

ネットの口コミが良い

29.8%

31.6%

32.5%

28.6%

16.4%

ネット予約ができる

3.9%

22.8%

26.3%

22.4%

14.5%

料金が明確

4.4%

8.8%

17.5%

26.5%

25.5%

受けてみたいメニューがある

5.0%

13.2%

22.5%

24.5%

20.0%

ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2024年上期をもとに作表

子育て世代である30代〜40代はサロン検索や予約がサロンの営業時間外になりやすいため、ネット予約を重要視する傾向にあります。また肌悩みが深刻になってくる40代〜60代では、施術メニューを重要視する人が多い傾向です。

また年代によって情報収集源は異なるため、顧客層に合った広告の打ち出しが大切です。

年代別の情報収集源については下記の記事で解説しています。

客単価を上げる

客単価のアップも利益率を上げるのに有効です。

エステサロンの客単価アップにはまず以下の3つを検討しましょう。

  • 基本料金を上げる
  • 限定メニューを設ける
  • 割引を見直す

昨今の物価高で溶剤など仕入れのほか、人件費など経費がかさみ利益率を下げている可能性があります。

闇雲に上げてしまうと顧客離れにつながる恐れがありますが、日頃から顧客との信頼関係を築いておき、値上げの際も丁寧に説明をすることで顧客離れはある程度防げるでしょう。

また季節や期間、数量を限定したメニューは希少性の高いものに惹かれる顧客心理(スノッブ効果と呼ばれる)をうまく誘導するのにおすすめの手法です。

高い客単価でもサロンの魅力が伝われば、顧客は来店します。SNSなどでサロンのコンセプトや考え方を配信し、共感してくれる優良顧客の獲得に努めましょう。

僕も驚いたのですが、値上げ前より新規のお客さまが来るようになったんです。それが実現できたのは、自分がどんな美容師なのかという情報発信に力を入れていたからだと思っています。価格どうこうではなく、僕が普段どんな考え方でどんな施術をしているかを知って興味を持った方や、共感してくれた方が来店してくれたのではないかと。

引用:モアリジョブ|AURUM 代表 金田昭徳さん

その他エステサロンにも使える「客単価を上げる方法」は下記の記事で紹介しています。

店販を強化する

店販は客単価を上げるのに有効で、利益率アップにも効果があります。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、エステサロンの店販購入率は26.7%と他の美容系サロンに比べて高めの傾向です。

2.【女性】1年以内の店販購入率

画像出典:店販がリピート率を上げるカギ?“おうち美容”と”サロンケア”の相乗効果|調査・研究 

ただ店販の多くは原価が販売価格の40〜50%と高く、施術に比べると利益率が低いのが難点です。

さらに仕入れても売れないと損失になるリスクもあるため、店販強化や導入の際は取り扱う商品や仕入れ量などを慎重に検討しましょう。在庫をもたないオンライン販売もおすすめです。

効率を上げる

利益率を上げるためにはITを使った業務の効率化が有効です。例えばネット予約やオンライン研修は、人件費や交通費の削減につながります。

電話や返信が必要な予約ツールは、折り返しの対応が必要で人件費が増える原因のひとつです。接客や施術の手を止める場合もあるため、接客や施術の時間が伸びてしまい、作業効率も低下させます。

また、座学研修はオンラインでも可能なため、動画配信プラットフォームを活用しましょう。研修のためにシフト調整する必要や研修場所の確保も不要です。アーカイブ機能があるものであれば、スタッフごとに都合の良い時間で研修を受けられるメリットもあります。

効率化を上げることは利益率アップだけでなく、削減できた経費を必要な人件費に充てられるため、優秀な人材確保にも役立ちます。

弊社は給与水準が高く、入社1年目から月30万円を叶えることができます。これを実現できているのは、エンジニアチームがシステムやオペレーションの効率化を図ったり、店舗の内装をパターン化したりすることで、人件費以外の経費をできる限り削減しているからです。

引用:モアリジョブ|株式会社CS オフィスマネージャー 逸見海斗さん

エステサロンの利益率アップには人材採用が重要

ほとんどの時間を顧客とスタッフが1対1で過ごすエステサロンでは、人材採用が利益率に大きく影響を及ぼします。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、エステサロンを利用する人がサロンを変えようと思った場面は「施術」「仕上がり確認」など、スタッフの対応が関係しています。

3.サロンを変えようと思った瞬間

画像出典:顧客離れは、いつ決まる?来店前に2割以上が失客

顧客離れはリピート率や客単価を低下させる原因となり、結果的に利益率の低下につながります。

顧客が続けたいと思う魅力的な人材は、エステサロンの利益率アップに欠かせません。利益率アップに貢献してくれる人材を積極的に採用しましょう。

エステサロンの利益率アップに貢献してくれる人材とは?

株式会社タナベコンサルティングの調査によると、企業が求める人材像でもっとも多かったのは「指示以外のことも自律的に行動できる人材」でした。

4.企業が求める人材像

画像出典:2023 年度 人材採用・育成制度に関するアンケート調査|株式会社タナベコンサルティング

個人の力が重要な役割を担うエステサロンでも、上記に当てはまる人材はサロンの利益率アップに大きく貢献してくれるでしょう。

あわせて以下の3つの当てはまる人材の採用も検討しましょう。

  • 人材育成が得意な人
  • 素直で努力家な人
  • 経営者目線の思考をもつ人

人材育成が得意な人

エステティシャンの求職者には未経験者も多くおり、ゼロから研修が必要となる場合も少なくありません。

エステの求職者が求人検索をする際のキーワードとして3番目に多かったのが「未経験歓迎」でした。

▼エステ求人条件 検索ランキング

5.エステ求人条件検索ランキング

利益を上げられるエステティシャンの採用も良いですが、キャリアのある人材採用には高い給与設定が必要です。

人材育成が得意な人材がいれば、未経験から利益を出せる優秀な人材に育て上げられます。

素直で努力家な人

素直で努力家な人は、サロンの利益率アップへの貢献が期待できます。

エステサロンは接客は1対1で行うものの、サロン運営自体にはチームワークやコミュニケーション能力が欠かせません。

「企業が求める人材像」でも上位に上がっているように「良好な関係を構築できる人」や「チームワークを尊重できる人材」が求められます。

店舗で決まった施策を成功につなげるためにも、素直さと努力を持ち合わせた人材の採用をおすすめします。

経営者目線の思考をもつ人

店舗全体の売上や経費、利益などを考えられる「経営者目線の思考」をもつ人材は、利益率アップに貢献してくれます。

エステティシャンは「基本給+歩合」の給与体系である場合が多く、手取り給与を上げるためにワンマンプレーになってしまうエステティシャンもいます。

経営者目線の思考があれば利益の高い施策の提案や行動を取れるため、利益率アップが期待できます。

経営者や店舗責任者の右腕となり、現場との橋渡し役になってくれるなど、将来的にも頼れる存在となるでしょう。

まとめ

本記事を総括すると次のとおりです。

  • エステサロンの平均利益率は6.5~10%弱(経済産業省のデータ参照)
  • 売上でなく利益率を重視することでサロンの成長につながる
  • 「経費の見直し」と「売上の最大化」で利益率アップ
  • 人材育成が得意な人や経営者目線の思考をもつ人など、利益率アップに貢献してくれる人材を採用する
田中 久美(Tanaka Kumi) プロフィール画像
執筆者情報
田中 久美(Tanaka Kumi)
温泉施設や大手スポーツクラブのエステティックサロン、大型リラクゼーションサロンにて、エステティシャンやアロマセラピストとして勤務。エステティックサロン勤務時代は人材採用や育成、店舗管理なども担当。 その後独立し、現在は完全貸切のアロマリラクゼーションサロンを運営。約20年の知識や技術を活かし、集客や経営、接客などを自身で行う。約7~8割がリピート顧客で、30代から50代の女性を中心に指示を得ている。