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フランチャイズ美容室の始め方|個人経営との比較でわかる、あなたに合った賢い選択

フランチャイズ美容室の始め方|個人経営との比較でわかる、あなたに合った賢い選択

  1. 美容室のフランチャイズとは? 未経験・資格なしでもオーナーになれる?
    1. 美容室のフランチャイズとは?
    2. 美容師免許がなくてもオーナーになれる?
  2. フランチャイズと個人経営の美容室を徹底比較
    1. 開業資金(初期投資)
    2. 収益性(ロイヤリティ含む)
    3. 自由度
    4. 集客・ブランド力
    5. 経営サポート
    6. 開業までのスピード
    7. 採用・教育
  3. あなたの美容室はフランチャイズ向き? 個人経営向き? それぞれのタイプ診断
    1. フランチャイズ向きだとわかる3つのチェックポイント
    2. 個人経営向きだとわかる3つのチェックポイント
  4. フランチャイズ美容室を開業するための資金
    1. フランチャイズ美容室の開業資金の目安
    2. 主な初期費用と運転資金の内訳
    3. 初期費用を抑えるコスト削減のポイントと注意点
    4. 自己資金から融資・補助金まで資金調達の方法
  5. フランチャイズ美容室オーナーの年収について解説
    1. フランチャイズ美容室の売上げと経費の内訳
    2. フランチャイズの重要経費「ロイヤリティ」とは?
    3. 国の調査データを参考に、リアルなオーナー年収を考える
    4. オーナー年収1000万円超を目指すための方法
  6. フランチャイズ美容室のタイプ別に分けた特徴と選び方のポイント
    1. フランチャイズのタイプごとの特徴
    2. 失敗しないフランチャイズの選び方
  7. フランチャイズ美容室の経営で失敗した場合に知っておきたい挽回・撤退の方法
    1. 経営の立て直しを図る「挽回」の方法
    2. やむを得ず事業をたたむ場合の「撤退」の方法
    3. 失敗を最小限に抑えるために最も重要なこと
  8. フランチャイズ美容室と個人経営のスタッフの採用や教育の違い
    1. ブランド力と仕組みで差がつく「スタッフ採用」
    2. 体系的なプログラムが強みの「スタッフ教育」
    3. 採用や教育を「仕組み化」できるのがフランチャイズの魅力

厚生労働省の調査によると、全国の美容室の数は過去最高を更新し続けており、令和5年度には27万4000軒を突破しました。今も多くの美容師が「いつかは自分の店を持つ」という夢を抱き、開業ブームともいえる状況が続いています。

しかし、その華やかな世界の裏側には、厳しい現実がもあります。

中小企業白書のデータによれば、新規に設立された事業が5年後まで生き残れる確率は、わずか18.3%です。これは、お店が5軒オープンしても、5年後にはそのうちの4軒が廃業しているという計算になります。

開業はできても、それを継続するのは極めて難しい現実を示唆しています。もちろん、美容室に関しても同様です。この競争が激化する時代に、「消えていく4軒」ではなく「生き残る1軒」になるためには、何が必要なのでしょうか?

その答えの1つとして、凝縮した成功ノウハウを活用できる「フランチャイズ」という選択があります。今回は、フランチャイズと個人経営の徹底比較を通じて、「失敗しない」ための最適な道筋を具体的に紹介していきます。

美容室のフランチャイズとは? 未経験・資格なしでもオーナーになれる?

美容室の開業を目指す上で、個人でゼロから立ち上げる以外に、「フランチャイズに加盟する」という有力な選択肢があります。しかし、その仕組みや条件については、意外と知られていない内容も多いのではないでしょうか?

以下では、まず「フランチャイズとは具体的にどのような仕組みなのか」という基本的なビジネスモデルを、本部から受けられるサポート内容とあわせて解説します。フランチャイズへの理解を深め、ご自身の事業に適した内容かどうかの判断基準にしてみてください。

美容室のフランチャイズとは?

美容室のフランチャイズは、すでに日本全国で広く普及している経営形態です。日本フランチャイズチェーン協会の2023年度のJFAフランチャイズチェーン統計調査によると、理美容業界では53のチェーンが展開され、4100店舗以上がフランチャイズとして運営されています。

フランチャイズとは、「本部」と契約を結び、そのブランド名や経営ノウハウを使用する権利を得て、対価として「ロイヤリティ」を支払うビジネスモデルです。

加盟店は、本部から主に以下のようなサポートを受けられます。

  • ブランド力の活用:知名度のある看板を最初から使えるため、ゼロから開業するよりも集客がしやすくなる。お客様からの信頼も得やすいという魅力もある
  • 経営ノウハウの提供:成功実績のある運営マニュアルや、確立された研修制度を活用できるのもポイント。経営経験がなくても事業を安定させやすい
  • 開業・運営支援:物件探しや内装工事、薬剤などの仕入れ、さらにはスタッフの採用活動まで、本部が多岐にわたってサポートを利用可能

これらのサポートにより、個人でゼロから開業する場合に比べて、様々なリスクや負担を軽減しながら事業を始められます。

美容師免許がなくてもオーナーになれる?

結論からいうと、美容師免許がなくてもフランチャイズのオーナーになれます。

なぜなら、オーナーに求められる役割は、自ら施術を行う「美容師」ではなく、店舗全体を運営管理する「経営者」だからです。お客様への施術は、美容師免許を持つスタッフを雇用して任せるため、オーナー自身は資格を必須とされません。

実際に、異業種から参入して成功しているオーナーも数多く存在します。

ただし、資格が不要だからといって、誰でも成功できるわけではありません。オーナーとして事業を軌道に乗せるためには、以下の3つの要素が求められます。

  • 経営者としての資質:スタッフをまとめ、本部の指導に沿って店舗を運営していくリーダーシップと管理能力
  • 本部のノウハウを実践する力:提供される運営マニュアルや研修内容を素直に学び、忠実に実行して結果を出していく遂行能力
  • 必要な資金力:資格の有無とは関係なく、加盟金や開業資金といった初期投資をきちんと準備できる経済力

このように、フランチャイズは業界経験がない人でも参入しやすいビジネスモデルです。

フランチャイズと個人経営の美容室を徹底比較

美容室の開業を決意したとき、その実現方法には大きく分けて「フランチャイズ」と「個人経営」があります。それぞれに異なるメリット・デメリットがあり、どちらが自分に適しているかを慎重に見極めましょう。

以下では、その判断材料として、「開業資金」や「収益性」、「自由度」といった7つの重要な項目で両者を徹底的に比較・解説します。まずは、両者の特徴を一覧で比較し、全体像を掴んでみましょう。

フランチャイズ美容室

個人経営の美容室

 

開業資金

収益性

自由度

集客、ブランド力

経営サポート

開業までにスピード

採用、教育

上記の表はあくまで大まかな傾向を示したものです。以下では、これらの各項目について、なぜこのような評価になるのか、その具体的な理由を1つずつ詳しく見ていきましょう。

開業資金(初期投資)

「開業資金(初期投資)」の観点では、一概にどちらが安いとは言えず、それぞれに異なる種類の費用とメリットがあると理解しておいてください。

フランチャイズ美容室

個人経営の美容室

 

メリット

本部の信用力を背景に融資の相談がしやすいだけでなく、共同購買によって薬剤や備品を安く仕入れられる

加盟金や保証金が一切不要なため、その分の費用はかからない

デメリット

ブランド使用権の対価である加盟金や保証金といった、フランチャイズ特有の初期費用が必要になる

内装・設備・広告・仕入れなど、事業に関わる全ての費用をゼロから自分で見積もり、準備する必要がある

実際に開業する際の注意点として、フランチャイズの場合は、融資サポートがあったとしても、最初にまとまった額の加盟金を現金で用意しなければならないケースがあります。

一方、個人経営の場合は、全ての業者選定や価格交渉を自分1人で行わなければなりません。特に、美容室は水回りの工事費などが高額になりやすく、当初の見積もりから費用が膨らんでしまい、計画が頓挫してしまうといったリスクも考慮しておく必要があります。

収益性(ロイヤリティ含む)

「収益性」の観点では対照的な特徴があります。フランチャイズは早期に売上げを安定させやすく、個人経営は当たれば利益率が高くなるのが特徴です。

フランチャイズ美容室

個人経営の美容室

 

メリット

本部のブランド力や集客支援により、開業初期から売上げが安定しやすい傾向にある

ロイヤリティの支払いが一切ないため、売上げがそのまま利益に繋がりやすく、高い利益率を目指せる

デメリット

売上げの一部をロイヤリティとして本部に支払うため、その分、利益率は低くなる

売上げは自身の集客力や経営手腕に100%依存するため、軌道に乗るまでは収益が不安定になりやすい

実際の経営で直面する苦労として、フランチャイズの場合、売上げが伸び悩んでいる月でも容赦なく引かれるロイヤリティの支払いがあり、大きな負担になるかもしれません。

一方個人経営の場合は、客足が遠のいた月の「売上げゼロ」の恐怖と、それをすべて自己責任で乗り越えなければならないプレッシャーが常に付きまといます。どちらの道を選んでも、お金に関する特有の悩みはつきものだと覚悟しておきましょう。

自由度

「自由度」の観点では、独自のこだわりを100%追求できる個人経営と、決められたルールの中で安定を目指すフランチャイズという、最も明確な違いがあります。

フランチャイズ美容室

個人経営の美容室

 

メリット

デザインやメニューで悩む必要がなく、成功実績のある「型」に沿って運営に集中できる

店舗コンセプトからサービス内容、価格、休日設定まで、事業のすべてを自分の理想どおりに決められる

デメリット

ブランドイメージを統一するため、店舗の内装、メニュー、価格設定、使用する薬剤に至るまで、本部が定めたルールや制約がある

全ての意思決定が自由である一方、その結果に対する責任もすべて自分一人で負うことになる

実際の経営において、フランチャイズオーナーは「もっとこうした方がよい」というアイデアが浮かんだとしても、本部の許可が下りなければ実行できない、という改善面での葛藤を抱える方も少なくありません。

一方で個人経営の場合は、壁紙の色や使用するシャンプーの種類など、無数の選択と決断を、すべて自分1人で行う必要があります。「1つの選択が、店の未来を左右する」というプレッシャーと常に向き合う覚悟が必要です。

集客・ブランド力

「集客・ブランド力」の観点では、開業初期の集客ハードルが低いフランチャイズと、ゼロから信頼を積み上げる必要がある個人経営という、スタートラインの大きな違いがあります。

フランチャイズ美容室

個人経営の美容室

 

メリット

契約した瞬間から、本部が長年築き上げてきたブランドの知名度と信頼性、マーケティング支援の恩恵も受けられる

他者の影響を受けず、自分の努力と工夫次第で独自のブランドイメージを一から築き上げるやりがいがある

デメリット

本部の不祥事や、他の加盟店の評判が悪化した場合、自分の店舗もそのブランドイメージ低下の影響を受けるリスクがある

SNSの運用やチラシ作成、サイトの管理など、集客に関わる全ての活動を自分で行い、ブランドの認知度向上に時間がかかる

実際の経営では、フランチャイズオーナーも安泰ではありません。本部のブランドイメージが、自分の目指すサロン像とズレている場合もあります。また、本社の不祥事や他の加盟店のトラブルが発生した際に、自店もその悪影響を受けてしまうリスクを常に抱えています。

一方で個人経営の現実はより直接的です。オープン当初は予約がまったく入らず、精神的に追い詰められるというケースも珍しくありません。1人、また1人と、地道な努力でお客様を増やしていくという強い覚悟が求められます。

経営サポート

「経営サポート」の観点では、フランチャイズが確立された成功の仕組みを学べるのに対し、個人経営は全ての経営判断を自分自身で行わなければなりません。個人経営の場合、オーナーの経営経験の影響がサロンの行く末を左右する傾向があります。

フランチャイズ美容室

個人経営の美容室

 

メリット

物件選定から運営マニュアル、経理・法務の相談、集客支援まで、体系的なサポートがパッケージとして提供されており、経営が未経験でも、スムーズに事業運営できる

外部のルールに縛られず、市場の変化や顧客の反応に合わせて、自分の判断で迅速に経営方針の決定や修正ができる

デメリット

提供されるサポートが画一的であったり、担当者との相性が合わなかったりと、サポートの「質」に満足できない可能性もある

施術以外の、経理、集客、採用、教育といった全ての経営業務を自分一人で学んで実践し、外部の専門家に相談する際にも別途コストが発生する

実際の経営で直面する困難としては、フランチャイズの場合、本部から派遣される担当者との相性の悪さや、提供されるマニュアルが自分の店の状況に合っていないなど、サポートの「質」に悩んでしまうかもしれません。

一方で個人経営の苦労は、より根源的です。「知らなかった」では済まされない税金の申告や労務管理の問題に、ある日突然、たった1人で向き合う必要があります。施術のプロであると同時に、経営のプロにもならなければならないという厳しい現実が待っています。

開業までのスピード

「開業までのスピード」の観点では、確立されたパッケージに沿って進められるフランチャイズの方が、個人経営よりも早くオープンできる傾向にあります。

フランチャイズ美容室

個人経営の美容室

 

メリット

物件探しから内装工事、什器の選定、各種手続きまで、開業に至るまでのプロセスがパッケージ化されており、手続きの漏れや無駄な時間をなくせる

誰にも急かされることなく、納得がいくまで物件や内装、設備などを自分のペースで選定できる

デメリット

本部のスケジュールに合わせて進める必要があり、自分のペースでじっくり準備したい場合には、窮屈に感じる可能性がある

物件探し、内装業者や仕入れ先の選定、各種契約や手続きなど、全てのタスクを自分一人で調べて手配する必要がある

ただし、フランチャイズだからといって、必ずしも全てが順風満帆に進むわけではありません。本部のスケジュール感と自分のペースが合わず、十分に検討しないまま決断を迫られるといった、特有の忙しさに悩む可能性もあります。

一方で個人経営の場合は、よい物件が何カ月も見つからないばかりか、内装業者との打ち合わせが難航するなど、予期せぬトラブルでオープン日がどんどん後ろ倒しになるリスクも覚悟しなければなりません。

どちらの道にも、時間管理に関する特有の課題があるといえるでしょう。

採用・教育

「採用・教育」の観点では、人材確保のための「仕組み」が用意されているフランチャイズと、ゼロから体制を構築する必要がある個人経営という、経営の労力に直結する大きな違いがあります。

フランチャイズ美容室

個人経営の美容室

 

メリット

ブランドの知名度を活かした人材募集がしやすく、本部が用意した研修制度を活用できる

オーナーの理念や独自の技術をスタッフに直接、深く伝えられるため、サロン全体のオリジナリティや一体感を高めやすい

デメリット

教育内容が画一的になりがちで、オーナー独自の高い技術や細かな理念をスタッフに反映させにくい場合がある

 

求人から面接、採用後の教育まで、採用・育成の全プロセスをオーナー自身が構築し、実行する必要がある

採用・教育はサロン経営を左右する重要な要素ですが、ここでは概要に留めます。詳しくは以下の記事や、このまま読み進めていただき、関連の見出しで詳しく解説しているので参考にしてみてください。

あなたの美容室はフランチャイズ向き? 個人経営向き? それぞれのタイプ診断

上記では、フランチャイズと個人経営のメリット・デメリットを客観的に比較しました。しかし、どちらがよい・悪いというわけではなく、最終的には「あなたの価値観や目標にどちらが合っているか」が最も重要です。

以下では、それらの客観的な情報を踏まえ、「では、自分はどちらのタイプなのだろう? 」という疑問に答えるための、自己診断を行っていきましょう。

フランチャイズ向きだとわかる3つのチェックポイント

上記での客観的な比較を踏まえ、あなたがフランチャイズと個人経営のどちらに向いているかを診断していきましょう。

まずは、フランチャイズでの開業が向いている方の特徴を、以下の3つのチェックポイントとして解説します。ご自身の考え方や目標と照らし合わせてみてください。

  • 経営の「安定・安心」を最優先したいと考える方
  • 「スピードとブランド力」を重視する方
  • 将来的に「チーム運営や規模拡大」に挑戦したいと考える方

まずは、経営の「安定・安心」を最優先したいと考える方です。技術には自信があるものの、経営や数字の管理には不安を感じる方は少なくありません。実際に、あるオーナーは経営への不安がフランチャイズを選んだ決め手だったと語ります。

――「独立」を考えるとき、やはり経営に対する不安があったんですね?

僕が考える独立のデメリットは「経営しなければならない」ということ。経営を学びながら独立開業できるという話は、心強かったですね。独立したら、「利益をちゃんと出せるのか」という不安と、「年俸1,000万円を稼げるかもしれない」という期待感が入り交じっていました。

引用:モアリジョブ|ICH・GO東浦和店オーナー 青木貴紀さん

この「経営サポート」への期待は非常に高く、株式会社ハッピーカーズの調査では、フランチャイズを選んだ理由の約半数が「経営サポートがある」ことだったと報告されています。

1_フランチャイズ先を選ぶ決め手となったものが何か聞いた株式会社ハッピーカーズのアンケート調査

2つ目は、「スピードとブランド力」を重視する方です。ゼロから開業した場合、お店がブランドとして認知されるまでにはある程度の時間が必要になります。

フランチャイズは、その時間を短縮し、スピーディーに事業を軌道に乗せたいと考える方にとっては都合のよい方法です。成功しているオーナーの中には、これを「時間を買った」という賢い投資だと考えている方もいます。

でも1からサロンを始めたとして、そのサロンがブランドになっていくには3~5年はかかります。どんなに売り上げがある人でも、独立して新しい名前でサロンを始めたら、そこからがスタート。

それなら僕は、毎月お金を払うかたちで「by afloat」という名前をしっかり使わせてもらおうというのを最初に考えました。簡単に言うと「時間を買った」ということですね。

引用:モアリジョブ|ALICe by afloat 代表 ムッシュ豊田さん

最後は、将来的に「チーム運営や規模拡大」に挑戦したいと考える方です。複数店舗展開などを目指す上では、どの店舗でも同じ品質のサービスを提供できる「仕組み化」が必要です。

個人経営向きだとわかる3つのチェックポイント

続いて、個人経営での開業が向いている方の特徴を、3つのチェックポイントとして解説します。フランチャイズの考え方とは異なる、ご自身のこだわりや価値観と比べてみてください。

  • 「自分だけの城」を細部まで追求したいという強いこだわりを持つ方
  • 自分のペースで働き、時間もお金も最大化したいと考える方
  • ゼロからブランドを育てる過程そのものを楽しみたいという方

まずは、「自分だけの城」を細部まで追求したいという、強いこだわりを持つ方です。

店舗のコンセプトや内装、サービスメニュー、使用する薬剤の1つまで、自分の理想を100%反映させたいと考える方は、個人経営に向いています。このような方にとっては、フランチャイズの統一されたルールが、かえって窮屈に感じられるかもしれません。

次は、自分のペースで働き、時間もお金も最大化したいと考える方です。

毎月のロイヤリティを支払うことなく、売上げから経費を引いた利益の全てを自分のものにしたい、そして働く時間や休日も完全に自分でコントロールしたいという方は、個人経営でその理想を実現できるでしょう。

実際に、個人経営で成功しているオーナーからは、このような声が聞かれます。

――ひとりでサロン業務をするのは大変じゃないですか?

以前は一日30人くらい切っていましたからね。そのままだったら無理ですけど、今は人数を制限していて、多くても一日8人くらいなので。施術するお客さんの数は半分以下になりましたけど、使えるお金や時間は倍以上になりましたよ。

引用:モアリジョブ|「i.」代表 山内大成さん。 

最後は、ゼロからブランドを育てる過程そのものを楽しみたいという方です。

集客や経営の困難も厭わず、自分の力で試行錯誤しながら少しずつ店を育てていくというプロセス自体に、やりがいや価値を感じる方も、個人経営に向いています。

フランチャイズ美容室を開業するための資金

フランチャイズでの開業を決意、あるいは検討している方が次に直面するのが、「一体、いくら必要なのか? 」という具体的な資金計画ではないでしょうか? 夢を実現するためには、このお金の問題と真正面から向き合う必要があるのは事実です。

そこで以下では、その資金計画の核心について、公的機関の信頼できるデータをもとに、順を追って詳しく解説していきます。

フランチャイズ美容室の開業資金の目安

フランチャイズでの美容室開業を計画する上で、まず把握すべき資金の全体像について見ていきましょう。

ここでは、独立行政法人 中小企業基盤整備機構が公表している「初期費用の例」を参考にします。

この事例によると、開業資金の合計は「約940万円」となっており、まずはこの金額を1つの具体的な目標として捉えてみてください。

ただし、これはあくまでモデルケースであり、開業資金は様々な要因で変動します。

たとえば、店舗の規模や出店するエリアの家賃相場、どこまで内装にこだわるか、そして後述するコスト削減の工夫をどれだけ取り入れるかによって、最終的な金額は大きく変わります。

主な初期費用と運転資金の内訳

上記で目安とした開業資金約940万円が、具体的にどのような費用に使われるのか、その内訳をJ-Net21のモデルケースに沿って詳しく見ていきましょう。

開業資金は、店舗をオープンさせるまでにかかる「初期費用」と、開店後の経営を支える「運転資金」に分かれます。

初期費用の内訳

費用例

詳細

内外装工事費

約476万円

店舗のコンセプトを形にするための内装・外装工事の費用。開業資金の中で最も大きな割合を占めることが多い。こだわりが強いほど高額になる

機器・什器・備品等の費用

約197万円

スタイリングチェアやシャンプー台、ミラー、レジなどの、サロン運営に不可欠な専門機器や備品の購入費用

運転資金

約150万円

数ヶ月分の家賃や材料費、水道光熱費、そして自身の生活費などを補填するための資金。経営の「体力」となる、非常に重要なお金

テナント賃貸費用

約104万円

店舗物件を契約する際に必要となる、保証金(敷金)や礼金、仲介手数料、前家賃など

営業保証金・FC加盟金

約13万円

フランチャイズ本部に支払う加盟金や保証金。本部によって金額が大きく異なる項目

このように、何にいくらかかるのかを具体的に把握することが、現実的な事業計画を立てる第一歩となります。

初期費用を抑えるコスト削減のポイントと注意点

前の章でシミュレーションした開業資金は、あくまで1つのモデルケースです。工夫次第で、初期費用を大きく抑えて、余裕を持って始められるでしょう。

ただし、コスト削減はメリットばかりではありません。短期的な費用の圧縮が、長期的に見てサービスの質の低下や追加コストにつながる可能性もあります。

以下では、主な費用項目ごとに、具体的な「コスト削減のポイント」と、その際に必ず知っておくべき「注意点」をセットで解説します。

削減のポイント

注意点

 

内外装工事費

最も効果的なのは、美容室の設備や内装が残っている「居抜き物件」の活用。これにより、数百万円単位の工事費を削減できる可能性がある

居抜き物件は、残された設備が古く、結局は修繕や入れ替えで追加費用がかかる場合がある。また、安価すぎる素材は、サロンの安っぽさに繋がり、耐久性の問題から将来的な修繕費がかさむリスクも考慮する

機器・什器・備品等の費用

スタイリングチェアやシャンプー台といった高額な専門機器は、新品にこだわらず、状態のよい中古品やリース、レンタルも活用してみる

中古品は保証がなく、故障した際の修理費が高くつく可能性がある。また、リースは月々の支払いは楽ですが、長期的には購入するより総額が高くなる可能性がある

テナント賃貸費用

数カ月分の家賃が無料になる物件を探すだけでなく、家賃や敷金・保証金の減額を交渉する方法もある

家賃が相場より安い物件は、集客に不利な立地である可能性も忘れてはいけない。値段だけで判断せず、人通りやターゲット層の居住エリアなどを考慮する

営業保証金・FC加盟金

フランチャイズ本部によっては、期間限定で加盟金を免除・減額するキャンペーンを活用する。こうした情報を積極的に収集する

加盟金の減額を交渉する際は、その代わりに受けられるはずのサポート内容が制限されないか、契約前に入念に確認しておく

このように、コスト削減は常にリスクと隣り合わせです。目先の費用だけにとらわれず、長期的な視点で、品質や経営の安定性を損なわない選択が成功の鍵となります。

自己資金から融資・補助金まで資金調達の方法

開業に必要な資金の全体像が見えたら、次は「どうやってそのお金を準備するか」というステップに進みます。全額を自己資金で賄うのが難しい場合、一般的にはこれから紹介する方法を組み合わせて計画を立ててみましょう。

まず、資金計画全体の土台となるのが「自己資金」です。

融資を受ける際の審査でも、事業への本気度を示す重要な指標となります。先ほどの中小企業ビジネス支援サイトも推奨するように、総費用の25〜30%を自己資金で準備するのが1つの目安です。約940万円のモデルケースであれば、約235万円〜282万円が具体的な目標額となります。

自己資金で不足する部分は、金融機関からの「融資」で補いましょう。特に、創業者への支援に積極的な日本政策金融公庫は、多くの開業者が最初に相談する窓口となっています。

加えて、国や自治体が提供する返済不要の「助成金・補助金」も、条件が合えば積極的に活用したい制度です。

ただし、申請期間や対象となる経費が細かく定められている上、多くは経費を使った後に支払われる「後払い」形式のため、開業時の初期費用として直接あてにするのは難しいでしょう。

フランチャイズ美容室オーナーの年収について解説

フランチャイズでの開業を検討する上で、最も関心が高いのは「オーナーの年収は、実際いくらになるのか?」という点ではないでしょうか?

以下では、そのリアルな収支構造を明らかにするため、フランチャイズ特有の経費である「ロイヤリティ」の存在や、意外と知られていない「会社の利益」と「オーナー個人の収入」の違いといった、重要なポイントを解説していきます。

フランチャイズ美容室の売上げと経費の内訳

フランチャイズオーナーの年収がどのように決まるのかを理解するため、まずはサロン経営における基本的な「売上げ」と「経費」の構造を見ていきましょう。

以下では1つのモデルケースとして、年間売上げ3,000万円のサロンを例に、主な経費の内訳を解説します。

売上げから差し引かれる主な経費には、以下のような項目があります。

  • 人件費:スタッフに支払う給与や社会保険料です。美容室の経費の中で、最も大きな割合を占める
  • 材料費:シャンプーやカラー剤、パーマ液など、日々の施術で使用する消耗品の費用(売上げ原価)を指す
  • 賃貸料:店舗の家賃です。立地や広さによって金額が大きく変動する、主要な固定費のひとつ
  • ロイヤリティ:フランチャイズ本部に支払う対価のこと。これはフランチャイズ経営において特に重要な費用となる

このように、年間売上げから、人件費や材料費、家賃といった様々な経費が差し引かれ、最終的な利益が算出されます。これらの経費をいかに管理するかが、オーナーの年収が大きく左右されるでしょう。

フランチャイズの重要経費「ロイヤリティ」とは?

本部に支払う「ロイヤリティ」は、フランチャイズ経営を理解する上で欠かせません。これは、確立されたブランド名やロゴ、そして成功実績のある経営ノウハウを使用する権利の対価として、加盟店が本部に定期的に支払う費用です。

ロイヤリティの算出方法には、主に2つの方式があります。

  • 毎月の売上げの数%(一般的に3〜10%程度)を支払う「売上げ歩合方式」
  • 売上げの変動に関わらず、毎月決まった金額を支払う「固定額方式」

どちらの方式を採用しているかは、フランチャイズ本部によって異なります。

ロイヤリティは、毎月の利益を計算する上で差し引かれるコストです。しかし、見方を変えれば、これは経営を安定させるための「投資」と捉えられます。

この支払いの対価として、オーナーは本部のブランド力を活用した集客支援や、長年培われた経営指導といったサポートを受けられる点がポイントです。

国の調査データを参考に、リアルなオーナー年収を考える

上記で、フランチャイズ経営の収支構造やロイヤリティについて解説しました。それでは、それらを踏まえた上で、よりリアルな収支はどのようになるのでしょうか?

以下では、最新の市場データと公的機関が示す平均的な経費率を組み合わせ、具体的なシミュレーションを行ってみましょう。

まず、ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、美容室の1回あたり利用金額は7482円です。仮に1日10人のお客様が来店し、月に22日営業すると、年間の売上げ高は約1975万円となります。

次に、この売上げから日本政策金融公庫の調査に基づく平均的な経費率を差し引いていきます。

  • 材料費(売上げ原価): 売上げの15.8% = 約312万円
  • 諸経費(家賃など): 売上げの37.5% = 約741万円
  • 人件費(オーナーの役員報酬含む): 売上げの45.1% = 約891万円
  • ロイヤリティ(仮に売上げの5%と設定): 売上げの5.0% = 約99万円

これらの経費を合計すると、約2043万円となります。

最後に、売上げから経費合計を差し引いて、会社の最終的な利益である「営業利益」を算出します。

【1975万円(年間売上げ)- 2043万円(経費合計) = ▲68万円(赤字)】

このシミュレーションは、平均的な売上げと平均的な経費率で美容室を運営した場合、フランチャイズのロイヤリティを支払えば、会社として赤字になる可能性も示唆しています。

これは、フランチャイズ経営で成功し、高い年収を目指す上で、平均的な経営だけでは不十分であることを浮き彫りにするものです。本部のサポートの活用や独自の工夫を通じて、平均以上の売上げを達成するか、平均以下の経費率に抑える経営努力が求められます。

オーナー年収1000万円超を目指すための方法

上記のシミュレーションで示したとおり、平均的な経営状況では、オーナーが高い年収を得るのは簡単ではありません。しかし、経営努力次第で、平均とされる年収400万~500万円のラインを超え、年収1000万円以上も目指すことができます。

そのための具体的な方法の例としては、以下の4つです。

  • 複数店舗展開:1店舗目の経営が軌道に乗り、信頼できるスタッフが育てば、2店舗、3店舗と展開していくのが、収入を大きくスケールさせる最も一般的な方法
  • コスト管理の徹底:日々のサロン運営における、無駄な経費を削減することも重要。特に、使用量の変動が大きい薬剤などの材料費は、定期的に在庫管理や発注方法を見直してお。
  • 高単価サービスの導入と客単価UP:全体の売上げと利益率を向上させるため、客単価を高める工夫をする。たとえば、専門性が高く利益率のよい高単価メニューを導入して、お客様にその価値を丁寧に伝える
  • 本部サポートの最大活用:本部が提供する集客支援やキャンペーン、最新の経営ノウハウなどを積極的に活用して、サロンの売上げそのものを伸ばす

オーナーの年収1000万円という目標は、決して夢物語ではありません。

しかし、それは日々のサロンワークをこなすだけで達成できるものではなく、事業を拡大する視点、コストを管理する視点、そして提供価値を高める視点が不可欠です。経営者として戦略的にサロン運営に取り組みましょう。

フランチャイズ美容室のタイプ別に分けた特徴と選び方のポイント

フランチャイズと一括りにいっても、そのビジネスモデルは様々です。どの本部をパートナーとして選ぶかは、開業後の成功を大きく左右する、最も重要な決断といえるでしょう。

以下では、フランチャイズの主なビジネスモデルをタイプ別に分類し、それぞれの特徴を解説します。

フランチャイズのタイプごとの特徴

「フランチャイズ」と一括りにいっても、そのビジネスモデルは様々です。加盟を検討する際は、まずどのようなタイプが存在するのか全体像を把握し、自身の目標や価値観に合ったモデルを見極めましょう。

ここでは、代表的な特徴を、メリット・デメリットと合わせて簡潔に解説します。

詳細

メリット

デメリット

 

低価格・高回転型

リーズナブルな価格設定とスピーディーな施術で、多くのお客様を集めるモデル

幅広い層に支持されやすく、安定した集客が見込める

常に高い回転率を維持し続ける経営努力が求められる

高単価・特化型

髪質改善やヘッドスパなど、特定の技術やサービスに特化し、専門性を高めることで高単価を実現するモデル。

利益率が高く、他店との差別化が図りやすい

専門性がお客様に認知されるまで集客に時間がかかる場合がある

地域密着型

地域の顧客層やニーズに合わせたサービスを展開し、リピーターを大切に育てていくモデル

一度ファンになってもらえれば、安定した経営基盤を築きやすい

商圏の人口や需要に業績が左右されやすい側面もある

訪問美容型

高齢者施設やお客様のご自宅に訪問して施術を行う、店舗を持たない、あるいは小規模な拠点で運営するモデル

高齢化社会で需要の増加が見込まれる

移動コストや時間がかかる点を考慮する必要がある

オリジナルブランド型

フランチャイズ本部の経営支援は受けつつも、店舗のコンセプトや内装、サービス内容などについては、比較的高い自由度が認められているモデル

独自のサロンを追求したいオーナーに向いている

本部ブランドの知名度が低い場合は、集客面で苦労する可能性もある

このように、フランチャイズと一口に言っても、その戦略や特徴は様々です。まずはご自身がどのタイプに最も魅力を感じるかを考え、以下で解説する「失敗しない選び方」を把握しましょう。

失敗しないフランチャイズの選び方

興味のあるフランチャイズのタイプがある程度絞れたら、次に具体的な「本部選び」のステップに進みます。フランチャイズ本部の選び方ひとつで、その後のサロン経営に大きな影響をおよぼすので、慎重に選びましょう。

以下では、本部を比較検討する上で、必ず確認すべき重要な項目をチェックポイントとして解説します。

  • 自分のビジョンと合致しているか:そのフランチャイズが掲げる経営理念やブランドイメージに、共感できるかを確認する。たとえ収益性が高くても、自身の目指すサロン像と方向性が異なると、長期的に経営を続けるのが苦しくなる
  • サポート体制は十分か:具体的にどのような支援を受けられるのかを詳細に確認する。特に、経営指導、スタッフの教育制度、集客支援の3点については、詳しくヒアリングしておく
  • 費用と収益モデルに納得できるか:加盟金やロイヤリティといった費用と、それに見合った収益が期待できるか、現実的なシミュレーションをもとに判断する
  • 出店希望エリアの需要に合っているか:自分が出店したいと考えている地域の客層やニーズに合っているかを見極める
  • 契約内容と出口戦略は明確か:契約書の内容は、隅々まで入念に確認する。特に、契約期間、更新の条件、そして中途解約に関する条項の確認は必須

フランチャイズ加盟は、あなたの美容師人生を左右する大きな決断です。

目先の利益やブランドイメージだけで安易に判断せず、上記のチェックポイントをもとに、複数の本部を多角的に、そして慎重に比較検討しましょう。

フランチャイズ美容室の経営で失敗した場合に知っておきたい挽回・撤退の方法

美容室の開業を考える上で、最も大きな不安の1つが「経営がうまくいかなかった場合」ではないでしょうか? 事前にリスクと対処法を知っておくと、安心して一歩を踏み出せるでしょう。以下では、そんな万が一の事態に備え、冷静に対処するための知識を解説します。

経営の立て直しを図る「挽回」の方法

万が一、経営不振の兆候が見えても、すぐに諦める必要はありません。経営を立て直す「挽回」のための行動を早めに起こしましょう。

まず、オーナー自身がすぐに着手できる改善策として、自店での経営改善があります。

家賃や材料費といったコスト全般を見直して、無駄を削減してください。そして、一人で抱え込まずに、以下のようなフランチャイズ最大の強みである本部のサポートを活用してみてください。

ロイヤリティの対価として、本部には加盟店を支援する義務とノウハウがあります。

  • 経営指導・代行:専門家であるスーパーバイザーを派遣して直接経営指導を行うだけでなく、経理や財務の業務代行といった支援も含まれる
  • 採用・教育支援:サービスの質の根幹であるスタッフの採用活動を本部が主導する。さらに、独自の教育プログラムの提供や、人材面から経営の立て直しもサポートしてくれる
  • 集客支援:本部のブランド力や、テレビCMなども含めた大規模なマーケティング戦略を活用し、集客の根本的な改善も支援してくれる

経営が苦しい時こそ、プライドは一旦脇に置き、本部に正直に状況を相談し、利用できるサポートはすべて活用してください。

やむを得ず事業をたたむ場合の「撤退」の方法

様々な挽回策を試みても経営の改善が難しいと判断した場合は、損失を最小限に抑えるために、計画的に事業をたたむ「撤退」も検討してください。これも、経営者としての重要な決断です。

主な撤退方法には、以下の2つがあります。

  • 店舗を第三者に売却する「事業譲渡(M&A)」
  • 本部の合意の上で店を閉める「フランチャイズ契約の解約」

いずれの方法を取るにせよ、そのルールは全て加盟時に交わしたフランチャイズ契約書に定められています。撤退を考え始めたら、まず契約書を隅々まで再確認し、特に以下のポイントを把握しておいてください。

  • 中途解約の条件(違約金・予告期間):契約期間の途中で解約する場合のペナルティを確認しておく。中には、「6カ月前の予告」といった事前の通知義務や、「違約金として数百万円」の支払いが必要になるケースがある
  • 契約期間:契約期間が定められている場合、契約満了のタイミングで更新しない、という形でのれんを下ろすのが最もスムーズな方法となる
  • 店舗の所有権(リース形式):店舗の原状回復費用が、撤退時に大きな負担となりやすいが、「リース店舗形式」のフランチャイズの場合、このリスクが低減されるケースもある

これらの本部との手続きに加えて、スタッフへの退職手続きや、これまでご利用いただいたお客様への誠実な告知と対応も、オーナーとしての最後の重要な責任です。

負債がある場合は、弁護士などの専門家に相談しながら、債務整理などの法的な手続きを進めていきましょう。

失敗を最小限に抑えるために最も重要なこと

経営の立て直しを目指す場合も、やむを得ず撤退を決断する場合も、そのダメージを最小限に抑えるためには共通する重要な心構えがあります。そのポイントを確認しておきましょう。

  • 加盟前の「契約内容の確認」を徹底する:撤退時のルールは、全て加盟前に交わす契約書に記載されているが、特に、契約期間や中途解約時の違約金に関する条項は、将来のリスクを把握するため、必ず熟読しておく
  • 一人で抱え込まない「専門家への早期相談」:経営不振の兆候が見えたら、まずフランチャイズ本部の担当者に状況を相談する。必要であれば、弁護士や中小企業診断士といった外部の専門家にも相談する
  • 傷口を広げない「早期の決断と行動」:最も重要なのは、状況の悪化を見て見ぬふりをしないこと。厳しい状況であるほど、冷静に、そして迅速に次の行動に移す勇気が求められる

順調な時こそ、万が一の事態を想定して準備しておきましょう。そして、問題が発生した際は、迅速かつ冷静に行動してください。それが、経営者としてのリスク管理の基本といえるでしょう。

フランチャイズ美容室と個人経営のスタッフの採用や教育の違い

美容室を開業し、事業を成長させていく上で、多くのオーナーが直面する最も大きな課題の1つが、「スタッフの採用と教育」です。

技術や接客の質を左右するこの重要な課題へのアプローチは、フランチャイズと個人経営で大きく異なります。以下では、「採用活動」と「教育体制」において、それぞれどのような違いがあるのか具体的に比較・解説します。

ブランド力と仕組みで差がつく「スタッフ採用」

スタッフの採用においても、フランチャイズと個人経営では、その進め方や難易度に大きな違いが生まれます。

スタッフ採用の進め方や難易度の違い

 

個人経営の場合

・採用活動の全てを自己責任で行う:どの求人媒体に広告を出すかの選定、応募者との面接、給与や休日といった採用条件の交渉まで、すべてを一人で進めなければいけない

・時間・コスト・ノウハウが求められる:これらの活動には、多大な時間と費用がかかるだけでなく、採用市場の知識や面接の技術といった専門的なノウハウも必要になる

フランチャイズの場合

・本部による採用代行・サポート:本部が美容学校へ求人を出してくれたり、効果的な求人広告の出し方を指導してくれたりと、採用活動そのものを支援してくれるケースがある

・魅力的な労働環境の提供:フランチャイズによっては、「ノルマなし」「安定した固定給」といった働きやすい労働条件がブランド全体で整備されており、個人経営のサロンよりも多くの優秀な人材を集めやすい傾向にある

このように、フランチャイズは採用活動を「仕組み化」できる点が、個人経営にはない大きな強みといえるでしょう。

体系的なプログラムが強みの「スタッフ教育」

採用したスタッフを一人前に育てる「教育」もまた、個人経営とフランチャイズで大きく異なる点です。

個人経営の場合、教育の全責任はオーナーが負うのが一般的ですが、優れた美容師と、優れた指導者では別のスキルが必要であり、多くの個人経営美容室のオーナーがその難しさに直面します。

ある有名サロンのオーナーも、独立当初の苦労を次のように語っています。

1店舗目の『BAPE CUTS』のときが大変でしたね。プレイヤーからマネジメント業務をするようになったので、細かい数字のことやスタッフ管理のことなど正直難しいなと思いました。

引用:モアリジョブ|ABBEY オーナー 松永英樹さん

これに対し、多くのフランチャイズ本部では、ブランド全体のサービス品質を高く、そして均一に保つための教育プログラムが用意されている点が強みです。たとえば、以下のような内容が強みとなっています。

  • 効率的な教育カリキュラム:あるフランチャイズでは、未経験者でも半年でスタイリストとしてデビューできる独自のカリキュラムが整備されており、効率的に人材を育成できる
  • 高度な独自メソッド:特許申請中の独自メソッドや、デジタル教材を活用した教育システムを導入し、個人サロンでは実現が難しい高水準のトレーニングを提供している本部もある
  • 教育の成果としての高い定着率:こうした手厚い教育体制の結果として、「社員定着率95%」という高い数値を実現しているフランチャイズも存在している

このように、フランチャイズ加盟によって、オーナーは教育に関する大きな負担を軽減できるでしょう。質の高いスタッフを育成するための強力なサポートを得られます。

採用や教育を「仕組み化」できるのがフランチャイズの魅力

ここまで見てきたように、フランチャイズは「採用」と「教育」の両面で強力なサポートを提供しています。

その最大の魅力は、これら時間と労力がかかる業務を「仕組み化」できる点にあるといえるでしょう。

本部が持つ確立されたシステムを活用することで、オーナーは現場での細かな技術指導などから解放され、より重要な経営判断や美容室の将来を考えるといった、本来のオーナー業務に集中する時間を確保できます。

人気サロンの代表は、オーナーが担うべき役割について、次のように語っています。

――スタッフ教育ではお二人はどのようにアプローチされていますか?

伊藤さん:あまり二人でスタッフの前に出ていく感じではないですね。その代わり、店長に任せています。現在、sikiと隣にあるsiki factory、大宮店にそれぞれ店長がいるんです。

磯田さん:技術的な教育はほとんど彼らに任せていて、僕らは最終チェックで見るくらい。僕らは、生き方や仕事への向き合い方を見せていけたらいいなと思っていて。

引用:モアリジョブ|siki 代表 磯田基徳さん、伊藤竜さん

このように、教育を仕組み化し、オーナーはより高次の「ビジョンを示す」役割に徹するという考え方は、フランチャイズに限らず、個人経営のサロンが成長を目指す上でも非常に重要です。

そして、その仕組み化の第一歩は、言うまでもなく「採用」から始まります。採用を成功させるための具体的なステップについては、以下の資料で詳しく解説していますので、ぜひご活用ください。

まとめ

開業への道筋は1つではありません。どちらの道を選ぶかが、あなたのオーナーとしての未来を大きく左右します。「賢い選択」をするための重要なポイントを、改めて以下にまとめました。

  • フランチャイズは「安定・安心」、個人経営は「自由度の高さ」に大きな魅力がある
  • 開業資金や年収は、ロイヤリティの有無が収支構造を大きく分けるポイントとなる
  • 成功の鍵は、サポート体制やブランド理念が、自身のビジョンと合致する本部を選ぶことにある
  • 特に、経営や採用・教育に不安がある場合、フランチャイズの「仕組み」は強力な武器になる

フランチャイズと個人経営、どちらが一方的に優れているという意味ではありません。

確立された仕組みの中で、安定的に成長したいと考えるならフランチャイズがおすすめです。全てを自分の裁量で決め、リスクを取ってでも理想を追求したいと考えるなら個人経営が、それぞれ向いているといえるでしょう。

どちらの道を選ぶにしても、情報を集め、計画を立て、具体的な一歩を踏み出してください。

関 慎一郎(Seki Shinichiro) プロフィール画像
執筆者情報
関 慎一郎(Seki Shinichiro)
美容師として8年間サロンワークを経験。その後、現場の声を活かしながら、Webマーケティングによる集客戦略の立案、補助金制度を活用した資金繰りの改善などに取り組み、創業40年以上の老舗美容室の経営に携わる。Bizリジョブ編集部では、現場と経営の両方を経験した視点から、美容サロンが抱える採用や集客などの課題解決に貢献できるよう、リアルで実践的な情報を発信。