求人を募集しても応募が来ない?人手不足の原因と対策を解説
求人票への募集が来ない企業が人手不足を解消する場合、まずは賃金をアップさせて求職者に魅力的な条件を提示する方法が考えられます。少なくとも業界の給与相場を把握して、改善の余地があれば賃金アップの検討をすることが重要です。
しかし利益が出ておらず、賃金をアップさせるための原資を確保できない企業も多いようです。
給与アップ研究所がPRTIMESに掲載した調査結果によると、賃上げしたいと考えている社長のうち88.3%が、「賃上げに課題を感じている」と回答。最も多かった課題は「そもそも利益が出ておらず、賃上げのための原資がないから」でした。
以上のように賃上げには積極的に取り組みたいが、コスト面でなかなか賃上げができずに、人手不足が解消できないケースも多いと考えられます。
そこで本記事では、求人広告の選び方や求人内容の記載方法、求人広告の効果を高める方法を中心に、賃上げ以外の人手不足解消法を紹介します。
求人に募集が来ない日本企業における人手不足の現状と将来
まずは求人に応募が来ない日本企業の人手不足について、現状と将来についてみていきましょう。
日本企業における人手不足の現状
帝国データバンクの調査によると、人手不足の状態にある日本企業は2009年以降から上昇傾向です。そして正社員が人手不足の状態にある企業が、2018年11月には53.9%に上りました。
その後、2020年以降に起こったコロナ禍の影響で経済活動が停滞し、一旦人手不足が落ち着きました。しかしコロナ禍の収束とともに再び人手不足の割合が上昇し、2023年は51.4%でした。日本企業の2社のうち1社が、人手不足に悩んでいることになります。
厚生労働省の資料によると、全産業において6割以上が「人材を募集しても、応募がない」状態です。
とくに、宿泊業・飲食サービス業、建設業、医療・福祉などの人手不足が深刻です。
人手が不足すると、従業員の残業時間が増加したり、休暇の取得数が減ったりして労働条件が悪化します。厚生労働省の資料からも、人手不足による職場への影響として労働条件の悪化を挙げる企業の割合が最も高いことがわかります。
人手不足による労働環境の悪化を放っておくと、さらに退職者が増え、人手不足の深刻化につながります。そのため人手不足の深刻化を防ぐためには、退職者への対策も重要です。次の記事では、退職による人手不足の解消法を紹介しているので、どうぞご覧ください。
コロナ以降の倒産に人手不足が影響
コロナ禍以降に倒産数が増えている業界のひとつに、美容業界が挙げられます。
美容業界では、コロナ禍の助成金がなくなったことや電気代の高騰が原因で倒産が増加。さらに美容室が多いことが原因で、競合店同士で美容師の取り合いになっているようです。その結果、人件費が高騰して倒産につながっているといわれています。
近年、美容室は事業者数の増加による過当競争や人手不足などで、倒産は増勢をみせていた。2019年には105件と年間最多を更新したが、コロナ禍では外出自粛や利用控えが広がるなか、コロナ関連支援の効果で倒産は2年連続で減少。2021年は過去10年間で最少の65件にとどまった。
だが、2022年に入ると、コロナ対策の資金繰り支援効果が薄れる一方、電気代や商材価格の高騰、人手不足による人件費上昇に見舞われた。こうした動きを背景にして、2022年10月以降は2023年1月と2月を除き、美容室の倒産は前年同月比50.0%超の増加率で推移している。
引用:東京商工リサーチ
日本における労働力人口の将来予測
日本企業の人手不足問題は、今後はさらに悪化する恐れがあります。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの試算によると、労働力人口は今後減少すると予想されています。
それとともに就業者数も減少。2023年現在約6,700万人だった就業者数が2035年には約6,100万人になり、約600万人も減少すると考えられています。
応募者の心理から読み解く、求人に応募が来ない要因
求人に応募が来ない要因を考える場合、まずは応募者の心理を考えてみましょう。応募者の心理を読み解くと、次のような要因が人手不足につながっていると考えられます。
- ターゲットが集まりやすい媒体を選べていない
- 条件が相場や他社と比べて劣っている
- 求人票に仕事内容について詳しく書かれていない
各要因について詳しく解説します。
ターゲットが集まりやすい媒体を選べていない
ターゲットが集まりやすい媒体を選べていないと、求人に応募があっても、その求職者が自社の求める人物像とマッチしない確率が高くなります。そのため、媒体選びをするターゲットの心理を考えて、媒体選びをすることが大切です。
例えば専門スキルを持った人材は、一般の求人サイトよりも特化型サイトを利用する傾向があることを示す調査結果があります。そのため専門職で働く人材を募集したい場合は、一般の求人サイトよりも特化サイトで人材を募集したほうが求める人材を集めやすくなります。
「(株)リクルート ホットペッパービューティーアカデミー 美容就業実態調査2023」によると、美容関連スキルを持つ人材は、一般の求人サイトよりも美容系専門の求人サイトを利用する人の割合が高いことがわかりました。
▼美容関連職における転職時の仕事探し方法
条件が相場や他社と比べて劣っている
条件が相場や他社と比べて劣っていると、求職者が求人票で労働条件を見比べた場合に、選択対象から外される可能性が高くなります。とくに求職者が重視する労働条件については、可能な限り他社よりも優位な条件を提示したほうが応募数を増やせます。
マイナビによると、入社を決めた理由として「給与が良い」ことを上げる回答が最も多かったです。一方で専攻を辞退した理由として、「給与が低かった」と回答する人が多かったこともわかりました。
以上から判断すると、求職者は給与を最も重視して、就職先を決めていることになります。そのため、給与を相場よりも低く設定すると、応募者を増やしづらくなります。
求人に応募が来ずに人手不足になっている場合は、業界や地域の相場を下回らないように給与を設定することも大切です。
例えば美容・ヘルスケア業界の場合、リジョブの調べによると各職種の求人の条件としての平均給与下限は次のとおりです。
▼美容・ヘルスケア業界の求人の給与(下限)相場
美容・ヘルスケア業界で求人を募集する場合は、上記をもとに一度給与を見直してみるのもおすすめです。
リジョブでは美容・ヘルスケア業界について地域別の平均給与も調査しています。調査データについては、下記より無料でダウンロードできるのでどうぞご覧ください。
求人内容で働くイメージが持てない
求人票に仕事内容が詳しく書かれていないと、求職者が求人内容を見ても働くイメージを持てません。その結果、求職者の働く意欲を引き出せずに、求人票への応募が少なくなる可能性があります。
株式会社ONEの調査によると、働くイメージを掴むためにも、仕事内容を見たいと回答した求職者が半数以上に上しました
このことから、求人への応募者数を増やすためには、仕事内容について詳しく書いて求職者に働くイメージを持ってもらう必要があります。
また前項で伝えたように給与を重視することも大切ですが、それ以外のニーズも理解しておくと応募者を集めやすくなります。「ハローワーク来所者の求職行動に関する調査」によると、給与以外にも健康や人間関係、会社の将来性が求職の動機につながっていることがわかりました。
つまり、給与でなかなか好条件を提示できない場合は、残業が少ないことや人間関係が良好なことを伝えることも求人票に応募者を集める有効手段になると考えられます
求人広告の選び方
求人広告を選ぶ際には、掲載媒体や掲載時期のポイントを押さえておきましょう。
掲載媒体
掲載媒体を選ぶ際は、認知度が高かったり、利用者数が多かったりする媒体を選ぶと、応募者が集まりやすくなります。マイナビが発表した「転職動向調査 2023年版」によると、認知度や利用者数の最も多い媒体は転職サイトでした。
▼転職活動で利用されている媒体
以上から効率的に採用活動を進める場合は、転職サイトは有効な選択肢の1つとして考えられます。
さらに求める人材にアプローチできるかどうか、利用媒体にどのような情報を掲載できるかといった点も考慮しつつ選択することが大切です。
たとえば専門職で活躍できる人材を採用したい場合は、ターゲットとなる職業に特化した転職サイトを利用した方が求める人材を集めやすくなる可能性があります。
また会社の雰囲気を伝えたい場合は、動画や豊富な画像を掲載できる媒体を選ぶと、希望通りに採用活動を進めやすくなります。
掲載時期
新規求人数が多く、求職者の活動が活発になる時期に求人を出すと、応募者を集めやすくなります。一般職業紹介状況をもとに、2023年の新規求人数と新規求人申込件数を年間推移でグラフ化すると次のとおりです。
※一般職業紹介状況のデータをもとに作図
新規求職申込件数は4月にピークを迎えるため、それ以前の1~3月に求人を出す企業が多いようです。
また転職活動を在職中に行う求職者も多いため、その期間を見越して求人を募集することが大切です。リジョブが美容・ヘルスケア業界を対象に行った調査によると、内定が決まってから求職者が前職を退職するまでに、平均40日の間隔が必要であることがわかりました。
▼求職者が前職を退職するまでに必要な期間
求人の応募から面接、選考などの採用ステップを考慮すると、人手が必要になる4カ月~6カ月前から求人掲載を開始することが望ましいと考えられます。
求人内容
求人内容には、求職者が知りたい情報を詳しく載せるようにしましょう。ここでは、次の項目について掲載のポイントを紹介します。
- 給与・勤務地・労働時間
- 掲載写真・求人タイトル
- 仕事内容
給与・勤務地・労働時間
職業安定法によると、給与や勤務地、労働時間などの労働条件について最低限、次の項目を記載することが定められています。明示すべき内容について、厚生労働省のリーフレットから引用すると次のとおりです。
▼求職者への労働条件の明示ルール
上記の赤字は、2024年4月1日以降に明示すべき内容として追加される項目です。2024年度における変更の特徴は、業務内容や就業場所について変更の範囲を明示する必要がある点です。また契約期間を定める際は、契約更新の有無や更新の上限についても明示する必要があります。
掲載写真・求人タイトル
求職者に興味を持ってもらうために、掲載写真や求人タイトルを工夫しましょう。例えば反響が出やすい求人タイトルとして次のような書き方が考えられます。
▼反響が出やすい求人タイトルのタイプ
掲載写真については、次の点を意識してしてみてください。
- 働くイメージをしやすくなる写真を掲載する
- 明るい場所で撮影された鮮明な写真を掲載する
- 文字入れや複数写真の組み合せなどで工夫する
以上はリジョブの「採用成功ガイドブック」をもとに、掲載写真や求人タイトルのポイントをお伝えしました。
同資料には、さらにさまざまな採用を成功させるノウハウが紹介されています。リジョブのサービス・料金についての詳細資料をダウンロードすると一緒に無料でプレゼントしますので、ぜひご覧ください。
仕事内容
仕事内容を記載する場合は、求職者目線で知りたい情報を考えて具体的に記載することが大切です。また仕事内容を伝えるのと同時に、面白さややりがいを感じてもらえるようにすると、求職者の興味を惹きつけやすくなるでしょう。
例えばリジョブに掲載されている求人票のなかには、仕事内容について次のような工夫がみられます。
- 業務内容の割合を記載する(例:カット〇%・パーマ〇%・ストレート〇%・カラー〇%・トリートメント〇%)
- お客様の声を紹介して、仕事内容をイメージしてもらうのと同時にやりがいを感じてもらう
- 業界ならではの専門的な施術名や技術名、機器名を記載する
- 施術内容や施術時間を詳細に記載する
- 仕事の流れを簡潔に箇条書きで説明する
仕事内容を記載する際は、参考にしてみてください。
求人広告の効果を高める方法
求人広告の効果を高める方法として、求人サイトのスカウトサービスや有料オプションの利用が考えられます。また求人サイトとは別に自社独自の採用ページを作成するのもおすすめです。
スカウトサービスの利用
スカウトサービスとは、求人サイトに登録した求職者に、「スカウトメール」を送るサービスです。このサービスを利用すると、自社のターゲットに直接アプローチできるため採用活動を効率化できます。
またスカウト型転職サービスを利用した経験のある求職者も多いため、スカウトメールを活用すると採用にもつながりやすくなると考えられます。
アントプロダクション株式会社の調査によると、120人中80人がスカウト型転職サービスを利用した経験があると回答しています。
▼スカウト型転職サービスを利用者の割合
有料オプションの利用
採用にある程度のコストをかけられる場合は、求人サイトの有料オプションを利用するのもおすすめです。求人サイトに課金すると、上位プランに変更して露出を増やしたり、求人票に掲載できる写真や動画、文章などのコンテンツをリッチにできたりするので、より求職者にアピールしやすくなります。
例えば検索エンジン型の求人サイトの場合、クリック課金型のシステムが採用されているケースがあります。求人票をクリックするたびに課金されますが、上位に掲載できるのでより多くの求職者に認知してもらえます。
また、上位プランに変更して露出をする有料オプションもあります。このシステムは先行投資型とも呼ばれていて、求人票を掲載する前に定額の月額料金を支払う必要があります。先行して課金する必要がありますが、クリック課金型とは異なり、何度クリックされても支払う料金が変わらないことが特徴です。
リジョブでも、次のオプションメニューが準備されていて、閲覧数が最大で7.3倍になった実績もあります。
- PR枠での求人票の掲載
- 求人票の検索結果での上位表示
- プレミアム特集
- スカウトメールの追加
- 求人票の製作代行
有料オプションを効果的に利用すると、採用活動を大幅に効率化できるので、ぜひ利用を検討してみてください。
採用ホームページの作成
企業が採用ホームページを準備していないと、応募意欲が低下する求職者は多いです。ヒトクルの調査によると、企業ホームページや採用ページがないと、応募意欲が低下する求職者が7割以上に上ることがわかりました。
▼企業ホームページ・採用ページがないと、応募意欲が低下する求職者の割合
企業ホームページを持っていない場合は、まずは自社ホームページを作成することをおすすめします。すでに、企業ホームページを作成している場合は、コンテンツの一部に採用ページも作成すると採用活動を有利に進められるでしょう。
自社で作成する採用ページは自由度が高いことがメリットです。画像や動画、図表、インタビュー記事などを交えながら、効果的に求職者にアピールしましょう。その際に、求職者の知りたい情報を意識して、ニーズを満たせるような情報を掲載することが大切です。
サムライト株式会社の調査によると、求職者の知りたい情報は給与・福利厚生が最も多く、次に仕事内容のイメージや労働環境の順に多い結果でした。
▼求職者が注目する企業発信の情報
以上を参考にしながら、採用ページに掲載する順番や内容を考え、効果的に求職者にアピールするとよいでしょう。たとえば、次のようなコンテンツを掲載すると、求職者の興味を引きます。
- ビジョンを伝える企業の代表メッセージ
- 現場で働く社員や新入社員へのインタビュー記事や動画
- 福利厚生の内容を紹介するページ
- 企業の社会活動を紹介するページ
- 従業員の集合写真の掲載
- 新卒や中途、アルバイトなどの採用タイプ別の募集要項
人手不足の対策
ここまで求人票でできる人手不足対策を紹介しました。人手不足を解消するためには、それ以外にも採用計画の見直しや職場環境の整備などを実施して、採用率を上げたり、離職率を下げたりする取り組みも重要です。
求人票の改善や有料オプションの利用、媒体選びの見直しなどを実施しても人手不足が解消されない場合は、求人以前の問題への対策も検討するとよいでしょう。次の記事では、根深い人手不足を解消するための対策を紹介しているので、参考にしてください。
まとめ
この記事を総括すると次のとおりです。
- 人手不足に悩む日本の企業は多く、6割以上の企業が求人を募集しても応募が来ない状態
- 将来的に労働力人口がさらに減少すると予想されているので、今の状況がさらに悪化する可能性がある
- 求人を募集しても応募が来ない場合は、求人票の工夫や有料オプションの利用、採用ホームページの作成などのすぐにできる対策で人手不足を解消できる可能性がある
求人を出しても応募が来ずに人手不足になっている場合は、まずは求人票の見直しから取り組んでみてください。
- 執筆者情報
- Bizリジョブ編集部