コロナ禍が落ち着く社会の経済活動が正常化するなかで、エステサロンの倒産が相次いでいます。
コロナ禍が落ち着く一方で、脱毛や痩身を目的としたエステサロン(以下、エステティック業)の苦境が鮮明になってきた。2023年度のエステティック業の倒産(負債1,000万円以上)は95件(前年度比69.6%増)と前年度の1.7倍に急増。2004年度以降の20年間では、2019年度の76件を超えて最多を記録した。
引用:「エステサロン」の倒産急増、年度最多の95件 コロナ禍の落ち着き後も客足戻らず|東京商工リサーチ
倒産が増えた要因の1つとして、コロナ禍により自宅で施術が可能なセルフエステが普及したことが挙げられます。
またエステティック業は参入障壁が低く、小資本で開業できることも倒産が増える一因と考えられます。参入障壁が低いことで競合が増えて、過当競争になりやすいのです。
以上の状況でエステサロンの開業を成功させるためには、競合他社と差別化を図って新規顧客を増やしたり、顧客満足度を高めてリピーターを増やしたりすることが重要です。
本記事では、エステサロンを開業するまでの流れを解説。さらに開業方法やメニュー作り、開業を成功させるポイントを紹介します。美容関連ビジネスで店舗開業に成功した経営者の事例を交えて説明するので、ぜひ参考にしてください。
エステサロンを開業するまでの流れ
まずはエステサロンの開業するまでの流れをつかんで、店舗運営を順調にスタートさせましょう。開業するまでの流れは次のとおりです。
- 事業計画を立てる
- 物件を探す
- 資金を調達する
- 内装工事をする
- 必要なものを準備する
- 税務署に届出を出す
実際に美容関連の店舗を立ち上げたオーナーのコメントを交えながら解説します。
事業計画を立てる
エステサロンを開業するにあたって、まずは事業計画を立てましょう。事業計画は融資を受けるためにも欠かせないステップで、開業に必要な資金と売上予想を見積もることが基本です。
まず事業計画書(事業の内容や、資金計画など具体的な項目を書面にすること)を作成することから始まります。事業計画書を書いていくうちに、自分がどれだけの規模感で経営したいのか、どれくらいの坪数でやりたいかなどが見えてきます。物件や機材を選び、内装の見積もりを出し、トータルでいくらお金が必要になるのかはっきりと見えてきた段階で、融資へと動きます
開業する際に事業計画を立てる場合は、次のチェックポイントを確認するとよいでしょう。
日本政策金融公庫がはじめて開業する方向けに創業計画書のテンプレートを公開しているので、それをダウンロードして実際に記入するのもおすすめです。
商工会や商工会議所に相談する
事業計画を立てる場合は、商工会や商工会議所に相談するのも1つの手段です。
もし今後開業を目指す方がいたら、申請できる補助金の制度などがないかよくチェックすることをおすすめしたいです。事業計画を立てる訓練にもなりますし、商工会議所の方もとても丁寧にアドバイスしてくださると思いますよ。
商工会と商工会議所はともに、小規模事業者の経営をサポートするために設立された組織です。両者の違いは、商工会が町村を対象としているのに対して、商工会議所は市を対象としています。商工会議所の方が商工会よりも規模が大きい点も両者の違いです。(※1)
※1 参考元:商工会と会議所の比較|全国商工会連合会
物件を探す
事業計画の立案と同時に、物件探しも進めて開業資金を見積もるのが一般的です。
エステサロンの開業資金を低く抑えたい場合は、レンタルサロンや自宅サロン、マンションの一室などでの開業を検討するとよいでしょう。一方でまとまった費用が準備できる場合は、賃貸物件や商業施設内のテナントを借りて開業すると集客に有利です。
立地を決める際には、徹底的にリサーチしたうえでコンセプトを明確にすると、開業が成功しやすくなります。
地域性や移動手段、人が集まる場所だけでなく、僕は年代別の人口比率や車を持っている人の数まで調べました。そうして徹底的に調べると、自ずとピンポイントの立地や作るべきお店の姿みたいなものが見えてくる。そこに、自分のブレない軸を組み合わせていけば、地方で成功するお店が作れるんじゃないかと思います。
またターゲットの活動範囲や時間を意識して立地を選ぶと、集客しやすくなります。
働く女性も専業主婦の方もバランス良くいらっしゃるため、平日でもわりと日中に予約が埋まっているんです。夜もそこまで遅い時間に予約は入りません。平日だけで集客ができているので、うちは日曜定休にしています。それも立地のおかげですね。
資金を調達する
事業をはじめる際に資金を調達する場合は、金融機関から融資を受けるケースが多いです。そのためには貯金をして、ある程度の自己資金を準備する必要があります。
広島のサロンで2年間働いて開業資金を貯め、また湘南に戻ってきました。大船のサロンに1年ほど勤めたあと、「LaidBack」を立ち上げたんです。
共同代表という形で2人で協力して開業すると、開業資金の負担を軽減できます。
エステのサロンはスパ施設など水回りの設備が必要で、しかもお客さまごとに個室を作らなくてはいけません。開業資金がものすごくかかるんです。開業資金は私と共同代表の二人の貯金と銀行からの借り入れが元手。
新規開業する場合は、はじめに日本政策金融公庫に相談するケースが多いです。
日本政策金融公庫に相談する
日本政策金融公庫は国民生活の向上を目的に設立された政府系金融機関。ここには、新規開業資金の枠があるため、その制度を活用すると新規開業資金の借り入れがしやすいのです。
日本政策金融機関の公式ホームページによると、新規開業資金枠の融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で返済期間は次のとおりです。
- 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
- 運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)
据置期間が5年以内なので、借り入れをして最長5年間は元本の返済が猶予されます。新規開業をしてすぐは売上が安定しないため、元本の返済が猶予される点はエステサロンの新規開業には大きなメリットです。ただし据置期間5年の間、利息の支払いが生じる点は把握しておきましょう。
内装工事をする
資金を調達したら、内装工事を進めて開業の準備をはじめましょう。ターゲットのニーズに合わせたり、特定のテーマにこだわったりして内装を整えると、他店との差別化につながります。モアリジョブのなかから、セラピストやエステティシャンの内装の事例を紹介するので参考にしてください。
▼アラサー世代の女性向けの内装
大事になってくるのは第一印象。私が心掛けてきたのは、「アラサー世代の女性」に響くような内装に加え、清潔感を出すことです。
実際に私も色々な整体院やサロンに足を運びながら「OPAL」を客観視してみたところ、うちが集客に成功しているのは、ターゲット層の「アラサー世代の女性」に、「非日常的な空間でつくられる『ご褒美』のひととき」がきちんとハマっているからなのかなと。
▼顧客がリラックスできる内装
室内ではあるのですが自然を感じられたり、五感をフルで癒やせるサロン作りにこだわりました。さきほど音についてお話しましたが、準備中に一番頭を悩ませたのが、視覚。つまり内装の色についてでした。そこでリラックス効果の高い色を学んだところ、茶色、ベージュや茶色がかったオレンジにリラックス効果があるとわかったので、その色合いでまとめることにしたんです。
リラクゼーションサロンというと、似たり寄ったりになってしまいがちだと思うので、ほかにはないサロンだと思っていただけるよう、内装にはとくに力を入れました。
▼顧客が非日常を味わえる内装
コンセプトは、非日常でお姫様になっていただくこと。僕自身が美しいトリートメントと主張しているので、サロンを出るまでは非日常を味わってほしいと考えています。例えばめちゃくちゃおいしいフレンチのお店なのに、床が油でベタベタだったらちょっと違うなって思ってしまいますよね。これからなりたい自分と、その背景が一致しているほうが満足度は上がると思うので、お花畑にいるような「プリンセス」と、女王様チックな「クイーン」の2部屋を用意しました。
必要なものを準備する
エステサロンを開業するにあたって、たとえば次のような機材や備品が必要です。
【必要な設備・機器】
- ベッド
- エステ用機器
- ホットタオルキャビネット
- 消毒機器
- 椅子・テーブル
- ワゴン など
【必要な備品】
- タオル(バスタオル・フェイスタオル)
- 化粧品類
- シーツ
- ガウン
- スリッパ
- 白衣 など
【家電・電子機器類】
- パソコン
- 冷蔵庫
- BGM設備 など
チェックリストなどを作成して、購入のたびに確認すると、発注の漏れや重複を防げるでしょう。
税務署に届出を出す
エステサロンの開業後は、1ヵ月以内に税務署に開業届を提出しましょう。(※2)開業届を提出する際には、青色申告を選択することをおすすめします。青色申告で確定申告をすると、税金の優遇措置を受けられます。
▼税金の優遇措置に具体例(※3)
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以上のように税金の優遇措置を受けられると、手取りの収入を増やしやすくなります。
※2 参考:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
※3 参考:No.2070 青色申告制度
エステサロンの開業に必要な費用
エステサロンの開業に必要な費用は、初期費用と運転資金に分けられます。
初期費用
エステサロン開業の初期費用には、主に次のような項目が挙げられます。
- 店舗の借り入れにかかる費用(敷金や保証金、前家賃、仲介手数料など)
- 内装にかかる費用(デザイン費や工事費など)
- 消耗品や備品を購入するための費用
運転資金
運転資金は固定費と変動費にわけられます。開業後の運転資金も考慮して資金計画を立て、不足分は融資を受けましょう。
固定費
固定費とは売上の増減に関係なく金額が一定となる費用です。たとえばスタッフの給与やリース料、店舗の家賃などが該当します。
変動費
変動費とは、売上に比例して増える費用をさします。エステサロンの場合、顧客が着用する施術着のクリーニング代やオイルなどの材料費、宣伝広告費などが該当します。
エステサロンの開業方法
エステサロン開業のやり方には、次の方法があります。
- 自宅サロンでの開業
- マンションの1室での開業
- 出張サービスで開業
- レンタルサロンやシェアサロンでの開業
- テナントでの開業
それぞれの方法について事例を交えて解説します。
自宅サロンで開業する
自宅でエステサロンを開業するメリットは、開業資金を大幅に抑えられる点です。工夫すれば数万円でも開業できるケースもあります。
エステは技術さえ持っていれば、学歴がなくてもできる仕事。逆に私が生きていける道は「自宅サロン」しかなかったんです。開業資金数万円で、お古のベッドをもらい、学芸大学にオープンしました。
また自宅サロンを成功させるポイントは、生活感を出さないことです。芳香や換気などへの細かな気配りが生活感のない自宅サロンづくりにつながります。
生活感を抑えるために工夫が必要なことくらいでしょうか。「COCOKARA 〜R〜」では、玄関を整えたり、階段にアロマを炊いたり、小まめに換気をしたり、生活感が出ないよう気を配っています。とくに香りの印象は大きいですから、きれいに片付いていても生活感が出てしまうものです。
マンションの1室で開業する
マンションは自宅サロンでの開業とは異なり、立地を選択できます。そのためターゲットが通いやすい場所で開業できる点が特徴です。ターゲットがサロンに訪れるまでの導線を意識して、開業するマンションを選びましょう。
まずは立地にこだわりました。この物件を選んだポイントはオフィス街と住宅街の境目にあることです。メインターゲットのお客さまは会社員や主婦の方が多いため、平日は仕事帰りのOLの方、休日はご近所にお住まいの方のご来店が見込めて、1週間を通して安定した集客が実現できると考えました。
まずはお客様が通いやすい立地であることを優先。育児やお仕事の忙しい合間を縫ってお越しいただくお客様が多いので、駅やお店などが近くて便利な場所を選びました。
出張サービスで開業する
出張サービスは開業資金を大幅に抑えられるため、開業のハードルが低いことが魅力です。施術スペースが必要ない一方で、機材や化粧品などを置くスペースは確保しましょう。
また女性が出張サービスを展開する場合、男性顧客とのトラブルが気になるところ。そのような場合は、女性専用にするのも1つの手段です。
出張サービスの口コミを見ると、「ちょっと怖い思いをした」とか、「変なサービスを強要されて断ったら施術後にひどい口コミを書かれた」などありますよね。そのリスクをあらかじめブロックするためにも女性専用にしました。
レンタルサロンで開業する
レンタルサロンは駅前や住宅街など、さまざまなところに存在します。そのため初期費用を抑えつつ、好立地でエステサロンを開業できる点が魅力。またレンタルサロンに備え付けられている設備や備品を利用できるため、手ぶらでも施術できることが大きなメリットです。
まずはネットで目的地のレンタルサロンを探します。各サロンによって備え付けてあるものや貸し出しているものが違うので、必要最低限のものをキャリーケースに詰めて出張に出かけるだけです。1回の出張で対応できるお客さまの人数も限られているのでそんなに大きな荷物にはなりません。
またレンタルサロンは時間単位や日単位、月単位など短期間でサロンを借りられます。そのため本格的なサロン開業の準備期間として、期間限定で開業するのも1つの手段です。
前のサロンとの約束でお客様には独立することをお伝えできず、集客はゼロからのスタートでした。貯金もほとんどなく、食べていける保証もない。そんな中で1ヶ月フルオープンではじめるのは難しいだろうと思い、本格的にお店を構えるまでの準備期間として「期間限定」という形でスタートしたんです。
テナントを借りて開業する
テナントを借りて開業する場合、通りに面した店舗で開業すると通行人の目に触れやすくなり、集客しやすくなります。
若い子を雇ったときにその子たちが入客できるように、人通りが良い場所にはしたいと思っていたので、コアな場所にはしたくなくて。原宿まで足をのばして探したら、立地もよくて光が入って明るい、気持ちのいい空間のお店が見つかったので、そこに決めました。
看板を出して通行人に店舗の存在をアピールしやすいメリットもあります。
サロンが面している茶沢通りはもともと人通りが多く、日曜・祝日は13時から17時まで歩行者天国になるため、さらに人通りが増えます。だから看板の宣伝効果はかなり高いですね。
集客に有利なメリットがある反面、開業費用が高くなることがデメリットです。テナントの費用を確保できない場合は、一緒に開業する人を募ってテナントをシェアする方法もあります。
独りでやるのには不安もあったし、家賃負担もキツそうだったので、周りの信頼できる鍼灸師に声をかけて、一緒にやってくれそうな仲間を探しました。相談しながら進めるメリットも大きいと思って。
エステサロンのメニュー
エステサロンのメニューを作成する際には、定番メニューだけではなく、競合店と差別化できるメニューを準備する点がポイントです。定番メニューと他店と差別化できるメニューの2タイプを準備することで、集客に有利に働きます。
定番メニューには自分のスキルや経験を活かせるサービスを取り入れて、顧客が高い満足感を得られるようにすることをおすすめします。一方で差別化メニューには他店では真似ができない特殊なスキルを活かせるものや、国家資格が必要で参入障壁の高いメニューを準備するとよいでしょう。
エステサロンのメニューを紹介するので、メニュー作成の際は参考にしてください。
設備投資が必要な施術メニュー
設備投資が必要な施術メニューとして、エステサロンでは定番の脱毛エステや痩身エステを紹介します。
脱毛エステ
ホットペッパービューティーのエステサロンに関する意識・実態調査報告書によると、脱毛エステは20代や30代の比較的若年層に人気のある施術であることがわかりました。
▼脱毛エステの利用経験率
20・30代の脱毛サロン利用率は50%前後と2人に1人が利用していることになり、人気の高さが伺えます。若年層をターゲットにする場合は、脱毛エステを施術メニューに取り入れるとよいでしょう。
エステサロンが脱毛機器を購入する場合は、光脱毛と呼ばれる方式のマシンを選ぶ必要があります。このマシンの相場は、1台あたり100万円~500万円です。(※4)
※4 参考:業務用脱毛機器・脱毛マシンのオススメ30選!サロンにあった脱毛マシンが見つかる|b-models
痩身エステ
痩身エステは、ダイエットをサポートするための施術として若年層を中心に人気があります。痩身エステも脱毛エステと同様に比較的若年層の利用率が高い傾向です。
▼痩身エステの利用経験率
痩身エステの利用率の高さは脱毛エステほどではありませんが、約5人に1人が施術を経験しています。
痩身エステ用の器械は種類が多いことが特徴です。部分的な施術向けや全身施術向けなど用途によってさまざまです。ターゲットのニーズやコストパフォーマンスを見極めた上で、適切な器械を選ぶことが大切です。
保健所への届出と国家資格が必要な施術メニュー
保健所への届出や国家資格が必要な施術メニューは、参入障壁が高いため他店と差別化しやすいことが特徴です。エステサロンと親和性の高いメニューとして、まつ毛エクステンションや美容鍼があります。
まつ毛エクステンション
まつ毛エクステンションは今後、高い利用率が見込まれる施術メニューの1つです。ホットペッパービューティーの【美容センサス 2022 年上期】≪アイビューティーサロン編≫によると、利用率は上昇傾向にあり、2022年には過去最高の利用率9.3%に達しました。
▼女性のアイビューティー利用率
まつ毛エクステンションは、結婚式をはじめとしたイベントごとを控えた人の利用するケースが多いようです。
マツエクのお客様は月に1~2度でしょうか。眉エクについては、商品が未知数な部分もありますが、2週間程度ですね。みなさん、旅行前や結婚式、イベントの前にご来店いただくことが多いようです
まつ毛エクステは結婚式の半年前くらいに来ていただいて、着けた感じを何度か確認していただくんです。そこまでして本番直前の予約が取れなかったら台無しになるので、逆算して予定をあけることや、お客さまに先の予約まで入れていただくようにしています。
まつ毛エクステンションを行うためには、美容師の免許が必要です。誰にでも施術できるわけではないため、参入障壁が高く他店と差別化しやすい点も魅力です。
エステサロンのオーナーが美容師の免許を持っていない場合は、美容師を雇用してまつ毛エクステンションの施術メニューを作成するのも1つの手段です。
美容鍼
美容鍼の市場規模は数十億規模といわれており、3000億円を超えるエステ市場の規模と比べても成長の余地が残されています。(※5)
美容鍼のベースとなる鍼灸施術は、代替医療の1つとして人々の健康をサポートするための施術。そのためエステサロンが、美容鍼を取り入れると健康と美容の両方のニーズにアプローチできるメリットがあります。
体の不調を整えたら、エステの施術も加えながら「美顔」「美髪」「痩身」「体型」「エイジングケア」といった美容の悩みを解決していきます。健康と美容の願いを両方叶えられること、しかも同じサロンで一度にケアできることが、美容鍼灸の強みですね。
自律神経の乱れやホルモンバランスの乱れなど女性特有の健康の悩みを抱えた顧客をターゲットにすることで、新規顧客の獲得も期待できます。
美容鍼をエステサロンに導入するためには、鍼灸師の資格が必要です。オーナーが鍼灸師の資格を持っていない場合は、美容師と同様にスタッフを雇うのも1つの手段です。
※5 参考:美容鍼総論
定番メニュー
エステサロンの定番メニューとして、リラクゼーションやフェイシャルエステなどが挙げられます。
リラクゼーション
リラクゼーションはエステとの親和性が高く、エステサロンに組み込まれることの多い施術メニューです。手を使った手技施術がメインで資格も必須ではないため、エステサロンの施術メニューとして導入しやすい点も特徴です。
リラクゼーションについては、次の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。
フェイシャルエステ
フェイシャルエステは全年代を通して人気のある施術です。ホットペッパービューティーの調査によると、全年代を通して30%以上の人に利用経験があることがわかりました。
▼フェイシャルエステの利用率
フェイシャルエステの場合、顧客の悩みに合わせてさまざまな工夫ができる余地があります。競合が取り入れていないメニューをうまく導入できれば、他店との差別化にもなります。たとえば毛穴に着目した施術で、競合との差別化に成功した事例があります。
このエクストラクションは、分かりやすく言えば毛穴の汚れを指で押し出す、という技術で、欧米では、エステティックサロンのメニューには必ずあるといってもいいぐらい一般的な技術なのです。でも日本では、指を使って毛穴の皮脂や詰まりを取り除くと毛穴が広がる、とか、跡が残る、といった認識が広がっていたせいで、ほとんど知られていませんでした。
他にも表情筋に電気刺激を与えて、筋肉を引き締める効果が期待できる施術もあります。
肌に栄養を送り込みながら表情筋を電気刺激でほぐしていくステップへ。肌のタイプや悩みに合わせてエステティシャンが美容液を選び、肌に栄養を補給してくれます。その後電気の伝導をスムーズにするジェルが重ね塗りされ、いよいよスティックによる電気刺激が。自分の意思に関係なく、スティックの動きに合わせて筋肉が“ギューン”と動く不思議な感覚にびっくり!
フェイシャルに新しい技術を導入することで、定番メニューを差別化メニューへと変化させることも可能です。
特殊なメニュー
エステサロンに導入しやすい特殊メニューとして、アーユルヴェーダやホットストーン、ハーブボールなどが挙げられます。近隣の競合店のなかに導入している店舗がない場合は、施術メニューの1つとして検討するとよいでしょう。
アーユルヴェーダ
アーユルヴェーダはインド・スリランカで発祥したトリートメント法。オイルを主体とした施術が多いこともあり、エステに取り入れやすい点が特徴です。日本ではインドエストと呼ばれるジャンルも生み出されました。
インドエステって日本で生み出されたものなので、世界のどこにもないんですよ。アーユルヴェーダのオイルマッサージ「アヴィヤンガ」に美容要素を取り入れたもの、といったところでしょうか。他のマッサージの良いところを全部融合していこうという感じ。
アビヤンガやシロダーラなどの施術は、アーユルヴェーダのなかでも人気の施術です。
現在スパのメニューは、ボディーオイルトリートメントの『アビヤンガ』や、ハーブオイルを額に垂らし続け脳を極限のリラックス状態に導く『シロダーラ』などの4つです。
また、ヘアサロンメニューでも『アーユルヴェーダヘッドスパ』や『ヘナトリートメント』などのアーユルヴェーダを取り入れています
ギーと呼ばれるバターオイルに目を浸す「ネトラバスティ」と呼ばれる施術を目のエステとして導入すると、他店との差別化にもなります。
地元では馴染みがなく、他のサロンとの差別化にもなると考えてメニューに取り入れました。ことば自体浸透していないのと、体験した人も少ないので、「なんだろう」と人目を引くんじゃないかと思って。
ネトラバスティは大阪のネイルサロンで働いていたとき、まつげパーマ・エクステンションを学ぶ傍らで習得しました。
ホットストーン
ホットストーンとは、火山のマグマが固まってできた玄武岩などを丸くなめらかな肌触りに加工したものです。ホットストーンは50~60度くらいに温めて背中や腹部、顔、手のひらなどに置いて使います。それと同時に、施術者の手やストーンにオイルをつけてトリートメントすると高いリラクゼーション効果が期待できます。
ホットストーンのトリートメントは、自然に研磨された貴重な玄武岩をお湯で温め、温かいオイルとともに石で施術するものです。するすると温かい石が皮膚の上をすべる心地よさはたまりません。
ハーブボール
ハーブボールとは数種類のハーブをブレンドし、布でくるんで蒸したもので、顧客の体に押しあてながら施術を行います。この施術方法はハーバルマッサージとも呼ばれ、タイに古くから伝わる伝統的なトリートメント法です。
ハーブボールは施術部位を選ばずに、体のどの部分でも施術をできる点が特徴です。フェイシャルエステとして取り入れられているケースもあります。
頭から足先までハーブボールで施術します。タイでは「セン」といわれる経絡のようなものがあるのですが、その流れをハーブボールで整えていきます。元々アーユルヴェーダでは、オイルトリートメントとハーブボールが同時進行する「キリ」が一般的ですが、リラワリでは、リフトアップに特化したフェイシャルハーブボールや、つらい部分の筋肉に沿って施術するコースも設けています。
エステサロンの開業を成功させるためのポイント
エステサロンの開業を成功させるためのポイントとして次の内容を解説します。
- コンセプトを明確にする
- 競合店と差別化する
- 資金計画を練る
- 集客方法を考える
それぞれについて解説します。
コンセプトを明確にする
まずはターゲットを決めて、コンセプトを明確にしましょう。コンセプトに沿って店の内装やメニューなどを決めると、エステサロンの軸がブレにくくなります。
私はターゲットをしぼってよかったと思っています。決めるまでが大変でしたが、そのあとの店名、内装、メニュー決めなどが、スムーズに進めることができました。たとえば、「疲れている女性全部」という風にしてしまうと、あまりに広すぎて結果的に届かなくなってしまうこともあると思いますし、コンセプトもぶれてしまうと思うんです。
特定の顧客層にエステサロンの魅力を届けやすくなるため、集客が有利になるのです。
競合店と差別化する
差別化するためには、まずは競合店の情報を徹底的に調べることが大切です。
まずは、近隣のネイルサロンの情報にすべて目を通し、どんな施術を強みとしているのか、価格帯はどれくらいなのか調査。さらに、人気のお店には直接足を運んで実際に施術を受け、技術レベルや空間づくり、 接客など、どんな点にこだわりがあるのか把握することを心がけました。
競合店と差別化できるスキルを持っている場合は、それを積極的にアピールして集客につなげるとよいでしょう。
たとえばサロンでシェービングを扱う場合は、理容所の登録や理容師の免許が必要になるため参入障壁が高くなります。参入障壁が高いと、他店が真似しづらくなるためメニューでの差別化が期待できます。
シェービングサロンは「理容所」扱いになるので、自治体によって異なりますが、保健所の登録が必要なんです。水道が2つないといけない、換気扇がないといけない、規定の広さがないといけない…などなど条件が多く、不動産屋さんにはかなりわがままを言いましたね。今の物件に決まるまで半年以上はかかりました。
差別化できるようなスキルや資格を持っていない場合は、設備投資やスタッフ採用によって新しい技術を取り入れるのもおすすめです。
資金計画を練る
開業して間もないころは、売上が伸びずに赤字が続くこともあります。そのため資金経過をしっかり立てて、運転資金が枯渇しないようにすることが大切です。
たとえば新規集客を焦って過度に広告費をかけると、開業後すぐに資金が枯渇する恐れがあります。一方で広告費をかけずに新規集客を十分にできないと、赤字が積み重なりいずれ廃業するかもしれません。
適切な広告費を見積もる際には、開業後の目標売上を決めて、そこから広告に投入する資金を決めることが大切です。
いつまでにどのくらいの売上を上げるのかを先に決めてから、そこから逆算して、オープンの時にどのくらいの広告にお金を使うべきか…などを計画してほしいです。最初に計画を練っておかないと、無駄なところにお金を使ったり、集客に必要な広告費を削ったり、資金を生かしきれず、もったいないことになります。
また開業資金を準備する場合は、経営が黒字化するまでに必要な運転資金を見積もることも大切です。
開業に必要な手元資金を見積もる際は、固定費が参考になります。一般的には開業後に用意しておくべき運転資金は固定費の3ヵ月分といわれています。(※6)借り入れをしている場合は、固定費と借入金の合計金額の3ヵ月分を準備するとよいでしょう。
開業後しばらく経って売上の変動がわかるようになったら、固定費と借入金の返済額の合計をもとに手元に残す資金を次のように見積もる方法もあります。
- 毎月の売上変動が20%以上の場合:固定費と借入金の返済額の合計が3ヵ月~6ヵ月分を手元資金として確保する
- 毎月の売上変動が20%未満の場合:固定費と借入金の返済額の合計が2ヵ月分を手元資金として確保する(※7)
※6 参考:不動産担保ローン 知識コラム|三井住友トラスト・ローン&ファイナンス
※7 参考:資金繰りを良くするためのきほんとは|佐藤修一公認会計士事務所
接客スキルや技術力の高いスタッフを採用する
開業後の経営を安定させるためには、エステサロンのコースに申し込んでもらい売上を伸ばす必要があります。そのためにも接客スキルや技術力の高いスタッフを採用することも重要です。
ホットペッパービューティーの調査によると、エステサロンのコースに申し込んだ理由で最も多かった項目は「スタッフの接客が良かった・技術力があると感じたから」でした。
▼エステサロンのコースに申し込んだ理由
4割以上の人がコース選びの決め手として、スタッフの接客力や技術力を挙げています。接客力や技術力のあるスタッフを採用するとコースの申し込み数が増えるため、売上アップが期待できるのです。
サロン開業後の売上アップを目指す場合は、開業の段階でスタッフ採用のことも考えておきましょう。次の記事では、エステティシャンの採用を成功させるためのコツを紹介しています。
また美容・ヘルスケア業界の求人をはじめるタイミングについて解説した資料も準備しましたので、どうぞご覧ください。
集客方法を考える
集客方法を考える場合、顧客の初回来店理由を参考にするとよいでしょう。ホットペッパービューティーの調べによると、初回の来店理由を回答数が多かった項目は次のとおりです。
▼初回の来店理由(女性)
昨今はネットの口コミや友人・知人の口コミをもとにエステサロンを選ぶ人が多いようです。さらにインターネット予約が来店理由の3番目に挙げられている点もポイント。顧客の需要に応えるためには、インターネット予約の導入も検討した方がよいでしょう。
既存顧客からの良い口コミを集める
良い口コミを集めたり、既存顧客にサロンの良い評判を伝えてもらったりするためにも、顧客満足度を高めることが大切です。
顧客満足度を上げるためには、丁寧にカウンセリングをして顧客の悩みに寄り添う姿勢で施術に臨むことが大切です。
エステティシャンとしてもっと多様な働き方を目指しています。今、ダイエットコーチの勉強をしているのですが、一般的な食事指導や運動指導だけではなく、丁寧にカウンセリングを行い、心のトリガーポイントを見つけて、そこからアプローチしていくという指導方法を研究しているんです。例えば、「この人がこういう食生活になったのはなぜなんだろう?」と、心の問題から太ってしまった生活の原因を探るとか。
またアフターカウンセリングの時間を確保して、アフターフォローに対する満足度を高めるのも良い口コミを集めるコツです。
ひとりのお客さまに対して60~90分間の枠を取っています。施術の詳細は、まずはカウンセリングを10~15分くらい。カウンセリング時間は、お客さまによって少しずつ違いますが平均するとそれくらいだと思います。続いて、施術時間は30~60分ほど。不安そうな方には、細かく説明を加えて安心感を生みながら施術を進めることもあります。そして最後に、アフターカウンセリングを10分間ほど。アフターカウンセリングでは先ほど言ったとおり、まつ毛エクステを長持ちさせる方法をお話しています
インターネット予約を導入する
現在はインターネットで予約したいというニーズも高いため、予約システムを導入すると集客に有利です。実際にインターネット予約を導入すると、来店顧客数の増加につながった事例もあります。電話対応にかける時間を減らせるため、店舗内の顧客対応に集中できる点も魅力です。
サロンのオープン時間ではない早朝や深夜に予約を入れてくださっているお客様も多く空き枠が埋まりやすくなりました。またサロンでの電話対応が少なくなってよりお客様に集中できる環境になりました。
急なキャンセルがあった時にもメール配信をすぐに行うなど集客が効率的にできるようになり客数増につながっています。
バランスよく予約時間を埋めることで、サロンワークの効率化に成功した事例もあります。
リザービア導入前はいつお客様からご予約が入るか分からない状況で、お店を開けていても無駄な時間が多く、自分の時間を持つことがなかなか出来なかったですね。自分で時間をコントロールできなかったので、いつも気を張ってスタンバイしていて、休んでいても休めない状況がずっと続いていました。
リザービアを導入してからは営業時間の10時から20時まで、予約をきっちり入れられるので、その時間内でおさまる導線を自分で考えて組み立てることで、サロンワークやお客様とのやりとりなど、無駄な動きがなくなりました。
インターネット予約は集客や業務効率化につながるため、開業当初から導入を検討するのもおすすめです。
まとめ
- エステサロンを開業する場合は初期費用だけではなく運転資金も考慮して資金を準備する
- 鍼灸師や美容師を雇用して、他店では提供できないまつ毛エクステンションや美容鍼を提供すると競合と差別化しやすい
- スタッフ対応が決め手となってコース契約が取れるケースが多いため、売上を伸ばすためには接客スキルや技術力の高いスタッフを採用することが重要
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部