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人手不足に効果的な対策とは?解消した事例を交えて解説!

人手不足に効果的な対策とは?解消した事例を交えて解説!

テレビ朝日のニュースで、12月の繁忙期に顧客からの電話が集中して、人手が足りずに電話対応できなかったことが取り上げられました。人手不足問題が深刻化する現在の日本において、このような出来事はどこの業界でも起こりえます。

とくに比較的スタッフ数の少ない個人事業主や中小零細事業者は、顧客対応できなくなる状況を避けるために、早めに人材不足対策をすることをおすすめします。本記事では、人材不足の要因と具体的な対策について解説します。

人手不足問題とは

2023年12月時点で、全業種の有効求人倍率は約1.3倍で求人数が求職者数を上回る状況です。さらにコロナ禍以降は企業活動も活発になり、人手不足が以前よりも顕著になりました。

業種によっては、人手不足が進んで採用が難航している企業も見られるようです。ここでは、人手不足問題について詳しく解説します。

全業種の有効求人倍率は約1.3倍

ハローワークのデータを確認すると、令和4年以降は有効求人倍率が約1.3倍で推移しています。

有効求人倍率の推移

求職者数よりも求人数が多い状況で、求人倍率が1.0倍を下回っていた平成24年度よりも人手不足になりやすい状況といえます。

コロナ禍以降の人手不足問題

帝国データバンクの調査によると、人手不足にある企業の割合はコロナ禍によって一旦減少したものの、コロナ禍が収束に向かうにつれて上昇傾向にあります。

人手不足企業の割合(コロナ禍前後比較)

正社員については約半数の企業が人手不足の状態にあり、業種によってはさらに人手不足が深刻化しています。

人手不足の傾向の強い業種

厚生労働省が公開した有効求人倍率をもとに、人手不足の傾向が強い業種の具体例を挙げると次のとおりです。

業種

有効求人倍率

土木

7.11倍

建設

5.73倍

介護サービス

3.49倍

保健医療サービス(看護助手や看護補助者)

3.38倍

生活衛生サービス(美容関連や調理師など)

3.12倍

土木や建設は有効求人倍率が高く人手不足の傾向にありますが、サービス関連の職業も有効求人倍率が3倍と高い傾向を示しています。

人手不足の要因は?

労働政策研究・研修機構の調査によると、人材獲得が困難になっていることが最大の人手不足の要因でした。

雇用人数が不足している理由

そのほかの要因として、従業員の離職や業務効率の悪さに関連する要因が人手不足につながっているようです。上記のデータをもとに、人手不足の要因について重要なものから順に説明します。

要因1:スタッフ採用の難しさ

スタッフ採用の難しさについては、とくに即戦力となる人材の採用難易度が高いようです。BIZREACHの調査によると、即戦力採用の難易度が上がっていると回答している会社が7割以上に上ることがわかりました。

「3年前に比べて即戦力人材の採用の難易度が高くなっていますか?」に対する回答

なかでも、管理職やマネージャーのポストで働ける人材の難易度が上がっているようです。また即戦力を採用できないと、必要なスキルや知識をもった人材が社内にいなくなるため、さらに人手不足が顕著になるでしょう。

要因2:離職率の高さ

厚生労働省の調査によると、離職率の高い業界は宿泊業や飲食業、美容師やエステなどの生活関連業です。

産業別入職率・離職率

離職する要因としては、従業員のニーズや能力に対して職場環境および業務内容がマッチしておらず、待遇や働き方に不満をもつことが考えられます。さらに、定年退職や再雇用期間の満了を迎えた従業員が増加すると、それにともない離職者が増えます。

要因3:業務効率の悪さ

ITやAI、機械設備の導入が進まないと業務効率が悪化して、人手不足を実感しやすくなります。

また、業務効率が悪いと従業員の負担拡大や長時間労働につながる恐れがあります。従業員の待遇面にも関わることなので、業務効率の是正は人手不足を解消するうえで重要な取り組みのひとつといえるでしょう。

働き方改革の一環としても、業務効率の改善が勧められています。

企業にとっては、長時間労働を是正し、処遇の改善を図るためには、業務効率の改善を行うとともに、省力化投資を増加させる必要があり、働き方改革はそうした動きを促進することが期待される。同時に、労働者にとっては、処遇の改善や長時間労働の是正は働くこと自体のモチベーションを高めるとともに、自己啓発を含めた能力開発を行うインセンティブを高めると考えられる。

引用:第1節 働き方改革が求められる労働市場の課題|内閣府

人手不足への代表的な対策方法と取り組み方

人手不足への代表的な対策について次の3つを紹介します。

  • スタッフの採用率を上げる
  • スタッフの離職率を下げる
  • 業務の効率化を図る

それぞれについて具体的な取り組み方を解説します。

対策1:スタッフの採用率を上げる

スタッフの採用率を上げるためには、まずは採用ターゲットを集客して、必要な人材の応募につなげるようにすることが大切です。ここでは、採用率を上げるためのポイントを解説します。

ここではポイントについて簡単に解説するので、詳細については、次の記事も参考にしてください。

人材採用を成功させる方法とは?新卒と中途、アルバイトごとにコツも紹介!

採用方法を検討する

採用ターゲットを集客するために、まずは採用方法を検討して、求める人材をなるべく多く集められるようにしましょう。

利用者数で考えると、求人情報サイトははじめに考えられる選択肢のひとつです。リクルートの調査によると、求職者が利用する情報源は求人情報サイトが最も多い結果でした。

求職者が利用する情報源

採用数を増やすために、まずは母集団の多い媒体を利用して求職者にアプローチし、応募者数を増やすことを考えるとよいでしょう。

さらに人材の質を重視して、自社にマッチした人材を集めたい場合は、特化型求人サイトの利用を検討することがおすすめです。特化型の求人サイトは、特定の分野に集中してアプローチすることを目的にしているため、サイトを利用する求職者も高い技術力を備えている傾向にあります。

実際に、美容・リラクゼーション分野で働く人材は、美容系専門の特化型求人サイトを一般の求人サイトよりも優先して利用する傾向にあります。その傾向は、「(株)リクルート ホットペッパービューティーアカデミー 美容就業実態調査2023」からもわかります。

美容・リラクゼーション分野で働く人材が利用する媒体

求職者のニーズを理解する

マイナビのキャリアリサーチLabの調査によると、ノルマがきつそうな会社は避けられる傾向にあります。

行きたくない会社の特徴

逆に考えると、ノルマがきつくない職場は求職者のニーズに合致する可能性があります。ノルマを設けていない場合は、それを求職者にアピールするとよいでしょう。もしくは個人のノルマではなく、チームで売上げを作る社風であることもよいアピールポイントになります。

ノルマを設定すると、顧客との信頼やスタッフ間の人間関係の悪化につながると考えている経営者もいます。ノルマを設けないと良好な人間関係を築くことにつながり、それが求職者に対してアピールできるポイントになるかもしれません。

うちのお店ではスタッフに物販のノルマも課しておらず、基本的にはノーセールスです。これはスタッフの負担削減の意味もありますが、お客さまからみたときに、あのスタッフが良かった、悪かったという印象をなくしたいからなんです。みんなが同じサービスを提供できるというスタンスを大切にしています。

引用:モアリジョブ

うちのお店ではスタッフに物販のノルマも課しておらず、基本的にはノーセールスです。これはスタッフの負担削減の意味もありますが、お客さまからみたときに、あのスタッフが良かった、悪かったという印象をなくしたいからなんです。みんなが同じサービスを提供できるというスタンスを大切にしています。

引用:モアリジョブ

日々のサロンワークでは売上ノルマを課さないことも重要です。スタッフ同士でお客さまを奪い合うことにつながり、セラピスト間がギスギスすることでサロン全体の空気感が悪くなりますからね。

引用:モアリジョブ

スタッフにも売上ノルマは課さず、提案や意見があれば伝えやすい環境を意識的に作っていて。今はオープン当初から誰ひとり欠けることなくこのサロンで働いてくれています。

引用:モアリジョブ

また、1990年代後半から2010年生まれのZ世代については、ワークライフバランスを重視する傾向にあります。若年層を採用したい場合は、Z世代のニーズをつかむことも大切です。Z世代の採用については、次の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

Z世代の採用を増やすポイントとは?若年層の特徴や就職観をもとに採用戦略を解説!

対策2:スタッフの離職率を下げる

スタッフの離職率を下げるために、まずは従業員が仕事を辞める理由を確認しましょう。厚生労働省の調査によると、転職者が前職を辞めた理由は次のとおりでした。

仕事を辞めた個人的理由

※厚生労働省の調査資料をもとに作図

男女ともに人間関係が好ましくなかったことや、労働時間および休日、給与などの労働条件に納得できないことで仕事を辞めるケースが多いようです。

それに次いで、仕事の内容に興味がもてないことや能力や資格を活かせないなどの、仕事の配分や人事評価に関わる項目が仕事を辞める理由につながっています。

以上のような仕事を辞める理由をカバーできるような対策を講じると、離職率を減らすことにつながり、人材不足を回避できるかもしれません。

厚生労働省のデータをもとに、離職率を下げるための対策を紹介します。

労働条件の改善

労働条件のなかには給与や労働時間、休日などが含まれます。求職者にあった労働条件へと改善できる場合は、取り組みやすいものから実行するとよいでしょう。

たとえば給与アップが難しい場合は、就業時間を減らすように工夫するのもおすすめです。なぜなら、就業時間は休職者の企業選びに大きな影響を与えるからです。

エン・ジャパンの調査によると、残業の有無や平均時間が企業選びに影響すると答えた求職者が8割以上に上りました。

残業時間が企業選びに影響する度合


労働時間を短縮するための工夫として、選べる働き方制度を導入するのもおすすめです。リジョブ提供の資料でも実例が紹介されているので、参考にしてください。

選べる働き方の導入事例

以上に紹介されているように、働き方を選べると結婚や出産、妊娠、子育てなどのライフイベントで働き方を変えざるおえない既存スタッフの離職を防げます。

求職者へのアピールになるだけではなく、既存スタッフの引き止めにも有効な点は魅力です。

人間関係の改善

株式会社ビズヒッツの調査によると、職場の人間関係でネックになりやすいのは上司や同僚との関係です。

職場の人間関係が難しくなりがちな相手

職場内の人間関係をよくするためには、スタッフ同士で食事に行くような雰囲気を作り、積極的にコミュニケーションをとることもひとつの手段です。

先輩と後輩の間でコミュニケーションを取る時間が減っていることも理由のひとつだと思います。私が若手の頃は、先輩によく飲みに連れていってもらい、仕事やプライベートの相談をしていました。今は、若手が飲みたがらないこともあるかもしれませんが、上手にコミュニケーションを取れない先輩も増えていると思います

引用:モアリジョブ

このサロンは先輩・後輩関わらず仲が良く、営業終わりにみんなでご飯に行くことも多いです。僕もそういうときは毎回断らないし、断りたいと思ったこともありません。先輩たちがフレンドリーにしてくれるので、昔ほど食事の場での礼儀は厳しくないですし、最低限の「気配り」ができれば大丈夫。

引用:モアリジョブ

リーダープログラムを作って、上司の部下に対する接し方の改善に取り組む事例もあります。

管理職向けにオリジナルのリーダープログラムを用意しています。私がこれまで勉強したコーチングの内容や、幼児教育のメソッドなども取り入れたオリジナルのものです。人間が成長する過程を理論的に理解し、現場で実践を含め3ヶ月に渡って学んでいきます。

引用:モアリジョブ

能力評価の適正化

株式会社ライボの調査によると、会社の評価によりモチベーションが下がった原因は成果と報酬が見合っていなかったことが最も多い結果でした。他にも、評価基準の不透明さや上司に対する不満も従業員にネガティブな印象を与えるようです。

モチベーションが下がった原因

能力評価の適正化を進める場合は、以上の不満をカバーするような評価制度づくりを目指すと、評価に不満を持つことで辞める従業員の数を減らせるでしょう。

また、従業員数が数名程度の少ない店舗の場合は、店舗内で働くすべてのスタッフを同じ基準で評価するよりも、個別に面談してスタッフごとに評価基準を設けることがおすすめです。

各店長と社長がしっかり面談をして、その各店長の課題っていうのをお互いに確認して、その課題を克服するために、この半年はこれとこれとこれをやろうと決めて、それに対して評価をしてあげる。全然それでいいと思いますね。

引用:【ネットラジオ】第32回 『従業員10人で接骨院を3店舗経営...|JOHSHIN PARTNERS

個別の評価基準を設けることで、従業員が評価基準を満たすための行動を取りやすくなり、高い評価につながりやすくなります。高く評価されると従業員が自分の承認欲求を満たせるため、能力評価に不満を抱えにくくなるでしょう。

対策3:業務の効率化を図る

業務の効率化を図るためには、業務量を減らしたり、業務内容を標準化したりして誰にでも取り組めるようにするとよいでしょう。

業務量を減らす施策としては、ITシステムの導入が考えられます。一方で業務の標準化については、業務フローのマニュアル化や未経験者が働ける環境の整備などが考えられます。

ITシステムの導入

中小企業基盤整備機構の調査によると、ITシステムの導入の一環として、約40%の企業が顧客データの一元管理に取り組んでいることがわかりました。

DXの具体的な取組内容

顧客管理で扱う情報としては、個人の氏名や住所、電話番号、予約状況、購入履歴などが考えられます。

昨今はこれらの情報を一元管理できるツールも提供されているので、それをうまく取り入れると従業員の業務負担を減らせるでしょう。

たとえば、売上げや在庫情報を一元管理できるポスレジの導入や、店舗端末の入力情報をリアルタイムにスタッフ間で共有できるようなイントラネットの整備などが考えられます。

ポスレジを導入して売り上げを日次で把握。書類はドロップボックスで共有し、イントラネットを整備して情報網も一括管理。全店舗の予約状況はパソコンで把握できるようにしました。そして月次決算を正確に出すところまで精度を高め、パソコン1台あれば施術以外の仕事はすべてこなせる環境を整えたんです。

引用:モアリジョブ

さらに教育システムにもITを取り入れて、新人教育を効率化して既存スタッフにかかる負担を軽減するのもおすすめです。

教える側も教わる側も、効率がよくなることで結果時短にもつながっていると思います。このカリキュラム動画はアプリで見られるように作っていて、閲覧できる最大人数は30人くらいの設定。アシスタントだけが見られるシステムです。カットやパーマなどのコンテンツが各種あり、分かりやすくテロップを入れたりしながら解説しています。基本の技術なのでこれをベースにみんなが同じものを習得していく。多店舗展開になっていくと、教え方や内容にズレが出がちなのでその対策にもなっていくかなと思います。

引用:モアリジョブ

業務フローのマニュアル化

業務フローをマニュアル化する際は、写真や挿絵を盛り込んでわかりやすくすることが大切です。また作成後に、実際にマニュアル通りに業務を進め、さらに良いやり方がある場合は改善を加えると、さらなる業務の効率化につながります。

マニュアルがあると未経験者を雇っても、早めに戦力にしやすい点も魅力です。未経験者を雇うと、雇える人材の幅が広がるので、人手不足を解消しやすくなります。

日々の中での先輩からのサポートはしっかりしていますし、レコードブック共通のマニュアルもあるので、機能訓練が未経験でも一定の指導ができるようになっています。

引用:モアリジョブ

マニュアルをマスターすれば、未経験者でも95%のリピート率が見込めるコツが分かるようにしました。「本当?」と思われるかもしれませんが、実際にエステ未経験だったアイリストの方にマニュアルを元に勉強いただいた結果、研修後にはリピート率95%を達成しているんですよ。

引用:モアリジョブ

教育を充実させる

未経験者を採用して即戦力として働いてもらう手段として、教育の充実も上げられます。

スタッフの教育に関しては、美容師にとって大切な技術や知識といった約30の項目があり、それらを全て数値化し、スタッフ内で順位付けをして自分の足りないところが可視化される仕組みになっています。

引用:モアリジョブ

スタッフの教育に関しては、美容師にとって大切な技術や知識といった約30の項目があり、それらを全て数値化し、スタッフ内で順位付けをして自分の足りないところが可視化される仕組みになっています。

引用:モアリジョブ

入社後は最短1年でスタイリストデビューできるよう、独自のカリキュラムを組んでいます。これは「ALBUMアカデミー」と呼ばれ、週3日はアカデミーのレッスン、残りの2日は配属店舗での実践といった形式が取られています。実践を重視し徹底的に無駄を省いた教育制度が、これまでの常識では考えられないスピード感のデビューを可能にしています。

引用:モアリジョブ

教育制度を整えるためには、教育を受けた従業員を評価する仕組み作りや教育者の養成が欠かせません。

自社で教育制度を整えようとすると、スタッフにかかる負担が大きくなる可能性があります。さらにノウハウも持ち合わせていないため、教育制度自体がうまく機能しないリスクもあるのです。そのため、資金を投入して教育制度を外部委託するケースもあります。

外部委託をする場合は、人材開発支援助成金に申請して助成金を得るのもひとつの手段です。教育に資金を投入する余裕がない場合は、積極的に活用するとよいでしょう。人材開発支援助成金の詳細については、次の記事をご覧ください。

人材開発支援助成金を申請するといくらもらえる?もらうための条件や金額を解説

まとめ

本記事を総括すると次のとおりです。

  • コロナ禍以降は人手不足と感じる会社が増えており、半数以上の会社が人手不足に悩んでいる
  • 人手不足の要因としては、スタッフ採用の難しさや離職率の高さ、業務効率の悪さなどが考えられる
  • 業務の効率化を図ったり、働くための環境や条件を整えたりすることで、スタッフが離職しないようにすることが大切

人手不足対策には、さまざまな手段が考えられます。自社がどのような理由で人手不足に陥っているのかを分析して、効率的に解決を図りましょう。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。