美容・ヘルスケア業界
経営者・採用担当者のためのメディア
セラピストが独立・開業するための手順6ステップ|必要な手続きや失敗しないためのポイントを解説

セラピストが独立・開業するための手順6ステップ|必要な手続きや失敗しないためのポイントを解説

セラピストは業務委託や正社員などさまざまな働き方があり、独立・開業も可能な職種です。

ただ一方で開業は失敗する可能性もあるため、一歩踏み出すのを躊躇している人も少なくありません。

そこで本記事ではセラピストが独立・開業をする際の手順や必要な手続きなどを解説します。失敗しないためのポイントについても触れているので、ぜひ参考にしてください。

セラピストとは?

セラピストとは専門的な技術や知識を用いて、人を癒す仕事を指します。民間のものから医療分野に及ぶものまでさまざまです。

一般的にセラピストと呼ばれる職種は以下の3つに分かれます。

  • リラクゼーション系セラピスト

主にアロマセラピストやリフレクソロジスト、ヘッドスパニストを指します。疲れた人の心身をアロマオイルや専用の溶剤で循環や排出機能を高め、リラックスへと導きます。

  • 医療系セラピスト

理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)もセラピストと呼ばれます。歩く、立つなどの基本動作(PT)、食事や文字を書くなどの応用動作(OT)、言葉によるコミュニケーション(ST)のリハビリを行う仕事です。

  • 心理系セラピスト

心理系セラピストはカウンセリングを通じて、悩みをもつクライアントを解決へと導く仕事です。心の病やメンタルケアが重要視される昨今では、病院やクリニックのほか、福祉施設、企業、教育現場などでも重宝されています。

セラピストが独立・開業するメリット

セラピストが独立・開業するメリットは主に以下の3つです。

  • 成功すれば収入が増える
  • 自分の理想のサロン運営ができる
  • ワークライフバランスが整う

自分の考えややり方でサロン運営できるため、正社員や業務委託で働いているときより上記のメリットを得られる可能性が高まります。

成功すれば収入が増える

セラピストの独立・開業は収入アップが期待できます。

正社員で働くセラピストの平均給与は以下の通りで、国税庁の調査による令和5年の平均給与額である約38万円より低い傾向です。

▼セラピストの平均給与

 

平均給与

リラクゼーション系セラピスト

約22万円(※1)

医療系セラピスト

約32万円(※2)

心理系セラピスト

約25~30万円(※3)

※1 参考 ~求人給与相場が分かる~美容・ヘルスケア業界 業種別×エリア別 平均給与データ 

※2 参考 賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査 | ファイル | 統計データを探す 

※3 参考 東京都の心理カウンセラー求人|indeed

 

一方で日本政策金融公庫の調査によると、開業者の月商は100万〜500万円未満が43.4%ともっとも多い結果となっています。

▼現在の月商(1カ月当たりの売上高)

1.現在の月商

さらに回答者の55.8%が予想月商達成率(※)が100%を超えていると回答しており、独立・開業は雇用されて働くより収入が高くなる可能性が高いといえるでしょう。

※(調査時点の平均月商÷開業前に予想していた月商)×100

自分の理想のサロン運営ができる

開業すれば、自分の理想のサロン運営ができます。

雇用されている場合、意見を取り入れてもらえる場合もありますが、毎回とはいきません。「こうしたほうがいいのに」「お客様の声を反映した施術内容に変えたい」など、改善策や考えがあってもサロンで決まっている内容や方針に従わなくてはならないのが実情です。

日本政策金融公庫の調査によると、約3割の人が「自分の技術やアイデアを事業化したかった」と回答しています。

▼開業動機(複数回答/n=1,768)

開業動機

割合

自由に仕事がしたかった

57.4%

仕事の経験・知識や資格を活かしたかった

45.8%

収入を増やしたかった

45.5%

事業経営という仕事に興味があった

35.5%

自分の技術やアイデアを事業化したかった

30.8%

セラピストとして経験を積み、技術やアイデアがあるのに形にできないモヤモヤを抱えている人は、独立・開業で叶えられるかもしれません。

ワークライフバランスを調整しやすい

上記の開業動機にもあるように、開業の最大のメリットは「自由に仕事ができる」ことといっても過言ではないでしょう。

経営者は裁量権があるため、開業することでプライベートと仕事のバランス調整もしやすくなります。

またセラピストを雇用し、現場を任せられるようになれば、体力的な不安や出産などのライフステージの変化にも柔軟に対応できるようになります。

今は施術をお任せできるフリーのスタッフをおいて、私は昨年で施術を卒業。主に営業活動とよもぎ蒸しの講座をやるなど、新しい試みも始めています。役割分担がより明確になったことで、ワークライフバランスも整うようになりました。

引用:モアリジョブ|RIRACO オーナー 内田知沙斗さん・長崎麻紀子さん

独立・開業のデメリット

独立・開業は良い面ばかりではありません。開業してから疲弊や不安に苛まれないように、開業のデメリット面も理解しておきましょう。

事務仕事など施術以外の雑務が増える

独立・開業すると事務仕事など、施術以外の雑務も多くこなさなければいけません。

セラピストの仕事は施術に関わる時間が大半を占めます。業務委託契約の場合、施術のみという契約で働く人も多くいます。

雇用されている場合でも洗濯やPOP作りなど、事務仕事や雑務も多少ありますが、開業すればさらに多くの業務を自分で行わなくてはなりません。

開業で増える主な業務は以下の通りです。

  • 仕入れなど在庫管理
  • 採用に関わる労務管理
  • 整備や修繕など物理的な店舗管理
  • 売上や運営などの店舗管理
  • 人材採用やシフトなど人材管理

開業してから雑務の多さに疲弊してしまわないように、雇用されているうちにさまざまな経験を積んでおくことをおすすめします。

僕の師匠は、「自分の元で働くからには、ゆくゆくは腕一本で生活できるように」と育ててくれる方でした。(中略)分院長を経験させてもらったのですが、仕事の幅がかなり広がって、そのときが大変でしたね。治療だけでなく保険業務なども全部自分でやるので、そのへんの判断が難しかったです。

引用:リジョブ|川口元郷名倉堂接骨院 森永悠介さん

収入が不安定になる可能性がある

独立・開業は収入がアップする可能性がある一方で、収入が安定しないリスクも伴います。

中小企業庁の調査(※)によると、回答した企業のうち50.1%が「業務量は繁忙期と閑散期の差が激しい」と回答しています。

業種別ではリラクゼーション系セラピストが該当する生活関連サービス業で55.3%、医療系セラピストが該当する専門・技術サービス業で50.3%と平均値より若干高い結果です。

▼事業年度の業務量の変動性(業種別)

2.事業年度の業務量の変動性(業種別)

またリピート顧客が安定して付くまでも収入は不安定です。開業してすぐはリピート顧客の割合が少なく、新規顧客中心となるため、月々の集客にバラつきが出るためです。

日本政策金融公庫の調査でも「資金繰り」で苦労しているとの回答は2番目に多く、開業による収入の不安定さは否めないと考えておくべきでしょう。

※資料出所:中小企業庁委託「小規模事業者の事業活動の実態把握調査」(2016年1月、(株)日本アプライドリサーチ研究所)

セラピストが開業するための手順6ステップ

セラピストが開業する際のステップを解説します。セラピストの種類や事業規模によって異なる点もあるので、自身の開業スタイルに合わせて変更してください。

ステップ1:必要な資格を取得する

まず開業にあたって必要な資格を取得しましょう。

医療系セラピストである理学療法士作業療法士言語聴覚士は国家資格の取得が必須です。とはいえ、理学療法や作業療法は医師の指示なしに行えないため、理学療法士ないし、作業療法士としての開業はできません。

開業権のない理学療法士や作業療法士の場合は開業権のある、柔道整復師などの資格取得をおすすめします。

言語聴覚士は「嚥下訓練」「聴覚検査」など、言語聴覚士法に記されている一部の禁止行為を除いては、医師の指示なく提供可能です。

また施術に必須資格のないリラクゼーション系セラピストや心理系セラピストも、資格取得はサロン経営において強みとなる可能性があります。

▼開業に役立つ資格

リラクゼーション系セラピスト

・アロマセラピスト(日本アロマ環境協会認定:民間資格)

・リフレクソロジスト(日本インストラクター技術協会:民間資格)

・ヘッドスパニスト(日本ヘッドセラピスト認定協会:民間資格)

・あん摩マッサージ指圧師(国家資格

心理系セラピスト

・カウンセリング心理士(日本カウンセリング学会:民間資格)

・臨床心理士(日本臨床心理士資格認定協会:民間資格)

・公認心理士(国家資格

ステップ2:事業計画書を作成する

銀行に借り入れする場合に事業計画書の作成が必要なイメージが強いですが、借り入れしない場合でも事業計画書の作成は、事業の方針やサロン運営シミュレーションをするうえで大切です。

事業計画書に記載する主な項目として「創業動機や目的」「取扱商品・サービス」「取引先」などがあります。

今回は難しい説明は省き、事業計画書の作成になぞって明確にしておくべき4つのポイントを解説します。

事業計画書(創業計画書)の書き方の詳細については、下記「日本政策金融公庫」のサイトで解説しているので参考にしてください。

各種書式ダウンロード|国民生活事業 

1:サロンイメージを決める

まずサロンのイメージを明確化することが大切です。

「ゆったりとくつろげるサロン」「高級感のあるサロン」「ナチュラル志向のサロン」など、どのような雰囲気のサロンを開業したいのか、イメージしましょう。

なおホットペッパービューティーの調査によると、フェイシャルサロンに通う人が今のコースを申し込んだ決め手は「スタッフの接客・技術力の良さ」や「金額に見合う効果の実感」が上位で「サロンの雰囲気」は7番目でした。

▼今のコースを申し込んだ決め手(n=124/4~6位省略)

今のコースを申し込んだ決め手

割合

スタッフの接客が良かった・技術力があると感じたから

41.9%

金額に見合う効果がありそうだと感じたから

32.8%

料金がお得だったから

28.9%

サロンの雰囲気が自分に合っていたから

15.4%

※ホットペッパービューティーアカデミー「エステサロンに関する意識・実態調査 報告書」を元に作表

つまりサロンの雰囲気は、集客に大きく影響しないことがわかります。

とはいえ、サロンのイメージの明確化は「狙う顧客ターゲット」や「提供するサービスや価格」を明確にするために欠かせないステップです。大まかで良いので、サロンイメージを決めましょう。

2:狙う顧客ターゲット層を絞る

次に顧客ターゲットを決めます。

年齢や置かれている環境で抱える悩みには、一定の傾向があります。

例えば子育て世代であれば仕事との両立や子育てによるストレス、疲れを抱える人が多い傾向です。20代前半は慣れない社会人生活に不安とストレスを抱え、さらに美容意識が高い可能性も考えられます。

先述の「今のコースを申し込んだ決め手」の結果からもわかるように、集客につなげるには悩みに応じたメニューや金額設定が重要です。そのためにも狙う顧客ターゲット層を絞る必要があります。

3:メニューや客単価を決める

メニューと客単価を決めることで、収入見込みが立ち、サロン運営にかけられる支出額がわかります。

なお、ホットペッパービューティーの調査によると、リラクゼーションサロンを利用する女性が「初回サロン選びで重視したポイント」で料金に関する回答は3番目と4番目にランクインしています。

▼サロン選びで重視したポイント(女性/n=776/複数回答/着衣の施術利用者)

重視したポイント

割合

ネットの口コミが良い

31.6%

自宅から近い

24.9%

料金がリーズナブル

24.4%

料金が明確

23.5%

ネット予約ができる

20.6%

※ホットペッパービューティー「美容センサス2023年上期 〈リラクゼーションサロン編〉」を元に作表

上記の表からも料金設定が集客に影響を与えることがわかりますが、重要なのは「リーズナブル」という点です。

アロマトリートメント60分5,000円だとして、それを高いと感じるか、安いと感じるかは生活レベルや価値観が影響するため、人によって「リーズナブル」と感じる価格は異なります。

そのためにも先に示した「狙うターゲット層の絞り込み」が大切なのです。

狙うターゲット層をイメージし、適切なメニューや価格の設定をし、客単価を算出しましょう。

4:出店場所と店舗を決める

最後に出店場所(エリア)と店舗の決定です。

サロンのイメージ、狙う顧客ターゲット、客単価を算出し、月の売上見込みが試算できれば、店舗にかけられる予算がわかります。

例えばオフィスも多く集まる品川エリアの場合、20〜30㎡のテナントは15〜30万円で賃貸可能です。一方でベッドタウンである立川市や三鷹市なら、同程度の広さのテナントが約10万円で借りられます。

なお、もし先に出店場所が決まっているなら出店場所を起点に「1:サロンイメージ」「2:顧客ターゲット層」「3:メニューや客単価」の順で進めましょう。

出店場所や店舗を決める前に、出店候補地周辺を異なる時間で散策してみたり、近隣の店舗に客として行ってみたりと市場調査を行うことをおすすめします。

ステップ3:開業資金を準備する

次に必要な開業資金を準備します。

日本政策金融公庫の調査によると、新規開業の費用は500万円未満が約4割と最も多い結果となっています。

店舗経営には開業資金に加えて、運転資金も必要です。運転資金は家賃や人件費などの固定費と、仕入費や原材料費などの変動費に分かれます。

小さな出費も積み重なると負担となるため、なるべく細かくシミュレーションしておきましょう。

また自治体や日本政策金融公庫では開業の支援制度を用意しているので、必要に応じた活用をおすすめします。

店舗の開業にかかる費用の詳細は下記の記事をご覧ください。

ステップ4:内装工事や備品購入をする

セラピストがサロンを開業する場合、状況次第では内装工事が必要です。また施術ベッドや溶剤など備品購入も開業に間に合うよう、準備を進めましょう。

セラピストがサロンを開業する場合、備品1点ごとが高額な美容室や防水工事が必要な飲食店ほどではないですが、やはり内装工事や備品購入には費用がかかります。

内装工事の必要がない居抜き物件やマンションの1室での開業や中古備品の購入により、開業費にかける費用をかなり軽減できます。

なるべく資金を手元に残しておけるよう、よく検討して取り組みましょう。

ステップ5:セラピストを採用する

内装工事や備品の購入と並行して、セラピスト採用を進めましょう。

リジョブの調査によると、約3割の企業は最初の応募が来るまで1カ月以上かかったと回答しています。

▼掲載から応募までにかかった期間(リジョブにて2020年に契約開始した企業の実績)

3.掲載から応募までにかかった期間

さらに選考期間も考慮し、掲載開始から採用まで2カ月ほどの余裕をもって採用活動を始めましょう。

開業でセラピスト採用を検討している方はこちらの記事もご覧ください。

ステップ6:集客のための広告を掲載する

セラピスト採用と同じく、集客にも時間がかかります。

広告の効果は出るまでに数週間から数カ月かかるため、開店する前に告知も兼ねて早めの広告掲載開始がおすすめです。

広告媒体はオフラインとオンラインがあり、顧客ターゲット層によって最適な媒体が異なります。

地域密着なら駅広告や折り込みチラシにようなオフライン広告、若年層といったようにターゲット層を絞った集客や分析・測定機能の活用、低単価での掲載が希望ならオンライン広告が向いています。

集客のための広告掲載の詳細は、下記の記事で解説しています。広告で集客を成功させるコツについても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

開業前後に必要な手続き

セラピストが開業する際にはいくつかの手続きが必要です。

開業の形態によっても異なりますが、開業前後に必要な手続きは以下の4つです。

  • 開業届の提出
  • 青色申告承認申請書の提出
  • 雇用契約や雇用保険など雇用に関する手続き
  • 確定申告

開業届の提出

新たに事業を開始する場合、納税地を所轄する税務署長宛てに開業届の提出が必要です。

e-taxで提出可能なので、税務署に出向く必要はありません。開業届は事業開始の1カ月以内(※)の提出が義務付けられているので、忘れないように早めに済ませておきましょう。

ただしe-taxを初めて利用する場合、利用者識別番号の取得が必要です。利用者識別番号の取得もオンラインでできます。

※提出期限が土・日・祝日にあたる場合、翌日が期限です

開業届の提出方法や届出書など詳細は下記国税庁のサイトをご覧ください。

A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁 

青色申告承認申請書の提出

青色申告承認申請書の提出は義務ではありません。

ただ青色申告が承認されれば要件に応じて、確定申告で10万円、55万円、65万円いずれかの青色申告特別控除を受けられます。特別控除の金額は、定められた要件のどれを満たしているかで変わります。

青色申告特別控除の要件は以下の6つです。

  1. 事業所得または不動産所得を生じる事業を営んでいる
  2. 1に係る取引を複式簿記で記帳している
  3. 2の記帳に基づいて青色申告書を作成し、控除適用の金額を記載のうえ、期限内に提出している
  4. 現金主義による所得計算の特例を選択していない
  5. 電子帳簿保存法に基づく優良な電子帳簿保存、もしくは確定申告書の提出期限までにe-taxで申告している

上記5つをすべて満たす場合は65万円、1〜4までの要件を満たす場合は55万円、いずれにも該当しない青色申告者は10万円の控除となります。

青色申告承認申請書は開業届と同時に提出可能です。

青色申告承認申請手続きの詳細は、下記国税庁のサイトをご覧ください。

A1-8 所得税の青色申告承認申請手続|国税庁 

雇用契約や雇用保険など雇用に関する手続き

セラピストを正社員やアルバイトで直接雇用する場合、雇用契約や雇用保険など雇用に関する手続きを行いましょう。

雇用契約書は労働契約の内容を記すものですが、労働契約法では企業側に対して「作成することが望ましい」との表現になっており、発行は必須ではありません。

一方で労働条件を記す「労働条件通知書」は労働基準法で「入社時に労働条件について書面で明らかにしなければならない」と定められており、書類作成が必須です。

また労働者をひとりでも雇っていれば、雇用保険や労災保険など労働保険への加入手続きも必要です。その他、雇用条件に応じて、社会保険の加入手続きも忘れないようにしましょう。

なお業務委託は雇用ではないため、上記の手続きは不要です。法的な義務付けはありませんが、トラブル回避のため業務委託契約書の取り交わしをおすすめします。

確定申告

1年間の所得が48万円を超える場合、必ず確定申告が必要です。

また青色申告承認を受けている場合、実質赤字でなくても青色申告特別控除により申告書上は赤字となり、納税額が変わる可能性があります。

さらに確定申告は所得の証明を意味します。確定申告していないと事業融資や住宅ローンの審査で不利になる場合もあるため、開業したら毎年確定申告をしましょう。

セラピストが開業で失敗しないために注意すべきこと

人気セラピストだからといってサロン経営がうまくいくとは限りません。

セラピストがサロン開業で失敗しないためには、以下5つの点に注意が必要です。

  • 集客を継続して行う
  • 経営者としての視点をもつ
  • 店舗のあるエリアの人の流れや変化に敏感になる
  • スモールスタートを意識する
  • 即戦力になる人材を採用する

店舗経営を基礎から知りたい方は、下記の記事も参考にしてください。

集客を継続して行う

開業してサロン運営が軌道に乗っても、集客は継続しましょう。

どんなに気に入ってもらえてても転勤や結婚、卒業をきっかけに失客してしまう場合があります。

またホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、リラクゼーションサロンを利用する人が「お店を変えよう」という気持ちにもっとも強く影響を与えた段階・場面は「施術」「仕上がり確認」についで「特にない・わからない」が多い結果となっています。

▼お店を変えようと思った段階・場面(単一回答/n=300)

お店を変えようと思った段階・場面

割合

施術

23.0%

仕上がり確認(体・気分の状態)

13.3%

特にない/わからない

16.0%

※ホットペッパービューティーアカデミー「顧客満足度調査(リラクゼーションサロン編)」を元に作表

なんとなく行かなくなった、近くにできたお店にいくようになったなど、店舗側に落ち度がなくても失客するきっかけは多くあります。

既存顧客へのリマインドと新規顧客獲得のために、継続した集客活動を行いましょう。

経営者としての視点をもつ

セラピストに限ったことではありませんが、初めての開業でよくある失敗が経営者としての視点不足によるものです。

冒頭の「独立・開業のメリット」で触れましたが、独立・開業すれば「自分の理想のサロン運営」ができます。

ただ「自分の理想」のみではサロン経営はうまくいきません。顧客は自分が求めていないものを売られると満足どころか、離れていってしまいます。

理想だけでなく経営者である自覚をもち、顧客が求めているサービスを提供できるように努めましょう。

一応社長なので、経営の基本として「他がやらないことをやる」という考えでやっています。(中略)これはどんな職業にもあてはまると思いますが、その仕事の専門知識や技術を持っていることと経営はまったく別物です。病院でも整骨院でも、院長先生が優秀だからといって、開業が成功するとは限りません。

引用:モアリジョブ|のぞみ整骨院グループ代表 橋口望さん

店舗のあるエリアの人の流れや変化に敏感になる

人の流れや街の雰囲気は常に変化があるため、店舗のあるエリアの動向には常に意識を向けておきましょう。

運輸総合研究所の調査によると、バブル崩壊後に横這いから減少に転じた東京の鉄道利用者は、2000年以降再び増加に転じたといいます。

4.東京の鉄道利用者数

都心部では駅周辺の再開発や超高層ビルの建設、居住地の都心回帰により、多くの駅で利用者が大幅に増加したそうです。

一方で郊外部では都心回帰や駅前商店街の衰退により利用者が減少した駅と、企業誘致や沿線ブランドの確立で利用者が増加した駅とで二極化が見られたといいます。

上記は少し古いデータですが、今なお上記の要因により街は常に変化し、行き交う人も変わっています。

サロン開業で失敗しないためにはコンセプトを大切にしつつ、街の変化に応じた柔軟な対応が大切です。

スモールスタートを意識する

サロン開業を成功させるには、スモールスタートがおすすめです。

初期の出費を抑えることで資金を多く手元に残せて、収入が安定しない開業初期を乗り越えられる可能性が高まります。

物件取得費や内・外装費を抑えるほか、月々かかる家賃や機器のリース費など運転資金の固定費もできる限り少額になるよう努めましょう。

また日本は他の先進国に比べて開業率の低い国です。

▼開業率の国際比較

5.開業率の国際比較

企業活動や創業意識も諸外国に比べると低い水準で推移していることから、自治体では創業を支援する制度を拡充しています。

創業資金繰り(経済産業省)や通常より有利な条件で借りられる「新規開業・スタートアップ支援資金」の支援(日本政策金融公庫)など、開業のためのさまざまな支援制度があります。

小規模事業者持続化補助金など、返済不要な補助金や助成金も条件をクリアすれば申請可能です。

開業で失敗しないためには、スモールスタートの意識と融資・補助金の活用をおすすめします。

即戦力になる人材を採用する

開業時はとくに即戦力になる人材採用が大切です。

限られた人件費で最大の結果を出すためにも、しっかりと売上を上げられる人材を採用しましょう。技術の高いセラピストだけでなく、人材採用や店舗管理を任せられる店長業務経験者も頼れる存在となるでしょう。

セラピストの求職者の登録も多いリジョブでは、費用を抑え成果を高めるための採用をサポートしています。

初めての採用で不安な点もお気軽にお問い合わせください。

売上を最大化するための採用ノウハウは以下のホワイトペーパーで解説しています。(ダウンロード無料です)

サロン開業に向いている人

初めてのサロン開業の際、自分は経営者に向いているのかと不安になる人も多いでしょう。

サロン開業には以下のような人が向いています。

  • 他責にしない人
  • 成長意欲のある人
  • 人や接客が好きな人

3番目は素質によるものが大きいですが「他責にしない」「成長意欲」は今からでも改善、向上が可能です。

詳しく解説するので、開業に不安を覚えている方は参考にしてください。

他責にしない人

経営者には他責ではなく、自責志向の人が向いています。

コロナのような予期せぬ出来事や閑散期、人手不足、売り上げの低迷など、常に何かしらの困難がサロン運営にはつきものです。その際、他責ではなく自責で考え、動くことで困難は乗り越えられます。

また他責にしない思考はスタッフにも良い影響を与えます。

「Someday」では社会で活躍するために必要な考え方や心構えを「8つの流儀」という形で伝えています。一例でいうと、(中略)「前向きな思考にしましょう」、「誰かのせいにばかりするのではなく自分にも矢印を向けましょう」(中略)といった内容です。エステティシャンとしてだけでなく、人としての成長にもつながるとスタッフからも好評です。

引用:リジョブ|株式会社Someday コーポレート本部 部長 福田一樹さん

店舗のトップに立つ者として、ポジティブな考えと言葉を使うようにしましょう。

成長意欲のある人

成功する経営者は成長意欲がある人が多い傾向です。

サロンは開業がゴールではありません。開業後も経営や店舗運営、セラピストとしての技術、知識力の向上のための学びが大切です。

自分は成長意欲が低いと感じるなら、成長意欲の高い人と行動をともにしてみましょう。きっと自身の成長意欲も高まります。

また、自分の得意な分野でまだ未経験のものがあれば、直接事業に関係なくても一度体験してみましょう。新しいことに挑戦する癖や習慣を身に付けると、挑戦が普通になり成長意欲へとつながるはずです。

常に自分の未知の世界や流行へ興味を示し、自ら学びの場へ飛び込んでいく成長意欲は店舗や企業の成長につながります。

人や接客が好きな人

店舗経営の継続には売上や利益アップが不可欠ですが「人や接客が好き」という気持ちも、サロン運営の継続には欠かせません。

リラクゼーション系セラピスト、医療系セラピスト、心理系セラピストのいずれも人と関わり、人の体や心を癒し、身体機能を高める仕事です。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると「また利用したい」と思った場面の上位はスタッフの対応や技術力が関係しています。

▼「また利用したい」と思った場面(リラクゼーションサロン利用者/複数回答/n=1,000)

「また利用したい」と思った場面

割合

スタッフの技術力が高い

46.0%

効果が実感できる

45.1%

受付時の対応が丁寧

42.8%

スタッフが細やかな気遣いができる

42.0%

※ホットペッパービューティーアカデミー「リラクゼーションサロン リピート理由 MOTサイクル」を元に作表

お客様を癒したいという思いの根源は「人へ対する温かい気持ち」です。例え経営者になってもその思いはスタッフを通じて顧客へ伝わります。また働くセラピストへも影響を与えます。

人や接客が好きな人は長く愛され選ばれる、良いサロンが運営できるでしょう。

まとめ

本記事を総括すると次のとおりです。

  • セラピストの開業は収入アップや理想のサロン運営が叶う可能性が高くなる
  • 事務仕事などの雑務が増え、収入が不安定になる可能性がある
  • 開業に必要なステップは主に6つ!期限やかかる期間も意識して進める
  • 開業で失敗しないためには継続した集客や経営者としての視点が重要
  • 即戦力になる人材採用にはセラピスト採用に強い「リジョブ」がおすすめ!
田中 久美(Tanaka Kumi) プロフィール画像
執筆者情報
田中 久美(Tanaka Kumi)
温泉施設や大手スポーツクラブのエステティックサロン、大型リラクゼーションサロンにて、エステティシャンやアロマセラピストとして勤務。エステティックサロン勤務時代は人材採用や育成、店舗管理なども担当。 その後独立し、現在は完全貸切のアロマリラクゼーションサロンを運営。約20年の知識や技術を活かし、集客や経営、接客などを自身で行う。約7~8割がリピート顧客で、30代から50代の女性を中心に指示を得ている。