欠員補充とは、従業員の退職や異動、長期休職などで空いたポジションを補い、必要な人員体制を維持することです。外部から新たな人材を採用するだけでなく、社内異動や昇進、業務分担の見直しなどで対応できる場合もあります。
欠員が発生すると、残った従業員の負担やサービス品質、売上などへ影響が広がる可能性があります。一方で、急いで人を採用することだけを優先すると、採用要件が曖昧になり、ミスマッチや早期離職によって再び欠員が生じることもあります。
本記事では、欠員補充の意味や欠員が発生する原因、企業への影響を整理したうえで、欠員が出たときの対応手順や主な補充方法を解説します。採用をスムーズに進めるポイントや、欠員を繰り返さないための定着施策、採用後のオンボーディングについても紹介します。
欠員補充とは、従業員の退職や異動、長期休職などによって組織内に生じた空きポジションを補うことです。すでに存在する役割や職位を維持し、必要な業務を継続することを目的に行います。
欠員補充というと、新しい人材の採用をイメージしやすいですが、必ずしも外部採用だけが方法ではありません。既存従業員の配置転換や昇進、業務分担の見直しなどによって補えるケースもあります。
重要なのは、「辞めた人と同じ条件で一人採用する」と機械的に考えるのではなく、現在必要な業務や役割を整理したうえで、どの方法で補うのが適切かを判断することです。
欠員補充には、次のような言い換え表現があります。使用場面に応じて適した表現を選びましょう。
欠員補充と増員募集は、どちらも人材を確保する取り組みですが、目的が異なります。
| 比較項目 | 欠員補充 | 増員募集 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 退職・異動・休職などで空いた既存ポジションを補う | 事業拡大や新規出店などに伴い人員を増やす |
| 人員計画 | 原則として既存の人員体制を維持する | 現在より人員体制を拡大する |
| 緊急度 | 業務に穴が生じているため高くなりやすい | 事業計画や繁忙期などに合わせて計画的に進めやすい |
| 採用要件 | 前任者の業務を基準にしやすい | 今後必要になる役割・スキルから設計する |
ただし、欠員補充でも前任者と同じ人材をそのまま求める必要はありません。業務の優先順位や役割分担を見直した結果、「必要なスキルが以前とは変わった」「一人分の仕事をそのまま採用で置き換える必要はない」と判断できる場合もあります。
欠員が発生する原因は、大きく「自発的離職」「非自発的離職」「予期せぬ欠員」に分けられます。
自発的離職は、従業員が自らの意思で退職を選択するケースです。具体的には、次のような理由が考えられます。
総務省「労働力調査(基本集計)2025年平均結果」では、完全失業者を求職理由別にみた場合、「自発的な離職(自分又は家族の都合により前職を離職)」は2025年平均で75万人でした。なお、この数値はすべての離職者数ではなく、前職を離職して求職している完全失業者を求職理由別に集計したものです。
非自発的離職は、本人の希望だけではない事情によって前職を離れるケースです。例えば、次のような場合があります。
同じく総務省「労働力調査(基本集計)2025年平均結果」では、「非自発的な離職」を求職理由とする完全失業者は2025年平均で41万人でした。このうち「定年又は雇用契約の満了」は19万人、「勤め先や事業の都合」は22万人です。
自発的離職やあらかじめ予定された退職以外にも、突然人員が不足することがあります。
こうしたケースは事前に採用計画へ組み込みにくいため、まず業務への影響を整理し、一時的な業務分担と中長期の人員補充を分けて考える必要があります。
欠員を長期間放置すると、単純に「一人分の人手が足りない」という問題だけでは済まない場合があります。
厚生労働省「令和7年版 労働経済の分析」では、「働きにくい」と感じている労働者の約68%が、その要因として「慢性的な人手不足」を挙げています。人手不足への対応と、働きやすい職場環境づくりは切り離して考えにくい課題です。
欠員が発生すると、空いたポジションの業務を他の従業員がカバーしなければならない場合があります。
追加業務によって通常業務へ割ける時間が減れば、組織全体の生産性が低下する可能性があります。
特に業務が属人化していた場合、残された従業員が業務内容を把握するところから始めなければなりません。専門性や経験を要する業務の担当者が欠けた場合も、短期間では代替しにくいでしょう。
欠員状態が続くと、残った従業員へ追加の業務や役割が割り当てられ、負担が集中しやすくなります。
一時的な応援であれば対応できても、終了時期が分からない状態で負担が続けば、残業増加やモチベーション低下につながる可能性があります。
前述した厚生労働省の分析でも、人手不足は「働きにくさ」と関連する要因として挙げられています。欠員への対応が遅れれば、残った従業員の離職によってさらに人手不足が深刻化する悪循環も考えられます。
欠員によって現場の余裕がなくなると、顧客対応やサービス品質にも影響する可能性があります。
例えば、問い合わせ対応を担う部門であれば返信が遅くなり、店舗型サービスであれば予約枠を減らさなければならない場合があります。
特に美容室やサロン、治療院、介護事業所など、人がサービス提供そのものを担う業種では、人員不足が顧客満足度や売上機会に直接影響しやすいため注意が必要です。
欠員によってサービス提供量が減れば、売上機会の損失につながります。
さらに、欠員補充を行うためには、求人広告費、人材紹介会社への手数料、面接対応、入社後の教育など、さまざまなコストが発生します。採用を急ぐあまり適性を十分に確認せず、早期離職が発生すれば、採用活動をやり直すことにもなります。
帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」によると、従業員の離職や採用難などを要因とする「人手不足倒産」は2025年度に441件発生し、過去最多となりました。このうち、従業員や経営幹部などの退職を原因とする「従業員退職型」も118件で過去最多です。調査対象は負債1,000万円以上の法的整理による倒産です。
欠員の影響を必要以上に拡大させないためにも、発生直後の応急対応と、その後の人材確保を並行して進める必要があります。
欠員が発生したからといって、すぐに求人を出すことだけが正解とは限りません。
まず業務への影響を把握し、「いつまでに」「どの役割を」「どの方法で」補う必要があるのかを整理すると、採用のミスマッチや現場の混乱を防ぎやすくなります。
最初に、欠員となった従業員が担っていた仕事内容を洗い出します。
例えば、次のように整理すると優先順位を判断しやすくなります。
「一人辞めたから一人採用する」と考えるのではなく、実際に不足する業務量や時間帯まで確認しましょう。
店舗の場合は、予約状況やシフト、営業時間、繁忙時間帯なども踏まえ、いつまでに何人必要なのかを明確にします。
必要な業務が整理できたら、空いたポジションの役割と責任を確認し、必要なスキルや経験を定めます。
単なる補充ではなく、業務効率化や改善の機会として仕事内容や範囲を見直すことも有効です。前任者が行っていた業務のなかに、削減できる作業や別の担当者へ移せる仕事がないか確認しましょう。
そのうえで、次の項目を具体化します。
能力やスキルだけでなく、実際の仕事内容や職場環境との相性も考慮することで、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。
欠員が出ている状況では「早く採用しなければ」と考えがちですが、急いで補充することだけを優先すると、人材要件が曖昧なまま選考が進む可能性があります。
採用手法、選考スケジュール、採用後の定着まで含めて整理したい場合は、「採用戦略とは?立て方7ステップ・採用計画との違い・成功のポイントまで解説」もあわせてご覧ください。
外部採用を始める前に、既存従業員で補える範囲も確認します。
例えば、社内異動や配置転換、昇進によって、欠員となったポジションを任せられる人材がいるか検討します。現時点では必要な能力を満たしていなくても、研修やリスキリングによって役割を担える場合もあります。
内部人材で補充できれば、社内事情を理解した人材が担当するため、引き継ぎを進めやすく、外部採用にかかるコストも抑えられます。従業員にとって新しい役割や昇進がキャリアアップの機会になることもあります。
一方、配置転換によって別の部署や店舗に新たな人員不足が生まれないかも確認が必要です。
社内だけでは補えない場合は、外部から人材を確保します。
求人サイト・求人広告、人材紹介、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用など、採用方法によって候補者への届き方や費用、採用担当者にかかる工数は異なります。
欠員の緊急度だけで決めるのではなく、次の条件を踏まえて選びましょう。
採用手法全体を比較したい場合は、「採用方法14選!新卒採用と中途採用それぞれに合った方法とコツを解説」も参考にしてください。
採用活動と並行して、欠員をカバーしている従業員へのフォローも必要です。
単純に仕事を上乗せするのではなく、次のような対応を検討します。
「新しい人が入るまで頑張ってほしい」という状態が長期化すると、追加の離職を招きかねません。欠員補充と既存従業員の負担軽減を同時に進めることが重要です。
欠員を補う方法には、社内の人員を活用する方法と外部から人材を確保する方法があります。
主な選択肢を整理すると、次のとおりです。
| 方法 | 向いているケース | 主なメリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 社内異動・配置転換・昇進 | 社内に必要な経験や適性を持つ人材がいる | 立ち上がりが早く、外部採用コストを抑えやすい | 異動元の部署で人手不足が生じないか確認が必要 |
| 求人サイト・求人広告 | 幅広く候補者を募りたい、複数人を採用したい | 多くの求職者へ求人を届けやすく、自社の魅力を詳しく伝えられる | 応募者対応や選考を自社で行う工数が必要 |
| 人材紹介 | 経験・資格など人材要件が明確 | 条件に合う候補者を紹介してもらいやすく、採用工数を抑えやすい | 採用人数に応じて費用が増える場合がある |
| ダイレクトリクルーティング・リファラル採用 | 特定の人材へ直接アプローチしたい | 待つだけでなく企業側から候補者との接点を作れる | 候補者選定やスカウト、社員への周知など運用が必要 |
| パート・短時間勤務・業務委託など | フルタイム一人分ではなく、特定時間帯や業務を補いたい | 働き方の選択肢を広げ、人材確保の間口を広げられる | 業務範囲、雇用・契約形態、資格が必要な業務などの確認が必要 |
既存従業員のなかに欠員ポジションを担える人材がいる場合は、社内異動や昇進が選択肢になります。
社内の業務や企業文化を理解しているため、新規採用者より早く業務へ適応できる可能性があります。また、従業員に新しい役割を任せることがキャリア形成につながる場合もあります。
ただし、一つの部署の欠員を埋めるために別の部署が人手不足になっては問題が移動するだけです。組織全体の人員配置を確認して判断しましょう。
求人サイトや求人広告を利用すると、求人情報を公開して求職者から応募を募れます。
仕事内容や給与、勤務時間、福利厚生、教育制度、職場の雰囲気などを自社の言葉で伝えられる点が特徴です。
掲載課金型、クリック課金型、応募課金型、採用成果報酬型など料金体系はサービスによって異なります。費用について詳しく知りたい場合は、「求人広告の費用相場はいくら?料金体系・掲載料金の比較一覧と費用対効果を高める方法」も参考にしてください。
美容・ヘルスケア業界で外部採用を行う場合は、採用したい職種に特化した求人媒体も選択肢になります。
美容・ヘルスケア業界特化型求人サイト「リジョブ」の公式ページでは、総会員数80万人超(2025年9月時点)、取引実績5万社以上と案内されています。料金プランには「掲載費+採用成果報酬プラン」と「完全採用成果報酬型の掲載費0円プラン」があり、採用状況に応じて選択できます。最新の料金・契約条件は公式ページをご確認ください。
求人媒体には総合型・業界特化型などさまざまな種類があります。媒体ごとの特徴や選び方は、「目的別のおすすめ求人媒体を比較|総合型や特化型など、ニーズに合わせて特徴を一覧表で解説」も参考にしてください。
人材紹介では、企業が求める経験やスキル、勤務条件などを伝え、条件に合う候補者の紹介を受けます。
候補者探しや日程調整などを人材紹介会社へ任せられるサービスもあるため、採用担当者の工数を抑えやすい点が特徴です。
一方、採用者ごとに成功報酬が発生する契約では、採用人数が多いほど総費用も増えます。必要な人数と予算を踏まえて判断しましょう。
ダイレクトリクルーティングは、企業側から候補者へ直接アプローチする採用方法です。欠員ポジションに合う経験者など、対象を絞って声をかけたい場合に活用できます。
リファラル採用は、既存従業員などから知人・友人を紹介してもらう方法です。自社について一定の理解を得たうえで候補者と接点を持ちやすい一方、紹介だけで採用を決めず、他の候補者と同様に採用要件や選考基準に沿って判断する必要があります。
欠員が発生したからといって、必ずフルタイムの従業員一人を採用する必要があるとは限りません。
特定の時間帯だけ人手が足りない場合はパート・短時間勤務、特定業務だけを外部へ任せられる場合は業務委託なども選択肢になります。
ただし、業務委託は雇用とは異なります。契約形態と実際の働き方が合っているか確認し、美容・ヘルスケア・介護など資格や業務範囲にルールがある職種では、該当する法令や資格要件も確認したうえで活用しましょう。
欠員補充では「早く人を入れること」と「採用後に定着する人材を選ぶこと」の両方を意識する必要があります。
ここでは、応募を集めやすくし、採用までの時間を短縮しながらミスマッチを防ぐためのポイントを紹介します。
求人を出しても応募が集まらなければ、欠員状態は長期化します。給与や勤務時間などの条件だけでなく、仕事内容や職場環境、働く魅力が求職者に伝わっているか確認しましょう。
自社が大切にしている考え方、接客方針、教育制度、キャリアの考え方、福利厚生などを具体的に伝えると、求職者が自分に合う職場か判断しやすくなります。
採用側にとっても、仕事内容や職場の特徴を事前に伝えることは、入社後の認識のズレを減らすうえで役立ちます。
SNSは、求人票だけでは伝えにくい職場の雰囲気やスタッフの様子、日常の仕事を見せる手段になります。
株式会社リソースクリエイションが2026年に転職活動中の20代125名を対象として行った「転職活動におけるSNS利用の実態調査」では、81.6%が企業のSNSアカウントを見て応募意欲が増したと回答しています。特定の年代を対象とした調査ではありますが、求人媒体以外にも自社を知ってもらう接点を持つ意義を考える材料になります。
SNSでは、求人情報を繰り返し投稿するだけでなく、仕事内容、1日の流れ、スタッフ、職場の雰囲気、教育、働き方など、求職者が入社後をイメージできる情報を発信するとよいでしょう。
実際に働いている従業員の体験談も、自社の魅力を伝える材料になります。
例えば、次のような内容が考えられます。
求人情報だけでは見えにくい働き方を具体的に伝えられます。
欠員補充では採用スピードも重要です。ただし、選考を雑にするのではなく、不要な待ち時間や作業を減らして効率化します。
採用ツールによっては、応募者情報の整理や採用要件との照合などにAIを活用できます。
担当者による確認作業を効率化できる可能性がありますが、AIによる評価だけで採否を機械的に決定するのではなく、使用する基準や出力内容を人が確認し、自社の採用方針に沿って判断することが必要です。
候補者の適性や能力を確認するため、オンラインで適性検査やスキルテストを実施する方法もあります。
会場を用意せずに受検できるため、企業・候補者双方の日程を調整しやすく、選考を進めやすくなる場合があります。
オンライン見学や面接は、候補者が遠方に住んでいる場合や、現職の都合で来社時間を確保しにくい場合にも選考参加のハードルを下げられます。
美容室「THE DAY」の美容師・アシスタントの花さんは、オンラインでのサロン見学と面接について次のように話しています。
オンラインでサロン見学をした後に、面接を受けました。営業中にサロン見学をさせてもらったおかげで、リアルなお店の雰囲気を感じることができましたし、私からの質問にも細かく答えてもらえたので、不安なく試験に臨むことができました
引用:モアリジョブ|美容室「THE DAY」美容師・アシスタント 花さん
オンラインで完結させるか、最終面接や職場見学を対面にするかは、職種や採用要件に合わせて設計しましょう。
勤務日数や時間などの選択肢を広げると、フルタイム勤務が難しい人材も採用候補になります。
株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容サロン就業実態調査(2026年)」では、美容師の就業率は43.6%、休眠美容師は56.4%でした。また、復職条件では「勤務時間の柔軟性」が60.3%で最多となっています。美容師免許を持ちながら現在就業していない層へアプローチするうえでも、働き方は重要な検討材料です。
出典:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容サロン就業実態調査(2026年)」
店舗での施術や接客など、現場でなければ行えない仕事にリモートワークを導入することは困難です。
一方、本部業務や事務、採用、マーケティングなど、場所を限定せず行える業務であれば、リモートワークを検討できる場合があります。
厚生労働省「令和7年版 労働経済の分析」でも、若年層は「フレックスタイムや短時間勤務により、柔軟に働ける」「在宅勤務・テレワークにより、柔軟に働ける」といった点を就業継続の理由として挙げる割合が高い傾向にあるとされています。
勤務時間を柔軟にできれば、生活スタイルに合う働き方を求める候補者へアプローチしやすくなります。
美容室「Vesper」のオーナー・齊藤 良さんは、フレックス制について次のように話しています。
実働時間8hのフレックス制を取り入れています。「拘束時間が長い」「土日休めない」を理由に美容師を辞めてしまう人をたくさん見てきたので、そこに自由を持たせられるフレックス制を導入すれば、応募も増えるんじゃないかなと。
引用:モアリジョブ|美容室「Vesper」オーナー 齊藤 良さん
短時間勤務などを用意することで、育児や介護などの事情からフルタイム勤務が難しい人材にも採用対象を広げられます。
株式会社C&P 営業部 マネジャーの横浜 輝史さんは、勤務時間について次のように話しています。
フルタイム勤務は10時から18時ですが、パートタイムでしたら1日3時間以上、お子さんや介護などの事情があれば時短勤務も可能です。
一般的なサロンは拘束時間が長いので、家族と一緒に過ごす時間がなかなか取れない、育児と仕事の両立ができなくて辞めざるをえないといった問題に直面する方が多いですよね。でも、ここなら仕事も家庭も、無理なく両立できます。
引用:モアリジョブ|株式会社C&P 営業部 マネジャー 横浜 輝史さん
業務委託を活用する場合は、雇用契約とは異なる点を理解し、実際の働き方や業務範囲に合った契約とする必要があります。
欠員が続くと、「とにかく採用できる人」を選びたくなることがあります。
しかし、人材要件を大きく緩めて採用した結果、仕事内容や働き方が合わず早期離職すれば、再び欠員補充が必要になります。
採用基準を必要以上に高くする必要はありませんが、次のように条件を分けておくと、採用スピードとマッチングの両立を図りやすくなります。
欠員補充が完了しても、同じ原因で離職が続けば人員体制は安定しません。
欠員が発生するたびに採用するだけでなく、「なぜ人が辞めたのか」「今いる従業員が働き続けやすい状態か」を確認することも必要です。
厚生労働省「令和7年版 労働経済の分析」では、働きやすいと感じる労働者は、残業が少ないことや柔軟な有休制度などを要因として挙げています。一方、働きにくいと感じる人では慢性的な人手不足のほか、仕事上の相談相手がいないことなども課題として挙げられています。
また、前述した「美容サロン就業実態調査(2026年)」では、美容師の初職の就業期間は6カ月未満が約1割、3年未満で42.5%となっており、美容業界では採用後の定着まで見据えた取り組みが求められます。
まず、従業員が退職する理由を確認しましょう。
エン・ジャパン株式会社の「本当の退職理由」調査(2024)では、退職経験者4,658名の54%が「会社に伝えなかった本当の退職理由がある」と回答しています。また、本当の退職理由を伝えなかった人の理由では「人間関係が悪い」が46%で最多でした。
退職時に表面的な理由だけを確認していると、職場側の改善点を見逃す可能性があります。
退職面談だけに頼るのではなく、在職中から1on1やアンケート、日常的なコミュニケーションを通じて、仕事内容、処遇、人間関係、働き方などに課題がないか確認することが有効です。
離職率や定着率の確認方法、改善策については、「離職率とは?定着率との違い・計算方法・改善策を解説」もあわせてご覧ください。
部門や店舗のリーダーが各メンバーと定期的に話す機会を設けると、従業員が抱える問題を早い段階で把握しやすくなります。
業務上の悩みだけでなく、人間関係、キャリア、働き方などについて相談できる環境を作ることも、職場への安心感につながります。
美容室「FILMS」の代表・若林紀元さんは、次のように話しています。
働きやすさとしては、やっぱり人間関係がすごく大切なので、コミュニケーションを重視して施策をうっています。
例えば自分の技術の進捗や抱えている悩みなどを出せる場として、役職のあるメンバーとの1on1ミーティングを全スタッフが毎月行います。その精度を上げるために、役職メンバーには講師を入れたコーチングの勉強会もしているんです。
引用:モアリジョブ|美容室「FILMS」代表 若林紀元さん
職務内容や成果に応じた報酬体系、福利厚生、休日、勤務時間なども定着に影響する要素です。
採用時に提示した条件と実際の働き方にズレがないか、現在の従業員に過度な負担が集中していないか確認しましょう。
美容室「Violet」の本部長・藤橋 孝さんは、求職者の働き方に対する意識について次のように話しています。
昨今の働き方改革により、働き方や雇用の在り方を見直すサロンが増え、今や福利厚生が整っているところは当たり前の時代。美容師として活躍はしたいけれどプライベートも大事にしたい気持ちから、サロン選びに対してシビアな目を持つようになったと感じています。
引用:モアリジョブ|美容室「Violet」本部長 藤橋 孝さん
従業員が自社で働き続けた先のキャリアをイメージできるようにすることも、定着を考えるうえで重要です。
具体的には、次のような取り組みが考えられます。
厚生労働省「令和7年版 労働経済の分析」でも、若年層は「教育訓練・研修制度が充実し、スキル向上が可能」「自分が希望するポジションへの応募が可能であり、自律的なキャリア形成が可能」といった点を就業継続の理由として挙げる割合が他の年代より高いとされています。
美容室における採用から定着までを一体で見直したい場合は、「美容室の採用戦略とは?人材が集まる求人方法と定着率を高める進め方」も参考にしてください。
欠員を補充して人材を採用できても、入社しただけで欠員問題が解決したとは限りません。
新しい従業員が業務や職場へ適応し、継続して働けるようにするため、入社後のオンボーディングまで設計しましょう。
オンボーディングとは、新しく採用された人材が職場や業務へ円滑に適応できるよう支援するプロセスです。
単に仕事内容を引き継ぐだけでなく、業務の習得、職場のルールや企業文化の理解、人間関係の構築なども支援し、早期の独り立ちと定着につなげます。
オンボーディングを進める際は、入社してから場当たり的に教育するのではなく、事前にカリキュラムや担当者、フォロー方法を決めておくと進めやすくなります。
新規採用者が初日から順を追って業務を覚えられるよう、オンボーディングのカリキュラムを設計します。
例えば、次のような内容を整理します。
何を、いつまでに習得するのかが分かれば、新規採用者自身も進捗を確認しやすくなります。
新規採用者が困ったときに相談できるよう、経験のある従業員をメンターとして配置する方法もあります。
業務を熟知した従業員から指導やアドバイスを受けることで、業務習得を進めやすくなります。入社直後だけでなく、数週間から数カ月にわたってフォローすることで、疑問や悩みも把握しやすくなります。
また、メンター制度は新規採用者であるメンティだけでなく、指導・サポートを担うメンター側の育成意識向上にもつながることが厚生労働省の資料で示されています。
メンターは、単に経験年数が長い従業員を割り当てればよいとは限りません。
業務知識に加えて、新規採用者が質問しやすいか、フィードバックを適切に行えるかといった点も考慮します。
将来のリーダー候補となる若手・中堅社員に任せることで、コーチングや育成スキルを身につける機会にすることもできます。
準備したカリキュラムに沿ってオンボーディングを実施し、メンターや上司が進捗を確認します。
振り返りは、大きく次の2段階で行えます。
オンボーディングは、研修期間が終了したら終わりではありません。
独り立ちした後も定期的な面談やフィードバックの機会を設け、仕事上の困りごとやキャリアについて相談できる状態を作りましょう。
入社直後から継続的にフォローすることで、新規採用者の成長を支援し、長期的な定着につなげやすくなります。