物価高や社会保障費の負担増で、多くの業界が経営や運営に多くの課題を抱えています。エステサロンにおいても例外ではありません。
本記事ではエステ業界を取り巻く現状と課題について、最新のデータをもとに解説します。
多くの競合がいる中で生き残るため、取り組むべき対策についても詳しく解説します。経営に課題を抱える経営者や、これから参入を検討している方はぜひ参考にしてください。
【最新版】エステ業界の市場動向と現状
エステ業界に限りませんが、開業に失敗しないためには戦略的に進めることが大切です。
そのために必要な業界の市場動向と現状について、さまざまなデータをもとに詳しく解説します。
エステサロンの倒産件数は前年比1.7倍
株式会社東京商工リサーチの調査によると、2023年度のエステサロンの倒産は95件と前年度の1.7倍に急増しています。
▼エステティック業の倒産 年度推移
特に個人サロン含む零細規模の倒産が約半数の43件、従業員が5人未満の倒産は84件と倒産総数の約9割を占めている点からも、小規模なエステサロンの倒産が目立つ結果となりました。
2023年はコロナによる規制がなくなり、通常生活に戻り始めた頃です。
ただ個人サロンは大手サロンに比べて資本金が少なく、コロナによるダメージから回復する資金がもたなかったことが多くの倒産を招いた可能性があります。
男性のエステサロン利用率が増加傾向
韓国の男性アイドルの人気やオンラインミーティングの普及により、男性向けエステサロンの利用率が増加傾向です。
女性向けエステサロンの市場規模が若干縮小傾向である一方、男性向けエステサロンの市場規模は緩やかな右肩上がりで拡大。2023年に1000億円を突破して以降、1000億円超を維持しています。(ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2025年上期による)
▼エステサロンの市場規模推計(男女別/フェイシャル・ボディ・痩身・脱毛の合計値)
これまで女性のイメージが強かったエステですが、男性の需要が高まったことで新たな美容市場に注目が集まっています。
女性は1回あたりの利用額と滞在時間が増加
女性向けエステサロンの市場規模はやや減少しているものの、1回あたりの利用額と滞在時間は増加傾向です。
▼エステサロンの利用金額と滞在時間(女性/フェイシャル利用者/平均値/実数回答)
|
2023年 |
2024年 |
2025年 |
|
|
1回あたりの平均利用金額 |
7071円 |
7431円 |
7946円 |
|
1回あたりの平均滞在時間 |
69分 |
65分 |
69分 |
※ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2025年上期を元に作表
施術への高い効果や満足度を重視する、美容意識の高い顧客の比率が増えていると予想できます。
なお、男性向けエステサロンの利用金額と滞在時間はともに女性の3分の2程度で、前年までと比較すると減少傾向との結果が出ています。
男性のエステ利用者にはタイパやコスパを重視する傾向が強い20代など若年層が多い点、そしてエステ初心者であるため基礎的なお手入れから始められる点などが、利用時間と滞在時間の減少につながっていると考えられます。(ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2025年上期による)
脱毛サロン利用率の低下が顕著
数あるジャンルのエステでも、脱毛サロンにおける利用率の低下が顕著です。
以下、ホットペッパービューティーアカデミーのデータによると、特に女性の利用率の低下が著しいことがわかります。
▼1年以内の脱毛サロン利用率(男女各n=6,600/単一回答)
市場規模では、2021年と2025年の差がフェイシャル分野で+87億円、ボディ・痩身分野で-11億円なのに対し、脱毛分野は-672億円と大幅な減少です。(参考:プレスレター|株式会社 リクルート )
医療脱毛の低価格化や家庭用脱毛器の機能性アップにより、さらに高い効果と利便性を求める層がサロン脱毛から離脱していったことが推測できます。
セルフケア市場が拡大
これまでエステティシャンが施術を行うのが一般的だったエステですが、セルフエステサロンや家庭用美容機器など、セルフケア市場が勢いを増しています。
株式会社ナリス化粧品の調査によると、およそ4人に1人が1台以上の美顔器を所持していることがわかりました。
▼パーソナル美顔器の保有
美顔器の保有率は若年層ほど高い傾向で、20代から30代前半では3〜4割の人が1台以上の美顔器を保有しています。
また使用頻度においても若年層ほど高く、毎日もしくは2〜3日に1回と高い頻度で使用しており、約半数の人が価格相当の価値があると実感しています。(同調査による)
セルフエステや美顔器などを使ったセルフケアは、コロナをきっかけに拡大しました。しかし、コロナが終息した現在も気軽にケアできる観点から、タイパを重視する世代や非接触を好む人たちから高いニーズを得ています。
エステ業界の課題
エステ業界の市場動向や現状からわかるように、ひと昔前とは取り巻く環境が大きく変わったエステ業界が抱える大きな課題3つについて詳しく解説します。
競争激化
エステサロンの開業や施術には国家資格などの特別な資格を必要としないため、参入障壁が低く、競争激化しやすい業界です。
都内は価格競争になっているところが多く、低価格なのにお洒落でセンスのあるお店がたくさんあります。
引用:モアリジョブ|Vesper オーナー 齊藤良さん
上記は美容室の例ですが、エステサロンも同様です。
価格競争は人件費や溶剤の高騰により一定の落ち着きを見せているものの、多くの競合がいる状況に変わりはありません。むしろセルフケアや美容医療の台頭により、さらに競争は増す一方です。
多くの競合がいる環境でどう生き残っていくのか、経営者の手腕が問われます。
セルフエステサロンとの差別化
エステ業界でこれから生き残っていくには、若年層を中心にニーズの高いセルフエステサロンとの差別化が課題としてあげられます。
現状、セルフエステの利用経験率はフェイシャルで6.3%、痩身で4.1%、脱毛で5.6%とエステ全体では少数派です。(ホットペッパービューティーアカデミーの調査による)
しかし自分の好きな箇所を施術できる点や気軽さ、気楽さからセルフエステのニーズは高まる可能性があります。
その中でエステティシャンが施術を行うエステサロンでどのような差別化を図るのか、ターゲットの選定など、戦略の立て方が生き残りを分けるでしょう。
エステサロンから美容医療への移行増加
ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、美容医療利用率は男女ともに緩やかな右肩上がりで増加しています。
▼美容医療利用率(男女各n=6,600/各単一回答)
美容医療を利用する人は若年層に多い傾向で、背景には芸能人やインフルエンサーによる美容医療を取り入れた美容ケアの発信が影響していると考えられます。単価が下がり、1回ごとの利用が可能になるなど、金銭面への不安が低下したことも要因となっているようです。
さらにエステサロンでのHIFU(ハイフ)使用規制といった法改正も、少なからず影響しているでしょう。
高い効果を求める層へのアプローチなど、美容医療との差別化に向けた対策が課題となります。
人手不足
エステ業界は、深刻な人手不足に陥っています。
エステティシャンの多くは女性で、妊娠や出産、子育てなどライフイベントの影響を多く受けるうえ、土日出勤や拘束時間の長さから他の業種より離職率が高いのが原因です。
歩合制によるノルマなども離職につながる要因のひとつとなっています。
転職をするか迷っています。転職したい理由は典型的な勧誘サロンであること。給料は完全歩合制でボーナスあると記載されてたのに月100万売り上げたらやっと3万入る程度です。勧誘もひどすぎるし休みは10日あるけど1日の拘束時間が長すぎて鬱です。
引用:ヤフー知恵袋
エステティシャンは知識や技術も必要となるため、採用しても即戦力にはなりにくい点も人手不足に陥る原因です。
エステ業界で生き残るために取り組むべき対策とは?
これから参入を検討している方も、すでにエステ業界におられる方も、エステ業界で生き残るためにはしっかりと対策を立てて取り組まなくてはなりません。
ここではエステ業界で生き残るために取り組むべき4つの対策について、詳しく解説します。現在エステサロンの集客や運営がうまくいっていない方は、今回紹介する対策をもとにリブランディングを行い、経営戦略の立て直しを図りましょう。
自店の強みを洗い出す
「自店の強みは何ですか?」
この問いに即座に回答できない場合は、まず自店の強みを洗い出す必要があります。
「強み」は他店との差別化を図る上で重要です。その時々の流行りのメニューや売れ筋商品を、ただ取り扱うだけでは顧客は定着しません。
自店で人気のメニューや顧客層を分析し、自店の強みを見つけましょう。お客様からいただく口コミを参考にするのもおすすめです。
見つけた強みは対外的にアピールし、新たな顧客獲得につなげましょう。
サロンの方向性を決める
ぶれないサロン運営をする上で重要となるのが、サロンの方向性です。
たとえば普段は高級なサロンイメージで運営しているのに、閑散期に低単価メニューを出して普段と異なる顧客層が増えると、既存顧客は戸惑います。場合によっては失客につながる恐れもあるでしょう。
サロンのイメージを明確にし、価格帯やターゲット層、近隣との差別化ポイントなど、サロンの方向性をしっかりと定めます。
狙うターゲット層が決まれば、ターゲットにあった集客方法も定まるため、効果的な集客ができるようになります。
なお、安易な価格競争への参入はおすすめしません。安すぎる価格には顧客も不安を覚えるうえ、スタッフが疲弊し、離職につながる恐れもあります。
労働環境や採用条件を見直す
人手不足に悩んでいるのであれば、労働環境や採用条件を見直し、優秀な人材の確保や離職の防止に努めましょう。エステは1対1で接客、施術を行うのが基本のため、施術者がいないことにはサロン運営は成り立ちません。
気がついたら誰もスタッフがついてきていなくて、スタッフが辞めていくことが増えました。そのピークが2010年で、当時は長野、松本と新宿、個人サロンと4店舗を構えていましたが、15人ほどのほとんどのスタッフが一斉に退職してしまったんです。
引用:モアリジョブ|株式会社アンジェラックス 代表取締役社長 大杉みどりさん
人手が不足していない企業は賃金や賞与の引き上げ、働きやすい職場環境作りなど、人が辞めないための取り組みを積極的に進めています。
▼人手が不足していない企業のその要因
(画像出典:中小企業・小規模事業者の現状 )
従業員が給与や職場環境に不満を抱いている状態では、次の項で解説する、顧客満足度アップのための技術力や接客力の強化もスムーズに進められません。
最初のステップとして、労働環境や採用条件を見直しましょう。
エステの求職者が職場に求める条件については、リジョブがまとめたホワイトペーパーをご覧ください。ダウンロード無料です。
ソフトウェアなどITの活用で作業効率を高める
労働環境の改善には、IT活用が有効です。
たとえば予約システム「リザービア」では予約管理だけでなく、GoogleマップやLINEなど外部サービスと連携しており、予約対応にかかる時間を軽減できます。また分析機能もついており、実施している施策のPDCAサイクルに役立てることも可能です。
中小企業白書によるとソフトウェアなどの無形固定資産に投資した場合、投資してない場合と比べて売上げ高が約133%と高い成長結果が出ています。
▼売上げ高の推移(無形固定資産投資の実施有無別)
IT活用は慣れるまでは大変ですが、慣れれば作業効率を高めてスタッフの負担を軽減するだけでなく、サロンの売上げアップも期待できます。
リザービアは基本的な使い方から集客まで、マンツーマンでサポートします。ITが苦手だけど、店舗運営の効率化を高めたい経営者の方はご活用ください。
関連リンク
技術力や接客力を強化する
エステサロンを選ぶ際、利便性や料金関連に次いで重要視されるのが、技術力や接客力です。
エステサロンの技術力や接客を重要視する人は増加傾向にあり、リピート率を上げるためには欠かせない要素といえるでしょう。
▼現在利用しているサロンの継続理由(フェイシャル利用者/女性/複数回答)
|
2024年上期(n=499) |
2025年上期(n=446) |
|
|
技術が高い |
14.8% |
20.0% |
|
話しやすく会話が楽しい |
9.0% |
11.7% |
|
気遣いや対応がよい |
9.2% |
13.0% |
※ホットペッパービューティーアカデミー 美容センサス2025年上期 エステサロン編をもとに作表
人手が足りずに技術や接客の研修を強化できないサロンは、美容商材の取引先や研修を専門に行う企業などの外部研修を活用しましょう。
優秀な人材採用は美容業界に特化した求人サイトがおすすめ!
美容業界のように専門性の高い業界の人材採用には、業界特化型の求人サイトが有利です。
リジョブの調査によると、美容・ヘルスケア業界従事者が求人サイトを選ぶ際には「業界特化型」である点を重視していることがわかりました。
画像出典:美容・ヘルスケア業界の求職者に聞いた!データで見る転職活動の軸
業界特化型の求人サイトのほうが総合型の求人サイトより業界に特化しているため、信頼度が高く、条件を絞りやすいのが主な理由のようです。
リジョブは求職者の満足度98%、エステティシャン志望の会員数は約16万人。WEB検索順位も上位のため、求職者に閲覧されやすいのが強みです。2つの料金プランがあり、予算や求人状況に応じた採用活動を行えます。
詳しくはこちらからお気軽にお問い合わせください。
まとめ
本記事を総括すると、次のとおりです。
- コロナ後に小規模なエステサロンの倒産が目立ったが、客単価や男性利用者が増加傾向にある
- エステは参入障壁が低いうえ、セルフエステや美容医療など競合相手が増えている
- エステ業界で生き残るために、強みやサロンの方向性の明確化、従業員満足度や顧客満足度に向けた対策を行う
- 美容業界に特化した業界特化型の求人サイト「リジョブ」で優秀な人材を採用しよう!
- 執筆者情報
- 田中 久美(Tanaka Kumi)