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個人事業主が従業員を雇う際の手続きは?雇用するメリットや採用時のポイントも解説

個人事業主が従業員を雇う際の手続きは?雇用するメリットや採用時のポイントも解説

美容業界は個人事業主が多い業界のひとつです。その中には1人で事業をしていたものの、事業が軌道に乗り、従業員の雇用を検討している方もいるでしょう。しかし、いざ従業員を雇うとなると、以下のような不安を持つ方もいるのではないでしょうか?

  • 労働保険や社会保険、税務関連の書類作成に苦手意識がある
  • 従業員を雇用する前に法人化した方がよいのか知りたい
  • 個人事業主に合った従業員の採用方法がわからない

従業員を雇用する際の手続き業務には各種様式があり、すべて1から作成するわけではありません。本記事で紹介する必要な手続き業務をご覧になることで、問題なく進められるでしょう。

本記事では、個人事業主が従業員を雇用する際の手続き業務のほか、従業員を雇うメリット・デメリットについて紹介します。さらに、法人化を検討する基準や採用方法、採用時のポイントも解説します。従業員の雇用時にすべきことがわかりますので、ぜひ最後までご一読ください。

個人事業主が従業員を雇う際は手続きが必要

従業員とは、企業や個人事業主と雇用契約を結んだ労働者のことです。個人事業主が従業員を雇用する際には、主に以下の手続きが必要です。

  • 労働条件の通知
  • 労働保険と社会保険の手続き
  • 税務署への届け出

ここでは、それぞれの手続きについて解説します。

労働条件の通知

労働基準法第15条1項により、雇用主は労働条件を必ず労働者に明示し、書面を交わすように定められています。書面に記載が必要な項目は以下のとおりです。

  • 契約期間
  • 期間の定めがある契約を更新する場合の基準
  • 就業場所
  • 従事する業務
  • 始業・終業時刻、休憩、休日など
  • 賃金の決定方法や支払時期など
  • 退職に関すること(解雇の事由を含む)
  • 昇給に関すること

また、自社で規定がある場合に明示する必要がある項目は、以下のとおりです。

  • 退職手当に関すること
  • 賞与に関すること
  • 食費や作業用品などの負担に関すること
  • 安全衛生に関すること
  • 職業訓練に関すること
  • 災害補償に関すること
  • 表彰や制裁に関すること
  • 求職に関すること

労働条件を通知する際は、厚生労働省が公開している「労働条件通知書」の書式を利用できます。労働者側が希望すればメールでの交付も可能です。ただし、労働条件を定めた書類については、従業員の退職から3年間の保管義務があるため、書面を作成したほうがよいでしょう。

労働条件通知書は厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)」からもダウンロードできます。

労働保険と社会保険の手続き

労働保険と社会保険は、それぞれ以下の総称です。

  • 労働保険:労災保険と雇用保険
  • 社会保険:健康保険と厚生年金保険

従業員を一人でも雇った場合は、労災保険に加入しなければなりません。雇用して10日以内に「労働保険関係成立届」を、50日以内に「労働保険概算保険料申告書」を労働基準監督署へ提出する必要があります。

また1週間に20時間以上、31日間を超えて雇用する見込みがある場合は「雇用保険適用事業所設置届・雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークへ提出する必要があります。

該当した人が退職した場合は「雇用保険被保険者資格喪失届」「離職証明書」の提出も必要です。この2つの書類を提出すると、失業者は失業保険を受け取れます。

個人事業主で従業員5人未満の場合、社会保険の加入は任意です。仮に加入する場合、雇い主と従業員が、給与の14~15%にあたる保険料を負担する必要があります。

労働保険と社会保険の手続きは、社会保険労務士への委託を検討するのもおすすめです。

税務署への届け出

所得税法第230条により、初めて人を雇用する場合、所在地の所轄税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出することが義務づけられています。雇用して1カ月以内の提出が必要です。

ただし、個人事業主の開業とともに雇用する場合は、開業届に雇用する旨を記載すれば「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要はありません。

税務署への届け出は税理士への委託も可能で、e-Taxソフトで届出書の作成と提出もできます。「給与支払事務所等の開設届出書」の申請書様式は、国税庁の「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」からダウンロードできます。

個人事業主が従業員を雇用すると発生する業務

個人事業主が従業員を雇用した際に発生する業務として、以下が挙げられます。

  • 予算の見直し
  • 源泉徴収の算出
  • 所得税の納付
  • 法定4帳簿の管理
  • 経費管理
  • 年末調整
  • 雇用契約書の締結
  • 就業規則の作成

ここでは、それぞれの業務について解説します。

予算の見直し

従業員を雇用すると、人件費や社会保険、源泉徴収など新たな固定支出が発生します。予算を把握しないまま資金繰りを続けた結果、給与や源泉徴収額を支払うお金がない事態に陥るケースは珍しくありません。個人事業主として従業員を雇用する以上は、短期・中期・長期での予算計画を立てることが重要です。

源泉徴収の算出

従業員を雇用した場合、源泉徴収義務者となります。そのため、従業員の給与を計算する際に源泉徴収する所得税額も計算しなければなりません。源泉徴収税の金額を算出するためには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と「源泉徴収税額表」が必要です。

申請書は、従業員に毎年記入してもらう必要があります。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の様式は、国税庁「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」からダウンロードが可能です。

「源泉徴収税額表」は、国税庁が公式サイトで公表しています。令和7年分の源泉徴収税額表は、こちらからダウンロードできます。ただし、1年ごとに公表しているため毎年確認が必要です。

申告書と源泉徴収税額表をもとに、源泉徴収税の金額を毎月計算します。従業員には、給与から源泉徴収税額を天引きした金額を支払います。

所得税の納付

原則として従業員から源泉徴収した所得税は、毎月納付する必要があります。納付期限は、給与を支給した翌月の10日までです。税務署から送られてくる納付書に金額を記載し、金融機関で納付します。

ただし、従業員の数が10人に満たない場合は、あらかじめ、税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、半年分をまとめて納付できます。「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、国税庁の「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」からダウンロードが可能です。

また、源泉徴収は国に納付すべき所得税を個人事業主が一時的に預かる仕組みです。そのため、源泉徴収簿を作成し、その金額を管理しなければなりません。

法定4帳簿の管理

労働基準法第107~109条労働基準法施行規則第24条の7により、従業員を雇用した場合は、以下の法定4帳簿の作成および管理が義務付けられています。

帳簿の種類

ルール

必須記載項目

労働者名簿

事業場ごと、労働者ごとに作成

・氏名

・生年月日

・履歴

・性別

・住所

・従事する業務

・雇入年月日

・退職年月日

など

賃金台帳

事業場ごとに作成

・氏名

・性別

・賃金計算期間

・労働日数

・労働時間数(深夜・休日・残業時間を含む)

・基本給及び手当額、賃金控除額

など

出勤簿

(労働時間を記録した帳簿)

事業場ごとに作成

・氏名

・出勤日

・出勤日ごとの始業・終業時間

・休憩時間

・残業時間

など

年次有給休暇管理簿

労働者ごとに作成

・有給休暇取得日

・有給休暇付与日

・有給休暇残日数

もともとは「賃金台帳・労働者名簿・出勤簿」の3つでしたが、2019年4月1日からの年5日の年次有給休暇の取得が義務化されたことにより、年次有給休暇取得管理簿が追加になりました。保存期間はいずれも5年間(経過措置により当分の間は3年間)です。

適切な作成や保存を行わなかった場合、労働基準監督官による行政指導を受けるほか、悪質な場合は30万円以下の罰金を科される可能性があります。

厚生労働省は、労働者名簿・賃金台帳・年次有給休暇管理簿の様式を公開しています。各様式は以下のサイトからダウンロードが可能です。

出勤簿は、必要な項目が記載されていれば、タイムカードや勤怠管理システムから出力したものでも構いません。他の帳簿についても同様です。管理面や入力面で効率的な方法で作成・管理しましょう。

経費管理

従業員が仕事で購入したものや交通費なども、経費として管理・精算しなければなりません。特に、従業員が経費を自分の判断で使用したり、立て替え払いをする際には、トラブルを避けるために注意が必要です。

トラブルを防ぐためにも、経費の対象になるものや建て替えた場合の対応を明文化しましょう。

また、経費管理は事業状況の把握や資金需要の予測にもつながるため、規程や管理台帳を作成することをおすすめします。

年末調整

年末調整は、1年分の所得税を精算し、払い過ぎた所得税を還付したり、足りなかった分を追加で徴収したりする手続きです。

12月分の給与を支給する前に、従業員から提出を受けた「給与所得者の配偶者控除等申告書」と「保険料控除申告書」をもとに調整額を算出します。

各申告書は、国税庁のサイトからダウンロードできます。

個人事業主と従業員がそれぞれ用意するものは以下のとおりです。

個人事業主が用意するもの

従業員に用意してもらうもの

・給与所得者の扶養控除等申告書

・給与所得者の保険料控除申告書

・配偶者特別控除申告書

・給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書

・前職の源泉徴収票

・生命保険料控除証明書

・地震保険料控除証明書

・国民健康保険、国民年金保険料の金額

・小規模企業共済、心身障害者扶養共済制度の掛金額

・住宅借入金等特別控除の明細書

12月下旬に年末調整の税額を計算し、翌年1月10日までに税務署に納税し、1月31日までに源泉徴収票を従業員に配布します。知識を必要とする業務であるため、税理士に委託するのもひとつの方法です。

雇用契約書の締結

従業員を雇う際、雇用契約書の作成は法律で義務づけられていません。しかし、労働条件や賃金を明確にし、双方の合意を文書化すると、採用後のトラブルを防ぐ効果があります。そのため、雇用契約書を作成しておくことが推奨されます。 

就業規則の作成

労働基準法第89条により、従業員を10人以上雇う事業所では個人・法人問わず就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが義務づけられています。

就業規則を定めると、従業員とのトラブル防止につながります。厚生労働省「モデル就業規則について」では、就業規則の規程例が記載されているため、参考にしましょう。

個人事業主が従業員を雇うメリット

個人事業主が従業員を雇うメリットとして、以下があげられます。

  • コア業務に注力できる
  • 事業拡大につながる
  • 家族の給与を経費にできる

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

本業に注力できる

従業員を雇用すれば、雑務に時間をとられず本業に注力できます。

サーブコープの調査をもとに、個人事業主が負担に感じる業務について特に回答の多かった項目をあげると次のとおりです。

  • 経営上の書類作成(経費管理、確定申告書など)
  • 書類の整理
  • 業務上の書類作成(提案書、見積書、請求書など)
  • 掃除(デスク回り、オフィススペース、トイレなど)
  • 電話の対応
  • 来客の対応

従業員を雇用すると、以上の業務をサポートしてもらったり、全般的に任せたりできます。

売上拡大につながる

忙しくて人手不足になると、顧客対応が間に合わずに売上げの機会損失につながる可能性があります。しかし、新しく従業員を雇用することで売上げの機会損失をカバーできるため、売上げの拡大につながる可能性があります。

サーブコープの調査によると、負担に感じる業務を外注した場合のメリットとして、「売上げ拡大につながる」「事業や企業の戦略を練れる」との回答が得られました。

たとえば美容室であれば、1人で対応できる人数には限界があります。美容師を1人雇用すると、対応できる人数は2倍です。美容師だけではなくアシスタントも雇用し、効率的に対応できるようになれば、さらなる売上げ向上も期待できます。

家族の給与を経費にできる

家族を雇用した場合、青色申告による確定申告を行えば「青色事業専従者控除」として、家族への給与を経費に計上できます。その場合、給与を経費に算入したい年の3月15日までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しなければなりません。

青色申告では複式簿記による記帳が求められるため、簿記の知識がない方は、会計ソフトの導入や税理士への依頼を検討しましょう。

個人事業主が従業員を雇うデメリット

個人事業主が従業員を雇うデメリットとして、以下のものが挙げられます。

  • 採用活動に工数がかかる
  • 手続きや保険料の負担が生じる

ここでは、それぞれのデメリットについて解説します。

採用活動に工数がかかる

採用活動の中でも特に工数がかかるプロセスとして募集があげられます。ヒトクルが調査した結果によると、全体の57.8%が募集に手間がかかっていて改善したいと回答しています。

採用活動の中で手間がかかっていて改善したいプロセス

1.採用活動のなかで手間がかかっていて改善したいプロセス

募集の工数を削減する方法として、求人サイトの使い方を丁寧にレクチャーしてくれたり、原稿作成をサポートしてくれたりする媒体を利用するのもおすすめです。

たとえば、美容ヘルスケアに特化した「リジョブ」では、チームフォロー体制が整っており、求人制作代行も受け付けています。求人サイトを使った採用活動への工数を減らしたい場合は、ぜひリジョブにご相談ください。

人件費の負担が生じる

厚生労働省の中小企業庁「令和5年中小企業実態基本調査」によると、個人企業における経費に対する人件費の比率は以下のとおりでした。

 

全業界

建設業

製造業

生活関連サービス業,娯楽業

経費に対する人件費の比率

27.4%

19.3%

26.8%

25.7%

売上げに対する人件費の比率

10.5%

7.0%

12.0%

14.3%

20万円の従業員を雇っている場合の売上げ

約261万円

約286万円

約167万円

約140万円

※20万円の従業員を1人雇っている事業所の売上げ=20万円/売上げに対する人件費の比率

全産業をもとにすると、たとえば100万円の経費がかかる場合、そのうちの約27万円は人件費です。

さらに20万円の給与で従業員を雇っている事業所の場合、売上げに対する人件費の割合をもとに平均的な売上げを逆算すると約261万円です。つまり約261万円の半分にあたる130.5万円の売上げを事業主ひとりで達成していれば、もうひとり従業員を雇うと261万円を達成できる可能性があります。

これにより、全業種では従業員を一人雇うことを検討する目安として、売上げ130.5万円がひとつの基準といえます。

このように、それぞれの業種で売上げに対する人件費の割合を使って売上げを逆算すると、従業員の雇い始めを検討する目安を把握できます。

美容室の場合、経験則によると80万円が目安という意見もあります。

私の経験をもとにさせていただくと、

スタッフに20万の給与を払ってもオーナーが食べていける売上げを一人で出している状態

があげられます。

その辺を、私の経験をもとに考えると・・・

一人で80万の売上げが安定して出していれば、人を増やしてもよいところだと思います。

引用:脱・職人アカデミー| 一人美容室経営からスタッフを雇用するタイミング

また、費用だけでなく手続きを行う負担も発生します。これらの手続きを個人事業主が1人で行うのは簡単ではないため、社労士や税理士などの専門家への相談が必要です。専門家に支払う費用も発生するため、従業員の雇用と手続きにかかる費用を算出した上で、雇用を判断することが大切です。

従業員を雇うのであれば法人化を検討したほうがよい?

従業員を雇うことを考えた際に、法人化を検討する方もいるでしょう。個人事業主のまま従業員を雇用する場合と、法人化する場合の大きな違いは、税金です。それぞれにかかる税金は以下のとおりですが、ここでは所得税と消費税、住民税を中心に個人事業主と法人との税金の違いを説明します。

 

個人事業主

法人

国税

・所得税

・消費税

・復興特別所得税

・法人税

・消費税

・特別法人事業税

地方税

・個人住民税

・個人事業税

・地方消費税

・法人住民税

・法人事業税

・地方消費税

国税庁「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」によると、年収が1000万円を超えた個人事業主は、翌々年には自動的に消費税の課税事業者となり、消費税の負担が発生します。

法人化すれば年収の扱いが一度リセットされるため、2年間の節税効果があります。法人化後の年収が1000万円を下回る場合は消費税の課税事業者にならないため、消費税節税のメリットがありません。

所得金額が800万円を超えると、所得税や住民税といった税金の負担額は、個人事業主よりも法人の方が低くなる可能性があがります。個人事業主には累進課税が適用され、所得が大きくなるほど税金も増えるからです。国税庁の「所得税の税率」によると、税率は以下のように7段階存在しており、最大で45%の税率が適用されます。

課税される所得金額

税率

控除額

1000円~194万9000円まで

5%

0円

195万円~329万9000円まで

10%

9万7500円

330万円~694万9000円まで

20%

42万7500円

695万円~899万9000円まで

23%

63万6000円

900万円~1799万9000円まで

33%

153万6000円

1800万円~3999万9000円まで

40%

279万6000円

4000万円以上

45%

479万6000円

総務省「個人住民税」によると、住民税には所得に応じて負担額が変わる「所得割」と、所得額に関係なく一定額を負担する「均等割」があります。所得の影響を受ける所得割の税率は、一律で10%で、その内訳は以下のとおりです。

  • 政令指定都市:道府県民税2%+市民税8%
  • 政令指定都市以外:道府県民税4%+市町村民税6%

個人事業主の所得にかかる税率は、最大で55%です。一方、国税庁の「法人税の税率」によると、普通法人で資本金1億円以下、年800万円以下の所得金額であれば税率は15%です。所得が年800万円を超えても税率は23.2%です。

総務省「法人住民税」によると、法人住民税は法人の所得に応じて負担額が変わる「法人税割」と所得額に関係なく一定額を負担する「均等割」があり、法人税割の税率は一律で7%です。均等割の税額は資本金等の額と従業員数によって区分されており、資本金が1000万円以下であれば、都道府県民税均等割は2万円、市町村民税均等割は従業員が50人以下であれば5万円です。

また、法人化した場合、社長個人の所得は経費として計上できます。「給与所得控除」として所得から一定額を差し引いた金額が課税所得となり、所得税が課税されます。一般的に個人事業の所得が800万円を超えるのであれば、法人化を検討してもよいでしょう。

ただし、法人化には費用がかかり、赤字になったとしても税金の支払いが必要です。税理士に法人化した場合の税金のシミュレーションをしてもらい、メリット・デメリットをふまえたうえで法人化を検討しましょう。

個人事業主が家族を雇う際の手続き

個人事業主の中には、家族に手伝ってもらいながら事業を営んでいる方もいるでしょう。家族を雇用する場合、一般の従業員とは手続きが異なるため、注意が必要です。ここでは、個人事業主が家族を雇う場合の手続きについて解説します。

青色申告は「青色事業専従者給与に関する届出」を提出する

所得税法第57条によると、個人事業主が青色申告の場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に届け出れば、家族への給与を経費として計上できます。給与額を必要経費に計上する年の3月15日までの提出が必要です。

ただし、その年の1月16日以降に開業した場合や、家族に給与を支払うことになった場合は、その日から2カ月以内に提出しなければなりません。初めて給料を支払う場合は「給与支払事務所等の開設届出書」の提出も必要です。

青色事業専従者給与に関する届出書は、国税庁「青色事業専従者給与に関する届出手続」からダウンロードできます。

白色申告は事業専従者控除を受ける

個人事業主が白色申告の場合は、家族への給与を経費として計上できない代わりに「専業専従者控除」が受けられます。国税庁「青色事業専従者給与に関する届出手続」によると、事業専従者控除額は、以下の低いほうの金額が適用されます。

  • 事業専従者が配偶者の場合は86万円、配偶者でなければ1人につき50万円
  • 事業専従者控除の適用前の事業所得の金額を「事業専従者の数+1」で割った金額

事業専従者控除を受けるためには、確定申告書にこの控除を受ける旨とその金額などの事項を記載するとともに、以下の条件を満たす必要があります。

  • 白色申告者と共通の資金で生活を営む配偶者やその他の親族である
  • その年の12月31日現在での年齢が15歳以上である
  • 1年間のうち6か月を超える期間、白色申告事業者の営む事業に専ら従事している

例えば、給与を支払っている家族が学生や会社員の場合、白色申告事業者の営む事業に専ら従事しているとは判断されないため、事業専従者控除の条件は満たせません。

家族従業員は雇用保険に加入できない

労災保険や雇用保険は、労働者を守るための保険です。家族従業員の場合、事業主と近い関係にあり解雇される可能性は低いため、労災保険や雇用保険には加入できません。ただし、厚生労働省「労災保険の適用者について」によると、家族従業員でも以下の条件を満たしていれば労災保険に加入できます。

  • 事業主の指揮命令に従い業務を行っていることが明確な場合
  • 同居親族以外に一般の従業員がおり、就労実態や賃金が他の従業員と同様である場合

個人事業主が従業員を採用する方法

個人事業主が従業員を採用する際は、小規模企業の採用手法を参考にするとよいでしょう。マイナビ「中途採用状況調査(2023年版)」によると、50名以下の企業で中途採用につながった求人媒体の上位3つは以下のとおりでした。

求人媒体

特徴

ハローワーク

・厚生労働省が運営する総合的雇用サービス機関

・無料で利用できる

・比較的高い年齢層が利用している

・採用人数1名の採用が1番多い媒体

求人サイト

・Web上に企業の求人情報を掲載し、転職希望者から応募を集める

・遠方の優秀な人材に対しても募集情報を届けられる

・求人数と掲載内容の情報量が多い

・50名以下の企業での利用率が高い

・平均採用人数が1番多い媒体

求人検索エンジン

・さまざまな求人サイトに掲載されている求人情報を検索できる

・求人サイトに掲載すると、自動的に求人検索エンジンにも掲載されるサービスがある

・多くの求人検索エンジンは、クリック型課金

求人媒体以外でも、自社サイトやSNSを活用すれば、コストを抑えて求人できます。ただし、これらの方法は、広告の作成や運用に工数がかかるうえに、露出の少なさから応募数が集まりにくい可能性も考えられます。

SNSの反応に合わせた求人広告の作成や、SNSから採用ページへの流入経路を作るなど、それぞれの手法を組み合わせることもひとつの方法です。

個人事業主が従業員を雇う際に検討したいポイント

個人事業主が従業員を雇用する際に検討したいポイントとして、以下の3つがあげられます。

  • 業務委託や副業人材の活用も選択肢に入れる
  • 正社員以外の雇用形態も選択肢に入れる
  • 年齢や報酬の条件を見直す

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

業務委託の活用も選択肢に入れる

業務委託であれば成果に対して報酬を支払うため、業務量に合わせた依頼が可能です。限定した事務作業や資料作成などの業務を業務委託として任せたり、短時間で終わる業務を副業人材に依頼したりする方法もあります。

また従業員を雇用する際の煩雑な手続きも不要なため、人材確保にかける負担も軽減できます。業務委託の活用事例として「株式会社afrodite」があげられます。

すべてのスタッフを業務委託契約で雇用しています。ただし、普通の業務委託とは違い、

「業務委託と教育サロンのハイブリット」が目的。業務委託というと個人でお客さまと一対一の関係を築くイメージが大きいですよね。「afrodite」はその考えではなく、すべてのお客さまはスタッフ全員の担当であるという精神を持つようにしています。

たとえばお出迎えやお会計、シャンプーなど、担当者本人が忙しい場合はお客さまをお待たせするのではなく、手の空いているスタッフがサポートします。このようにみんなで協力し合うことはサロンで働く上で当たり前のことだと思っていて。「1人で売上をあげられるわけではない」という意識を持って働いてほしいとスタッフには話しています。

引用:モアリジョブ|株式会社afrodite 代表取締役 和田光弘さん

正社員以外の雇用形態も選択肢に入れる

正社員以外のアルバイトやパートであれば、短時間勤務での雇用が可能です。アルバイトであれば、忙しい時間帯にスタッフ数を増やして対応したり、短時間で事務作業を任せたりといった活用ができます。アルバイトを活用した事例としてエステサロン「クラン・シュプール」が挙げられます。

サロンをやって行く上で、実はスタッフを育てることが一番大変ですし時間もかかります。ですから、出産後も継続して働けるように子育て支援を積極的に行っています。フルタイムが難しければ契約社員とかアルバイトで働いてもらったり、産後4ヶ月で復帰したスタッフがいるんですが、子どもが保育園に入るまでの半年くらい、弊社のマネージャーでもある私の夫が子守りをしてその間に仕事をしてもらっていたこともあります

引用:モアリジョブ|クラン・シュプール 代表 松本如央さん

年齢の条件を見直す

経験がある年齢層をターゲットにしたほうが、教育の時間を短縮でき、自身の業務に専念できます。その事例として、オーガニックサロン「ORGANIC MOTHER LIFE」があげられます。

前職のサロンで働いていたとき、技術が上手い人より社会経験値の高い人の方が指名がつくことに気づいたんです。一般的なエステサロンでは、若い子の方が体力があるので重宝されますよね。でも、お客様からすると「若い」はあまりよいことではありません。技術もトーク力も未熟なわけなので。

40〜50代の社会経験値が高い人の方がお客様は安心します。お子さんがいる人だと子育てを通じてありとあらゆる社会経験を積んでいるし、女性の人生の一番重い部分を背負ってきたわけですから。

引用:モアリジョブ ORGANIC MOTHER LIFE 代表 坂田まことさん

まとめ

個人事業主が従業員を雇用する際は、以下の手続きが必要です。

  • 労働条件の通知
  • 労働保険と社会保険の手続き
  • 税務署への届け出

雇用後も、予算の見直しや源泉徴収の算出、法定4帳簿の管理など、やるべき業務が多く発生します。

従業員の雇用を考えるのであれば、本記事で解説したポイントを押さえることが重要です。また、人材を確保するのであれば、業務委託するのもひとつの方法です。事業の状況や予算を把握した上で、適した方法を選択しましょう。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。