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ネイルサロンの客単価をアップする具体的な方法10選|平均も紹介

ネイルサロンの客単価をアップする具体的な方法10選|平均も紹介

ネイルサロンの客単価は店舗の売上げや利益に大きな影響を及ぼします。

売上げを上げていくには客単価を意識し、売上戦略を立てることが大切です。もし客単価が以前と変わっていない、もしくは落ちている場合、早急に改善を行いましょう。

本記事ではネイルサロンの平均客単価と、客単価をアップする具体的な方法について解説します。客単価が低く対策に悩んでいる経営者や店舗担当者はぜひ参考にしてください。

ネイルサロンの平均客単価

ネイルサロンの平均客単価は年代や性別、地域によっても異なります。

客単価の見直しをする前に自店の顧客層や、店舗のあるエリアの客単価を把握しましょう。

闇雲に客単価アップを狙って動くと既存顧客を失うだけでなく、高い店と印象付けてしまい新規顧客の獲得機会の損失につながります。

客単価が高いのは女性は40代・男性は30代

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、性別と年代別での平均客単価がもっとも高かったのは女性では40代、男性では30代でした。

年代(女性/男性)

女性

男性

15~19歳(n=36/n=28)

6360円

3479円

20代(n=203/n=100)

5678円

4001円

30代(n=145/n=81)

5703円

4178円

40代(n=110/n=74)

6216円

3588円

50代(n=54/ー)

5800円

60代(n=42/ー)

5713円

全年代平均(n=590/n=307)

5837円

3858円

ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2024年上期〈ネイルサロン編〉を元に作表(nはカッコ内の左側が女性、右側が男性)

女性はデザインネイルや長さ出しなど、華やかなネイルをする人が多いため、単価が高い傾向です。一方男性はエチケットとしてネイルを整える人が多く、女性に比べると単価は低くなっています。

都市部のネイルサロン客単価は低め

平均客単価は地域によっても異なります。都道府県別で平均客単価をみると、都市部のネイルサロンの客単価は低めです。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、ネイルサロンの1回あたりの利用額が最も高かったのは高知県(7634円)、次いで長野県(7446円)、静岡県(7234円)でした。

逆に1回あたりの利用額が最も低かったのは兵庫県(5299円)、次いで広島県(5517円)、京都府(5518円)となっています。

東京都や埼玉県、千葉県なども平均客単価が低い3都県より高いものの、6000円前後と低めです。

都市部はネイルサロンの数が多く価格競争になりやすいことから、客単価も低くなっていると考えられます。

客単価を上げるメリット

冒頭でも触れたように、ネイルサロン運営において客単価は重要です。客単価を上げるメリットは主に以下の3つが考えられます。

  • 売上げや利益率が上がる
  • ブランドイメージが上がる
  • ネイリストの定着につながる

例やデータをもとに詳しく解説します。

売上げや利益率が上がる

客単価を上げると売上げや利益率が上がります。

たとえば客単価が6000円から8000円に上がったと仮定して、1カ月300人の顧客が来店する場合の売上げと利益率の変化をみてみましょう。

なお、1人当たりの材料費を600円、人件費を1200円(1人当たりの施術時間は2時間)と仮定します。なお今回は、家賃や光熱費を省いて計算しています。

 

客単価6,000円の場合

客単価8,000円の場合

1カ月の売上総額

180万円

240万円

材料費+人件費

90万円

90万円

利益

90万円

150万円

利益率

50%

62.5%

上記はあくまでたとえですが、表からもわかるように、客単価が上がれば人件費や材料費、今回計上していない家賃や光熱費はそのままで、利益や利益率を上げることができます。

ブランドイメージが上がる

客単価の高い店は低い店に比べてブランドイメージが良い傾向です。そのため客単価が上がるとブランドイメージの向上につながります。

見方を変えると他社と比較して価格が極端に安い場合、商品やサービスに不信感を抱く可能性があります。

もちろんサービスを受けた際に価格相当、もしくは価格以上の価値を顧客が感じられなければ不満につながるため、単価を上げる施策を行う際には注意が必要です。

また客単価は顧客の満足度の現れともいえます。たとえば初回価格を安く設定していて、2回目以降の来店(正規料金)につながらない場合、客単価は相対的に低くなります。一方で、リピート利用され、正規料金での利用や店販品の購入があれば客単価は上がります。

ただし、初回を過剰に安くするなど、低価格をウリにするとブランドイメージが下がり、顧客の定着率低下にもつながりかねません。

客単価の見直しはブランドイメージの向上の効果が期待できます。

ネイリストの定着につながる

客単価を上げるとネイリストの定着率の向上が期待できます。

客単価が低い場合、同じ人数をこなしても客単価が高い場合と比べて利益は少なく、ネイリストへ支払う給与は低くなります。

リジョブの調査によると「仕事を辞めたいと思った理由」の1位は「給与が低い」でした。

1.仕事を辞めたいと思った理由

低い給与はネイリストの離職につながり、定着率の悪化を招きます。

安定した店舗運営にはネイリストの定着が欠かせません。ネイリストの定着率を上げるために、客単価を上げて利益を今より増やす必要があります。

人手不足に悩むネイルサロン経営者の方は対策のひとつとして、客単価の見直しを検討しましょう。

ネイルサロンの客単価をアップする方法10選

ネイルサロンの客単価を上げるためにおすすめの方法を紹介します。

すぐに取り掛かれるものから導入するまでに検討や準備を要するものがあります。1人当たり数百円の客単価アップでも1カ月や1年積み重なると大きな利益です。できるものからすぐに始めましょう。

1.基本料金を上げる

客単価を上げる基本として、ネイルの基本料金の値上げを検討しましょう。特に自店の客単価が同エリアのネイルサロンの平均より低い場合、基本料金の見直しが必要です。

先述の通り、安い客単価は店舗のブランドイメージやネイリストの定着が悪くなっている可能性があります。

また平均客単価であっても他店より高品質・高レベルの施術やサービスを提供できているのであれば、基本料金を上げる検討をしてもよいでしょう。

値上げに踏み切る場合、消耗品費の高騰など、顧客が納得できる理由を添えた説明が大切です。

さらに、値上げしても顧客が引き続き通いたいと思う技術力や接客力を、ネイリストが兼ね備えていることも重要です。

2.3つのコースを用意する

客単価を上げるには、3つの異なる価格のコースを用意することをおすすめします。「ゴルディロックス効果」と呼ばれるもので、日本では「松竹梅の法則」として知られています。

人は3つの選択肢があった場合「無意識に真ん中を選ぶ」心理効果を利用したものです。

大手のコーヒーショップやハンバーガーショップで、ドリンクやフライドポテトをS・M・Lと3つのサイズを用意したり、お節や引き出物で松・竹・梅と3つのパターンを用意したりするのも同様の理由です。

松竹梅の法則(ゴルディロックス効果)を取り入れる際には、価格の決め方にポイントがあります。

顧客に選んで欲しいネイルコースを真ん中の価格設定にし、その価格より安い価格と高い価格のコースを用意します。

(例)

5000円

7000円

1万円

ジェルネイル(デザイン2本込み)

ジェルネイル(デザイン4本、ネイルケア込み)

ジェルネイル(デザイン4本、ネイル・ハンドケア込み)

さらに選んでほしいコースには「人気No.1」など多くの人が選んでいるコースだとわかる一言を添えると、バンドワゴン効果で選んでもらえる確率が高くなるでしょう。

バンドワゴン効果とは、多くの人が持っているものや選択しているものを選択してしまう人間心理で、行列やSNSのイイネが多いものに惹かれるのもバンドワゴン効果によるものです。

3.オプションメニューを充実させる

オプションメニューの充実は顧客に選択肢が広がり、客単価アップが期待できます。

ただし選択肢は多すぎてもいけません。1995年にコロンビア大学に所属するSheena Iyengar(シーナ・アイエンガー)教授によって発表された「ジャムの法則」で、人は選択肢が増えると選択が難しくなると証明されています。

また人が瞬間的に保持できる情報の数は5〜9個(ミラーの法則に基づく)といわれています。そのことから、オプションメニューも5〜9個を目安に用意するとよいでしょう。

さらに気軽に追加してもらえるように、価格は高価格帯のものから中価格帯、低価格帯と異なる価格のオプションメニューをそろえましょう。

(例)※

【300円】※1本当たり

長さ出し、亀裂補修

【500円】※1本当たり

パーツ、アート追加

【1000円】

パラジェル

【3000円】

ハンドケア(美白・エイジングケア)

※実際には各オプションの説明を入れるなど、ネイル初心者が見ても瞬時に興味をもてる内容にしてください。

中には爪が弱く、割れやすい人もいます。亀裂補修を1本当たり300円と低価格で出しておくと案内しやすく、追加してもらいやすくなるのでおすすめです。

また、紹介の御礼や雨の日特典としてオプションを無料サービスするなどし、オプションを使うきっかけをつくりましょう。

4.サンプルボードを作成する

価格を表記したサンプルボードを作成し、客単価アップを狙いましょう。

サンプルボードはデザインが決まっても下げずに、施術中も顧客の目に留まる場所に置きっぱなしにします。そうすることで顧客の目に触れる機会が増え、ストーンやデザインネイルを追加してもらえる可能性が上がります。

また顧客が来店の度に楽しんで選べるように、サンプルボードは来店周期に合わせて小まめに変更しましょう。目安として、ジェルハンドネイルは3〜4週間、フットネイルは5〜6週間です。

顧客の施術をこなすので精一杯、人手不足で頻繁に変更できない場合でも、2カ月に1回程度は変更することをおすすめします。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、ネイルサロンを利用する人の年間利用回数は約5回です。

▼ネイルサロンの年間利用回数(n=494:2024年/1回以上利用者ベース集計)

2.ネイルサロンの年間利用回数

たまにしか来ない人は何かの特別なイベント前の可能性もあり、サンプルボードから高価格帯のデザインを選んでもらえる可能性も高いでしょう。

5.限定メニュー(期間限定・個数限定)を設ける

毎月来店する顧客に向けての客単価アップを狙うなら、期間限定や個数限定といった限定メニューの施策がおすすめです。

株式会社NEXERの調査によると「店舗などで実施されている季節のイベントに惹かれることはありますか?」の問いに、半数以上の人が「惹かれる(とても惹かれる・やや惹かれるの合計)」と回答しています。

3.季節のイベントに惹かれることはあるか?

「限定」という言葉は「他人と差別化したい」願望や心理によって人を惹きつけます。

スノッブ効果と呼ばれるもので、希少性の高い商品やサービスに対する購買意欲を上げるために、マーケティング手法に取り入れられています。

季節に合わせたストーンを仕入れたり、ネイルカラーを導入したりと季節を感じられる限定メニューを作りましょう。

またお正月やクリスマスは福袋やクリスマス限定ネイルコースなど、高単価のセット商品・コースを販売しやすい時期です。

客単価アップを狙うなら、季節イベントに合わせた限定メニューを設けましょう。

6.ネイルケア用品など商品を販売する

ネイルケア用品など店販品の販売は、客単価アップに大きく貢献します。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、手足の爪や指先に悩みがあると回答した人の割合は女性で46.7%、男性で28.3%でした。

具体的な悩みとしては「爪のもろさ」や「さかむけ、ささくれ」と回答した人が男女ともに多い結果となっています。

▼爪・指先の具体的な悩み(女性n=3,083、男性n=1,866/複数回答)

4.爪.指先の具体的な悩み

ネイルサロンの店販品のなかでもネイルオイルは価格も1000円台から2000円台とお手頃で、男女ともに購入が見込めるアイテムです。

ネイルを長持ちさせる効果もあるため、ネイル仕上げにお試しで付けてあげると使い心地も実感でき、購入につながりやすくなります。

顧客に興味をもってもらえるように、店内や施術テーブルなど目につく所に商品やPOPでアピールし、値段も表記しておきましょう。

7.定額制を導入する

客単価を上げるのにおすすめなのが、定額の月会費制の導入です。

ジェルハンドネイルの付け替え頻度は3〜4週間のため、単発利用よりお得な月会費制を導入しましょう。

会費は銀行口座やクレジットカード請求にし、店頭での支払いをなしにします。店頭での支払いがないとお金を払っている感覚が低くなるため、オプションメニューの追加や店販品の購入ハードルが下がり、追加課金してもらいやすくなります。

定額制の導入は売上げや継続利用の安定にもつながるなど、客単価アップ以外の効果も期待できます。

8.ハンドネイルとフットネイルをセット販売する

ハンドネイルとフットネイルのセット販売は商品単価が下がりますが、客単価アップに有効な手法です。

ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、ネイルサロンのサロン利用にかかった時間と、サロン利用にかかる時間の理想には乖離があります。

▼ネイルサロンのサロン利用にかかった時間とかかる時間の理想(調査対象:女性)

 

サロン利用にかかった時間(平均)

サロン利用にかかる時間の理想(平均)

全体(n=590)

70分

63分

20代(n=204)

69分

66分

30代(n=144)

70分

62分

40代(n=110)

71分

62分

50代(n=54)

79分

67分

※ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2024年上期〈ネイルサロン編〉を元に作表

特に30代や40代では実際にネイルにかかった時間と、理想の時間の差が大きい傾向があります。

30代や40代は子育てや仕事の両立に忙しい年代です。デザインネイルやケアネイルなどやりたいことがたくさんあるけど、早く終わらせたいという気持ちの表れといえます。

フットネイルの需要が増える夏のみ派遣や業務委託で人材確保し、セット販売をしてみましょう。

客単価がアップするだけでなく、忙しい年代の顧客満足度の向上にもつながります。

9.顧客との信頼関係を高める

客単価を上げるには、顧客とネイリストの信頼関係は重要です。

どの業種やシチュエーションでもいえますが、初めてあった人や担当の人からの助言より、仲が良い友人や長年の担当者からの言葉のほうが聞き入れやすいものです。

売上げを意識することも大切ですが、顧客のためを思ったアドバイスや提案は顧客に届きます。

また売上重視の意識づけをネイリストに課してしまうと「お客様に感動を与えたい」「お客様の手元を綺麗にしてあげたい」といったモチベーションを阻害しかねないため注意しましょう。

業界には、ネイリストが生み出す成果を第一に考えているサロンもあります。『お客さまの満足度よりも、ネイリストの数字を大事にする』と言い換えてもよいかもしれません。(中略)お客さまは、自爪の状態が分かりませんから『ケアをしたほうがいいですよ』というネイリストの言葉には、素直にうなずいてくださいます。私は、その状況を見るなかで『本当に必要なメニューだけを丁寧に届けたいな』と、思うようになりました。

引用:モアリジョブ|am PURTE オーナー yuriさん

10.割引を見直す

客単価アップには「割引で集客する」という根本的な部分の見直しも重要です。

割引の効果は一過性のものであり、リピート顧客にとっては特別ではなくなっています。割引の価格が正規の価格となっており、店舗側の売上損失でしかないのです。

冒頭の「基本料金を上げる」で解説したように「安さ」を売りにしていては、店舗のブランドイメージやネイリストの定着率は低いままです。

割引も「安い」イメージを定着させてしまう恐れがあるため、基本的にはおすすめしません。

昨今は物価上昇も激しいため、見直すには良い時期でしょう。普段から顧客との信頼関係を築いておけば、割引を廃止しても継続利用してくれる顧客は多くいるはずです。

ネイルサロンの客単価を上げるには生産性向上も鍵!

ネイルサロンの客単価を上げるには、生産性の向上も忘れてはならないポイントです。

たとえば時給1200円のネイリストがネイル(単価5000円)を仕上げるのに1時間かかる場合と、1.5時間かかる場合では以下のような差が出ます。

 

ネイリストAさん

ネイリストBさん

1人当たりにかかる施術時間

1時間

1.5時間

1人当たりにかかる人件費

1200円

1800円

ネイル単価

5000円

5000円

客1人当たりの利益

3800円

3200円

ジェルを削る時間やドライの時間など短縮に限界がある工程もありますが、ジェルネイルを塗る時間は練習を積めば短縮できるようになります。手が遅い人は基礎ができていない可能性もあるため、成長が芳しくないネイリストは基礎の見直しも検討しましょう。

基礎はできていると自覚して入ったのですが、実際には基礎のレベルもすごく高くて、まずはそこでちょっと凹みました。ファイルの使い方ができていないと指摘され、前の職場ではそれを教えてしまっていたことが結構ショックでしたね。アートを学ぶために入ったつもりが、基礎から学び直すことになりました。

引用:モアリジョブ|ao.ネイリスト&アイリスト兼マネージャー 宍戸琴美さん

客単価アップにつながるネイリストを採用する

客単価アップを意識したネイリスト採用を心がけましょう。時短ネイルやアートネイルが得意なネイリストは、客単価アップの即戦力となり得ます。

また、指導や教育が得意なネイリストも結果的に客単価アップに貢献する人材です。ネイルのクオリティと早さを両立できるネイリストの成長は、指導する人にかかっています。

美容学校で先生を務めた経験がある人やコンクールで受賞歴がある人など、客単価アップに貢献する人材を採用しましょう。

自社に合う人材採用を成功させるためのチェックポイントを下記のホワイトペーパーで解説しています。無料ダウンロードのうえ、採用活動の参考にしてください。

まとめ

本記事を総括すると次のとおりです。

  • ネイルサロンの平均客単価は女性で5837円、男性で3858円
  • 客単価が高いのは女性は40代、男性は30代
  • 平均客単価は競合が多い都市部で低い傾向にある
  • 客単価を上げるには適正価格にし、オプションメニューや店販品で追加購入を狙う
  • 生産性向上も意識し、客単価アップにつながる人材採用も重要
田中 久美(Tanaka Kumi) プロフィール画像
執筆者情報
田中 久美(Tanaka Kumi)
温泉施設や大手スポーツクラブのエステティックサロン、大型リラクゼーションサロンにて、エステティシャンやアロマセラピストとして勤務。エステティックサロン勤務時代は人材採用や育成、店舗管理なども担当。 その後独立し、現在は完全貸切のアロマリラクゼーションサロンを運営。約20年の知識や技術を活かし、集客や経営、接客などを自身で行う。約7~8割がリピート顧客で、30代から50代の女性を中心に指示を得ている。