採用力を強化するには?美容業界で成功している事例や具体的な強化方法を紹介
採用がうまくいっていない企業は、採用力を強化する必要があります。しかし実際には、「効率的に人材を採用する方法がわからない」「採用力を強化する方法を知りたい」といった課題や悩みを抱える企業も多いのではないでしょうか。
実は、採用力が高い企業と低い企業には、それぞれ特徴があります。まずは、それらを理解して、採用力強化に活かすとよいでしょう。
この記事では、採用力の定義や重要性、採用力が高い企業や低い企業の特徴と共に、採用力を強化する方法や美容業界での事例について解説します。小規模企業における採用力強化への取り組み方が理解できるので、ぜひ最後までご覧ください。
採用力とは
採用力とは、事業の成功や世代交代、売上向上などの目標に向け、同志となる人材を集めるための戦略や実行力を指します。一般社団法人「日本採用力検定協会」によると、採用力の定義は「組織および社会に有益な採用活動を設計・実行する力」であり、以下の要素で構成されます。
- パースペクティブ(採用に対する視座)
- マインド(採用に向き合う姿勢)
- ナレッジ(採用を良くするための知見)
- スキル(採用を良くするための技能)
- アクション(採用における意思決定)
これらの要素に取り組むことが採用力の強化につながります。
採用力を強化させる重要性
採用力を強化する重要性が、中小企業や小規模事業者を中心に高まっています。人材採用の手段・ノウハウや情報発信に限りのある中小企業や小規模事業者では、採用力不足が原因で経営の課題を抱えるケースが増えているのです。
「中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドライン(改訂版)」によると、多くの中小企業が人材に関連した課題を抱えています。
以上のうち、「必要な人材の不足」や「人手不足」などの課題は、採用力を強化すると解決できることです。
しかし近年の日本では、少子高齢化による労働人口の減少で売り手市場になっています。そのため、中小企業がこれまでと同じ採用方法をとった場合、知名度が高い企業や規模が大きな企業に優秀な人材をとられてしまう恐れがあります。
中小企業も工夫次第で、採用力を強化して自社にマッチした人材を確保できるでしょう。自社が求める人材を確保するためにも、中小企業こそ採用力の強化に取り組む必要があります。
採用力が高い企業の特徴
採用力が高い企業には共通点があり、主に以下の6つの特徴が挙げられます。
- 採用の目的が明確
- 採用ターゲットが明確
- 採用担当者と面接官の認識が統一されている
- 適した採用手法を選んでいる
- 企業の魅力を発信している
- 離職率が低い
以上の特徴をもとに、採用力を強化するためのポイントを解説します。
採用の目的が明確
採用活動の主な目的は、人手不足の解消や事業課題の解決、組織の活性化などです。例えば、新規事業に向けた人材を確保したい場合と、既存業務の欠員補充が必要になった場合では、採用ターゲットの条件や人数は異なります。
採用力の高い企業は自社の課題を整理し、採用の目的を明確にしているため、事業計画に沿った人材や人数を確保できます。採用の目的が定まっていない場合は、以下を吟味して採用の目的を明確にしましょう。
「なぜ人材を採用する必要があるのか」
「いつまでに採用しなければならないのか」
「どのような業務に従事してもらうのか」
採用ターゲットが明確
採用では自社が求める人材を具体化して条件を絞り、採用ターゲットを明確にする必要があります。条件を絞る際には、スキルや経験だけではなく、考え方や価値観なども具体的にすることが大切です。
採用担当者だけで考えるのではなく、現場へのヒアリングも実施しましょう。現場の意見や実際に活躍している人材を参考にすると、より具体性のある採用ターゲットを設定できます。採用ターゲットが具体性を帯びると、採用基準も明確になるため、ミスマッチの防止にもつながるでしょう。
リジョブでは、採用ターゲットを明確にするためのノウハウを提供しています。手順を詳しく知りたい場合は、無料でダウンロードできる下記の資料をご覧ください。
採用担当者と面接官の認識が統一されている
企業によっては、社長や現場管理者などの採用担当者ではない人が、面接を実施するケースがあるでしょう。採用力が高い企業では採用基準が統一されているため、誰が面接を担当しても面接を受けた人材に対する評価がぶれません。
採用基準の統一を図るためには、面接評価シートの利用をおすすめします。質問項目や評価項目が記載された面接評価シートを使うと、だれが面接官を担当しても、同じ基準で人材を評価できます。それにより、採用のミスマッチの防止にもつながるでしょう。
適した採用手法を選んでいる
採用方法には求人サイトやリファラル採用など、さまざまなものが存在しており、企業規模や採用ターゲットによって適した方法は異なります。自社に適した採用方法を選択している企業は、採用ターゲットに出会いやすくなります。
例えば、専門的なスキルを求めているのにもかかわらず、新卒向けの求人サイトに求人広告を出しても、求める人材と出会える可能性は低いでしょう。求めている職種専用の求人サイトがあれば、そこで募集をかけたりスカウトしたりすると、採用ターゲットに出会える確率が高まります。
採用ターゲットが集まる媒体を見つけ、そこで採用活動をすることが大切です。
企業の魅力を発信している
採用力が高い企業では、企業の魅力を発信し、その魅力に惹かれた人材を集めています。魅力的な情報として挙げられるのは、技術や労働条件、福利厚生などです。職場の雰囲気も魅力のひとつになるでしょう。
しかし「アットフォームな職場」といった曖昧なメッセージを伝えただけでは、具体的にどのような雰囲気なのかイメージできません。写真や動画を使い、職場の雰囲気や従業員の人柄がわかるような情報を発信すれば、リアルな情報を伝えられます。
例えば、福井県を中心にコンセプト型の温浴施設を展開する「越のゆグループ」は、社長や従業員が動画に出演して、企業の働き方や福利厚生を紹介しています。実際に職場で働くスタッフが動画に出演することで、職場の雰囲気やスタッフの人柄などをはじめとした企業の魅力を伝えることに成功しています。
動画にインパクトを持たせ、求職者の立場から「ここで働いてみたい」と思える情報を発信することがポイントです。
離職率が低い
採用力が高い企業の特徴として、離職率が低いことも挙げられます。前述したように、採用活動の目的は人材の入社ではありません。人手不足の解消や事業課題の解決、組織の活性化などの目的は、すべて人材が入社したあとに取り組む内容です。
そのため、離職率が高い企業は採用基準が曖昧なため、採用ターゲットから外れた人材を獲得してしまいます。採用ターゲットから外れた人材を採用した場合、入社後にミスマッチが発生してしまうでしょう。
いくら多くの人材を採用したとしても、採用活動の目的を果たしたとはいえません。一方、採用力が高い企業は、採用ターゲットに近い人材を獲得できているため、入社後も活躍し続けてくれます。入社後に活躍し続けてもらうためには、採用ターゲットに近い人材かどうかを判断できる基準を設けておくことが大切です。
また人材側のニーズに応えるためにもターゲットを決め、以下の点を検討することも大切です。
- どのような表現をすれば、採⽤ターゲットが魅⼒的に思うのか︖
- 採⽤ターゲットが使う求⼈サイトはどのようなものか︖
- 採⽤ターゲットが求める給与はどれくらいなのか︖
詳細については下記の資料にまとめましたので、無料でダウンロードしてご覧ください。
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採用力が低い企業の特徴
採用力が高い企業と同様に、採用力が低い企業の特徴にも共通点があります。主な特徴として挙げられるのは以下の5つです。
- 採用ターゲットに求める条件が高い
- 採用戦略が明確ではない
- 採用担当者と現場の連携が取れていない
- 採用担当者のリソースが不足している
- 離職率や内定辞退率が高い
ここでは、それぞれの特徴について解説します。
採用ターゲットに求める条件が高い
採用ターゲットに求める条件が高いと、求人への応募者が減り、採用につながらないケースがあるため注意しましょう。採用ターゲットの条件を明確にすれば、採用基準も明確になるため、採用ミスマッチの防止にもつながります。
しかし、求めるレベルが高かったり条件が多かったりする場合、それを満たす人材が見つからない可能性があります。採用条件として設定した条件に優先順位をつけ、ターゲットの範囲を限定しすぎないようにしましょう。
採用戦略が明確ではない
採用戦略が明確ではないことも、採用力が低い企業の特徴に挙げられます。このような企業では、採用ターゲットや基準を設定したものの、求める人材に出会う機会が少ないため、採用がうまくいかなくなる傾向があります。
これは、採用する目的が曖昧で戦略を立てていないことが原因です。自社の課題を整理し、目的や目標を明確にしなければ、採用戦略は立てられません。採用目的や採用目標を明確にしたうえで、採用ターゲットとの出会い方を戦略的に考える必要があります。
採用担当者と現場の連携が取れていない
採用がうまくいかない企業の中には、採用担当者だけで採用活動を進めているケースがあります。採用担当者だけで採用活動を進めると、現場が求めていない条件の人材を募集してしまいます。その場合、たとえ採用できたとしても、入社後に採用ミスマッチが発覚する可能性があるでしょう。
採用ターゲットの設定には、現場の意見が欠かせません。現場の課題や求める人材要件を把握し、それを解決できる人材を採用して、はじめて採用活動の目的が達成できます。そのため、採用担当者と現場で連携を取り、条件をすり合わせることが大切です。
採用担当者の人数が不足している
採用担当者の人数が不足していることも、採用力が低い企業の特徴のひとつです。採用活動には、採用戦略の策定や取り組みだけでなく、応募者対応や内定者フォローなどの業務が存在します。しかし、採用活動の業務量を把握せず採用担当者の人数を抑えた結果、一つひとつの対応が遅れて人材を採用できないケースがあります。
採用活動は、企業にとって大切な人材を確保するための重要な業務です。業務の重要さを理解したうえで業務量を把握し、必要な人数を採用業務に割きましょう。社内の人的リソースが不足しているのであれば、業務の一部を外部委託するのもひとつの手段です。
内定辞退率が高い
採用力が低い企業の特徴には、内定辞退率が高いことも挙げられます。リジョブの調査をもとに、求職者の辞退理由を挙げると次の通りです。
以上の理由による内定辞退を防ぐためには、求人広告の作成時と面接時に次のポイントを意識することが大切です。
求⼈広告作成時のポイント |
⾯接時のポイント |
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内定辞退の理由別に対策方法を詳しく紹介した資料を準備しましたので、詳細については下記よりダウンロードしてご覧ください。
採用力を強化する方法
採用力が低い場合は、以下の手順で採用力強化に取り組む必要があります。
- 採用目的の見直し
- 採用基準やターゲットの再考
- 採用市場・競合他社の分析
- 自社の強みを言語化
- 職場環境の改善
- 採用手法の選定
- 面接の強化
- 内定後のフォロー
ここでは、それぞれの手順のポイントについて解説します。
採用目的の見直し
採用がうまくいっていないと感じた場合、まずは自社の採用目的を見直します。採用目的を明確にすれば採用方針が決められます。自社の課題を整理し「なぜ人材を採用する必要があるのか」「どうすれば採用成功になるのか」を明確にしましょう。
例えば「毎年採用しているから」「欠員が出たから」は、採用目的とはいえません。人員を増やさなくても、業務改善で解決できるケースもあります。「〇〇業務に従事できる人が不足している」「店舗を増やすため店長クラスの人材が必要」のような、具体的な業務や課題と連動した目的にしなければ、採用方針も決められません。
目標についても「1年間で〇〇部門に2名採用する」「採用コストを15%削減する」のように、具体的な数字で設定することにより、達成率が測れ、今後の改善に活かせます。
採用基準やターゲットの再考
採用ターゲットからの応募が少ない場合は、採用基準や条件が適切ではない可能性があります。採用条件にはスキルや経験を設定するだけでは不十分で、考え方や特性などの条件を設定することも大切です。一方で条件が高すぎたり多すぎたりする場合は、基準を下げたり条件を減らしたりする必要があります。
ただし、基準を下げすぎて自社の課題解決や目標達成につながらなければ意味がありません。優先順位や譲れない条件を明確にすることがポイントです。また、採用ターゲットの設定には、現場の意見が欠かせません。現場とすり合わせを行い、実態の伴った採用ターゲットを設定しましょう。
採用市場・競合他社の分析
採用ターゲットの条件を見直しても応募が少ない場合、市場や競合が提示している労働条件のほうが好待遇と思われている可能性があります。特に、給与が市場より大幅に下回っていた場合、どれだけ職場環境が良くても選んでもらえない恐れがあります。
市場や競合の求人情報を確認したうえで自社と比較し、労働条件を見直すことが重要です。競合と比較することにより、気付かなかった訴求ポイントが見つかるケースもあります。競合を分析しながら求職者目線での訴求ポイントを探すようにしましょう。
自社の強みを言語化
自社の訴求ポイントが見えてきたら、自社の強みを言語化します。強みと聞くと「業界No.1」「特別な設備」のようなものをイメージするかもしれませんが、福利厚生や評価制度、教育制度なども自社の強みになりえます。
またキャリアパスを明確にしておけば、入社後の働く姿がイメージしやすくなるため、採用ターゲットからの興味を惹けるでしょう。
ただし、アピールを意識するあまり、誇張した情報や普段と異なる職場風景を伝えてはいけません。ありのままの情報を伝えるとともに、自社の強みや特徴を伝えられる方法を試行錯誤することが大切です。
リジョブでは、企業の価値観を言語化し、ターゲットに伝えるメッセージを作成するためのノウハウを提供しています。手順を詳しく知りたい場合は無料でダウンロードできる下記の資料をご覧ください。
職場環境の改善
訴求ポイントが見つからない場合は、職場環境を変える必要があります。近年では、働き方の多様化が求められるようになってきました。前述した福利厚生や評価制度以外にも、臨機応変なシフト対応や家賃補助も強みになります。
これらは特別な設備が必要なものではありません。採用ターゲットに求められている条件を考え、自社が合わせていく意識を持つことが大切です。改善点が思いつかない場合は、従業員にヒアリングするのも1つの方法です。
採用手法の選定
採用ターゲットの条件を見直し、自社の強みを発信しても応募が少ない場合、採用手法が適切ではない可能性があります。採用ターゲットが利用していない媒体に求人票を載せても、求める人材とは出会えません。
例えば専門的な資格や技術を持っている人材を求めている企業であれば、総合型の求人サイトよりも専門分野に特化した求人サイトに求人広告を掲載したほうが採用ターゲットと出会う可能性は高いでしょう。採用ターゲットがよく利用する媒体を調べ、その媒体で募集をかければ、採用ターゲットの目に留まる確率が上がります。
求人媒体の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
面接の強化
人材を見極め、自社が選ばれるためには、面接の強化も重要です。採用ターゲットからの応募が集まっても、人材を見極められず採用のミスマッチが発生しては、採用の成功にはつながりません。面接は、書類だけではわからない情報を取得するとともに、自社を選んでもらうためのアピールができる場です。
評価基準を決めたうえで面接評価シートを作成したり、面接の流れや質問内容、回答に対する判断基準をマニュアル化したりすれば、企業として面接の品質を均一化でき、採用ミスマッチを回避できます。
また、面接官に対する訓練も必要です。面接の進め方や注意点を理解したうえで面接に挑みましょう。面接も業務の1つであることを認識し、業務改善を続けることが大切です。
内定後のフォロー
内定を出したとしても、辞退を選択する人が多い場合、内定後のフォローが不十分な可能性があります。そのような場合は、入社意欲を高めるような施策を実施して、内定後のフォローを手厚くするとよいでしょう。
株式会社ディスコキャリタスリサーチの調査をもとに、入社意欲が高まったフォローを紹介すると次のとおりです。
内定者懇親会や社員を交えた懇親会など、入社後に関わりを持つ人間同士で交流できる機会を設けると入社意欲が高まるようです。
さらに社内や施設などの見学会を通して、入社後の働き方についてイメージしてもらうのもおすすめです。
採用力強化に成功した事例
採用力の強化方法は企業規模によって異なり、同じ美容業界でもさまざまな取り組み方が存在します。ここでは、美容業界で採用力強化に成功した事例について解説します。
美容室「チョキペタ(ChokiPeta)」
美容室「チョキペタ」の主要なターゲット顧客は40代後半から60代の主婦です。カットの中心はメンテナンスになるため、美容師には新しい技術を求めていません。そのため、採用ターゲットは客層と同じシニアの休眠美容師としました。
さらに、シャンプーやレジなどの作業を機械化し、スタッフの作業負担を軽減しました。技術面で不安を感じる必要がないことを発信することで、採用ターゲットからの応募を集めることに成功しています。チョキペタは採用ターゲットの明確化と独自の訴求により、採用力強化に成功した事例です。
参考:【驚きの採用戦略】成長を続ける会社の超効率的社員育成法|DIAMOND online
美容鍼サロン「HariFa」
鍼灸サロン「HariFa」では、6年連続離職率0を達成しました。離職率0の達成につながった工夫の一つとして、働き方についてメリットだけではなくデメリットも伝えることが挙げられます。
働き方がマニュアル化されていることをデメリットとして伝え、自分の考えで施術をしたい鍼灸師とのミスマッチを防いでいるのです。
「HariFa」の採用時には、99%が美容鍼のお客さまなので、体の治療もしたいという人には向いていないということ、施術内容やお客さまに話す内容なども1から10まできっちり決まっているので、自分で施術内容を組み立てたいという人には不向きであることははっきり伝えています。このすり合わせがとても重要だと思っています。
その結果、この鍼灸サロンは入社後に「想像していたのとは違う」と思われずに済むため、スタッフの離職率を抑えることに成功しています。
美容室「花みずき」
エステやアイケアのサービスも提供している美容室「花みずき」は、Instagramを使った採用力強化に取り組みました。従業員全員にデジタル名刺のように活用するアカウントを持ってもらいました。
美容室や自社化粧品、振袖紹介・着付け紹介のサービスごとの公式アカウントも開設し、それぞれのアカウントで各サービスの情報を提供しています。さらに、各従業員の個人アカウントを開設し、担当する施術や得意なサービス、スキルなどを紹介しています。
また、従業員向けのInstagram研修を実施し、効率的な投稿方法や共同投稿機能を学んでもらいました。使い方を学んだうえでアカウントを運用することにより、運用改善開始から半年で、採用につながる結果が出ています。
花みずきは、SNSを活用して従業員のスキルをアピールすることによりスタッフのファンを増やし、採用力強化に成功した事例です。
参考:地方の美容室がSNSで集客・採用を成功させた方法 – 従業員が主体となるInstagram運用の秘訣|れきしみらい
内定辞退を防止するポイント
採用ターゲットに近い人材に出会い、内定を出したとしても、入社してもらえるとは限りません。魅力的な人材であれば、競合からも内定をもらっている可能性もあるでしょう。最後に自社を選んでもらうためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
- 内定前から仕掛ける
- 候補者の情報を集める
- 内定に重みをもたせる
- 候補者の心の流れを想定する
- 採用チームの役割を明確にする
内定前から仕掛ける
内定辞退の対策は、採用プロセスの段階から取り組むことが大切です。インターンシップや面接、選考試験などの採用が決まる過程で、求職者は入社の意向を固めるケースが多いです。
現に、株式会社ディスコの調査でも、就職決定企業で働きたいと具体的に思ったタイミングに対する質問の回答は以下のとおりでした。
「内定が出てから」と回答したのはわずか9.9%であった一方、「面接等の選考試験を重ねていく中で徐々に」と回答した人が26.4%と最も多い結果となっています。そのため、採用活動の序盤から自社の魅力を伝え続けることが大切です。
候補者の情報を集める
採用活動で候補者の採用を決定づけるのに大切なのは情報です。以下の情報を集めておけば、候補者への接し方や連絡頻度を変えられます。
- 候補者が他に応募している企業の情報
- 自社の優先順位
- 自社に対して魅力を感じている部分
- 不安に思っていること
候補者が他に応募している企業の情報や自社の優先順位は、面接時やカジュアル面談時の会話の中で探るとよいでしょう。応募時点で自社の優先順位が高いのであれば、連絡頻度を多くし、自社が必要としていることを伝えるとよいでしょう。競合がわかっていれば、競合の結果が出る時期に連絡し、状況を把握しておくことも重要です。不安に思っていることがわかれば、その不安への対策を講じられます。
早めの情報収集を心がけ、事前に対策を講じることが大切です。
候補者の承認欲求を満たす
人は自分が軽視されていると感じると、ネガティブな感情を抱きます。そのため内定辞退を防ぐためには、候補者の承認欲求を満たし、候補者に「自分は重視されている」と感じてもらうことが大切です。
そのためには、採用の過程で候補者に丁寧な対応を心がけましょう。たとえば、候補者に次のように思ってもらえると、競合よりも採用で優位になれます。
- 自分を理解してくれている
- 本音でコミュニケーションを取れている
- 一緒に働きたいという想いが伝わってくる
- 限られた枠に選んでもらえた
- 期待されている
たとえば候補者の連絡に対して迅速に対応したり、メッセージの文言を工夫したりすることを心がけてみてください。
そうすると、選考の過程で自社が候補者にとって特別な企業であると思ってもらえるでしょう。
候補者の心の流れを想定する
候補者は、選考フェーズによって心が変化するものです。心の流れを想定し、デザインできれば、候補者との関係性が強くなります。心の流れをデザインする方法として、マーケティングで用いられている「カスタマージャーニーマップ」があります。
以下の表は、選考フェーズごとの候補者の心の流れを「ジャーニーマップ化」したものです。
フェーズ |
候補者の心 |
自社の目的 |
施策例 |
---|---|---|---|
認知 |
良い企業に出会いたい |
採用ターゲットに自社を認知してもらう |
|
興味 |
企業の情報が欲しい |
採用ターゲットに自社を詳しく知ってもらう |
|
応募 |
企業で働くイメージを持ちたい |
就職先候補に選んでもらう |
|
選考 |
最終選考まで進むための決め手が欲しい |
自社の魅力と課題を伝える |
|
内定/入社 |
入社に対する不安を払拭したい |
入社の意思を高めてもらう |
|
カスタマージャーニーマップの作成により視覚的に候補者の心の流れを把握でき、選考フェーズごとの施策を検討できます。
採用チームの役割を明確にする
前述したように、採用活動には多くの業務があり、1人の担当者がすべての採用活動を担当するのは現実的ではありません。採用チームを作り、業務ごとに担当者をつけることが大切です。
例えば、ビズリーチでは面接官の役割をフォロワー・モチベーター・インパクター・クローザーの4つに分け、それぞれの役割に担当者を置いています。リソースが限られている中小企業でここまで役割を分けるのは現実的ではありません。
しかし、マーケターやコーディネーター、リクルーターなどの役割を設定し、担当者をつけることはできるでしょう。特に、マーケターはマーケティングの知識が求められる役割のため、専門の人材を置く必要があります。1人の担当者に負担がかからないような役割分担にすることがポイントです。
まとめ
採用力とは、事業の成功や世代交代、売上向上などの目標に向け、同志となる人材を集めるための戦略や実行力のことです。近年の日本における労働市場は売り手市場になっており、中小企業がこれまでと同じ採用方法をとった場合、知名度が高い企業や規模が大きな企業には太刀打ちできません。そのため、中小企業こそ採用力の強化に取り組む必要があります。
採用力が高い企業の特徴は以下のとおりです。
- 採用の目的が明確
- 採用ターゲットが明確
- 採用担当者と面接官の認識が統一されている
- 適した採用手法を選んでいる
- 企業の魅力を発信している
- 離職率が低い
採用力は、自社に適した戦略を実行すれば企業規模に関係なく強化できます。本記事で紹介した強化方法や事例を参考に、自社に適した方法で採用活動に取り組みましょう。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部