店舗運営における管理業務は、「お客様に選ばれ続ける店舗」を実現するための基盤です。売上や在庫の管理、スタッフの育成、顧客対応など、店舗を日々スムーズに回すためには多角的な視点と管理スキルが欠かせません。
しかし現場では、「忙しすぎて管理が追いつかない」「データを活かしきれない」「採用や人材育成まで手が回らない」といった悩みを抱える店舗も少なくありません。
そこで本記事では、店舗運営と経営の違いを整理したうえで、売上・顧客・在庫・予約といった主要な管理業務のポイントをわかりやすく解説します。
さらに、実際の店舗事例やツールの活用方法も紹介しながら、日常の運営を“回す”だけでなく“改善し続ける”ためのヒントを紹介します。店舗運営の全体像を掴み、効率的な現場づくりと安定した売上アップの実現にお役立てください。
店舗運営とは
店舗運営とは、店舗を日々スムーズに回し、安定したサービス提供と売上を維持するための実務全般を指します。たとえば、スタッフのシフト作成や人員配置、在庫の管理・発注、来店客への対応や予約の調整、クレーム処理など、現場で発生する多岐にわたる業務が含まれます。
円滑な店舗運営を行うためには集客、接客、人材などさまざまな要素をバランスよく機能させることが重要です。たとえば集客がうまくいっても人材を確保できなければ、来てくれたお客様へ接客や販売対応することができません。
店舗経営を取り巻く厳しい現状
昨今、店舗運営は厳しい状況にあります。ここでは、 店舗数がコンビニの約5倍もある美容室 を例として取り上げます。
厚生労働省の「衛生行政報告例」によると 「美容所(美容室など美容師免許を必要とする事業所)」は年々増加傾向にあります。
▼美容室・理容室の店舗数の推移
ただ一方で、 帝国データバンクの調査(2024年度) によると、美容室の倒産件数も増加傾向を示しており、過去最多を更新しています。
以上より、店舗数は増加して市場内での競争は激しさを増す一方で、倒産する店舗も増加しており、美容系の店舗は開業しても続けていくのが厳しいと言えます。
こうした厳しさは他業界も同様であり、 帝国データバンクの調査(2024年度) によると、飲食店の倒産が過去最多を更新しました。具体的には、2024年の倒産件数(負債1000万円以上、法的整理)は894件で前年比16.4%増加、2020年の780件を上回って過去最多を更新したのです。
では、お店を長く継続していくためにはどのような店舗運営が必要なのでしょうか。
この記事ではそのためのヒントを解説します。
店舗経営との違い
店舗運営と店舗経営は混同されがちですが、目的や関わる業務の範囲には明確な違いがあります。
店舗運営が「店舗を円滑に動かす日常管理」に重点を置くのに対し、店舗経営は「店舗を成長・収益化させるための戦略策定や資金管理」を担います。
以下の表に、両者の違いをわかりやすくまとめました。
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比較項目 |
店舗運営 |
店舗経営 |
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目的 |
店舗が日々円滑に機能するように管理・改善を行う |
店舗を持続的に成長させ、収益を最大化する |
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主なタイミング |
開業「後」に発生する日常業務中心 |
開業「前」から関わる戦略的な業務が多い |
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主な内容 |
接客・顧客管理・在庫管理・シフト管理・店舗情報の更新など |
経営戦略立案・資金調達・価格設定・メニュー開発・市場分析など |
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関与者 |
店長・現場責任者・スタッフ |
経営者・オーナー・本部担当・取締役など |
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視点 |
現場を動かす「実務的・短期的視点」 |
成長を描く「経営的・長期的視点」 |
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成果の指標 |
顧客満足度・スタッフ定着率・業務効率 |
売上・利益率・ブランド価値・市場シェア |
店舗運営は、経営方針を現場で実行し、日々の業務を円滑に進める“実行の力”です。
一方の店舗経営は、長期的な視点から方向性を示し、店舗の存在意義や将来像を描く“舵取りの役割”を担います。
▼美容室を例にした具体的な違い
店舗運営の例
- スタッフシフト管理:美容師の勤務日や人数を最適に配置する。
- 在庫管理:シャンプーやカラー剤を切らさないように発注。
- 顧客対応:来店受付や予約の調整、クレーム対応などを行う。
店舗経営の例
- 経営戦略:新メニューの導入、サービス価格の見直し。
- マーケティング:SNSや広告を活用した集客施策。
- 財務管理:売上分析や原価率の見直し、利益改善。
このように、店舗運営は“現場を守る”活動、店舗経営は“未来をつくる”活動と捉えるとさらにイメージしやすいでしょう。
店舗マネジメントとの違い
店舗マネジメントは基本的には店舗運営と同じことを指すため、同等と考えて差し支えありません。あえて定義するならば、店舗マネジメントの場合、売上や利益など経理面も含めた店舗全体の管理を行います。
店舗運営より経営的な観点が強く、店舗の日々の管理をしつつ収益化できる店舗を成り立たせるための非常に重要な役割を担っています。
そのため店舗マネジメントに関わる人は経営の方向性や軸を理解し、店舗の状況を把握したうえで売上を上げるためのマーケティングやスタッフの管理をしていくなど、高いスキルが求められます。
店舗運営より店舗マネジメントのほうが、より経営的な観点が強い意味で使われるのが一般的でしょう。店舗経営よりの店舗運営とイメージするとわかりやすいでしょう。
店舗運営における管理業務とは
店舗運営における管理業務は、業種や規模によって大きく異なります。
ここでは小売や飲食、美容など接客を伴うサービスの管理業務に絞って解説します。さらにチェーン店のように本社と店舗が分かれている形と、個人店の場合では同じ管理業務を行う際にも求められる対応が異なることもあります。事業規模の異なる2つの観点にも視点を置いて解説します。
適切な店舗運営を行ううえで必要な管理業務は主に6つです。その仕事内容を1つずつ詳しくみていきましょう。
なお店舗の開店や閉店に関する業務は管理ではないため、除外しています。
1.売上管理
日々の売上管理は、店舗運営における最も重要な業務のひとつです。
売上金額の把握だけでなく、コストとのバランス・利益率の算出・時間帯別や客層別の売上傾向などを分析することで、無駄な経費を抑え、利益を最大化できます。
仕入れや人件費、販促費などの支出はすべて売上から賄われるため、売上管理の精度が低いと経営判断を誤るリスクが高まります。
そのため、「どの顧客層がどの時間帯に、どのメニューを購入しているのか」を可視化するクロス集計(クロス分析)が効果的です。
以下は、美容室を例にしたシンプルなクロス集計表の例です。
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顧客属性(年代) |
午前 (10〜13時) |
午後 (13〜17時) |
夜 (17〜20時) |
合計 |
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20代 |
15件(¥75,000) |
10件(¥60,000) |
8件(¥56,000) |
¥191,000 |
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30代 |
8件(¥56,000) |
18件(¥135,000) |
12件(¥90,000) |
¥281,000 |
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40代以上 |
5件(¥45,000) |
12件(¥90,000) |
6件(¥48,000) |
¥183,000 |
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合計 |
¥176,000 |
¥285,000 |
¥194,000 |
¥655,000 |
このように「年代 × 時間帯」で分析すると、たとえば「30代女性が午後に集中して来店している」などの傾向が見えます。
それに基づき、販促時間の調整やスタッフ配置、メニューの提案時間帯の見直しなど、店舗運営全体を最適化できます。
また、こうした集計を手作業で行うのは手間がかかるため、POSレジや売上管理アプリの導入も有効です。たとえば次のような事例もあります。
以前のシステムを使用していた際には、CSV出力ができるものとできないものがあり、エクセルや手入力を駆使して集計したり、出したくても出せないデータが沢山ありました。
A'staff Cloudを導入してからは、出したい数字に対して困らなくなりました。POSは長く使っていくシステムだと思いますので、出せないデータや数字があると、集計に手間がかかるだけでなく、経営戦略を立てるうえで大事な要素を見落としてしまう可能性もあります。
A’staff 導入事例/株式会社ライカ ヘアメディカルサロン
売上管理は「数字を見る作業」ではなく、現場の改善と顧客満足を高めるための基礎分析です。まずは自店の売上データを正しく整理・分析し、改善の方向性を導き出していきましょう。
2.顧客管理
顧客管理はリピート率向上や売上拡大を目的として、顧客の購買情報や行動情報、会員情報の取得・分析に重要な役割を担っています。
古くから美容系業種では紙のカルテで顧客管理を行ってきましたが、より高度な分析をしようとするとCRM(顧客関係管理)や会員システムのような少し高度な管理業務が必要です。また分析には売上データも必要なため、紐づけて管理するのがおすすめです。
顧客情報を活かし、効率的な販促活動ができるため、昨今では美容業やアパレルなどでも取り入れられているマーケティング手法です。
来店したお客様の利用メニューや購入商品、来店履歴などから売上予測を立てることも可能です。さらに来店時の会話や状態を記録することで、顧客満足度の向上にも貢献します。
またCRMは顧客の氏名や住所、職業、来店きっかけなど来店されたお客様の情報を蓄積していくことで新規客の獲得ツールとしても役立ちます。
既存客を分析してみると、開店当初に設定した顧客像とは異なる顧客がついていることも少なくありません。ターゲット設定を見直すことで新規客を増やせる可能性もあるのです。
3.在庫・仕入れ管理
在庫は必要なときに必要な分を供給できるように、適正量を保っておく必要があります。
過剰在庫は商品劣化によりロスを出してしまったり、在庫をストックするための場所代がかかったりとデメリットになります。また棚卸作業にも時間がかかるため、業務負担が増えてしまいます。
とはいえ少なすぎる在庫は売上の機会損失にもつながるため、売上を上げていくためには一定量の在庫を抱えておくべきです。
店舗の負担を減らすためにオンラインストアの活用もおすすめです。お客様にとっても化粧品やヘアケア商品は重さもあり、荷物にもなります。
1回目は店舗でカウンセリングを行った後に販売し、2回目以降は公式のオンラインストアで購入していただくことでお客様、店舗双方の負担軽減につながります。
適正な在庫数は店舗や業種によっても異なります。仕入れから販売までの期間など商品の動きをデータ管理し、適正量に改善していきましょう。
4.店舗情報管理
店舗情報を正しく公開し、集客につなげるのが店舗情報管理の要です。どんなに良い店や商品も知ってもらわなければ意味がありません。
そこで代表的な施策がホームページです。お店のコンセプトや特徴が伝わり、来店や購買意欲が高まる雰囲気が伝わるホームページを設けておくことで集客という大きな窓口を作ります。
以下では、その他の店舗運営において重要となる基本施策を紹介します。
MEO対策
費用の負担が少なく、効果が見られやすいと言われているのがGoogleビジネスプロフィールを活用したMEO対策です。
MEOとは「Map Engine Optimization=マップエンジン最適化」のことであり、たとえばGoogleマップで「横浜市 美容室」などのように「地域名+美容室」で検索した際に、上位表示させるための対策を指します。
Googleで近くの店を探している人に対して、Googleマップ上の店舗プロフィールに誘導することができます。自店舗を検索ユーザーに見つけてもらいやすくするために非常に重要な施策です。
『MEO』とは、グーグルマップを対象として地図上に飲食店や病院など、評価の高い店舗を表示する機能です。この『MEO対策』をすると、グーグルで『代官山 美容室』と検索をした時に『Door代官山』が上位で表示をされます。
(中略)
約3万人がグーグルマップ上で『Door代官山』をタップして、それからホームページに飛び、スタッフやサロンのSNSを見て、そして気に入ったら予約をする。この流れが多いですね。
引用: モアリジョブ |美容室「Door代官山」代表 吉澤さん
SNSの活用
ターゲットにあったSNSの活用も有効です。リポスト機能で情報が拡散しやすいX、ハッシュタグ検索がしやすいInstagramなどSNSごとの強みも異なります。
企業におけるSNSのビジネス活用についてのアンケート(帝国データバンク) によると、約7割(※複数回答あり)の企業が「会社の認知度・知名度の向上」目的にSNSを活用しています。
同調査 において、小売業では約7割、サービス業では5割近くが社外に向けた情報発信ツールとしてSNSを活用していることもわかりました。
とりわけ美容業界ではSNS運用は不可欠となっており、下記のように教育プログラムに組み込んでいる事例もみられます。
――スタッフが集客しやすいように取り組んでいることはありますか?
SNS運用の指導です。昨今の美容業界での集客はSNSがメインになっているため、弊社ではSNSマーケティング部を設置して、さまざまな分析を行ったうえで導き出した撮影、投稿方法などをスタッフに細かく教えています。社内講習だけでなく、定期的に外部講習もあり、多角的な集客スキルを身につけることができます。
引用: モアリジョブ |株式会社KAMILLE 代表 矢口俊貴さん
口コミの活用
口コミの活用も新規客獲得に有効です。
マイボイスコム株式会社の調査 によると、アンケート回答者の約5割が商品やサービスを購入する際に「口コミを参考にする」と回答しています。
とはいえ、悪い口コミがマイナスに働くかというとそうではありません。悪い口コミに対しても改善策を練るなど、いかに真摯に対応しているかが重要となります。
また下記事例のように、「他店舗の口コミ」を参考にするのも、自店舗の運営を改善するための有効な手段です。
僕はいろいろな美容室の口コミをヒントにしているんですが、特にマイナス意見に注目します。なぜなら、そこにお客様の本音が見えるからです。「これが嫌なんだ」と気づいた部分を「じゃあ、こうしよう」とひとつひとつ対策して、自分たちのサロンに取り入れています。
例えば「予約時間に行ったのに待たされた」という口コミって、わりと見かけると思います。そこで、待ち時間をなるべく少なくする工夫をしました。あえて待合スペースを最低限にして、すぐに席に案内して飲み物をお出ししたり、予約の受け方自体を欲張りすぎずに少しゆとりを持たせたり。
引用: モアリジョブ |「Aura omotesando」代表・美容師 梅村尚輝さん
5.予約管理
飲食店や美容のような予約可能な業態では、予約管理も店舗運営をするうえで重要な業務のひとつです。
適切な予約管理ができていないとオーバーブッキングやスタッフの過重労働につながり、顧客満足度や従業員満足度の低下に繋がってしまいます。
そこで欠かせないのがネット予約の活用です。即時予約で人的ミスにおいて起こりがちなオーバーブッキングも防げます。ネット予約は、デジタルネイティブに当てはまる世代のみならず、多様性社会の昨今多くの人が活用しています。
美容調査機関 「ホットペッパービューティーアカデミー」が行った美容サロン顧客満足調査 によると、リピート意向を高める要因の第1位は男女ともに「ネット予約ができる」ことでした。
ネット予約は店舗の営業時間外や移動中など、いつでもどこからでも気軽に予約できるメリットがあります。
店舗側にとっても24時間いつでも自動受付でき、施術中や接客中に手を止める必要がないため、予約を取りこぼすリスクが下がります。
予約管理は利益を生み出すために重要な業務です。消費者ニーズの高いネット予約を活用しつつ、利益を生み出す予約管理ができているか見直してみましょう。
6.人材管理
人材管理には人材の採用や教育など人材に関わる業務と、給与やシフトなど人材に不随する業務があります。
主に下記のものが人材管理の業務にあたります。
・従業員の採用(アルバイト含む)
・契約管理
・従業員の教育
・シフト作成
・給与関連の作業
・人材の配置決め(本社がある大規模店舗や店舗が数店舗ある場合)
店舗運営において人材管理は重要な基盤のひとつです。
とくに接客を必要とするサービス業や販売業では、必要な人材が確保できず営業に支障をきたしている店舗も少なくありません。
こうした中で重要すべきなのは「働きやすい環境づくり」です。 ホットペッパービューティーアカデミーの調査 によると、美容サロン従事者が職場選びで重視するポイントは、
1位「通勤しやすい」、2位「働いているスタッフの人柄」、3位「給与」となっています。
また、「休日日数(6位)」や「仕事とプライベートの両立(7位)」の重視度が年々高まっており、従業員の「働きやすさ」や「生活とのバランス」が店舗選び・定着の重要ポイントになっています。
つまり、給与や評価制度の整備だけでなく、アクセス・人間関係・労働環境といった日常の働きやすさを見直すことが、人材流出を防ぐうえで欠かせません。
上司や先輩との関係性、業務量に対しての評価、勤務時間や休暇制度に不満がないかを定期的に確認し、従業員一人ひとりと面談・フィードバックの時間を設けることが、結果的に離職防止につながります。
――スタッフのモチベーション維持のためにはどのような取り組みを?
先ほどお話しした働き方改善のためのスタッフミーティングとは別に、月に1回の個人面談をスタッフ1人ひとりに行っています。店舗スタッフには相談しづらい悩みもあると思うので、面談の担当者は第3者の立場をとれるマネージメント部の社員です。とくに新人のスタッフは挫折しやすいと思うので、悩みは小さいうちに摘みとることを心掛けています。
引用: モアリジョブ |「BRIDGE」代表取締役 大川正博さん
円滑な店舗運営を行う上で特に大切なこと
店舗の店長やSV(スーパーバイザー)は店舗の業績を分析して戦略を練ったり、従業員が気持ち良く円滑に働けるように労働環境に配慮する役割を担っています。
ここでは、店舗運営をスムーズに行うために特に重要な4つのポイントを紹介します。
スタッフの教育体制を整える
健全な店舗運営にはスタッフ教育も欠かせません。
一時期社会問題となった従業員による不適切動画のように、社会人や従業員としてもモラル欠如によって起きる問題は教育体制が整っていないことが原因のひとつと考えられます。
マニュアル作成などのモノによる教育体制はもちろん、トレーナー制度のようなヒトによる教育体制についても整えていく必要があります。
さらに、教育担当者のマネジメントスキルを高めていくシステム作りも必要です。
株式会社dodaが25〜39歳のビジネスパーソンを対象に行った「上司のマネジメント力」についての調査によると「人材育成に対する評価」は目標達成やタスク管理などワースト3の要素と僅差で低いという結果になっています。
業種別に見るとサービス業や小売・飲食、医療・福祉においては平均比を大きく下回っており、同業種は早急な対応が求められます。
そこでまず取り入れたいのがOJTです。OJTは多くの大手企業で取り入れられている人材育成の手法で、職業内訓練を意味します。実際に働く上司や先輩がマンツーマンで指導することで、早期育成と業務効率の向上を目指したものです。
またOJTを通して直接上司や先輩とコミュニケーションを図ることで、慣れない新入社員の不安を取り除く効果も期待できます。
データをもとに戦略を立てる
店舗運営の管理を効率化させるには、データ活用は欠かせません。
たとえば美容室やリラクゼーションサロンで多く利用されている予約管理システムでは、売上や来店頻度などを元に来店予測を立てたり、来店が止まっている顧客にメールで来店を促したりすることができます。
以下の事例のように利用メニューやスタッフ別で売上集計もできるので、店舗やスタッフの強みを見つけて戦略を立てることも可能です。
現在はネット予約が中心となっており、「どのメニューが多く出ているか」等、これまでのアナログのお客様情報の管理よりも顧客分析が容易になり、お客様のニーズにより応えることが出来ています。
予約管理システム「リザービア」導入事例/港北マッサージ 楽鎮接骨院
優良顧客をピックアップしてアプローチしたいときにも、来店回数や客単価のマトリックスから対象者を見つけ出すことができます。
飲食サービス業では既存のPOSデータを活用できる次世代プラットフォーム「Looker」や「AirREGI」など多くのデータ分析ツールがあり、現代の店舗運営にデータ戦略が必須であることがわかります。
店舗運営の戦略を立てるには、データからまず売上低迷や問題となる原因を探ります。客数なのか、客単価なのか、もしくはスタッフなのか、データを分析すれば問題点は明らかです。
またデータ分析をする際には「顧客視点」「商品視点」「店舗視点」がポイントになります。
顧客を分析すれば対象とするべき顧客層が見えてきます。同じように商品や店舗の視点で分析をすれば、人気商品や売上利率の良い商品など伸ばすべき商品や収益性の高い店舗などがわかります。
日々の店舗運営で集めたデータを分析し、店舗運営を改善するツールとして役立てていきましょう。
コミュニケーション環境を整える
店舗運営における“人のトラブル”の多くは、情報共有やコミュニケーション不足が原因です。
スタッフ間や本部との情報伝達がスムーズでないと、接客ミスや顧客対応のばらつき、クレーム増加などにつながります。そのため、定期的なミーティングやチャットツール(LINE WORKS・Slackなど)の活用で情報共有を仕組み化することが重要です。
また、匿名で意見を投稿できる「意見箱」やアンケートを設置することで、現場の声を吸い上げ、早期の課題発見にもつながります。
不満があったときにすぐに吸い上げて、改善に動くことは大切にしています。本部のマネージャー陣とスタッフが定期的に1on1のミーティングを行うようにしていますし、それでも改善が難しいときは社長が直接飛んでいって、話しを聞いたり、改善したりすることもあるんです。
引用: モアリジョブ |株式会社BeautyGrow 執行役員 中村宗平さん
業務マニュアルを整備・デジタル化する
店舗運営では「人に依存しない仕組みづくり」も欠かせません。
新人教育や引き継ぎが属人的になると、ミスや業務の遅延が起きやすくなります。
業務マニュアルをデジタル化し、タブレットやクラウドで誰でも確認できるようにすることで、作業の標準化と効率化が図れます。
特に多店舗展開を行っている企業では、マニュアルのデジタル共有により「どの店舗でも同じ品質で接客・サービスを提供できる」体制が構築できます。
スタッフが技術や接客方法をいつでも確認できるようお客さまの入店から退店までの接客マニュアルを作り、クラウドで共有しているんです。施術工程ごとに細かく分け、それぞれ約5分ほどの見やすいコンテンツにし、見たい時にパッと見られるようにしています。
引用: モアリジョブ |「addict」代表 高石大輔さん
やっておいてよかったなと思ったのはマニュアルをちゃんと作ったこと。個人サロンだとすべての施術のマニュアルを作っているところは少ないと思うんですが、文字とイラストと最近では動画を撮ったり。この業界はどうしても人の入れ替わりがあるので、マニュアルがあると教えやすいですし、スクール開講のときも作っておいてよかったなと思いました。
引用: モアリジョブ |アンリュミエール オーナーセラピスト 保戸塚優美さん
店舗運営でよくある課題とその解決策
店舗運営においてよくある課題の数々は、主に下記の3つに分類されます。
・収益向上
・顧客満足向上
・労働環境改善
さらに細かく分類すると、収益を向上させるには他店との差別化や収益率向上のための経費見直し、顧客満足には従業員のスキル向上などが考えられます。
なお、課題の詳細については下記の記事で解決策も踏まえながら解説しています。
具体的な課題1 :国内の市場縮小に伴う「客数減少」
店舗運営の課題のうちのひとつ「収益向上」を阻むのが、市場縮小に伴う客数減少です。国勢調査をもとに 総務省統計局 がまとめたデータによると、平成20年をピークに人口は減少の一歩をたどっています。人口減少は、市場の縮小および消費の減少に直結し、店舗ビジネスにおいても大きなマイナス要因となります。
実際、 厚生労働省 が公開している資料 によると、美容業者のうち約8割が客数の減少を経営上の問題点としてあげています。
※複数回答
また人口減少に反比例するように、 施設や美容師の数は増えて おり、1施設・1美容師あたりの人口は年々減少しており、縮小しつつある国内市場を奪い合うような状況となっているのです。
そこで取り込むべきがインバウンド客です。
観光庁 の調査 によると、インバウンド客はコロナで一時的に減少したものの2023年以降には驚異的な回復を見せています。
ホットペッパービューティーアカデミーの調査 によると、訪日外国人旅行者のうち半数が「美容サロンに行ってみたい」と回答しています。そのうちヘアサロンも3位(18.8%)に入っています。
消費から体験へと移行している訪日客が増え、「インバウンド美容」という言葉も生まれるほどです。人口が減少していく日本国内で生き残るためには、対象を日本人だけでなく訪日客へと拡大していくことが対策のひとつとなり得るでしょう。
具体的な課題2 :経費の上昇
店舗運営における大きな課題として「経費の上昇」があげられます。
株式会社東京商工リサーチ がまとめたデータによると、保険業と情報通信業をのぞくほとんどの業種で約7割がコストが上昇していると回答しています。
業種によって詳細は異なりますが、店舗経営の経費削減には、主に下記4点からアプローチが有効です。
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大きな出費や固定費の見直し
毎月もしくは毎年出続ける固定費から見直す。たとえば飲食店であれば水光熱費や売上原価、消耗品が出費など。
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店舗DXの推進
デジタルツールを活用し、店舗業務の効率化や省人化を目指す。大手ファーストフードでは注文から支払いまでを完結できるアプリの導入、化粧品ブランドやアパレルブランドではAIによる肌診断やコーディネート診断などが挙げられる。
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在庫管理の見直し
定期的に在庫を見直し、適正在庫になっているかを確認する。頻繁に発注する商品はストックし、滞留しがちな商品は個数を減らすなどを仕入から管理までの方法を見直す。
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小さな出費への意識付け
「経常利益5%の場合、100円の無駄は2,000円の売上と同等の重さがある」といった、数字を使った説明をすると効果的。
なお経費削減は経営者主体ではなく、従業員一人ひとりの意識改革も欠かせません。削減できた経費分は給与に一部補填するなど、経費削減の恩恵を従業員が受けられるようにすれば取り組み意欲を高められます。
店舗における経費削減については、こちらの記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
人材×店舗運営の「強い現場」をつくる
店舗運営の成果を左右する最大の要素は「人」です。いかに優れた商品・立地・マーケティングを備えていても、現場の運営体制が機能していなければ、顧客満足も生産性も維持できません。
ここでは、人材マネジメントの観点から“強い現場”をつくるための3つの柱「働き方の多様化への対応」「能力開発・キャリア形成」「現場の改善提案力」について解説します。
多様な働き方を受容するシフト・制度設計(副業・時間帯勤務など)
近年、店舗運営では「柔軟な働き方」への対応が急務です。副業容認や時短勤務、曜日限定勤務など、多様な働き方を受け入れることで、離職防止や採用難の解消にもつながります。
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項目 |
内容 |
期待される効果 |
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副業・兼業の容認 |
本業に支障をきたさない範囲で副業を許可 |
多様な人材の確保、自己成長機会の拡大 |
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シフト希望制の導入 |
スマホアプリなどでシフト希望を可視化 |
公平性の向上・調整工数の削減 |
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時短・時間帯勤務 |
家庭や学業との両立を支援 |
幅広い層の戦力化 |
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固定シフト+変動シフトの併用 |
スタッフのライフスタイルに応じて選択制に |
定着率の向上・満足度アップ |
産休・育休取得の徹底や、復帰後は保育園などの送り迎えができるように時短勤務が可能です。また、小学3年生までの子どもがいるスタッフには、1人当たり月1万円の手当も支給し、育児中の収入面の不安もできる限り取り除いています。
実際、弊社のスタッフは女性が8割を占めていて、子育てしながら働く方も多くいるのですが、直近5年間で育休復帰率はほぼ100%です。
引用: モアリジョブ |「BRIDGE」代表取締役 大川正博さん
また、制度導入時は「公平性」「評価基準」「情報共有」の3点が重要です。柔軟さと同時に、誰もが納得できる運用ルールを整備することで、現場の一体感を保ちつつ生産性を維持できます。
新人・中堅・ベテランを巻き込む能力開発とキャリアパス設計
強い店舗は「全員が育つ仕組み」を持っています。一部の店長やリーダーだけに依存せず、新人からベテランまで段階的にスキルアップできる教育体系が不可欠です。
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階層 |
主な課題 |
教育・育成の方向性 |
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新人層 |
接客・商品知識・基本業務の習得 |
OJT+動画マニュアルによる標準化 |
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中堅層 |
リーダーシップ・後輩育成・数字管理 |
ロールプレイ研修・チームKPIの活用 |
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ベテラン層 |
モチベーション維持・知見共有 |
メンター制度・店舗横断プロジェクト |
さらに、キャリアパス設計では「縦の昇進ルート(店長→SV→本部)」だけでなく、「横の専門職ルート(教育担当・顧客体験設計など)」を示すことも有効です。“自分の成長イメージが描ける現場”は、定着率と主体性を高める最大の要因になります。
リーダー、店長などの現場役職者へのステップアップ、スーパーバイザーや講師へのジョブチェンジも可能です。現に現場出身で部門責任者までステップアップした方もいます。また、加盟店でも複数店舗展開が進みスタッフの引き上げを推進してもらっているため、同じように現場責任者、エリアマネージャー、講師など多様なステップアップができる状況になりつつあります。
引用: モアリジョブ |株式会社LHS 「Goo-it!」運営 代表取締役社長 坂本紀之さん
現場から改善提案を引き出す仕組み(現場ミーティング・KPI共有)
店舗の課題は、現場が最も早く気づきます。その声を経営改善につなげるためには、「意見を出しやすく」「成果につながる」仕組みづくりが重要です。
▼改善提案を活性化する3つの仕組み
-
現場ミーティングの定例化
1週間単位などで短時間ミーティングを設定し、意見共有・成功事例の水平展開を行う。
-
KPI共有の“見える化”
売上・客数・在庫回転率などのKPIを店舗全員が確認できる環境を整備。数字を共通言語にすることで、意見が具体化しやすくなる。
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提案に対するフィードバック制度
出されたアイデアを放置せず、採用・保留・改善の判断を即時共有。モチベーション維持につながる。
また、提案活動を単なる業務外の追加負担にしないために、提案の採用率・改善効果をKPI化して評価制度に組み込むことも効果的です。現場発の知恵が経営を動かす構造をつくることで、店舗全体が自律的に成長していきます。
オーナーが率先して、スタッフみんなが意見を言いやすい環境を作ってくれています。毎週日曜日の夜、営業後に内部で勉強会を兼ねたミーティングをするんです。その時に、いいことも悪いことも、日頃思っていることや感じていることを自由に話せるような雰囲気作りができていて。スタッフみんなで腹を割って話しているので、入社したての頃は私も驚いたし、入ってきたばかりのアシスタントの人たちもびっくりしていますね。
引用: モアリジョブ |「garden otakanomori」ヘアスタイリスト 福本玲香さん
店舗運営に有効!採用コストを抑えて“売上を最大化”
店舗運営を支えるのは「人」です。
ただ採用活動にかけるコストが増えるほど、利益率を圧迫してしまうのも事実です。そこでおすすめなのが「費用を抑えつつ成果を上げる採用ノウハウ」をまとめた資料です。
本資料では、以下のような情報をまとめています。
- 採用が店舗の売上に与える影響と損益分岐点の考え方
- 業界別の採用単価相場と成功事例
- 成果が出やすい採用手法とその特徴
- 実際に費用対効果を改善したリジョブ利用事例
「求人コストを抑えたい」「採用しても売上につながらない」と感じている方は、店舗運営の改善ヒントとしてぜひチェックしてください。
まとめ
本記事を総括すると次のとおりです。
- 店舗運営における管理業務は主に「売上」「顧客」「在庫・仕入れ」「店舗情報」「予約」「人材」の5つ
- コスト削減や従業員の負担軽減、顧客ニーズに対応するためにDXを導入する
- 店舗の顧客層に合った販売戦略や販促(SNSツールの活用など)を行う
- スタッフ教育は重要だが、教育担当者のマネジメントスキルも高める必要がある
- 人口減少やコスト高など店舗運営における課題に早急に対応していく
- 店舗運営を左右する最大要素は「人」であり柔軟な働き方やキャリア形成支援が強い現場をつくる
- 執筆者情報
- 田中 久美(Tanaka Kumi)