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マッサージ店を開業する方法とは?種類や開業の流れ、使える助成金を解説

マッサージ店を開業する方法とは?種類や開業の流れ、使える助成金を解説

マッサージ店を開業する場合、まずはどのようなマッサージをメインにメニューを組み立てるのかを考える必要があります。ひとくちにマッサージといっても、オイルマッサージやリンパマッサージ、タイ古式マッサージなどさまざまなタイプがあるので、競合との差別化や施術経験を踏まえ、メインのマッサージを決めて開業しましょう。

あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得していると、保険を適用して安価に施術サービスを提供できます。保険を使えるマッサージ店を開業する場合は、まずは保健所への届出や受領委任払いへの申請が必要です。

またマッサージ店の売上を伸ばすためには、顧客数の増加に応じてスタッフを雇用することも大切です。スタッフを雇うと、SNS運用やブログ執筆などに取り組んで集客にも力を入れやすくなります。スタッフが働きやすい助成金なども活用して、店舗拡大を目指すとよいでしょう。

この記事ではマッサージ店を開業する流れやマッサージの種類、スタッフ採用に活用できる助成金を紹介します。

マッサージ店を開業するために必要な資格

マッサージ店を開業するためには、あん摩マッサージ指圧師の資格が必要です。その他の資格を取得してもマッサージ店を開業できないので、注意しましょう。

あん摩マッサージ指圧師

あん摩マッサージ指圧師を取得すると、マッサージ店を開業して治療として患者にマッサージできます。

あん摩マッサージ指圧師になるためには、まずは大学や専門学校などのあん摩マッサージ指圧師を養成する施設に進学して3年以上学ばなければなりません。その後、国家試験に合格するとあん摩マッサージ指圧師の資格を取得できます。

法律では、マッサージはあん摩マッサージ指圧師と医師の業務独占とされています。業務独占とは、資格を持った人のみにしか施術を行えないという意味です。法律にも次のように定められています。

医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

引用:あん摩マッサージ指圧師法|第一条

その他の資格

筋肉をほぐしたり、体に圧をかけたりするリラクゼーション施術を習得したい場合は、民間資格で学ぶ方法もあります。しかし、その他の資格を取得しても、法律上はマッサージを行えないため注意しましょう。あん摩マッサージ指圧師以外がマッサージ店を開業すると法律違反になります。

そのため、あん摩マッサージ指圧師以外が開業する場合、リラクゼーションサロンや整体院などの名称を使うことが多いです。

また施術メニューにマッサージの文言を用いるのも法律違反です。コンプライアンスを遵守するのであれば、マッサージではなく次のような名称を用いた方がよいでしょう。

  • もみほぐし
  • リラクゼーション
  • ボディケア
  • トリートメント など

マッサージ師と名乗ることも法律違反になるため、代わりに「セラピスト」や「整体師」、「施術者」などの言葉を用いるようにしましょう。

マッサージの種類

ひとくちにマッサージといっても、さまざまな方法があります。開業を計画する前に、どのようなマッサージをメインにするか決めましょう。ここでは、主なマッサージについて5つ紹介します。

またそれぞれについて、代替表現も紹介するので、参考にしてください。

オイルマッサージ

オイルマッサージとは、適量のオイルを手にとり、顧客の皮膚に優しく触れながらマッサージする方法です。アロマオイル(精油)を使用することも多く、その場合はアロマオイルマッサージとも呼ばれます。アロマの心地よい香りと、皮膚へのなめらかな刺激によりリラックス効果を生み出す施術です。

オイルマッサージに変わる名称として、オイルトリートメントやアロマケアなどがあります。

リンパマッサージ

リンパマッサージとは全身を流れるリンパ液の流れを促進するマッサージです。リンパ液には水分や老廃物が含まれているので、リンパマッサージでケアするとむくみの解消や疲労回復などの効果が期待できるといわれています。

リンパマッサージの別称として、リンパケアやリンパドレナージュなどが挙げられます。

タイ古式マッサージ

タイ古式マッサージはタイの伝統医学の1つで、全身を伸ばしたり、ほぐしたりして凝り固まった筋肉をゆるめる施術です。全身の血流を促進することで、自然治癒をカバーする効果が期待できます。

タイ古式マッサージの別の呼び方としては、タイ古式ボディケアやタイ古式セラピーなどが挙げられます。

足つぼマッサージ

足つぼマッサージは脚の裏にある、ツボや反射区を刺激して全身の状態を整える施術法です。反射区によって、臓器と足裏の特定領域との関連が示されています。臓器と関連する足裏を刺激することで、臓器の機能向上が期待できるのです。

足つぼマッサージは、リフレクソロジーと呼ばれることもあります。

すいな(推拿)

すいなとは、中国で生まれた手技で、漢方や鍼灸と並ぶ中国三大医療の1つです。筋肉に対してはマッサージのような手技を施したり、関節にはカイロプラクティックや矯正のような手技を行ったりします。

日本では、すいなの名称自体は誰でも使えますが、分かりやすくするために「中国整体」と称するケースもあります。

保険を適用したマッサージ

保険を適用したマッサージは、あん摩マッサージ指圧師と医師のみが行えます。ここでは保険を適用してマッサージをできる症状や、保険の仕組みについて解説します。

保険を適用できる症状

あん摩マッサージ指圧師の場合は、保険を適用するためには医師の同意が必要です。筋肉の麻痺や関節の拘縮などの症状に対して、関節の可動域を広げたり、筋力の増強を促したりすることを目的に保険を適用して施術が可能です。(※1)

疲労回復や慰安を目的とした施術には保険を適用できないため、注意しましょう。

※1 参考元:全国健康保険協会

保険の仕組み

あん摩マッサージ指圧師が扱う保険は、受領委任払いと呼ばれる制度で成り立っています。受領委任払いとは、施術者が患者に代わって施術費用を保険者に請求する仕組みです。従来は、柔道整復師が保険を扱う際に適用されていましたが、平成31年1月1日よりあん摩マッサージ指圧師やはり師、きゅう師にも適用されることになりました。

受領委任払いは、施術所に対して患者が施術金額の一部を負担して支払う制度です。たとえば保険の負担割合が3割の患者は、施術代金の3割を療養費の一部負担金として窓口で支払います。残り7割の療養費は、施術者が保険者に請求することになります。

▼受領委任払いの仕組み

受領委任払いの仕組み

引用:受領委任制度の導入について(周知チラシ)|東海北陸厚生局

表面上は医療機関と同じように保険を扱えるのですが、保険システムがまったく異なります。あん摩マッサージ指圧師として保険を扱う場合は、受領委任払いのシステムを理解しましょう。

マッサージ店を開業する流れ

マッサージ店を開業する流れは次のとおりです。

  • 開業する方法を決める
  • 内装工事の見積を依頼する
  • 施術メニューを決める
  • 集客の方法を考える
  • スタッフを採用する
  • 事業計画書を作成する
  • 開業資金を準備する
  • 開業する

ここでは保険を扱わないマッサージ店の開業を想定して、流れを紹介します。あん摩マッサージ指圧師以外の人が、リラクゼーションサロンや整体院を開業する場合も同じ流れで開業できるので、参考にしてください。

開業する方法を決める

マッサージ店を開業する場合、次の手段が考えられます。

  • 出張
  • マンション
  • テナント
  • レンタルサロン
  • フランチャイズ

それぞれについて、開業のやり方や、メリット、デメリットを解説します。

出張で開業する

出張で開業するメリットは、少ない資金ではじめられることです。そのため自己資金を準備できずに融資の相談が難しい場合は、まずは出張で開業するのも1つの手段です。自己資金が貯まったあとに、改めて金融機関に融資を相談するとよいでしょう。

出張で開業するデメリットは、売上に限界があることです。出張の場合、出張先に赴くための移動時間がかかります。1人で出張する場合、1日に施術できる人数が限られるので、大きく売上を伸ばすことが難しいです。

出張マッサージをはじめる場合は、ホームページやポータブルベッド、名刺、車などが必要です。ただしマッサージのスタイルによっては、ベッドが必要ない場合もあります。マッサージのスタイルに合わせて、必要な道具を準備しましょう。

マンションで開業する

マンションで開業するメリットは、テナントで開業するよりも賃料や敷金が安価なことです。初期費用を抑えられるので、自己資金のみで開業費用をカバーしやすい点も魅力でしょう。

一方でデメリットは店舗が狭くなるので、設置可能なベッドが1~3台と限られる点です。1日に施術できる患者数も伸ばしにくいので、売上にも限界があります。またマンションの1室なので、通行人が認知しづらい点もデメリットとして挙げられます。集客をするためには、マーケティングや広告などでしっかりと宣伝できる仕組みが必要です。

マンションで開業する場合、店舗を開業してもよいかどうか事前に確認しましょう。開業が許可された場合でも、玄関のドアやポストに店舗の表札を掲げられないケースもあります。契約内容をしっかりと確認して、納得のいく形で開業できるようにしましょう。

テナントで開業する

テナントで開業する場合、通行人から目立つ場所で開業できる点が魅力です。さらに面積の広いテナントで店舗を開業すれば、スタッフを雇って来客数を増やし、売上を大きく伸ばすことも可能です。

その一方で、テナントはまとまった開業費用が必要なケースが多いです。契約前に必要な敷金や改装費用などを合わせると自己資金だけでは開業資金をカバーできないかもしれません。

毎月の固定費も高額になるので、自己資金に加えて金融機関から融資を受けて運転資金を確保しておくことも大切です。

レンタルサロンで開業する

レンタルサロンとは、1時間~1か月単位でサロンを借りられるサービスです。サロンの広さはベッド1台程度のスペースであることが多く、タオルやベッド、水回りなどマッサージ店の運営に必要な備品や設備が整っている点が魅力。1時間あたり1000円未満のレンタル料で借りられるケースもありお手頃です。(※2)比較的少額の資金でマッサージ店を開業できます。

レンタルサロンのデメリットは、サロンに空きがなかったら予約を受けられないことです。またレンタルなので、顧客からの信頼が得にくい側面もあるかもしれません。

不調の改善を目的とする場合、継続した施術が必要になるケースもあります。レンタルサロンの空きがなく予約が取れずに、施術を予定通りに進められない可能性があります。その結果、不調の改善に影響を与えるかもしれません。

※2 参考元:「instabase」で検索して調査した結果

フランチャイズで開業する

フランチャイズ開業の魅力は、施術や経営ノウハウ、店舗運営の仕組みが揃っていることです。マッサージ店の運営経験がなくても、フランチャイズ本部のサポートも受けて開業できます。

一方でフランチャイズのルールやコンセプトに合わせるために、内装や設備を揃える必要があります。そのため、まとまった開業資金が必要です。

さらに開業後も、毎月一定のロイヤリティを支払う必要があります。初期費用が高額になりがちな点や、開業後にロイヤリティが発生する点などを踏まえ、資金計画をしっかりと立ててフランチャイズでの開業を検討しましょう。

内装工事の見積を依頼する

内装工事を依頼する場合は、複数の業者に見積を取って、実績と費用を比較しましょう。コストを抑えたい場合は、カーテンレールやカーペットなど自分で施工できる部分をDIYするのもよいでしょう。

コストダウンを図る際は、内装の質を落とさないことも重要です。株式会社ネオマーケティングの調べによると、マッサージ店を選ぶ際に店舗の雰囲気(内装)が気になる人の割合は半数以上に上りました。

マッサージ店を選ぶ際に口コミで知りたい情報

内装を考える際は、地域の競合店舗との差別化を意識するとよいでしょう。

なぜ自分はこの空間を上質だと思うんだろう、と考え続け、「光がポイントなんだ」と気付いたんです。ほかにも内装を作る際には、木のぬくもりが感じられることも意識しました。正直にいうと、思っていた以上の予算がかかってしまい、予算オーバーになってしまったのですが、今治では自宅サロンを経営している方が多いので、そういったサロンとの差別化にもつながったのかなと思っています。


引用:モアリジョブ|いとAROMA&SPA オーナーセラピスト 真部奈津子さん

施術メニューを決める

施術メニューを決める場合は、競合との差別化を意識しながら、適正な価格を設定しましょう。

競合と差別化をする

競合と差別化を図るためには、メニューを考える前に地域にあるマッサージ店が提供する施術メニューを調べることが大切です。これまでに獲得したスキルで、競合が提供していない施術サービスを提供できるかどうかを考えてみましょう。

また業界では当たり前になっていることに着目して、異なるアプローチで施術メニューを考えると差別化につながることがあります。

私が通っていた学校がバキバキと鳴らす矯正方法を教えている学校でした。当時、そのバキバキさせる矯正方法にとても疑問を感じて、「バキバキしない方法はないのか?」と自分が納得できる矯正方法を考えるようになったことがきっかけです。


引用:モアリジョブ|きむらカイロプラクティック 木村康彦院長

また複数の技法を組み合わせて、新しい施術メニューを作るのも1つの手段です。

単純にアロマと整体を組み合わせた手技で、整体の関節を動かすダイナミックな手技を加えながらアロマトリートメントを行います。


アロマトリートメントだけでは改善されない肩こりの症状も、整体の手技を加えることで緩和されるのでお客様の満足度も高いんですよ。


引用:モアリジョブ|整体師 椎名宣行さん

価格を決める

価格を決める際に重要なのは、安価にし過ぎないことです。安価にすると集客には有利ですが、マッサージ店の経営には不利に働くことがあります。過度に安価にすると、忙しいのに儲からない状況に陥る可能性があります。

まずは理想の目標売上と最低限確保すべき売上を決め、そこから1日の施術人数をもとに逆算して理想の価格と最低限維持すべき価格を決めましょう。価格を決めたら地域の競合と比較しつつ、最低限維持すべき価格を下回らないように、施術サービスの価格を決定するとよいでしょう。

価格を決める際には、マッサージの利用客に向けたアンケートも参考になります。J-Net21の調査によると、1000円~3000円、もしくは3000円~5000円でのニーズが高いようです。

▼マッサージ店を訪れた際の1回あたりの利用金額

マッサージ店を訪れた際の1回あたりの利用金額

1回の施術時間を15分や30分、60分と設定して、各時間に合わせて単価を設定すると、売上を落とさずに顧客のニーズにも答えやすくなるでしょう。施術スキルに自信がある場合は、5000円以上の高単価でも施術を受ける顧客をターゲットにするのも1つの手段です。

以上のように店舗経営の維持に必要な売上と顧客ニーズのバランスを取りながら施術の価格設定をすると、経営的に無理することなく、顧客満足度を高められます。

集客方法を考える

集客方法には、オンライン集客とオフライン集客があります。オンライン集客はインターネット上で集客をすることです。有料のWeb広告や口コミサイトの他にも、無料でできるSNSやブログ、Googleマップへの登録などさまざまな方法があります。有料と無料の媒体を活用しながら、予算内で効率的にマッサージ店をアピールすることが大切です。

またオフライン集客とは、インターネットを介さずに行う集客方法です。チラシやタウン情報誌への掲載などの無料でできる施策と、紹介やイベントなどの無料でできる施策があります。とくに紹介による集客は、広告費をかけずに継続して顧客を集められるメリットがあります。

次の記事では店舗集客について詳しく解説しているので、参考にしてください。

スタッフを採用する

マッサージ店の開業後に売上を伸ばしたい場合は、スタッフの採用を想定して事業計画を立てることも大切です。複数名のスタッフがいると、繁忙期に発生する予約の取りこぼしを防いだり、マーケティングに取り組む余裕ができたりするので、売上アップが期待できます。

またスタッフの施術スキルや人柄に共感するファンがついてリピーターが増え、売上を伸ばせる可能性があります。

今は2人でやっていて、やっぱり同じ技術を使っていても、それぞれ「売り」になるものは必ず違うんです。その部分をお客様は選んで、時間とお金をかけてくれるんだと僕は思っています。動画を通して僕たちのことを知って来てくれている分、実際に1対1のやり取りになったときもスムーズにいきやすいのかなと思います。


引用:モアリジョブ|整体院ひなた 院長 田中直也さん

またマッサージ店をスタッフに任せ経営に注力すると、さらなる店舗の繁栄が期待できます。自分が世間に広めたい施術をさらに多くの人にアピールできるようになるでしょう。

経営に回って、猫背矯正を広めていきたいと思っています。まずは、スタッフを雇うことからですね。それから、手技の指導に移っていく。今すぐには実行できないですが、徐々に動き出そうと考えているところです。


引用:モアリジョブ|整体師・カイロプラクター 篠原靖治さん

スタッフを採用する際には、開業したマッサージ店のコンセプトに合ったスタッフを採用することが大切です。経験者を雇う場合は、マッサージ店で提供する施術メニューに対応できるかどうかも確認しましょう。また正規社員や非正規社員、業務委託契約など店舗運営の状況や予算に合わせて雇用形態を考えることも大切です。

次の記事では、採用計画の作り方や採用の手順について解説しています。

創業計画書を作成する

ここまでで事業計画がある程度まとまったら、創業計画書を作成しましょう。創業計画書には、次のような内容を記載します。

  • 開業する動機
  • 経営者の略歴
  • 取り扱う商品やサービス
  • 取引先や取引関係者
  • 授業員数
  • 借り入れの状況
  • 必要資金と調達方法
  • 事業の見通し

創業計画書は、開業に必要な資金を準備するためにも重要な書類です。融資を受ける場合は、とくにしっかりと記入して自分の事業をアピールしましょう。

▼創業計画書のひな形

創業計画書のひな形

引用:日本政策金融公庫

開業資金を準備する

開業資金を準備する場合、まずは日本政策金融公庫が選択肢の1つとなるでしょう。開業する場合、自己資金が全くない状態では融資を受けるのが難しいです。ある程度の自己資金を準備して融資の相談に行きましょう。

自己資金を準備する

準備するべき自己資金の額は一概には決められていませんが、一般的な平均を目安にするとよいでしょう。日本政策金融公庫の調査によると、開業資金全体に占める自己資金の平均的な割合は24%でした。

▼開業資金の内訳

開業資金の内訳

家族やその他から借り入れる予定がない場合は、全体の3割程度を目安に自己資金を準備するとよいでしょう。

ただし融資の可否を判断する際は、自己資金の額だけではなく創業計画書の内容も重視されます。創業計画書をしっかりと作り込んで、融資を申し込みましょう。

融資を受ける

日本政策金融公庫で融資を受ける場合は、新創業融資制度を活用するとよいでしょう。次の要件を満たすと、申し込めます。

新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方

新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方


引用:新創業融資制度|日本政策金融公庫

引用文にある「2期」の考え方は、法人と個人で以下のように異なるため注意しましょう。

  • 法人の場合:法人設立日から最初の決算日までが1期で、第1期の決算日から1年後までが2期に該当
  • 個人の場合:個人事業主の場合は、開業日から12月31日が第1期で、開業した年の翌年12月31日までが2期に該当

自己資金は創業資金総額の10分の1以上を準備することが要件です。しかし前述のデータでも示したとおり、実際には3割以上の自己資金を準備しなければ融資を受けるのは難しいと考えられます。

勤めていた企業と同じ業種の事業をはじめたり、創業塾や創業セミナーなどを受けて事業をはじめたりする場合は、自己資金の要件を満たすことになります。該当する場合は、日本政策金融公庫の窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。

開業する

開業資金が準備できたら、店舗契約の締結や内装工事、スタッフ採用を進めましょう。開業予定日に間に合うように備品類も早めに発注するのも大切です。

開業後は、開業届を税務署に提出しましょう。個人で事業をはじめる場合は、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。法人で事業をはじめる場合は、「法人設立届出書」を提出しましょう。

保険を使えるマッサージ店を開業する場合の手続き

保険を使えるマッサージ店を開業する場合は、開業届とは別に手続きが必要です。ここでは、日本柔整鍼灸協同組合の記事を参考にしながら、保険を使えるマッサージ店を開業する場合の手続きについて解説します。

保健所に開設届を出す

あん摩マッサージ指圧師院の開業後は、10日以内に開設届を提出する必要があります。

▼あん摩マッサージ指圧、はり師、きゅう師の施術所開設届

あん摩マッサージ指圧、はり師、きゅう師の施術所開設届

引用:施術所の申請書様式一覧|熊本市

ただし保険を取り扱う場合、受領委任払いを届けた後から保険を扱えるので注意しましょう。さらに保健所に届ける際には、保健所で承諾を受けた開設届も必要です。

たとえばあん摩マッサージ指圧院を開業して8日後に保健所に開設届を提出して、そのまま同日に地方厚生局への受領委任払いの届出も済ませたとします。この場合、開業当日から7日までに行った施術については保険を適用できず、自費扱いとなるため注意しましょう。

開業当日から保険を扱いたい場合は、開業当日に開設届と受領委任払いの届出に承諾をもらう必要があります。

受領委任の申請をする

受領委任を申請するためには、次の様式に必要事項を記入して提出します。

  • 確約書
  • 療養費の受領委任の取扱いにかかる申出(施術所の申出)
  • 療養費の受領委任の取扱いにかかる申出(同意書)

以上は、各地方厚生局のホームページで様式をダウンロードできるので、マッサージ店を開業する地域を管轄する厚生局のホームページをご覧ください。さらに以上の様式に加え、次の書類を添付する必要があります。

  • (保健所に提出した)施術所開設届又は施術所変更届の副本の写し
  • ※施術管理者が出張専門施術者の場合は、出張施術業務開始届の写し
  • 免許証の写し(勤務する施術者を含む)
  • 施術管理者選任等証明(施術管理者と開設者が異なる場合のみ)
  • 【開設者が個人の場合:様式第1号の2、開設者が法人の場合:様式第1号の3】
  • 勤務形態確認票【様式第2号の3】(複数の施術所で施術管理者として申出する場合又は出張専門施術者が施術所で勤務する場合のみ)
  • 住民票(施術管理者が出張専門施術者の場合のみ)
  • 施術管理者研修修了証の写し
  • 実務経験期間証明書の写し

引用:はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の受領委任に関する申出|九州厚生局

「施術管理者研修修了証」と「実務経験期間証明書」について

あん摩マッサージ指圧師が保険を扱うためには、1年間にわたり所定の施設で実務を経験したうえで、施術管理者研修を受ける必要があります。実務を経験すると、勤めた施術所の開設者や施術管理者から「実務経験期間証明書」を発行してもらえます。

また施術管理者研修修了書は、東洋療法研修試験財団で研修を受けたのちに、2週間程度で発行されます。(※3)

※ 参考元:施術管理者研修についてのよくある質問|東洋療法研修試験財団

請求代行サービスを利用する

あん摩マッサージ指圧師の保険業務の負担を軽減したい場合は、請求代行業者を活用するのも1つの手段です。代行業者に請求業務を依頼すると、申請書のチェックや整理をしてもらえます。請求書の不備や誤りに対する返戻を減らせるので、保険の請求業務による負担を抑えられます。

初期費用や月額会費、代行手数料など請求代行サービスによって費用が異なりますので、予算を考慮しつつ利用を検討するとよいでしょう。

マッサージ店の開業に使える助成金

マッサージ店を開業して売上を伸ばすためには、スタッフを雇用して定着してくれるような経営が欠かせません。

スタッフを雇用すると、施術をスタッフに任せてオーナーや院長が集客に注力できるため顧客を集めやすくなります。オーナーや院長に集客のノウハウがなければ、集客について知見のあるスタッフを雇うのもよいでしょう。

しかしスタッフを定着させるためには、採用や教育、職場環境の整備に多額のコストがかかります。そこで本項では、マッサージ店を開業してスタッフの充実を図る際に活用できる助成金を紹介します。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などを正社員にしたり、処遇を改善したりする事業者をサポートするための制度です。事業者の取り組みに応じて、次の7つのコースが準備されています。

  • 正社員化コース 
  • 障害者正社員化コース 
  • 賃金規定等改定コース 
  • 賃金規定等共通化コース 
  • 賞与・退職金制度導入コース 
  • 短時間労働者労働時間延長コース(令和6年3月末の取組まで助成)
  • 社会保険適用時処遇改善コース

詳細については、次の厚生労働省のサイトをご覧ください。

参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、人材教育の充実に力を入れる事業者をサポートする制度です。この助成金を活用すると、教材にかかる費用や教育を受けるスタッフの賃金についての支援を受けられます。

助成を受けるためには、各コースで定められた要件を満たしたうえに、事業内職業能力開発計画を作成する必要があります。次の記事では、申請の条件やもらえる金額などについて詳しく開設しているので、参考にしてください。

地域雇用開発助成金

地域雇用開発助成金は、雇用情勢の厳しい地域で事業所の設置や整備に伴い求職者を雇用した事業主に対して支給されます。この制度では、設置や設備にかかった費用と雇用する労働者の人数に応じて、50万円~800万円の金額が1年ごとに最大3回支給されます。

条件を満たせば、支給額が1.5倍から2.0倍に増やせる点も魅力です。マッサージ店の店舗数を増やしたい場合は、利用を検討してはいかがでしょうか。

地域雇用開発助成金の詳細については、次のページをご覧ください。

地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)|厚生労働省

両立支援等助成金

両立支援等助成金とは、仕事と家庭生活を両立できる職場づくりに取り組む事業者を支援するための制度です。育児や介護を理由にスタッフが休業したり、休業していたスタッフが職場復帰を果たしたりすると、助成金を受け取れます。対象のスタッフに応じて次の4つのコースが準備されています。

  • 出生時両立支援コース
  • 介護離職防止支援コース
  • 育児休業等支援コース
  • 不妊治療両立支援コース

詳細については、次のページをご覧ください。

仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主等のみなさまへ|厚生労働省

マッサージ店の開業失敗を防ぐためのポイント

マッサージ店の開業失敗を防ぐためには、次のポイントを意識しましょう。

  • 顧客のニーズを把握する
  • ターゲットを明確にする
  • 他店との差別化を図る

それぞれについて詳しく解説します。

顧客のニーズを把握する

マッサージ店の開業を成功に導くには、悩みや施術を受ける目的などの顧客のニーズを把握することが大切です。

自分がしてきたことで共通していることがあるとしたら、やっぱり「人が求めていること」という点なんです。ニーズをキャッチして、それを前に出していく。そういうものに合わせて活動しているだけであって、そこにお金がついてくるものなのかなと思います。


引用:モアリジョブ|アイランドヒーリング株式会社 代表取締役 川島直己さん(セラピスト)

顧客のニーズに応えるために新しいスキルを学ぶのも1つの手段です。スキルが増えると顧客のニーズに幅広く対応できるようになります。

お客様のニーズに応えるために、カイロプラクティックの学校へ通うことに。ただ、「揉みほぐし」は以前の学校で習っていましたし、経験者なので学校には無理を行って「カイロプラクティック」の授業だけ受講させてもらいました。


引用:モアリジョブ|整体師 椎名宣行さん

ターゲットを明確にする

成功しやすい集客のやり方は、ターゲットによって異なります。そのため開業する前に、ターゲットを明確にして集客の効率化を図ることが大切です。

たとえば夜まで働くサラリーマンをターゲットにしたマッサージ店を開業する場合、インターネット予約を設置して24時間対応できるようにすると、集客しやすくなるでしょう。

サロンのオープン時間ではない早朝や深夜に予約を入れてくださっているお客様も多く空き枠が埋まりやすくなりました。またサロンでの電話対応が少なくなってよりお客様に集中できる環境になりました。

急なキャンセルがあった時にもメール配信をすぐに行うなど集客が効率的にできるようになり客数増につながっています。

引用:リザービア|フットバランス 京王新宿店 伊藤様

または仕事終わりの時間を狙ってSNS投稿をすると、効果的にマッサージ店をアピールできるかもしれません。

ターゲットを絞ったSNS配信は安価なうえに、効果的に集客できるケースもあります。

集客サイトなども使いましたが、結果としては新規の9割の方がインスタから来てくださっています。今でも月に5日くらい、「今治に住む30代以上の女性」とターゲットをしぼって、定期的にインスタ広告を打っていて、これがフリーペーパーなどに広告を出すより安価ですし、かなり効果的です。

引用:モアリジョブ|いとAROMA&SPA 真部奈津子さん

ターゲットを明確にすると、特定の顧客にリーチしやすくなり、特定の顧客にマッサージ店を認識してもらいやすくなるようです。さらに施術自体もやりやすくなる点もメリットです。

こちらで「産後ママ専門」と言っている分、お客様がリーチしやすい、探しやすいというメリットはあると思います。

お客様の状態や環境も似ているので、悩みの原因を探りやすいという部分もありますね。産後特有のお悩みだったり、同じような姿勢の崩れ方だったり、共通する部分は多くなるので、施術の方針なども立てやすいです。

引用:モアリジョブ|ママの骨盤矯正 鍼灸師 南 絢子さん

以上のようにターゲットを明確にすると、特定の顧客に向けて集客が有利になる施策を実施しやすくなるのです。

他店との差別化を図る

他店との差別化を図るためには、マッサージのスタイルや価格、スタッフの人柄、店舗の雰囲気などで他店よりも優れている点を見つけ、それをアピールするとよいでしょう。

地域の競合店のどこも実施していない取り組みをアピールすると、他院との差別化になります。

当院の一番の特徴といえるのが、クリニックと連携して質の高い東洋医学での治療を行っていることです。激戦区といえども、このスタイルを持っているのはまだまだ少ない。だからこそ、他院との差別化になっていると思っています。

引用:モアリジョブ|アイム鍼灸院 総院長 横山奨さん

施術メニューを広げずに、あえて専門特化して施術内容を絞るのも1つの差別化につながるケースもあります。

ポジションがあいていたお灸の専門院にすることにしました。メニューを増やすと複雑化するし、そもそもできないことも多いので、お灸のみにしぼったんです。その後はSNSなども活用しながら徐々に集客できるようになっていったんです。

引用:モアリジョブ|お灸堂 院長 鋤柄誉啓(すきからたかあき)さん

まとめ

本記事を総括すると、次のとおりです。

  • マッサージを行うためにはあんまマッサージ指圧師の資格が必要
  • 保険を扱う場合は、保健所への届け出や受領委任払いの手続きをする必要がある
  • スタッフを雇用する場合は、助成金を利用する方法もある

あん摩マッサージ指圧師以外が顧客に健康やリラクゼーションを届ける店舗を開業を行う場合は、コンプライアンスの観点からマッサージではなく、ボディケアやもみほぐしなどの名称を用いましょう。

またマッサージ店を1人で経営すると売上に限りがあります。将来的に売上を大きく伸ばしたい場合は、スタッフを雇用して来店数を増やすことも検討しましょう。その際は、スタッフ教育や採用、職場環境の改善に助成金を有効活用するとよいでしょう。

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Bizリジョブ編集部
Bizリジョブ編集部では、人材・採用、店舗運営、経営、美容・ヘルスケア業界などで経験があるメンバーで構成されています。 美容・ヘルスケア業界の経営者・オーナー様にとって、リジョブだからこそ集められる価値ある情報をわかりやすくお届けします。