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鍼灸院を開業する流れとは?必要な資格や成功するためのポイントを解説

鍼灸院を開業する流れとは?必要な資格や成功するためのポイントを解説

個人で鍼灸院を開業したいけれど、何から手をつければよいかわからず、困っている人もいるのではないでしょうか。鍼灸院の開業形態は複数存在しており、自身の状況に適した開業形態を選択することが大切です。

開業形態を決めたうえで、正しい手順を踏んで準備をすれば成功する可能性を高められます。本記事では、鍼灸院の開業に必要な資格や開業形態、具体的な開業の流れとともに、成功するためのポイントや整体院開業に活用できる補助金について解説します。

鍼灸院の開業には資格と実務経験が必要

鍼灸院とは、鍼や灸を用いて患者の身体の不調を改善したり、予防したりする施設です。鍼灸師として独立開業するには、国家資格である鍼灸師の資格と、保険施術を行うための実務経験が求められます。

鍼灸師とは2つの資格の総称を指しており、鍼を業とする「はり師」と、灸を業する「きゅう師」に分けられます。これらの資格を取得するためには、3年以上の養成学校を卒業し、国家試験に合格しなければなりません。

鍼灸保険を使った保険施術をするためには、1年以上の実務経験が必要です。保険施術における受領委任を取り扱うには「施術管理者」の要件を満たす必要があります。施術管理者になるには、はり師・きゅう師や、あん摩マッサージ指圧師として1年間の実務経験を積んだうえで、16時間・2日間以上の研修を受けなければなりません。

実務期間は資格取得後から計算され、資格取得前の経験は含まれないため注意が必要です。実務経験として認められる要件は、以下のとおりです。

  • 実務経験を積んだ鍼灸院が受領委任の取扱いを行っている
  • 勤務形態にかかわらず、施術者として保健所に届出がされている
  • 転職により複数の施術所で実務経験がある場合、期間を合算できる(重複期間は除く)

なお、出張専門の施術者として施術管理者に帯同した場合は、実務経験の対象外です。過去に施術管理者として実務経験がある場合は、期間にかかわらず要件を満たしていると認められます。

施術管理者研修修了書は、東洋療法研修試験財団で研修を受けたのち、およそ2週間で発行されます。

鍼灸院の開業形態

鍼灸院の開業形態は、主に以下の5つのパターンが存在します。

  • 自宅
  • 貸店舗
  • 賃貸マンションの一室
  • レンタルサロン
  • 出張

ここでは、それぞれの開業形態について、解説します。

自宅

鍼灸院の開業形態には、自宅の一部を改装して施術スペースを設ける方法があります。内装に過度な費用をかけなければ、比較的少ない初期投資で開業できます。貸店舗や賃貸マンションの一室を借りる場合と比較しても、月々の家賃負担を抑えられる点がメリットです。

「ヘリオス」の野林さんは、自宅内の使用していない部屋を利用して開業しています。

どこかを借りてサロンをするとなると、当然費用の負担が出てきますし、開業にあたり場所を探すところからスタートなので時間がかかります。

私の場合は、幸い自宅に使っていない部屋があったので、そこで始められました。その点では、とても恵まれていたと思います。

引用:モアリジョブ|アロマとハーブの教室&サロン「ヘリオス」 野林多美子さん

ただし、住居地域では大きな看板を設置できなかったり、そもそも広告物の掲示が難しかったりする場合があります。立地条件が良くない場合や、効果的な宣伝ができない場合には、集客に苦労するかもしれません。

自宅で開業する際には、近隣住民と良好な関係を築き、認知度を上げることを意識した活動が大切です。エステサロン「facial & body care salon lampo」の横澤さんは、独立する1年前から集客に向けて活動したようです。

独立前の1年をかけて、とにかく人に知ってもらうことにしました。私は愛知県岡崎市の自宅で開業したのですが、岡崎市のかなり端の方で、山と畑で囲まれているような町でしたので、放っておいてもお客さまが来てくれることはないと思ったんです。

引用:モアリジョブ|facial & body care salon lampo セラピスト 横澤美穂さん

貸店舗

貸店舗での開業は、事業用の物件として貸し出されている不動産を借りて開業する方法です。貸店舗の物件は、比較的多くの人が行き交う場所に立地されているケースが多く、偶然通りかかった人が来店する可能性や、店舗の存在が自然と認識されやすいといった集客面での効果が期待できます。

マンションの一室や自宅サロンと比較しても、店舗の入り口や内部の様子が外から確認しやすいため、顧客が安心して入りやすいことも集客に有利に働くでしょう。株式会社トラスト・ファイブの調査によると、初めてリラクゼーションサロンを利用する顧客は、店舗の入口がわかりづらさが理由で入店をためらうケースが多いことが明らかになりました。

1.初めて行くサロンで入店をためらった理由

ただし、貸店舗はテナントを借りるための費用が高額になる傾向があり、開業時にはまとまった資金が必要です。内装が何もない状態のスケルトン物件の場合、内装工事や設備の導入も必要になるため、初期費用はさらに高くなる可能性があります。

賃貸マンションの一室

賃貸マンションの一室を、施術スペースとして開業する方法もあります。貸店舗を借りる場合と比較すると、家賃が比較的低いため、開業時の初期費用を抑えられます。また、プライベートな空間を重視する利用者のニーズにも応えやすい形態です。

しかし、自宅での開業と同様に大きな看板の設置は難しい場合が多いため、駅や利用者が多い施設の近くといった集客しやすい立地を選ぶことに加えて、ウェブサイトやチラシ配布など、集客のための工夫が求められます。

「alba暁子鍼灸治療院」の山田さんは、元々レンタルサロンでの施術をしていたものの、賃貸マンションでの運営に移行したことにより、集客を伸ばしました。

レンタルサロンを卒業し、住所や予約の空き状況をきちんと公開できるようになったら、以前より早いスピードで新規のお客さまも増えていきました。やはり「誰がどこでどういう施術をする」というちゃんとした情報を紹介できた方が、お客さまも安心して来られるんでしょうね。

引用:モアリジョブ|alba暁子鍼灸治療院 山田暁子さん

ただし、賃貸マンションはスペースが限られるため、設置できるベッドは1〜3台ほどです。1日に対応できる利用者数も限られ、売上にも限界があることはデメリットかもしれません。

レンタルサロン

レンタルサロンでの開業は、必要なときだけ施術スペースを借りる開業方法です。通常の賃貸物件のように、毎月の固定費が発生しません。施術に必要なベッドやタオルなどの備品が用意されている場合が多いため、自分で備品を揃える手間が省けます。

働く場所が固定されないため、特定の地域に限らず広範囲から顧客を獲得できる可能性がありますが、場所で覚えてもらえないため、集客方法には工夫が必要です。まずはレンタルサロンからスタートし、ある程度の固定客がついた段階で貸店舗や賃貸マンションの一室を借り、固定された店舗を持つというステップを踏むこともひとつの方法です。

ただし、施設によっては煙の出るお灸の使用が禁止されている場合もあるため、事前に確認しましょう。

「alba暁子鍼灸治療院」の山田さんも、開業コストを抑えるため、はじめはレンタルサロンで開業しています。

レンタルサロンは会員になると、会費さえ払えばあとは時間貸し。1時間の施術を行うとして前後30分ずつ抑えたとしても、2時間分の出費で済みます。開業したばかりの人にはメリットが大きいですね。

ただ、会員になるには面接があります。設備も会社によってさまざまで、個室ではなくパーテーションで仕切られただけのところもありました。煙が出るためお灸がNGのところも多いので、鍼灸師は要注意ですね。

引用:モアリジョブ|alba暁子鍼灸治療院 山田暁子さん

出張

顧客の自宅や指定された場所に出張し、そこで施術をする方法もあります。施術者が移動する手段さえあれば開業できるため、物件費用や内装工事費はかかりません。店舗を構える場合のように高額な費用が発生しないため、施術料金を比較的安価に設定できる点も魅力です。

施術費用を安価にすれば顧客からの予約が入りやすくなるため、結果として施術の経験の機会を増やし、スキルアップにもつながる可能性があります。鍼灸師の鈴木さんは、リスクを抑えるため出張形態から開業を始め、マンションの一室、テナントでの運営に移行しています。

私は最初に勤めていた鍼灸院を退職したあと、次の日には出張という形で開業をしました。3人のお客さまからのスタートと、決して大きな一歩ではありませんでしたが、店舗を構えない形であればほとんどリスクがないまま開業することができるんです。その後マンションの一室、テナントなど小規模治療院を2年ごとに開業する経験をしてきて、小規模治療院の可能性を感じていました。

引用:モアリジョブ|鍼灸師 鈴木むつよさん

鍼灸院を開業する流れ

鍼灸院を開業する際は、以下の準備を段階的に進めていく必要があります。

  1. 施術管理者研修を受ける
  2. 開業形態を決める
  3. 事業計画を立てる
  4. 鍼灸院の名称を決める
  5. 開業資金を調達する
  6. 物件を見つける
  7. 店舗を準備する
  8. 必要な手続きを行う
  9. 宣伝する
  10. スタッフを採用する

ここでは、鍼灸院を開業するまでの一般的な手順を解説します。

1.施術管理者研修を受ける

鍼灸院として保険施術を行う場合、施術管理者研修を受ける必要があります。研修は合計16時間で、2日間にわたって実施されます。施術管理者研修の内容は以下のとおりです。

  • 職業倫理について
  • 適切な保険請求
  • 適切な施術所管理
  • 安全な臨床

2.開業形態を決める

前の章で紹介した5つの開業形態の中から、自身の状況に適した開業形態を選択します。

  • 自宅
  • 貸店舗
  • 賃貸マンションの一室
  • レンタルサロン
  • 出張

自身の鍼灸院を「どのように運営していきたいのか」「どのような生活を望んでいるのか」を具体的に整理すると、適した開業形態が見えてきます。例えば、自身の生活リズムに合わせて柔軟に働きたい場合には、自宅やマンションの一室を利用してひとりで開業する方法が考えられます。

一方で、より多くの売上を目指したい場合は、多くの顧客に対応できる貸店舗やアクセスの良いマンションの一室を借りて開業するほうがよいでしょう。出張整体やレンタルサロンから始めて徐々に固定客を増やし、段階的に店舗を構えるという方法もあります。

3.事業計画を立てる

開業形態を決めたら、具体的な事業計画を策定します。整体院を開業したい動機を深く掘り下げ、コンセプトや主なターゲット層を明確にしましょう。コンセプトやターゲット層を決めたら、それを基に運営方法や経営戦略、収支計画を検討し、事業計画に落とし込みます。

事業計画書は、これから始める事業をどのように進め、どのようにして収益を上げていくのかを具体的にまとめたものです。開業に必要な資金の調達方法や返済方法などの資金繰りの計画も、考えておく必要があります。

新たに事業を始める場合、経営の実績がないため、金融機関からの信用がありません。そのため、事業計画書を丁寧に作成し、事業が成功する見込みがあることを示す必要があります。「アキュラ鍼灸院」の徐さんは『こころもからだも温める』をコンセプトに掲げ、事業計画を立てました。

『こころもからだも温める』をコンセプトに掲げました。会社員として働いてきたなかで、心身ともに冷え切っている人が多いと感じていたんです。基本的に企業は資本主義ですから、社員の気持ちよりも会社の利益を優先している会社もなかにはあります。会社は儲かっているにもかかわらず社員にボーナスが出ず、日々の残業に追われていてライフワークバランスにゆとりがない方も多い。

引用:モアリジョブ|アキュラ鍼灸院 院長 徐大兼さん

マツエクサロン「salon de beaute Jolie」のMihoさんは、過去の採択データや見本を読み込みながら、書き方のコツをつかんだようです。

お金がかかることも多いですが、今は自治体ごとに小規模事業者向けの補助金制度もあるので、そういった情報をしっかりキャッチして積極的に活用しています。

申し込むには事業計画書を書いたり登録手続きをしたり、慣れないうちは大変ですが、過去の採択データや見本を隅から隅まで読むと書き方のコツがつかめてきました。苦手だったことまた1つ克服できたので、いい経験になりました!

引用:モアリジョブ|salon de beaute Jolie オーナー Mihoさん

事業計画書に書くべき内容は以下のとおりです。

  • 事業を始める動機
  • 経営者の略歴(経験やスキルなど)
  • 具体的なサービス内容
  • 従業員数(予定を含む)
  • 現在の借り入れ状況
  • 開業に必要な資金額とその調達方法
  • 事業の将来的な見通し(目標とする売上高や予想される経費など)

商工会や商工会議所に相談して事業計画書を作成するのもひとつの方法です。日本政策金融公庫では、次の書式が見本として紹介されています。

2.事業計画書

書式についても、以下のサイトからダウンロードできます。

各種書式ダウンロード 国民生活事業|日本政策金融公庫

融資を受ける際にも事業計画書の提出が求められるため、商工会や商工会議所に相談しながら作成するのもおすすめです。

4.鍼灸院の名称を決める

事業計画を立てる際に、鍼灸院の名称を決めるはずです。しかし、鍼灸院の名称には、以下のルールが存在します。

  • 病院や医師と間違われるような紛らわしい名前はつけられない
  • 「科」や「医」といった表現や、「〜治療院」という名称も使用できない
  • 流派や技術、経験に関連する事項も使えない
  • 原則として開設者の姓や法人名を用いる

これらのルールを守ったうえで、コンセプトが伝わるような名称を決めましょう。

5.開業資金を調達する

開業形態や自己資金にもよるものの、鍼灸院の開業には少なからず費用が必要です。日本政策金融公庫総合研究所の「2023年度新規開業実態調査」によると、開業費の平均値は1,027万円、中央値は550万円でした。

開業費用の分布は500万~1,000万円未満の割合が最も多く、日本政策金融公庫が公開している「2023年度新規開業実態調査」によると、開業資金の調達先として「金融機関等からの借入」の平均額が768万円でした。

運転資金の目安としては、月間の売上目標額の3~6か月分程度を準備しておくとよいでしょう。開業してから数か月は、集客が安定せず赤字経営になる可能性も考慮し、家賃や人件費などの固定費の支払いが滞らないよう、余裕を持った資金計画を立てることが大切です。

自己資金だけでは開業費用が不足する場合は、外部から資金を調達する方法を検討します。主な調達方法は以下のとおりです。

  • 親族や知人からの借入
  • 民間金融機関や日本政策金融公庫、地方自治体からの融資
  • クラウドファンディングによる資金集め
  • 国や地方自治体が提供している助成金や補助金の活用

内装が何もないスケルトン物件の場合、工事費用が高額になる傾向があります。そのため、前のテナントの内装や設備を利用できる居抜き物件を選んだり、中古やリースの設備や機材を利用したりして、初期費用を抑える工夫をしましょう。

6.物件を見つける

自宅以外で開業する場合は、店舗となる物件を選定します。賃貸物件を探す際のポイントは、以下のとおりです。

  • ターゲット層が集まりやすい立地か
  • ランニングコストを抑えられるか

都市部であれば駅からのアクセスが良い場所、郊外であれば利用者が車で来店しやすいよう、ある程度の広さがある駐車場を備えた場所を選ぶとよいでしょう。

また、開業を予定しているエリアに整骨院や整体院、他の鍼灸院など、競合となる店舗がどのくらい存在しているのかを事前に調査し、他院との差別化を図れるのかを検討することも重要です。

実際に開業予定のテナントの前を通る人々の年齢層や性別といった属性や、時間帯ごとの人通りなども確認しておきましょう。最寄りの駅やバス停からの導線を、利用者の視点に立って確認する必要があります。

また、鍼灸院の場合、法律で定められた構造設備の基準を満たす必要があります。鍼灸師の業務内容について規定する法律「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」により、以下の要件が定められている

  • 6.6平方メートル以上の専用施術室があること(柔道整復・鍼灸マッサージ師合わせて施術者が2名以上いる場合は、それぞれの施術室が必要)
  • 3.3平方メートル以上の待合室を有すること
  • 施術室は室面積の 1/7以上に相当する部分を外気に開放できること(換気扇や換気機能付きエアコンでの代替も可能)
  • 施術に用いる器具や手指などの消毒設備があること

このほか、指導基準として施術室と待合室をパーテーションなどで完全に仕切り、出入り口も固定扉で設置しておくことや、ベッドを複数台設置する場合はカーテンなどを用いてプライバシーに配慮することも求められます。

物件を決めたら賃貸借契約を締結します。契約にかかる主な費用は以下のとおりです。

  • 敷金・礼金・保証金
  • 仲介手数料
  • 保険料
  • 前払いで支払う分の家賃

契約時には登記簿謄本(法人の場合)や印鑑証明書、代表者の連帯保証などが必要です。必要書類は事前に確認しておきましょう。

7.店舗を準備する

賃貸借契約を締結したら、店舗の内装工事や外装工事を進めます。利用者がリラックスして施術を受けられるような、快適な空間づくりを意識しましょう。ターゲット層に合わせて店舗のレイアウトを考えると、集客力向上や顧客満足度向上につながります。

例えば、ターゲットごとのニーズの具体例として挙げられるのは、以下のとおりです。

  • 女性:化粧直しができるパウダースペースや大きめの鏡を設置する
  • 子育て世代:小さなお子様連れでも安心なキッズスペースを設ける
  • 学生:待合室にマンガや雑誌を置く

鍼灸院の運営に必要な主な備品には、以下のものが挙げられます。

  • 鍼用品
  • 灸用品
  • 施術台
  • 消毒用機材
  • 枕やシーツ、タオル
  • 感染性廃棄物用のゴミ箱
  • デスク
  • パソコン
  • 空調設備
  • カーテンなど

タオルやテーピング、包帯などの消耗品は、ECサイトを利用すると手軽に購入できます。まとめ買いを活用すれば、比較的安価に入手できます。「トワテック」「アトラスストア」「からだはうす」などの、鍼灸院や整体院向けの備品を扱う複数のECサイトを比較検討するとよいでしょう。

8.必要な手続きを行う

鍼灸院を開業するには、税務署や保健所への届出のほか、保険を取り扱うための手続きが必要です。ここでは、保険を使える鍼灸院を開業する場合の手続きについて解説します。

税務署への届出

鍼灸院を開業する場合、税務署に開業届を提出します。個人事業主として鍼灸院を開業する場合は、開業届と併せて税務署へ「青色申告承認申請書」も提出しましょう。条件を満たせば、年間の所得金額から一定額(最高で65万円)を控除できるため、節税効果が期待できます。

開業届を税務署に提出する際に必要な主なものは、以下のとおりです。

  • 開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書。原則として開業日から1か月以内に提出)
  • 本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
  • マイナンバーがわかるもの(マイナンバーカード、個人番号通知書のコピー、個人番号が記載された住民票の写しなど)
  • 所得税の青色申告承認申請書(青色申告を希望する場合のみ。原則として開業日から2か月以内に提出)

保健所への届出

施術所を開業したら、10日以内に管轄の保健所へ「施術所開設届」などの必要書類を提出します。開業後に行う手続きである点がポイントです。提出する必要書類は以下のとおりです。

  • 施術所開設届
  • 業務に従事する施術者の資格免許証の写し
  • 施術所の平面図
  • 建物の見取図が入った敷地の平面図
  • 施術所への案内図
  • 法人の場合は定款(写し)と登記簿謄本
  • 施術所が賃貸の場合は賃貸契約書の写し

施術所開設届は、各保健所の窓口に問い合わせたり、ホームページからダウンロードしたりすると入手できます。保険取扱開始日より以前に保健所への開設届が必要なため、注意が必要です。開業届を提出後、保健所の監視員が施設の確認を行います。

構造設備要件や衛生管理、広告表示などが法律に適合しているかを確認し、問題がなければ開業が正式に認められます。

地方厚生局への届出

受領委任払いを利用して施術を提供する場合は、地方厚生局との契約が必要です。対象となる保険は、社会保険(協会けんぽ・健保組合など)、国保、後期高齢者医療保険、船員保険、退職者国保です。届出の際は、下記の書類を提出する必要があります。

  • 確約書
  • 療養費の受領委任の取扱いにかかる申出(施術所の申出)
  • 療養費の受領委任の取扱いにかかる申出(同意書)
  • 施術所開設届又は施術所変更届の副本の写し(保健所に提出したもの)
  • 出張施術業務開始届の写し(施術管理者が出張専門施術者の場合)
  • 免許証の写し(勤務する施術者を含む)
  • 施術管理者選任等証明(施術管理者と開設者が異なる場合のみ)【開設者が個人の場合:様式第1号の2、開設者が法人の場合:様式第1号の3】
  • 勤務形態確認票【様式第2号の3】(複数の施術所で施術管理者として申出する場合又は出張専門施術者が施術所で勤務する場合のみ)
  • 住民票(施術管理者が出張専門施術者の場合のみ)
  • 施術管理者研修修了証の写し
  • 実務経験期間証明書の写し

必要な書類は地域ごとに異なります。正確な提出書類を知りたい場合は、管轄の厚生局に問い合わせましょう。

共済組合・防衛省への届け出

地方厚生局と結ぶ受領委任契約には、公務員の関係者が加盟する共済組合連盟や地方公務員共済組合協議会、防衛省は含まれていないため、共済組合や防衛省への届出は別途行う必要があります。共済組合に届出を行うためには、共済組合連盟から発行を受けた所定の書式に記入し、鍼灸師の資格免許証のコピーとともに提出します。

共済組合の連絡先は次のとおりです。

一般社団法人 共済組合連盟

〒102-0071 東京都千代田区富士見1-7-5 共済ビル

TEL 03-3261-0073

また、地方公務員の保険を扱う場合は、地方公務員共済組合協議会に、防衛省職員や自衛官の保険を扱う場合は防衛省に届け出なければなりません。

労働基準監督署の届け出

労災保険を扱うためには所轄の労働基準監督署に申請して、労災の指定機関として指定を受けなければなりません。個人経営でも常時10人以上の従業員(パートタイマーやアルバイトも含む)がいる場合は、労働基準法により就業規則の作成と届け出が義務付けられています。申請に必要な主な書類は以下のとおりです。

  • 労災保険指名施術所指名申請書(診鍼様式第7号)
  • 推せん書
  • 指定・指名機関登録(変更)報告書(1/2)(診機様式第22号)
  • 指定・指名機関登録(変更)報告書(2/2)(診機様式第23号)
  • 施術所開設届(写)
  • 施術所付近の見取図
  • はり師免許証(写)・きゅう師免許証(写)・あん摩マッサージ指圧師免許証(写)

各種書式は管轄の労働局のホームページからダウンロードできます。

9.宣伝する

開業後、スムーズに集客につなげるためには、開業前から宣伝活動を始めることが大切です。客単価が上がれば、集客難易度も上がるため、マーケティングを意識した集客戦略を練る必要があります。主な宣伝方法として挙げられるのは、以下のとおりです。

  • 自店のホームページやブログを立ち上げ、情報発信する
  • Googleビジネスプロフィールに登録する
  • インターネット広告(リスティング広告やディスプレイ広告など)に出稿する
  • SNSを活用して情報発信する

モアリジョブが行ったアンケート調査によると、美容室ではホームページの作成やSNSの活用といった、オンラインでの集客活動に力を入れている店舗が比較的多いという結果がでています。鍼灸院においても、オンラインでの情報発信は有効な手段のひとつといえるでしょう。

3.集客のために導入している方法

姿勢調整師のみちのさんは、複数の宣伝方法で、集客につなげています。

当初からオーナーに「発信する場は1つだけじゃダメだよ」と言われていて、数年発信をしてみて自分でも実感しています。ウェブはもちろん、チラシや声掛けも必要だし、お客様に紹介していただくのも、すべてがあって成り立つんだなと感じますね。「これをしたら勝てる」みたいなパターンはないと思います。

引用:モアリジョブ|姿勢調整師 みちのえみこさん

ターゲットによって効果的な宣伝方法は異なります。コンセプトを踏まえたうえで、ターゲットに刺さる集客方法を選択するとよいでしょう。

10.スタッフを採用する

開業後に店舗の売上を伸ばしていきたいと考えている場合、スタッフの採用も視野に入れましょう。複数名のスタッフがいる体制を整えることで、繁忙期での予約の取りこぼしを防ぎやすくなります。宣伝活動をはじめとした施術以外の業務に取り組む時間的な余裕も生まれます。

スタッフを採用する際は、開業した鍼灸院のコンセプトや雰囲気に合った人材を選ぶことが大切です。自店の社風や求めるスキルと合わない人材を採用した場合、早期離職につながり、再度採用活動を行うためのコストが発生します。

経験者を採用する場合には、鍼灸院で提供する施術メニューに対応できるスキルを保有しているかどうかも確認する必要があります。店舗の運営状況や予算に合わせて、雇用形態を検討することも大切です。

採用コストを抑える工夫も必要です。人材紹介サービスや総合型の求人サイトを利用する方法は、採用単価が高くなる傾向があります。自社の採用ページを充実させたり、SNSを活用して情報発信をしたりすれば、採用ブランディングにつながるため、長期的にみればコストを抑えた採用につながります。

「新橋整体院グッドラック」の篠原さんは、猫背矯正を広めるという目標達成に向け、施術者から経営に回ってスタッフの採用に動き始めました。

経営に回って、猫背矯正を広めていきたいと思っています。まずは、スタッフを雇うことからですね。それから、手技の指導に移っていく。今すぐには実行できないですが、徐々に動き出そうと考えているところです。

引用:モアリジョブ|「新橋整体院グッドラック」 整体師・カイロプラクター 篠原靖治さん

自社で能力を発揮し、活躍できる人材を採用するためには、事前準備が重要です。リジョブでは、これから独立・開業をして将来的にスタッフの採用を検討している方に向けたノウハウを提供しています。手順を詳しく知りたい場合は、無料でダウンロードできる下記の資料をご覧ください。

鍼灸師を採用するためのポイントについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

鍼灸院の開業を成功させるためのポイント

帝国データバンクの調査によると、鍼灸院を含む整骨院・療術・マッサージ業者の倒産は増加傾向にあります。

4.整骨院・療術・マッサージ業者の倒産件数推移

厳しい業界で成功するためには、コミュニケーション力や業務スキル、マーケティングの知識を向上させる必要があります。また、チーム構築や競合との差別化、価格設定なども押さえておきたいポイントです。ここでは、鍼灸院の開業を成功させるポイントについて解説します。

コミュニケーション力を磨く

鍼灸院では、施術前に利用者の状態や悩み、要望などを詳しく伺うカウンセリングを行います。その際、利用者と円滑にコミュニケーションが取れなければ、悩みや体の状態を正確に引き出せません。

施術に関する会話だけでなく、何気ない雑談や打ち解けた会話が自然にできるようになれば、利用者との信頼関係も深まります。良好な関係性を築ければ、口コミや紹介による新規顧客の獲得も期待できるでしょう。

「かえる鍼灸整骨院」の鈴木さんも、利用者とのコミュニケーションについての指導を重要視しています。

他にもコミュニケーションの仕方を指導していますが、これは伝えることが非常に難しくて…。密接に関わり合い繋がりが深い地方で開業していることもあり、コミュニケーションについては徹底的にレベルを上げるよう指導しています。今後も院を経営していくために大事なことだと感じています。

引用:モアリジョブ|かえる鍼灸整骨院 院長 鈴木智之さん

施術スキルを高める

集客がうまくいったとしても、施術スキルが低ければ、利用者は満足せず、リピーターにはつながりません。スキル不足に関する良くない評判が口コミで広がってしまうと、その後の集客はさらに困難になる可能性があります。

鍼灸院を長く続けていくためには、常に新しい知識や技術を学び続け、自身の施術スキルを高めていくことが大切です。

「颯整体院」の石田さんは、開業当初の集客低迷を技術不足と分析し、現在でも技術セミナーで学び続けています。

開業当初は、やはり技術力が未熟なために十分な施術ができていなかったのでしょうか。思うように集客が見込めず、少々悩みましたね。

技術面も集客面も急激に上達、改善するような秘策はないと思っています。しかも、運悪くコロナ禍が重なってきたこともあったので、耐えてこれまでやってきたことを継続してきました。

チラシでの集客を続けつつ、技術面も地道にコツコツ勉強して自分に足りないところを補うように心がけていました。そのときの志を忘れないよう、今でも月一回は全国各地で行われている技術セミナーで学び続けています。

引用:モアリジョブ|颯整体院 代表 石田一平さん

「TSL とがし整体Labo」の富樫さんは、技術にこだわり続け、口コミからの集客につなげています。

施術でお客様のニーズをきちんと満たすことができれば、こちらからお願いしなくても自然と口コミを書いて下さったり、SNSなどで発信して下さるんだと分かりました。

そこで、着実に技術を磨いてきた僕のこれまでの行動は間違ってなかったんだと大きな自信につながりましたね。それにお客様が感じたことをありのままに書いて下さった口コミは、他院と比べてとても具体的に書かれているため、新たなお客様の来店にもつながりやすく日々ありがたみを感じています。

引用:モアリジョブ|TSL とがし整体Labo 代表 富樫こうちさん

マーケティングを学ぶ

新規集客とリピーター獲得のためには、マーケティングの知識が欠かせません。開業後、すぐに集客につなげるためにも、開業前からマーケティングについて学んでおく必要があります。

鍼灸師の鈴木さんは、マーケティングによりターゲットをしぼったチラシを作成し、集客につなげました。

ターゲットをしぼったチラシを打ったことが大きかったと思っています。ターゲットを決めるにあたっては、出店するエリアの近くを実際に歩いてみてどんな人たちが多いかを目で確かめました。出店エリアは東京の郊外で、公園も多く、妊婦さん、小さな子連れのママさんを多く見かけたんです。そこで「産後ケア」を打ち出したチラシをまいたところ、ママ層にリーチすることができ、集客につながりました。

引用:モアリジョブ|鍼灸師 鈴木むつよさん

マーケティング活動に取り組む際には、柔道整復師法や景品表示法、医師法・医療法といった関連する法律を遵守した広告表現を心がける必要がある点も、押さえておきましょう。

チームを作る

将来的に売上を伸ばしていきたいのであれば、スタッフを採用し、チームで運営していくことも必要です。売上が拡大するにつれて、施術以外にもやるべき業務が増え、ひとりでは手が回らなくなるケースは珍しくありません。

そのような場合には、スタッフに施術を任せて自身はマーケティング活動に専念したり、ブログやSNSの運用経験があるスタッフを雇用して情報発信業務を任せたりするなど、役割分担が必要です。信頼できる仲間と協力し、それぞれの強みを活かせば、ひとりでは成し遂げられない成果を生み出せる可能性が高まります。

「晴レヤカ鍼灸治療院」の松岡さんは、金間と相談しながら進めるメリットが大きいと感じ、信頼できる鍼灸師の仲間とともに治療院を運営しています。

そうなんです。独りでやるのには不安もあったし、家賃負担もキツそうだったので、周りの信頼できる鍼灸師に声をかけて、一緒にやってくれそうな仲間を探しました。相談しながら進めるメリットも大きいと思って。

開業にあたっての契約や内装などの費用負担は私がしています。『代表』と名乗るからにはその辺りのことは私がしっかりしておこうと思って。あとは、営業を曜日で担当してもらって、家賃などを担当分シェアしてもらっているという形です。

引用:モアリジョブ|晴レヤカ鍼灸治療院 代表 松岡有理子さん

競合と差別化する

集客の難易度が高い鍼灸院では、競合となる他の鍼灸院との差別化を意識することが重要です。競合にはない独自の施術サービスや強みを打ち出せれば、利用者に選ばれる理由となり、差別化につながります。

差別化するためには、開業を予定している地域にある競合が、どのような施術メニューを提供しているのかを調べてみるとよいでしょう。鍼灸院だけでなく、整体院やマッサージ業者のメニューも調査対象です。

業界では当たり前とされていることや、既存の施術方法にあえて異なる視点を取り入れ、新しいアプローチで施術メニューを考案するのも、有効な差別化戦略になります。

「アイム鍼灸院」の木村さんは、クリニックと連携して東洋医学での治療をしていることを強みと捉え、集客につなげています。

当院の一番の特徴といえるのが、クリニックと連携して質の高い東洋医学での治療を行っていることです。激戦区といえども、このスタイルを持っているのはまだまだ少ない。だからこそ、他院との差別化になっていると思っています。

引用:モアリジョブ|アイム鍼灸院 総院長 横山奨さん

利益優先ではなく、顧客に合わせたメニューを考えることも大切です。ホリスティックケアルーム「島のほけんしつ蔵kura」の椎名さんは、自身が必要と思うメニューを作っていった結果、売上向上につながっています。

売上のために商品を作ろうとか、施術メニューを作ろうということは考えたことがなくて、どちらかというと「こんなメニューが必要だな」「こんなものがあれば、あの人にもあの人にもいいよね」という感じで必要なものを作ってきました。それが結果的に喜ばれたり、すごく売れたりということが多いです。

引用:モアリジョブ|島のほけんしつ 蔵kura 代表 島根輝美さん

保険システムを理解する

保険を扱う場合、受領委任払いのシステムを正しく理解しておく必要があります。受領委任払いとは、利用者に代わって施術者が保険者に療養費を申請する仕組みで医療機関とは異なる保険のシステムです。

本来であれば、施術を受けた利用者は、施術料の全額を鍼灸院に支払い、その後保険組合に申請して支払った施術料の払い戻しを受けます。しかし、利用者に負担がかかったり手続きに時間がかかったりするため、デメリットが問題になっていたことを受け、受領委任払いが導入されました。

▼償還払い

5.償還払い

▼受領委任払い

6.受領委任払い

この制度により、患者は窓口での支払いが一部負担で済むため、利用しやすくなります。医療機関の保険システムとは異なり点数制ではなく、施術箇所の数によって請求額が変わります。ただし、保険適用の対象となる症状が限定されているため、ルールを正確に理解し、適切に請求することが大切です。

理想の価格と最低限維持すべき価格を決める

施術料金を決める際に重要なのは、料金を安く設定し過ぎないことです。料金を安く設定した結果、一時的に集客しやすくなるものの、「忙しいのに儲からない」という状況に陥ってしまうケースが珍しくありません。

まずは、目指したい理想の目標売上と、経営を維持するために最低限確保しなければならない売上額を具体的に決めます。そこから、1日に対応可能な施術人数を考慮して逆算し、理想とする価格と、最低限維持すべき価格を割り出します。

算出した価格帯を基に、地域の競合店の料金設定なども参考にしつつ、最低限維持すべき価格を下回らない範囲で、提供する施術サービスの価格を決定しましょう。

J-Net21の調査によると、鍼灸院の1回当たりの利用金額は「3,000円未満」での利用が50%と最も多く、次いで「3,000円~4,999円未満」「5,000円~9,999円未満」でした。全体で、3,000円が1回あたり利用金額の相場であろうと推定されます。

7.鍼灸院の1回当たりの利用金額

店舗経営を維持するために必要な売上とニーズとのバランスを考慮しながら施術の価格を設定すれば、経営的に無理なく顧客満足度を高めることにつながります。例えば、1回の施術時間を15分・30分・60分のように複数設定し、それぞれの時間に合わせて料金単価を設定すれば、売上を確保しつつ利用者からの多様なニーズにも応えられます。

運用コストを把握しておく

鍼灸院を運営するには、必要となるコストにどのような項目があるのかを把握しておく必要があります。。鍼灸院を開業する場合に必要なコストの項目は以下のとおりです。

  • 固定費:売上の増減にかかわらず、毎月発生する費用(家賃・人件費・通信費・広告費・水道光熱費など)
  • 変動費:売上の増減に伴って変動する経費(材料費・消耗品・雑貨・清掃用品・修繕費用・交通費など)

健全な経営を続けるためには、これらの経費の種類や、それぞれの費用が全体の支出に占める割合などを把握し、管理することが重要です。

キャッシュレス決済を導入する

近年では、クレジットカードや電子マネー、QRコード(バーコード)決済といったキャッシュレス決済が社会に広く浸透しており、支払い方法としてキャッシュレス決済に対応している店舗を選ぶ利用者が増えています。

日常的に現金を持ち歩かない人も増えており、キャッシュレス決済に対応していないというだけで、利用をためらうケースも珍しくありません。顧客満足度の向上や、会計業務の効率化のためにも、ターゲット層のニーズに合わせて、キャッシュレス決済システムの導入を検討しましょう。

請求代行サービスを利用する

保険請求業務の負担を軽減したい場合は、請求代行サービスの利用も有効です。専門の代行業者が申請書のチェックや整理を行うため、不備による返戻を減らせます。請求業務にかかる時間や手間を削減できれば、施術やマーケティングなど他の業務に集中できる時間を捻出できます。

ただし、初期費用や月額会費、代行手数料など請求代行サービスによって費用が異なるため、予算を考慮したうえで利用を検討しましょう。

鍼灸院開業に活用できる補助金

鍼灸院を開業する際には、国や地方自治体が設けている補助金制度を活用できる場合があります。これらの制度を活用すれば、開業時の資金負担の軽減が可能です。ここでは、鍼灸院の開業時に活用を検討できる主な補助金について解説します。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や業務効率化への取り組みに対して、その経費の一部を補助する制度です。対象となるのは、常時雇用している従業員の数が20人以下である事業者です。ただし、商業・サービス業のうち宿泊業と娯楽業を除いた業種では、従業員数が5人以下の事業者が対象となります。

この補助金を利用するためには、地域の商工会議所や商工会から支援を受け、申請手続きを進める必要があります。鍼灸院の開業時にこの補助金を活用する場合は、創業支援に特化した「創業枠」に申し込むとよいでしょう。

条件を満たせば、インボイス発行事業者としての特例と合わせて、最大で250万円までの補助を受けられる可能性があります。

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、新しいサービスの開発や試作品の製作、生産プロセス改善に向けた設備投資などに対して、その費用の一部を補助する制度です。すでに創業している中小企業または個人事業主として開業している事業者が対象です。

過去には、整体院や整骨院がエコー測定器を導入した際に、この補助金が活用された事例があります。従来の鍼灸院ではあまりみられないような、新しいサービスや独自の仕組みを導入していくことが、補助対象となる条件です。

例えば、新しいサービスを提供するために必要な専用の機器やシステムを導入する際の投資などが該当します。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者などが、生産性向上を目的としてITツールを導入する際に、その費用の一部を補助する制度です。鍼灸院の開業時であれば、IT導入補助金の申請要件を満たせるため、申請できます。

対象となるのは、業種ごとに定められている資本金や従業員数の上限が、国が定める基準以下である法人または個人事業者です。IT導入補助金を申請するためには、国から認定されたIT導入支援事業者と連携して手続きを進める必要があります。

▼IT導入補助金に申請する事業者と支援事業者の関係

8.IT導入補助金に申請する事業者と支援事業者の関係

引用:IT導入支援事業者とは|IT導入補助金2025

IT導入補助金を活用するためには、IT導入支援事業者により当該のITツールが、あらかじめ補助金対象として登録されている必要があります。パーソナルジムに関連するツールとしては、以下のものが挙げられます。

  • 電子カルテシステム
  • オンライン予約システム
  • キャッシュレス決済サービス
  • モバイルオーダーシステム(健康グッズなどの販売をする場合)
  • ECサイト構築システム(健康グッズなどの販売をする場合)
  • 勤怠管理システム
  • 会計システム など

これらのITツールの導入により、業務の効率化や顧客満足度の向上を図る際の費用負担を軽減できます。

まとめ

鍼灸師として開業するには、鍼灸師の資格と実務経験が必要です。鍼灸院の主な営業形態には自宅や貸店舗、賃貸マンションの一室、レンタルサロン、出張サービスがあります。開業する際は、自分の状況に適した開業形態を選択し、以下の手順で段階的に準備を進めていく必要があります。

  1. 施術管理者研修を受ける
  2. 開業形態を決める
  3. 事業計画を立てる
  4. 鍼灸院の名称を決める
  5. 開業資金を調達する
  6. 物件を見つける
  7. 店舗を準備する
  8. 必要な手続きを行う
  9. 宣伝する
  10. スタッフを採用する

鍼灸院を含む整骨院・療術・マッサージ業者の倒産は増加傾向にあり、集客難易度は決して低くありません。鍼灸院で成功するためには、コミュニケーション力や業務スキル、マーケティングの知識を向上させる必要があります。

また、チーム構築や競合との差別化、価格設定、コスト管理なども押さえておきたいポイントです。本記事を参考に、自身の理想とする鍼灸院の実現に向けて動きましょう。

田仲ダイ(Tanaka Dai) プロフィール画像
執筆者情報
田仲ダイ(Tanaka Dai)
エンジニアリング会社にて、人事・採用・従業員評価・業務管理・部門管理・社内監査など、さまざまな業務に計14年従事。これまでの経験を活かし、bizリジョブ編集部では、採用や店舗経営に役立つリアルな情報を記事として発信する。