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美容室の客単価アップ戦略|平均との比較・単価を上げるスタッフ育成法まで解説

美容室の客単価アップ戦略|平均との比較・単価を上げるスタッフ育成法まで解説

  1. 美容室の客単価に関する基礎知識
    1. 客単価の定義
    2. 客単価の計算方法
    3. 客単価の重要性
  2. 美容室の平均客単価
    1. エリア別の平均客単価
    2. メニュー別に見る平均客単価の違い
    3. 年代・性別別の平均利用額
  3. 美容室の客単価が上がらない原因とその対策
    1. カウンセリング不足
    2. 価格設定の問題
    3. 顧客満足度が低い
    4. 追加サービスの魅力不足
    5. 商品販売の不十分
  4. 美容室の売上げアップに欠かせないデータ
    1. 客単価
    2. 来店数
    3. リピート率
  5. 美容室の客単価を上げる方法
    1. 美容師の提案力を強化する
    2. 顧客データを活用する
    3. 高単価メニューを開発する
    4. 顧客満足度を高める
  6. 美容室の店販を活用して客単価を上げるコツ
    1. 顧客ニーズに合わせた商品をそろえる
    2. 施術に合わせた商品をそろえる
    3. 商品知識を高めるスタッフ教育を行う
    4. ディスプレイの方法を見直す
  7. 美容室の付加価値を高めて客単価を上げる方法
    1. ヘアケアメニューを充実させる
    2. スカルプケアメニューを充実させる
    3. 高いデザイン性を強調する
  8. 美容室の客単価アップに必要なのは育成と採用
    1. 技術力と接客力を兼ね備えた即戦力を採用する
    2. 他の美容師を育成できる人材の採用
  9. 美容室の客単価を高めるスタッフの育成方法
    1. カウンセリング力を高める方法
    2. 提案力を高める方法
    3. 接客スキルを高める方法
    4. 技術力を高める方法
  10. 美容室の単価アップで注意すべき落とし穴
    1. 価格の不透明感
    2. 技術力の不信感
    3. コミュニケーション不足

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、美容室の平均客単価は「女性が7482円」であり、「男性が4708円」となっています。あなたのサロンの数字と比べて、どうでしょうか? 「少し低いかも……」と感じたなら、客単価の見直しが必要かもしれません。

客単価は、美容室経営の土台です。利益を確保し、安定した売上げをつくるために欠かせません。「このままでいいのか?」と悩んでいるなら、今こそ動くタイミングです。

本記事では、全国平均との比較から実践的な単価アップ戦略、そしてスタッフの育成を通じた施策まで、客単価アップに必要なポイントを網羅的に解説します。読み進めていただくことで、あなたのサロンにぴったりのヒントが見つかるはずです。

美容室の客単価に関する基礎知識

美容室経営において「客単価」は、売上げを左右する重要な指標のひとつです。単価がわかれば、現状の収益性や課題が明確になり、改善すべきポイントも見えてくるでしょう。

以下では、まず客単価の定義と正しい計算方法を紹介します。また、なぜ客単価が経営戦略の柱として重視されるのか、その理由についてもわかりやすく解説します。

客単価の定義

客単価とは、顧客ひとりが1回の来店で支払う金額の平均を指します。 総売上げを総来店数で割って算出が可能で、「顧客単価」や「平均単価」とも呼ばれます。

ホットペッパービューティーアカデミーの最新データによると、全国の美容室における平均客単価は、女性が7482円、男性が4708円でした。

ただし、客単価は地域やサロンの立地、提供するサービス内容によっても大きく変動します。まずは自店の数字を把握し、業界全体との比較から課題や可能性を見つけましょう。

客単価の計算方法

客単価の算出方法は、以下のようにとてもシンプルです。

「客単価 =総売上げ ÷ 顧客数」

たとえば、ある月の売上げが30万円で、来店顧客数が50人だった場合、以下のようになります。

「客単価 = 300,000 ÷ 50 = 6,000円」

この数字を把握できれば、サロンの収益性や課題が浮き彫りになります。売上げを高めるには「客単価」「来店数」「リピート率」をいかに伸ばすかが重要です。とはいえ、まずは現状の単価を把握しておきましょう。

客単価の重要性

客単価は、サロンの売上げや安定的な経営を左右する重要な指標です。「多くのお客様に来てもらうこと」も大切ですが、それ以上に「お客様一人ひとりから得られる収益を高めること」が、持続的な成長には欠かせません。

なぜ客単価がそれほど重要なのでしょうか? 理由は大きく3つあります。

  • 少ない来店数でも収益性を確保:特に人手不足や競合が多いエリアでは、安定経営の大きな武器となる
  • サービス向上が結果として顧客満足度アップに貢献:リピートや口コミによる新規獲得にもつながる
  • 売上げ予測や戦略立案に役立つデータを獲得:客単価をもとにした分析は、経営判断の土台になる

客単価を意識した管理と改善を施すことで、単なる数字合わせではなく、サロンの未来を切り開く戦略的な取り組みを実行できるでしょう。

美容室の平均客単価

美容室の平均客単価は、地域や提供メニュー、年代・性別によっても大きく異なります。

以下では、全国の平均データや客層ごとの傾向を紹介しています。これらを参考に、メニューや料金設定の見直しや適正化に役立ててください。

エリア別の平均客単価

美容室の客単価は、地域によって大きく異なります。

たとえば、以下のホットペッパービューティーアカデミーの調査では、全国平均は8746円ですが、北海道は7527円と比較的低め、三重県は1万172円と全国トップクラスの高さを記録しています。

▼全国平均の1回あたりの利用金額

都道府県

平均客単価

全国平均

8746円

北海道

7527円

三重県

1万172円

東京都

9093円

都市部は価格帯が高めで、地方では安価な傾向が見られます。エリア相場に対して自店の単価の妥当性を把握できれば、価格設定やメニュー戦略の見直しに役立つでしょう。

メニュー別に見る平均客単価の違い

美容室の客単価は、施術メニューの内容によって大きく違いがある点を覚えておきましょう。

たとえば、以下の政府統計の総合窓口が公表しているデータからわかるように、メニューによって単価差があります。

メニュー

東京都小売価格(2025年3月)

パーマネント代

9861円

カット代

4280円

ヘアカラーリング代

7137円

一見、カットの料金は他メニューに比べて低く見えます。その一方で、以下のホットペッパービューティーアカデミーの調査結果が示すように「カットの利用率」は最も高くなっています。

1_ホットペッパービューティーアカデミーの各メニューの利用率を表した棒グラフ

そこで、利用率の高いメニューを中心にセットメニューの提案を行い、客単価を引き上げましょう。

たとえば、カットを目的に来店したお客様に、カラーやトリートメントを提案できれば、自然に客単価を高められます。

サロンの強みとなる施術を軸に、「カット+カラー+トリートメント」のようなセットメニューを設計すれば、客単価アップに非常に有効です。

このように、自店のメニュー構成や価格設定を見直しましょう。

年代・性別別の平均利用額

美容室の客単価は、年代や性別によっても大きな違いがあります。

下記のホットペッパービューティーアカデミーの調査データを見ると、20〜30代の女性は特に支出が高く、他の層に比べて高単価を維持しているとわかります。

年代

女性

男性

全体

7482円

4708円

15〜19歳

6539円

4023円

20代

8258円

4877円

30代

7996円

4844円

40代

7901円

4697円

50代

7037円

4871円

60代

6684円

4145円

男女共に20〜30代の客単価が高めで、特に女性の場合平均して1回の支出が多い傾向が顕著です。

つまりターゲットを絞って戦略を立てるなら、20〜30代女性に向けたメニュー開発やサービス設計が、売上げアップに直結する可能性が高いといえるでしょう。

こうしたデータを参考に、自店の来店層と照らし合わせながら、アプローチの方向性を見直してください。

美容室の客単価が上がらない原因とその対策

美容室の客単価が上がらない背景には、いくつかの共通した原因があります。

たとえば「カウンセリング不足」「価格設定のズレ」「提案力の弱さ」など、日々の接客やサービスの中にある小さなズレが、単価の伸び悩みに直結しているケースも少なくありません。

以下では、そんな「ありがちな課題」を整理しながら、すぐに実践できる改善策を紹介していきます。

カウンセリング不足

カウンセリングが不十分な美容室では、顧客の希望を正しく把握できず、結果として施術への不満や客単価の伸び悩みにつながってしまいます。以下は、リスクにつながる具体的な事例です。

  • 要望のズレによる不満:抽象的なカウンセリングでは、顧客の本当のニーズがくみ取れず、「思っていた仕上がりと違う」といった不満が生じやすくなる
  • 技術的なトラブルの発生:髪質や施術履歴の確認が不足すると、色落ちやパーマのかかりすぎなどのトラブルが起きやすくなる
  • 追加提案のチャンスを逃す:悩みや希望を聞き出せないと、トリートメントや商品などの提案ができず、単価アップにつながらない
  • リピート率の低下:満足度が低ければリピート来店の可能性も下がり、売上げも安定しない

こうした課題に対しては、丁寧で戦略的なカウンセリングが必要です。

たとえば、「色が抜けやすい」という悩みに対し、単に「このシャンプーがいいですよ」と勧めるのではなく、原因や対策まで丁寧に説明できれば、信頼感や納得感につながるケースも少なくありません。

信頼度が高まれば、おのずと提案の受け入れ率も上がり、客単価も向上します。積極的に顧客と向き合う姿勢こそが、売上げを大きく左右する大事なポイントです。

価格設定の問題

客単価が伸び悩む理由のひとつに、「価格設定の見直しができていない」という課題があります。開業当初の料金をそのまま維持し、値上げのタイミングを逃しているケースは少なくありません。

たとえば、材料費や人件費が年々上昇しているにもかかわらず価格が据え置きのままでは、十分な利益を確保するのが難しくなります。また、周辺の競合と比べて価格が極端に安いと、サービスの質を疑われかねません。

実際、正モバイル株式会社のアンケート調査では、「美容室を選ぶ際に最も重視するポイント」として、技術力や美容師からの提案をあげる人が多数を占めています。

2_正モバイル株式会社の美容院に求めることについて聞いたアンケート

このことから「安ければいい」という顧客ばかりではなく、内容と価格のバランスを見て判断している層が多いことが読み取れます。

サービスの価値がしっかり伝わっていれば、価格の見直しはむしろ必要な判断です。価格を変更する際は、コストや周囲の相場を踏まえながら、顧客のニーズに合ったメニューを開発しましょう。

加えて「なぜ値上げをするのか」「どんな価値を加えたのか」を丁寧に伝えられれば、顧客の納得感も得やすくなります。価格に見合う内容を提供できれば、結果的に顧客満足度と収益性の両方を高められるでしょう。

顧客満足度が低い

客単価が思うように伸びない背景には、「顧客満足度の低さ」が隠れているケースが少なくありません。施術自体の不満や、スタッフとのやり取りが心地よくないと感じた顧客は、次回の来店をためらい、リピート率が下がってしまいます。

その結果、どれだけ高単価なメニューを用意していても、「このサービスにそこまで払う価値はない」と判断され、選ばれなくなってしまうのです。

実際に、ホットペッパービューティーアカデミーの調査では、美容師との会話が「つまらない・嫌だった」という理由で、同じ美容室にもう行かないと感じた人が4割を超えていたことがわかっています。

▼美容師さんとの会話が嫌だった/つまらなかったから、同じ美容室に「もう行かない」と思ったことはありますか?

3_会話がつまらなかったと感じた美容室には「もう行かない」と思ったことがあるのか聞いたアンケート

こうした事例からも、「施術以外」の部分も顧客満足度に大きく影響しているのが明確です。特に、無理な会話を続けて表面的な接客をしただけでは、顧客との信頼関係は築けません。

満足度を高めるには、まずは丁寧なカウンセリングで悩みや希望をしっかりくみ取りましょう。さらに、施術履歴を活用した提案や、技術・接客の質を高める工夫も求められます。

信頼と満足の積み重ねが、「価格に見合う」と感じてもらえる第一歩です。結果として、高単価メニューの受け入れにもつながるでしょう。

追加サービスの魅力不足

美容室で提供する追加サービスに魅力を感じてもらえなければ、当然ながら客単価は上がりません。特に以下のような理由によって、理想的な単価アップを実現できていない可能性があります。

  • サービス内容やメリットの説明不足
  • 価格の不透明さ
  • 無理な提案による不信感 など

どれだけ提案しても、顧客の悩みに合っていなければ選ばれることはありません。

たとえば、トリートメントやヘッドスパのように「髪がまとまりやすくなる」「リラックスできる」といった効果がはっきりしています。、このような実感しやすいサービスは興味を持たれやすく、提案の軸にしやすいメニューです。

カウンセリングを通じて顧客のニーズを的確に把握し、その上で「なぜそのサービスが必要なのか」をわかりやすく伝えましょう。セットメニューの構築やお得感のある提案を交えることで、自然に客単価を高められます。

商品販売の不十分

商品販売がうまくいかない美容室には、「売り込みへの抵抗感」や「顧客との信頼関係の不足」といった背景があります。美容師自身が「押し売りはしたくない」と思っていると、せっかくのチャンスを逃してしまいがちです。

さらに、商品の魅力や使い方をしっかり伝えられないと、顧客は購入する理由を見出せず、「今回はいいです」と断られてしまうケースも少なくありません。

しかし、店販こそ客単価を高めるための有効なアプローチです。髪の悩みやライフスタイルを丁寧にカウンセリングした上で、それに合った商品を提案すれば、信頼感をベースに自然な流れで購買につなげられるでしょう。

ホットペッパービューティーアカデミーのアンケート調査では、「施術中に商品を試して購入を決めた」と答えた人が約4人に1人いたという結果も出ています。

▼店販商品の購入を決める最も多いシーンは?

4_美容室の店販商品の購入を決める最も多いシーンについて聞いたアンケート

商品を体感しながら説明を受けることで、納得感が深まり、「買ってみたい」という気持ちが芽生えやすくなります。

重要なのは、「売ること」ではなく、「合う商品を丁寧に提案すること」です。

信頼関係がしっかり築けていれば、「あなたがすすめるなら試してみたい」と思ってもらえる場面も増えていきます。客単価アップを目指すなら、商品販売を「無理なく自然に行う提案型のコミュニケーション」へとシフトしましょう。

美容室の売上げアップに欠かせないデータ

美容室の売上げは「客単価×来店数×リピート率」で成り立ちます。

それぞれの数値をバランスよく伸ばすことが理想ですが、なかでも「客単価」の向上は、施策次第で早期に成果を実感しやすい要素です。

まずは自店の現状を数値で把握し、どこに課題があるのかを分析しましょう。効率よく売上を伸ばすための第一歩になります。

客単価

美容室の売上げを構成する3大要素のひとつが「客単価」です。これは、顧客1人あたりが1回の施術で支払う平均金額を指しており、サロンの収益性に直結する重要な指標といえます。

単価を引き上げるには、単に価格を上げるのではなく、「この金額を払ってもよい」と思ってもらえる価値を提供しなければいけません。

たとえば、高単価なセットメニューの導入はもちろん、効果を実感しやすいオリジナルトリートメントの導入も、自然と単価アップにつながる施策です。

また、スタイリング剤やシャンプーなど、顧客のニーズに合った商品の提案に関しても、購入点数の増加を狙えるおすすめの方法といえるでしょう。

無理に売り込むのではなく、顧客の満足度を高めながら単価を上げていきましょう。この視点こそが、継続的な売上げアップの鍵となります。まずは自店の平均客単価を把握し、今後の戦略に活かしてください。

来店数

美容室の売上げアップを目指すなら、「来店数」の増加は欠かせません。これは、一定期間内にどれだけの顧客がサロンを訪れたかを示す重要な指標です。

まず、新規顧客の獲得は欠かせない取り組みのひとつのため、以下のような自店の存在を知ってもらうきっかけ作りを行ってください。

  • 地域密着のチラシ配布
  • SNSでの発信
  • Web広告など

近隣の住民に認知されるだけでも、集客効果は大きく変わります。

一方、リピーターの確保は、費用対効果の高い施策です。来店のたびに特典がもらえるクーポン配布はもちろん、定期的なLINE配信などを活用して、再来店の動機づけを行いましょう。

新規と既存顧客のバランスを意識しながら来店数を伸ばしていくと、安定した売上げのベースとなります。

リピート率

美容室の安定した経営には、「リピート率」の向上も必要です。

これは、初回来店から再び訪れてくれる顧客の割合を示すもので、サロンの信頼度やサービス満足度を可視化するのに欠かせません。

高品質な施術や丁寧な接客はもちろん、施術後のフォローアップも有効です。たとえば、数日後に仕上がりの感想を尋ねるメッセージを送るだけでも、顧客の印象は良くなります。

また、顧客の来店頻度や好みを記録しておくと、「そろそろメンテナンスの時期ですね」といったタイミングのよい提案もできるでしょう。

こうした一人ひとりへの細やかな対応が、次回の来店を自然とうながします。顧客と継続的な関係性を築いていけば、売上げの基盤も安定できるでしょう。

美容室の客単価を上げる方法

美容室の売上げを安定させるには、客単価の底上げが必要になります。ただ価格を上げるだけでなく、顧客が納得して支払いたくなる「価値ある提案」も必要です。

ここでは、提案力の強化から高単価メニューの開発、満足度アップまで、今すぐ実践できる具体策を紹介します。

美容師の提案力を強化する

美容師の提案力は、客単価を引き上げる上で非常に重要な鍵を握っています。特に、施術前のカウンセリングで顧客の髪質や悩み、ライフスタイルまで丁寧にヒアリングする姿勢は欠かせません。

そうした情報をもとに「その人に最適なメニュー」を提案できれば、高価格な施術であっても納得感を持って選ばれる可能性が高まります。

実際に、株式会社ファンくるが行ったファンくる会員に向けた「技術と価格以外で美容室に求めること」という内容のアンケート調査によると、最も多くあがったのが「提案・アドバイス」でした。

5_技術と価格以外で美容室に最も求めることは何か聞いたアンケート

回答者の4人に1人以上が美容師からの積極的な提案を期待しており、提案力のニーズが高いとわかります。

こうしたニーズに応えるには、視覚的なアプローチも効果的です。

たとえば、ビフォーアフターの写真を見せるだけで、施術後の仕上がりを具体的にイメージしてもらえるため、提案に対する説得力が一段と高まります。結果として、リピート率向上にもつながるでしょう。

さらに、施術後に「どうでしたか?」といった何気ない一言を投げかけるだけでも、顧客の本音を引き出すきっかけになります。実際に、以下のような現場の声からも、そうした一言が信頼関係の構築に大きく寄与しているとわかっています。

――お客さまの本音を引き出す、接客のポイントはありますか?

「ファーストカウンセリングの時点で親近感を持っていただけるよう心掛けています。そして、帰りにさりげなく“どうでした?”と聞くことです。いかに本音を引き出すかはスタイリストソムリエの能力です。彼女たちはプロ意識を持って日々接客技術を磨いています」

引用:モアリジョブ|ヘアサロン alotta マネージャー 名取秀さん 

このような積み重ねが、客単価を高める提案力や接客力の土台となります。スタッフ全員が丁寧なカウンセリングを実践できるよう、マニュアル化や仕組みづくりにも取り組みましょう。

顧客データを活用する

顧客データの活用は、客単価を引き上げる上で非常に有効な手段です。

たとえば、過去の施術履歴や好みを顧客カルテに記録しておけば、次回来店時にぴったりのメニューをスムーズに提案できます。事前に準備された内容に沿って説明できれば、納得感のある接客につながるでしょう。

高単価メニューを受け入れてもらうには、顧客の悩みに寄り添った説得力のある提案が欠かせません。その点でも、カルテの情報は大きな武器になります。スタッフが誰であっても同じ提案ができるため、サロン全体の接客レベルも一定に保たれるからです。

さらに、来店履歴や施術メニューを分析すれば、どのサービスがリピートされやすいかが明らかになるでしょう。

このデータをもとに人気メニューの強化や販促施策の改善を図れば、効率よく客単価アップが狙えます。ただ記録するだけでは意味がありません。蓄積された顧客データを現場でどう活かすかが、今後の売上げに直結します。

高単価メニューを開発する

客単価を引き上げるためには、高単価メニューの開発が欠かせません。ただ価格を上げるだけではなく、「払う価値がある」メニューの開発が必要不可欠です。

たとえば、髪質改善トリートメントやダメージを抑えたプレミアムカラーなど、通常メニューにはない「スペシャル感」のある施術は、顧客の満足度を高めやすくなります。結果として、価格が高くても選ばれやすくなるでしょう。

さらに、カット・カラー・トリートメントなどをセットにしたメニューを用意すれば、来店時に複数の施術を選んでもらえる可能性が高まります。お得感を出しつつ自然と単価を上げられるため、導入しやすい施策のひとつです。

その際は、メニュー名や打ち出し方にもひと工夫を加えてみましょう。「ご褒美ケア」といった言葉を添えるだけでも、メニューの魅力が伝わります。

重要なポイントは、価格に見合った価値の提供です。顧客が「高いけど納得できる」と感じれば、高単価メニューはしっかり売上げにつながっていきます。

顧客満足度を高める

顧客満足度の向上は、客単価アップに直結します。満足した顧客は再来店だけでなく、より高価格のメニューや商品にも前向きな姿勢を示しやすくなるからです。

まずは、施術後のフォローアップやアフターケアに注力しましょう。


たとえば「施術して終わり」ではなく、自宅でのお手入れ方法を丁寧に伝えておくと、印象が大きく変わります。

さらに、1週間後に髪の状態を確認する連絡を入れてください。これだけでも、顧客に対する誠実さや安心感が伝わります。こうした対応は、「この美容室なら安心できる」と感じてもらえる要因となり、満足度の向上にもつながります。

加えて、顧客との信頼関係の構築も欠かせません。日常の何気ない会話や細やかな気配りによって、自然と距離が縮まっていきます。


前回の髪型や会話内容を覚えているだけでも、「自分のことを覚えてくれている」と好印象を持ってもらえるはずです。

このような積み重ねによって、「またこの美容室でお願いしたい」と思ってもらえる関係性が育ちます。そうなれば、高単価メニューの提案にも、前向きな反応を得られる可能性が高くなるでしょう。

顧客満足度を高める方法については、以下の記事も合わせて参考にしてください。

美容室の店販を活用して客単価を上げるコツ

美容室の客単価を効率的に高めたいなら、「店販(商品販売)」の活用は欠かせません。

施術による売上げに頼るだけでは、収益の限界も見えやすくなりますが、ホームケア商品やスタイリング剤の販売を取り入れると、1人あたりの売上げを底上げができます。

ただし、単に商品を陳列しているだけでは、なかなか売れません。顧客のニーズに合った商品を選び、施術と連動させた提案を行い、スタッフ全員が商品の魅力をしっかり伝えられる体制を整えましょう。

ここでは、店販を売上げ向上の柱に育てるための具体的なポイントを紹介します。今すぐ取り入れられる工夫ばかりなので、自店の取り組みと照らし合わせながらチェックしてみてください。

顧客ニーズに合わせた商品をそろえる

顧客ニーズに合わせた商品を揃えておくと、店販を通じて客単価を高める上で非常に効果的です。ただし、「何を置くか」だけでなく、「どう把握し、どう提案するか」も重要になります。

まずは、顧客が本当に求めている商品を知るために、以下のような取り組みを行いましょう。

  • アンケート調査:施術後に簡単なアンケートを実施し、サービスや商品への声を集める
  • データ分析:来店履歴や購入履歴などのデータを活用し、顧客ごとの傾向を把握する
  • SNSや口コミの活用:SNSやレビューサイトからニーズの変化を素早くキャッチする

これらの情報をもとに、商品ラインナップを見直したり、個別に合わせた提案につなげていきます。 次に、顧客に「この商品が欲しい」と思ってもらうための工夫を加えてみましょう。

  • 悩みに合わせた商品構成:髪質に合わせた商品をそろえると、自然と興味を持ってもらえる
  • 関連商品の提案:施術で使用した商品をその場で紹介することで、信頼性が高まり購入のハードルも下がる
  • フィードバックの活用:「前回のオイル、どうでしたか?」という声かけができると、顧客の反応が把握でき、次の提案にも活かせられる

ニーズに応じた商品展開と提案の工夫を重ねることで、顧客との信頼関係も深まり、無理なく客単価の向上を目指せるようになります。

施術に合わせた商品をそろえる

施術との連携を意識した商品展開は、店販による客単価アップに効果的です。特に、実際に使用した商品を施術後にそのまま提案できると、顧客がその効果を肌で実感しやすいため、購入へのハードルが自然と下がります。

さらに、顧客の髪の悩みに寄り添った提案をしてください。信頼にもつながり、リピート率の向上も期待できるでしょう。なかには、以下のように施術との相性を考えて、サロン独自のオリジナル商品を開発している美容室もあります。

私は、そういった悲惨な状況を垣間見るなかで『プロのエゴではなく、お客さまのお悩みを根本から解消することが大切だ』と、思いました。そこで試行錯誤を繰り返し、まずはそれらを解消できるとともに、技術のリスクヘッジを可能にし、処方箋としても機能する商品を開発。『Le rond』を立ち上げたのは、その後です。サロンのスタイルとしては、根治を目的とした病院のようなイメージです。

引用:モアリジョブ|Le rond CEO 山本雄紀さん 

施術と商品が一貫していると、顧客にとっても「本当に自分のために選ばれた商品」という印象を与えられます。結果的に、信頼性が高まり、無理なく客単価を高められるでしょう。

商品知識を高めるスタッフ教育を行う

美容室で店販を活用して客単価を上げるには、ある程度の環境構築が必要です。

特に、スタッフ一人ひとりが自信を持って商品を提案できる状態を整えましょう。そのためには、日々の教育が欠かせません。特に以下のような施策が効果的です。

  • 商品研修の実施:新商品が導入される際は、実際に使用して効果を体感する機会を設ける
  • 実践的なトレーニング:ロールプレイなどで顧客対応をシミュレーションする
  • 成功事例の共有:現場の事例を定期的にシェアすることで、チーム全体の意識も高まり、学び合いの文化が生まれる

ただし、どんなに素晴らしい研修でも、スタッフのモチベーションが低ければ意味がありません。商品知識を高める教育を実りあるものにするためには、スタッフの意欲を維持する工夫も必要です。

ディスプレイの方法を見直す

いくら質の高い商品を揃えていても、顧客の目に入らなければ購入にはつながりません。特に、美容室では施術中や待ち時間に視界に入る場所が限られるため、視覚的なアプローチが必要になります。

そこで意識したいのが、効果的なディスプレイの配置と見せ方です。以下のような工夫を取り入れると、自然と購買につながる流れが生まれます。

  • 視線を意識して配置:レジ横などの施術の合間に自然と目に入る場所がおすすめ
  • 手に取りやすく配置:テスターを設置し、顧客が気軽に試せる工夫があると、購入のハードルを下げられる
  • 商品ごとの説明を添付:簡潔なポップで使用方法や効果を紹介し、スタッフが説明できない場面でも魅力を伝える
  • 定期的にレイアウトを更新:新鮮さを保ち、リピーターの目にも留まりやすくする

商品が「ただ置かれている」状態にならないように、意識的に商品を配慮しましょう。魅力的なディスプレイができれば、自然と商品への関心が高まり、結果として客単価の向上へとつながります。

美容室の付加価値を高めて客単価を上げる方法

美容室の客単価を引き上げるには、単に施術メニューの価格を上げるのではなく、「ここでしか体験できない価値」を提供しましょう。

付加価値のあるサービスを設計し、価格に見合う満足感のあるメニューの提供こそが客単価アップの鍵となります。

美容室全体の「価値」の底上げが、他店との差をつけながら単価を高める戦略となるでしょう。そのヒントとなる事例を交えながら、付加価値を高めて客単価を高める方法を紹介しています。

ヘアケアメニューを充実させる

客単価を引き上げるには、「髪をきれいにしたい」という顧客の根本的なニーズに応えましょう。なかでも、実感しやすいヘアケアメニューの充実は、付加価値を高める代表的な戦略といえます。

特に、髪質改善やダメージ補修といった施術は、「髪が扱いやすくなった」「ツヤが出た」といった変化が目に見えてわかりやすく、価格が多少高くても納得して選ばれる傾向があります。

株式会社イーグラント・コーポレーションのアンケート調査でも、「髪のパサつきやうねり」と答えた人数が約4000人と、4割近くの人が悩んでいるという結果が出ています。

6_株式会社イーグラント・コーポレーションの髪の悩みが何か聞いたアンケート

その他の項目も含めると、美容室に来店する顧客の7割以上が髪の悩みを抱えているとも読み取れます。

こうした背景から、悩みに対して明確な効果が期待できるヘアケアメニューは、価格以上の価値を感じてもらいやすいため、客単価を高めるためにも積極的に活用しましょう。

なかでも、髪質改善トリートメントはその代表例です。1回で1万円を超える価格でも、手触りやまとまりの変化を実感しやすく、リピーターを獲得しやすいメニューです。

また、ダメージを抑えたプレミアムカラーなども、他店との差別化を図れる施策として扱いやすいでしょう。さらに近年は、「オーダーメイド施術」による特別感を提供する美容室も増えています。

──具体的にはどのように施術をされているのでしょうか?

1人ひとりにあわせ、トリートメントをカスタマイズできるメニューを提供しています。スタイリストがカウンセリングをしながら、お客さまの髪質を見て、トリートメントを提案します。施術のあと「自分の髪じゃないみたい」ととても喜んでくれる方が多く、最初から手応えを感じました。

引用:モアリジョブ|新・私のトリートメント 山口一人さん

このように、施術そのものに「自分だけの特別感」を持たせることができれば、価格に対する納得感が生まれやすくなります。他店との差別化にもつながるため、高単価でも選ばれる美容室を目指すには有効な戦略といえるでしょう。

スカルプケアメニューを充実させる

頭皮ケアを目的とした「スカルプメニュー」の導入は、美容室の客単価を引き上げる効果的な方法のひとつです。

髪の美しさは頭皮の健康から生まれるという考え方が広まりつつある今、頭皮ケアを求める顧客が年々増加しています。

なかでもヘッドスパは、リラクゼーションを目的とする女性だけでなく、年齢による髪や頭皮の変化を気にする男性にもニーズが広がっており、導入する美容室も増えてきました。

その中で自然と客単価を高めるためには、専門知識をもったスパニストの存在が他店との差別化につながります。以下では、実際にスカルプケアを重視したメニューを導入し、専門スタッフの配置も行った結果、客単価の向上に成功しました。

年齢で髪にツヤがなくなってきた、白髪が増えてきた、頭皮の悩み……それらに応えられるようなところを意識してメニュー構成しています。

髪質改善や水素ケアカラーは人気ですね。専門のスパニストが在籍しているので、ヘッドスパだけでも予約を入れてくださるお客様が多いです。

引用:モアリジョブ|LANVERY 代表 菅野太一朗さん

スカルプケアを通じて顧客の悩みに寄り添い、満足度を高められれば、単価の高いメニューであっても選ばれやすくなります。美容室の新たな付加価値として、スカルプメニューの導入をぜひ検討してみてください。

高いデザイン性を強調する

「空間」や「体験」といった「目に見えない価値」の提供は、美容室の客単価を高める上で重要な要素です。なかでも、内装やメニュー構成など、サロン全体で「デザイン性」を追求することが鍵になります。

特に注目したいのが、空間演出の工夫です。トレンド感のあるアイテムを厳選し、細部までこだわった空間に仕上げられると、非日常的な心地よさを演出できます。

たとえば、以下のような要素にこだわってみましょう。顧客の印象を気軽に変えられるため、客単価を高める際に活用してみてください。

  • 家具
  • 照明
  • 香り
  • 音楽 など

居心地のよさが増せば滞在時間も伸び、自然と追加メニューの提案もしやすくなるでしょう。

また、店舗全体で統一感のあるブランディングを行うのも、目に見えない価値を高めるおすすめの方法です。以下は、デザイン性とメニュー構成の両面から、独自の付加価値を提供している美容室の事例になります。

「カラーも流行りすたりが早いので、薬剤も常に新しいものを取り入れています。カラー剤においても流行りの外国人風の薬剤ばかりでなく、海外から仕入れたものも使用しています。20代半ばから30代のお客さんも多いので、落ち着き感とナチュラルな透明感があるカラー剤をおすすめしたりしています」

引用:モアリジョブ|RITA Hairs オーナー 須恵清光さん 

デザイン性の高さや最新トレンドへの感度が、単価の高いメニュー提案にも直結します。外見だけでなく、施術内容や接客まで含めた「ブランド価値」を意識することが、選ばれる美容室づくりには欠かせません。

なお、詳しく美容室の内装について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

内部リンク:

美容室の内装工事で失敗しない! おしゃれな空間を作るためのポイント

美容室の客単価アップに必要なのは育成と採用

美容室の客単価を上げたいと考えるなら、まず取り組むべきは「人材の採用と育成」です。特に以下の3つの要素を兼ね備えた人材は、顧客の満足度を高める存在として、サロンの売上に直結します。

  • 提案力
  • 接客力
  • 技術力

そのなかでも、お客様との信頼関係を築けるコミュニケーション力は、客単価アップに欠かせない要素といえるでしょう。

ただし、いくら育成に時間をかけても、そもそもの資質が客単価アップに貢献できるレベルに届かない場合もあります。

だからこそ、「どんな人材を採用すべきか」を最初の段階で見極める視点を持ちましょう。スタッフ育成の重要性はもちろんですが、まずは採用の精度を高めることが、長期的な客単価アップの第一歩です。

採用力を強化したい場合は、以下の資料をご活用ください。以下の資料では、美容業界に精通したリジョブが3万5000件以上の最新求人データをもとに、応募されやすい求人原稿の作り方を詳しく解説しています。

技術力と接客力を兼ね備えた即戦力を採用する

美容室の客単価を上げるには、接客力と技術力の高いスタッフの採用が必要です。以下の3つのステップで、即戦力となる人材を見極めやすくなります。

  1. 店舗の理念やコンセプトを明確化:どんなスタッフが合うかを事前に定義する
  2. 必要なスキルを具体的にリストアップ:技術だけでなく接客力も重視しておく
  3. 採用時の評価基準を設定:実技や面接で判断しやすい基準を用意する

店舗の世界観やターゲットに合った人材を採用できれば、サービスの質も自然と向上します。その結果、客単価の高い提案も通りやすくなるでしょう。

他の美容師を育成できる人材の採用

他の美容師を育成できる人材の採用は、美容室全体の技術や接客力を底上げし、結果的に客単価アップへとつながります。特に、下記のような資質を持った人材は、教育役として非常に心強い存在です。

  • コミュニケーション力:相手に応じた説明ができる
  • 高い技術力と専門知識:指導の説得力がある
  • 育成への意欲と責任感:他人の成長を支えられる
  • 柔軟な対応力:個々に合わせた教え方ができる

このような人材を見極めるには、あらかじめ評価基準を明確にし、面接では適性や指導経験、実技での技術力などを丁寧に確認しましょう。

さらに、既存スタッフとの相性をチェックするためにチーム面談を実施し、サロンの理念や価値観への共感度も重視してください。採用後のミスマッチを防ぎ、長期的に活躍してもらうには、こうした視点を持って選考を進めていきましょう。

美容室の客単価を高めるスタッフの育成方法

美容室の客単価を引き上げるためには、スタッフ一人ひとりのスキル向上が必要不可欠です。以下でそれぞれのスキルをどのように育成していけばよいのか、実践的な方法を交えて詳しく解説していきます。

なお、若手の育成について悩んでいる方は、こちらを参考にしてください。

カウンセリング力を高める方法

カウンセリング力を高める上で、まず鍛えたいのがヒアリング力です。顧客の悩みや希望を「どうしたいか」だけで終わらせず、「なぜそうしたいのか」まで掘り下げられる力が必要になります。

この力を育てるには、日常の会話から意識することが第一歩です。たとえば、自由に話せるような質問を用意しておき、相づちや表情でしっかり反応を返す練習をロールプレイで積み重ねましょう。

小さな気配りの積み重ねが、信頼されるカウンセリングにつながります。

提案力を高める方法

客単価アップを狙うなら、スタッフ一人ひとりの「提案力」の育成が欠かせません。特に重要なのは、「自然な流れ」で高単価メニューや商品をすすめるスキルです。

そのためには、まず顧客のタイプを見極めた上で、ニーズに合った提案をする練習が必要になります。タイミングや言い回しによって受け取られ方は大きく変わるため、ロールプレイやトーク事例の共有を通じて、実践的に学ばせましょう。

成功事例をスタッフ間で共有すれば、再現性の高い提案力が身につきやすくなります。提案が「売り込み」ではなく「顧客満足」につながるものであると伝える姿勢も大切です。

接客スキルを高める方法

接客スキルの向上は、顧客満足度を高め、リピートや客単価アップにつながります。

まずは、丁寧な言葉づかいや所作を習得できるよう、定期的な接遇研修を取り入れましょう。顧客がリラックスできる空間づくりや心配りも欠かせません。

また、施術後に「その後の髪の状態はいかがですか?」といったフォローを入れることで、信頼関係が深まり再来店につながりやすくなります。

技術力を高める方法

技術力の向上は、客単価アップに直結する重要な要素であり、基本中の基本です。以下の方法を通じて、スタッフのスキルを効率的に伸ばすことができます。

  • 現場での実践教育を重視:座学よりも実際の施術経験がスキル向上に役立つ
  • 継続的な専門研修を導入:研修を定期的に実施し、トレンドや最新技術を学んでもらう
  • 特化技術を深く習得:カットやヘアカラーなど特定分野に強みを持たせる
  • フィードバックで成長を促進:スタッフ同士の評価やお客様の声を活用して改善につなげる
  • 技術と会話力はセットで育成:提案や説明する力も技術の一部とし、実践的に身につけてもらう

これらを意識して育成を行えば、単価の高い施術にも自信を持って取り組める美容師を育てられます。

美容室の単価アップで注意すべき落とし穴

客単価を高める施策に取り組む際は、売上ばかりに目を向けてしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまいます。どれだけ高単価なメニューを導入しても、顧客の納得感や満足度が伴っていなければ、継続的な来店にはつながりません。

客単価アップは、顧客との信頼関係があってこそ成立するものです。だからこそ、価格の透明性や技術の信頼、そして丁寧なコミュニケーションといった基本を改めて見直しましょう。

価格の不透明感

客単価アップを図る際に注意すべきなのが、「価格の不透明さ」です。

料金体系が複雑で、事前説明のないまま高額なメニューを提案した場合、顧客に不信感を抱かせる原因になります。特に、長年通ってくれている常連顧客ほど、価格の変化には敏感です。

たとえば、「3000円〜」といった表記では、実際にいくらかかるのか伝わりません。追加料金が発生する可能性があるなら、その点をあらかじめ明記しておく必要があります。

また、値上げや新メニューの導入時には、施術前やカウンセリングの段階でしっかりと説明しましょう。価格改定の理由や、その背景にある価値を伝えられると、顧客の納得感を得やすくなります。

価格に関する信頼は、美容室との関係を継続させる大事な要素のひとつです。丁寧な説明を心がけながら、慎重に進めていきましょう。

技術力の不信感

客単価アップを目指す上で見逃せないのが、技術力に対する顧客の信頼です。いくら高単価なメニューを用意しても、担当美容師に不安を感じていれば選ばれる可能性は極めて低いでしょう。

縮毛矯正の施術後に、髪がまっすぐになりすぎて不自然な仕上がりになった場合、原因としては薬剤の選定ミスやアイロン操作の加減が不適切だった可能性が考えられます。

このような仕上がりでは、顧客の信頼を大きく損ねてしまい、結果として来店をためらわせる要因にもなりかねません。

こうしたトラブルが続けば、「高い料金を払う意味がない」と感じ、他の美容室に移ってしまうのは時間の問題です。安心して任せられる技術力があるかどうかは、単価を向上させるための最も基本的な土台といえるでしょう。

コミュニケーション不足

客単価を上げたいという思いが先行しすぎると、知らず知らずのうちに「コミュニケーション不足」に陥るケースがあります。

特に、施術後のケア方法や次回の提案をしないまま終えないようにしましょう。顧客は放置されたような印象を受け、不信感につながる恐れがあります。

また、追加メニューや商品を勧める際も注意が必要です。たとえば、縮毛矯正やトリートメントの施術中に必要以上のオプションを立て続けに提案した場合、「押し売りされた」と受け取られるケースも珍しくありません。

納得感のある提案には、日頃の丁寧な説明や信頼関係が不可欠です。

まとめ

美容室の客単価を上げるには、単純に価格を引き上げるだけでは不十分です。「顧客満足度」を高めながら、自然なかたちで客単価の底上げを目指しましょう。

施術の質や提案の説得力、接客の丁寧さなどの細やかな積み重ねが、結果として売上アップへとつながります。

  • 提案力の強化:カウンセリングを通じて、顧客に合った高単価メニューを自然に提案する
  • 顧客データの活用:施術履歴や好みに基づいたパーソナライズ提案で納得感を高める
  • 付加価値メニューの導入:髪質改善やスカルプケアなど、価格以上の満足を届ける
  • 店販の仕組み化:ニーズに合った商品を整え、信頼できるスタッフの提案で購買につなげる
  • 接客・技術の底上げ:スタッフ育成を通じて、満足度の高いサービスを安定して提供する

顧客に「高いけど、それだけの価値がある」と感じてもらえる美容室こそが、単価アップを実現できる店舗です。数字の裏にある「信頼」や「満足度」に目を向けながら、長く選ばれ続けるサロンづくりを目指しましょう。

関 慎一郎(Seki Shinichiro) プロフィール画像
執筆者情報
関 慎一郎(Seki Shinichiro)
美容師として8年間サロンワークを経験。その後、現場の声を活かしながら、Webマーケティングによる集客戦略の立案、補助金制度を活用した資金繰りの改善などに取り組み、創業40年以上の老舗美容室の経営に携わる。Bizリジョブ編集部では、現場と経営の両方を経験した視点から、美容サロンが抱える採用や集客などの課題解決に貢献できるよう、リアルで実践的な情報を発信。